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ブルース・ローレンス『コーランの読み方』(池内恵訳、ポプラ新書、2016)
米デューク大イスラーム学教授がコーラン成立の背景、思想発展を平たく説いたもの。
ムハンマド本来のイスラーム、分派の形成、テロ思想の構造など興味深い切り口で『コーラン』の背景に迫っています。
著者の幅広い知識から、イスラームにおける啓典の民の位置付け、中世のムスリム詩人の参加など、豊富な例が引かれ大変興味深いところです。
ムハンマドの没後、数世代を経て『コーラン』は韻律を重視した「詠まれるべきもの」として整理されていきますが、現代のラップ的なおもしろいもの、カッコいいものとして語り継がれたかのようにも思われます。
【本文より】
◯太陽を見つめられるものは多くはない。しかしより平凡な探求者でさえ、言葉による信仰と知への探求には限界があると認められるし、認められなければならない。
◯どの解釈者も、選ばなければならない。誰もが解釈の原則に従わなければならない。解釈する者が誰であろうと、いつどこでコーランに取り組むにせよ、選択されるテーマや問題、重点の置き所は似通っている。最大の相違は、イスラーム的な世界観の規範を主張する際に、コーランのテキストを狭く取るか広く取るかの違いである。
〈『コーラン自身』による言及〉
◯あらゆる書物を超越する「書物」から、聖コーランは啓示された。
◯憐れみ溢れ、情け深い神の名において
アッラー以外に神はなし 神は一にして、並ぶものなし
「彼こそ統べたもう
彼こそ栄光を一身に集め」
(第64章「騙し合い」第一節)
〈サー・サイイドによる「婦人」章の解釈 → ムスリムの結婚は「愛」ではなく「正義」に基礎を置く〉
◯とても孤児たちに公平にできはしないと怖れるのであれば、お前たちを喜ばせる女たちから二人、三人、四人と結婚してやれ。しかし平等に扱ってやれないなら、一人にしておけ。
〈訳者解説〉
◯イスラーム教はあくまでも、人間の側がどのように感じるかどうかとは無関係に、絶対の力を持つ神が人間に命令するものだ。人間はそれを信じて生きていく以外に選択肢はない。