紙の本
奇怪で幻想的で生々しい
2018/11/01 19:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ほっけん - この投稿者のレビュー一覧を見る
語り部というのは大抵人畜無害なのですが、この話の耳彦は欲深く、自分が生きる為なら罪を犯すという今までに無い語り部で新鮮でした。ゾクッとする怖さ、嫌悪感、素晴らしいホラー小説でした
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懐古調で怪異譚がつむがれる連作短編集。最凶の物語は「地獄」でしょうが、私は「〆」がたまりませんでした。読むんじゃなかった、、、。
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山白朝子の第2短編集。単行本はメディアファクトリー刊で、このたび角川文庫になった。
乙一の別名義というのは有名だが、個人的には山白朝子名義のものが一番好きだ。乙一名義でも見られた、ある種の仄暗さが凝縮されているような気がする。
本作は『主人公の2人が旅に出て、様々な場所で怪異に遭遇する』という連作短編集で、巻末の解説にもある通り、津原泰水の『幽明志怪シリーズ』に近い雰囲気。
表題作にもなっている『エムブリヲ奇譚』、『ラピスラズリ幻想』、スプラッタホラー的な『地獄』が好きだ。
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「〆」と言うお話、人間の顔をした魚は「なんか残酷」として食えなくて、旅先で懐かれ、懐に入れて連れ立っていた鶏は…食えるのかよ、どう言う神経してんだ、って思わず電車内で読みながら愕然としたよ。普通の人間の残酷さ極まれりだよ。情は倫理観を打ち破るものじゃないのか…耳彦が善人でも悪人でもない部分が彼の個性を感じさせない事で物語の筋は際立っているのかも。「地獄」と言うお話、スイ先生が表紙描いてるの解るわー、と言う怖さだった。『ディセント』って地底人が地上人引き摺り込んで食ってる、と言う映画思い出した。
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短編集、というのは知っていたけど、連作短編集だったのですね。うれしい。
「エムブリヲ奇譚」「ラピスラズリ幻想」「湯煙事変」「〆」「あるはずのない橋」「顔無し峠」「地獄」「櫛を拾ってはならぬ」「「さあ、行こう」と少年が言った」の九編。
旅本作家だけど迷い癖のある和泉蠟庵と、荷物持ちの耳彦。彼らが向かい、迷って出会うものは…。
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出ては必ず迷う旅本作家 和泉蠟庵と荷物もちの耳彦の道中記。死なない胎児、持ち主に何度も人生を繰り返させる石、死者と出会える温泉、あらゆるものに人間の顔が浮かび上がる村、渡ると戻れない幻の橋、耳彦を死んだ筈の男だと信じ込む人々、残虐な山賊一家、どこからともなく現れる長い髪。
人間の綺麗なところも汚いところも等しく書かれている。怪異よりも怖いのは結局人間。
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すばらしいです。旅本作家の和泉蠟庵と荷物持ちの耳彦の二人組が旅先で奇怪な出来事に出会う連作怪異譚。上品で無駄のない筆致でつづられる奇怪で美しい怪異譚は、人が生きる上で生じる様々な暗い感情を悲しく切なく浮かび上がらせる。でも決して暗すぎることはない。マイペースな和泉蠟庵の迷い癖はすでに呪いのようなもので、また、それに付き合う耳彦はお世辞にも立派な人間とは言えず常に弱さをさらけ出している。この二人のとぼけた性格とやり取りが、和やかで優しい余韻を残してくれる。また、二人の存在が怪異譚を閉じずに常に未来に開いてくれている。
九編ともほんとうに見事な出来で、怖さの質もみな異なり、予想つかない展開もあり、面白いです。以下、一言感想。
『エムブリヲ奇譚』拾った胎児との生活。圧倒的に怪しく切ない。一編目からぞわぞわして、がつんときた。
『ラピスラズリ幻想』特に好み。人生を繰り返す呪い。ある意味でもっとも怖い。唯一閉じた結末か。
『湯煙事変』ちょっとほろりとする切ない話。
『〆』米粒まであらゆるものに人の顔が見出せる漁村で、食べ物を受け付けなくなった耳彦の取った行動は。いやな話。
『あるはずのない橋』またまた耳彦の精神と人間性が試されてしまうのか。
『顔無し峠』耳彦は、今度は幸せな選択を迫られる。暖かくも切ない。
『地獄』恐い。理不尽で残酷な恐さ。さらなる極限状況に置かれた耳彦の戦い。もっとも恐ろしいもの、人間。
『櫛を拾ってはならぬ』特に心霊的で怪談色の強い作品で好み。落ちの異常さも怖い。
『「さあ、行こう」と少年が言った』最後をこの作品で締めてくれてよかった。いい話です。和泉蠟庵のことがもっと好きになる。
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切なーーーーーい!!乙一先生だからしょうがないと分かっていても切ない!!!特に「地獄」あれは男版「SEVEN ROOMS」だよね!!!!
