投稿元:
レビューを見る
◎5年間悩み続けた、被災地の外で苦しんだ人たちの代弁者
宮城出身の私が東京で仕事をしていた時に出遭った震災。沿岸部と比べればかすり傷のような被災をしただけとは言え、停電や避難を経験した家族の元へすぐに駆けつけてあげられなかった悔しさ。
周りはもちろん自分を心配してくれてはいたが、ただひたすら、その心配に耐えることしかできなかったあの日。こんなに東京でじっと耐えているなら、どうにかして家族の元へ向かえたのでは?という後悔。
ボランティアに行ったものの、心が折れそうになりまともに海のそばへ近づこうと思うことができない今。当事者になりきれない自分。被災地とは遠いところで経験した震災は、なぜか被災者との何らかの壁を感じてしまう。「本当に理解することなんてできないんじゃないか」。
震災直後、小説家の悠が仙台の家族を心配しつつ、東京とのテンションの差に戸惑うところから小説ははじまる。
当事者になりきれない自分が見せつけられたこの現実は、とても痛い。
誰かは自分を傷つけようとしているわけではないはずなのだが、何気ない言動やが心に突き刺さる瞬間がある。
それをリアルに表現していて、それもまた、胸に突き刺さる。
筆者も5年の歳月を経て、悩みに悩みながらこの本を書き上げた。最後に主人公は前を向こうとするシーンがあるが、穂高さんも前を向こうと思えたからこの小説が書けたのではないかな。
自分も前に向かわないといけない。そんな気持ちにさせてくれてありがとう。
投稿元:
レビューを見る
3.11のことを描くときに、その立ち位置というものが大きく問われるのだろう。自分自身に。
当事者なのか、非当事者なのか、あるいは、その無数にある段階のどこなのか。
仙台出身で、あの日、東京に住んでいた人は、いったいどの立場であの日を語ればいいのだろう。
親しい人を亡くし、自分の部屋も被害に遭ってはいる。でも、「私は被災しなかった」というどこかよるべなさをきっとずっと抱えて生きているのだろう。
サバイバーズギルト。あの日、この国にいてあの映像を繰り返し見た人たちが共通して持ち続ける、持ち続けなければならない意識なのだろう。
投稿元:
レビューを見る
穂高さんは何作か図書館で借りて読んでいて、いい作家さんだなあとぼんやり思っていただけだったのだが、今作を読んで、ああ本当にいい作品を書かれる作家さんの本はちゃんと買わなきゃだな、と改めて。当たり前のことなのだけど。
読んでいないものもあるので、買います。
投稿元:
レビューを見る
仙台出身の著者が綴る震災の物語なのですが、主人公の魅力が乏しくて感情移入できません。著者本人の体験談がベースになっていると思われるのですが、ネットでググってみても著者の性別がはっきりせず、モヤモヤします。
投稿元:
レビューを見る
震災の話はまだ読むのが辛い。
ことに実体験に基づいた話であれば、さらに好きな作家さんのであればなおさら。
投稿元:
レビューを見る
自分は体験していない。親戚や友人も西日本住まいばかり。それでも、心苦しいのに、家族、友人、本人が巻き込まれたらどんなものか。
いつまでも忘れられない出来事。
時間の経過である程度は…いやー、薄れることはない。
思い出すことがあってもいいじゃない。
投稿元:
レビューを見る
穂高明さん「青と白と」読了。宮城県出身の穂高さんによる東日本大震災(3/11)を題材にした物語。作家とアルバイトを掛け持ちしながら細々と生活をおくる主人公の悠が、震災後、実家へ帰省するところから物語は始まる。震災当日の様子、震災後の親戚との再会、その時感じた周りの人々の言動について悠の視点で細かく描写されてます。また、悠の家族である母、妹の視点でも物語が同時進行していく。あの場面、互いにどんなことを考えていたのかがわかる構成。表題の意味も物語を読み進めていくとわかります。
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災のこと。
持病を抱えながらも小説家として
バイトをしなが東京で暮らす悠子。
実家のある宮城が震災に襲われ
家族は無事だったが、自分の良き理解者である叔母や親戚、友人を津波で失った。
震災後、東京で元通りの生活を送る中で、
小説を書く意味と、被災地になにひとつ手助けできない歯がゆさ。
悠子の母が抱えた空洞。
亡くなった養女だった妹との思い出。
宮城で結婚して暮らす悠子の妹の夏子。
震災後、産地を気にするようになってしまった自分への違和感。
姉への思い。
震災から6年経ったけど
被災した人たちの思いは、どう変化したのかな。
今回の九州豪雨もそうだけど
なにかしてあげたいっていう気持ちと反対に
お金も時間もそうそうない無力な自分を感じることしかできないんだよね。
震災の話は、悲しくなる。
投稿元:
レビューを見る
「むすびや」が面白くて、穂高明さんの次の作品を読みました。「青と白と」、2016.2発行です。著者は1975年宮城県生まれ、「青と白と」、2011.3.11の大惨事をテーマにした作品です。大変な出来事、今なお心が痛みます。
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災当日。東京。多きな揺れ。交通機関が麻痺し出先から会社へ戻る途中に、ビジョンに映し出された地元宮城の光景。家族の安否確認ができない。
東京にいた自分は実際に被災した人達の気持ちと同じ立ち位置にはなれない。事後の光景しか知らないことへのもどかしさと苛立ち。
当時の自分の状況が物語の主人公と重なって息が苦しくなった。
投稿元:
レビューを見る
東京でバイトをしながら小説を書く悠子、宮城県名取市に住んでいた悠子の母都、仙台市内に住む悠子の妹夏子。
それぞれの目で見た、震災のあの日とその後。
著者の中から絞り出されたような思いを感じる作品でした。
日常生活に支障を来たしただけだった関東地方に住む私が、報道で見たり想像していた以上の当事者の思いが溢れていました。
真実を知ることは大切。
それを知るために、当事者である著者が作品として残して下さったことに頭が下がります。
浅葱幕の青と白。
海と空と波と雪と白鳥の青と白。
深く印象に残る作品となりました。
投稿元:
レビューを見る
この本を書く、出版するという事の覚悟。
読後、文庫化時の著者ロングインタビューも読みました。
内容も良いのですが、読了直後のいまはその覚悟の強さのほうが心に沁みています。今後、なにかと思い出す作品のひとつになりそうです。
それから。
(たいして知りもしないのにすみませんが)この作品は特別な(特殊な?)作品のように感じられて、だから穂高明作品として最初に読んで欲しくはないなと思ってしまいました。そんな風に思わず読めるようになることが大切なのかもしれないのですが。
投稿元:
レビューを見る
著者さんのノンフィクションのようなお話。
実家が仙台にあり、東京で働く悠子は震災後、家族や親族、友人などの安否を確認し、実家と東京の行き来をするようになる。
震災後の現場を見たことで、バイトをしながら家族と離れて小説を書いていることに、悠子はいろんな想いにかられる
穂高明さんの描くお話はどこか悲しみを背負いながらも優しさが溢れていてその文章がとても心地よい