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(2012.10.23読了)(2012.10.18借入)
「旧約聖書 ヨブ記」(関根正雄訳、岩波文庫)を読んでみたけどよくわからないので、解説書を読んだら少しは理解が進むだろうと期待して読んでみたのですが、理解は進みませんでした。やはりかなり難しいもののようです。
ヨブは、信仰心の篤い人で、子どもも多く、財産もたくさんありましたが、ある時、災害により子供も財産も失ったうえ、自分も病に苦しむことになります。
なぜ自分がこのような目に遭わなければならないのか? というのが、「ヨブ記」の主題です。2011年3月11日の東日本大震災で、家族や財産を失った方々と同じ立場です。
【目次】
一 旧約におけるヨブ記の位置
二 ヨブ記の構造
三 義人ヨブ、その試練(一)
四 その試練(二)
五 ヨブの嘆き
六 友人の説得―その神学
七 ヨブの立場と友人の立場
八 ヨブ記における死後の生命
九 人の道と神の前―ヨブの良心と信仰
一〇 ヨブを贖う者
一一 宗教の益
一二 聖書と自然
一三 苦痛による救い
一四 神の呼びかけ
一五 ヨブは何を懺悔したか
一六 ヨブの回復
一七 結語にかえて
附 説教者エリフ
あとがき
●思想、芸術(6頁)
ヨブ記は信仰の書物、神学の材料として取り上げられるばかりではなく、西欧の思想、芸術に深い関係を持つ。例えばゲーテのファウスト、ミルトンの失楽園、哲学ではライプニッツ、キェルケゴールなどの思想がこの書とかかわりを持っているのは周知のことである。英国の詩人であるウィリアム・ブレークの如きヨブ記の物語を連続的な絵画として描いていることも興味あることだといえよう。
●プロメテュース(9頁)
ギリシャにエスキュロスの悲劇『縛られたプロメテュース』というのがある。その中に取り上げられている問題がヨブ記のそれと非常に近い。
●生命の尊厳(45頁)
今日、日本において「生命の尊厳」とか「人命の尊重」とかという言葉がよく人々の口にせられるが、このような思想は誰から由来しているのであろうか。私見によればそれはアルバート・シュワイツァーの生命観に発するものではないかと思われる。
●汝生きよ(46頁)
聖書によれば生命は神が創造し、それを人間、動物または植物に与えた。それ故、すべての生命、ことに人間の生命は神のものである。従って神の許しなくして人間は自己の生命といえどもそれを自由にすることはできない。
●伊井直弼(75頁)
橋本左内は当時の政治に対し非常な卓見を持ち、他の志士が多くは尊王攘夷に熱狂していたに対し、彼は尊王ではあったが、攘夷ではなく、むしろ開国論者であったという。その彼が大老伊井直弼により刑罰を受け、はじめは遠島であったが、突然死刑をいいわたされた。さてそのまぎわになり平素冷静沈着であったが彼が処刑に当たり顔を覆ってさめざめと泣いたというのである。
(伊井直弼は、井伊直弼の間違いではないかと思うのですが、当時の文献にはどちらの記述もあるのでしょうか?)
●悪人正機説(95頁)
善人は元来救われ難いものである。善人が善人顔をしている限り救��れない。彼が自分もやはり悪人であるという自覚に徹しなければ救われ難いのであり、そういう自覚が善人には甚だ困難である。そのような善人が弥陀の本願によって救われるのだから悪人が救われぬはずはない。
●神の言葉(186頁)
これは神の言葉だ、命令だというものを間接に聞き、それをそのまま鵜呑みにしてもそれは神の言、その命令にはならない。直接に神の命令を聞くことによってはじめて神の言になる。
☆関連図書(既読)
「旧約聖書 創世記」、関根正雄訳、岩波文庫、1956.05.06
「旧約聖書 出エジプト記」、関根正雄訳、岩波文庫、1969.01.16
「モーセ」浅野順一著、岩波新書、1977.12.20
「旧約聖書 ヨブ記」、関根正雄訳、岩波文庫、1971.06.16
「旧約聖書入門-光と愛を求めて-」三浦綾子著、カッパ・ブックス、1974.12.20
「新約聖書入門」三浦綾子著、光文社文庫、1984.11.20
「聖書物語」山形孝夫著、岩波ジュニア新書、1982.12.17
「ふしぎなキリスト教」橋爪大三郎・大沢真幸著、講談社現代新書、2011.05.20
(2012年10月23日・記)