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主人公の和泉蠟庵の設定が、方向音痴、わりと空気読(ま)めない、体力は鬼、しかしながら小柄、最終的に禿を気にし始めた時点でもう脳内配役が確定いたしました(……。)
そして長髪などという全くありがたい設定です。
大変けしからん。
耳彦は山田孝之さんが似合いそう。
濱田岳も合いそうだけれど蠟庵とバランス取れなさそう。
とはいっても実写じゃなくアニメ向きの話ではある。
ライトといえばライトか。
「ラピスラズリ幻想」の構成が好き。
しかし、繰り返すことはどちらかというと呪いに近いものも感じる。
それが故の結末なのだろうと思う。
何かを満たせば何かが満たされない。苦しい。
「〆」はなんとも言えず後味が悪い。
弱肉強食というか、諸行無常というか。
このあとの櫛〜じゃないけど羅生門的な切なさがある。
その世界で普通(と思われる)ことと、自分の中での普通とがブレたときに人はどう行動するのか。
「地獄」は全く違った意味で無力。
人も鬼もあまり変わらないのかもしれない。
「〆」の中でかたくなに守り何かを喪ったというのに、その信念は「地獄」の中ではいとも簡単に崩れさる。
しかし描写がなかなかである。
怖いというよりは気持ち悪いの方が近い。
「櫛を拾ってはならぬ」が一番いい感じにゾワゾワした。
怪談とはこういう物だ!というワクワク感もあり。
長い髪の毛はなんでかわからないけど怖いものの一つ。
髪の毛は抜けた途端に唯の髪の毛になってしまって、怖く感じる。
「「さぁ、行こう」と少年が言った」
これも設定がいい。「ラピスラズリ幻想」に通じる何か。
希望と切なさが交じる。
和泉蠟庵のまだわからない部分がわかる話の一つでもある。蠟庵少年がいい。
他にも何編かあるけれど、特にこれらが好きだった。
続編も読みたいけど文庫化はまだ先の様なので気長に待ちたい。
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シリーズ第2作『私のサイクロプス』を先に読んでしまったので、本作(第1作)に遡って読んだ。基本的には耳彦と和泉蠟庵の道中記で、第2作のメインメンバーである輪が一話のみ登場する。
人情味、ユーモア、ホラーのバランスが素晴らしい。
弱者に対して、ほのかな、あたたかい情愛が積み重なっていく過程を描くのがうまいと思う。
耳彦と和泉蠟庵の掛け合いも息がぴったりで、クスッと笑える。
人の交わりの温もりを描く一方で、肉親を犠牲にしてでも生き伸びようとする人の本能も炙り出す。美しさと醜さが同居して、双方を引き立てている。
「正しい文章」というのとは少し異なり、時々ねじれを感じるが、繊細な感情を汲み取って、はっとするような表現を生み出している。
<好きな話>
輪が主役の「ラピスラズリ幻想」が白眉で、あまりに切ない彼女の決心に号泣してしまった。
「「さあ、行こう」と少年が言った」では、少年時代の和泉蠟庵が登場する。家族に虐待される女を救う蠟庵少年は、まさに天使か救世主のよう。黄金に輝くススキの野の風景が、いつまでも頭から離れない。第2作ではいまいち影が薄い彼だが、この一篇を読んで大好きになってしまった。
<苦手な話>
「地獄」は、縦穴の閉塞感や腐臭があまりにもリアルで、夢に出そうで怖かった。結末がまさにタイトルどおりで、再読はしたくない。
「〆」は好きな話だが、家も食材もあらゆるものが人間の顔に見える地獄は、想像しただけで気が狂いそうだ。
本作が素晴らしかった分、第2作があれ程つまらなく感じたのが不思議だ。かと言って、もう一度第2作を読もうとも思わない。第3作の刊行に期待したい。
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迷い癖のある旅本執筆者、和泉蠟庵と荷物持ちとして旅に同行する耳彦が出会う奇譚の連作短篇集。
蠟庵先生のつかみどころのない性格と、耳彦が思った以上にクズ野郎(なのにどこか憎めず)で可笑しみのあるコンビ。
「ラピスラズリ幻想」は人の一生の感動が凝縮されているような。不思議な感動。
耳彦は全編において、とにかく、わりと、クズ。
でも哀れな目に遭う率も高いから、ドンマイ。
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2017/9/24
なぜこの本を読もうと思ったのかな?
ちょっと覚えてないけどはじめましての人。
かわいがってた鶏食べちゃうのは勘弁して~
私もたいがい方向音痴だけど蠟庵先生ほどじゃないわ。
幻想的なお話。
ややホラー。
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怖いのは本当に駄目なんです。でも読んでしまうのは、妖しい怖さには、どうしようもない美しさが潜んでいるせいかもしれない。主な語り手である耳彦の駄目っぷりが良い。人間の弱さや愚かさも見せつけられる一方で、憎めなく思える。駄目な人を書かせたら、右に出る人はいないよなぁと思う。連作短編集で、どれもそれぞれ衝撃的だった。
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かなりおもしろかった。
短編集。
ラピスラズリ幻想
何度も人生繰り返して強くなる系の話は好き。トムクルーズ主演のあの映画も然り。ラストは切ない。この作者の切なさエンドは効くね。
〆
これもお気に入りの話。目に見えるものだけを嫌がったりするようなことは多い。スマホには便器並みの菌がいるとかそういう話に近い。ラストがいいんです。
顔無し峠
かなりグッときた。最近出会った人なのに…と登場人物本人も言っていたが、自分も同時にかなり感情移入してしまっていた。不思議な感覚だ。
「さあ、行こう」と少年が言った
家での仕打ちに、血管ブチ切れそうになるほどイライラした。これもラストがいい。
全体的に漂う雰囲気と、ラストがいい。
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耳彦の話が多かったですね。
やはり上手い、怪談はかくあるべしというお手本のような作品です。褒めてますからね。最近のホラーは当たりが悪くて(T ^ T)