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第49回谷崎潤一郎賞受賞作。帯の惹句に驚いたのだが、本書は著者初の短編集らしい。
基本的には恋愛小説だが、『お花畑自身』のように、対象が人間とは限らないものも含まれる。ストレートな恋愛小説ではない。
詩と散文の間にあるような『いちご畑が永遠につづいてゆくのだから』のリズム感が良かった。前述の『お花畑自身』も、ちょっとホラーじみた執着心が面白い。
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7つの物語を集めた短編集。作中の女性たちが放つなんとも言えない雰囲気をもろに受け、気持ちが悪くなりつつも読了。男性でこの小説を受け入れられる人、すごいと思う。
そんな中でも「日曜日はどこへ」は何気ない日常の光を描いていて、落ち着いて読めた。
「十三月怪談」はやはり表現の手法がすごかった。生と死のはざまで見た時子の夢と、実際にその後の時間を過ごした潤一の生と死、異なる視点から描かれるラストへのアプローチ。
珍しく強いメッセージ性を露わにした作品でもあった。生きている人は生きている人にしか救えない。大事な人がいるならば生きていなければいけない。救いたければ同じ立ち位置にいなければならない。
装丁:名久井直子
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サイン本で。
「十三月怪談」に震えました。
年々、川上さんの書くお話が好きになってくる。
歳を取ったってことだといえばそれまでなんだけど。
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『喪失』がテーマな短編集。独特な切り口と感性で忘れかけていた大切なものを優しく気付かせてくれる内容。
川上未映子さんは、常に「人」や「物に対する愛情」、また「流れる時間」「想い出」「言葉ひとつひとつ」に至るまで、この世のすべての「存在」を大切にしていることが手に取るように分かる。そういう人でないと描けないと思う。
特に後半の『お花畑自身』と『十三月怪談』は、印象に強く残った。
『お花畑自身』
いつの間にか、私自身も完全な主婦的思想になってしまっていたことに気付かされる。自分のお城を築くのに夢中になり、周りの世界や、現実と非現実の境界が分からなくなってしまう主婦のお話。
『十三月怪談』
生きていることが、どれだけかけがえのないことなのかということ。生きている人を幸せにできるのは、他でもなく生きている人である事実。
時子と潤一で、事実が随分と食い違っていることも素晴らしい。事実はひとつではなくとも、ふたりの真実はひとつであるから。時子の文章で途中から徐々にひらがなで埋め尽くされていくような手法も表現力が実に豊かだと思う。
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あのとき、ふたりが世界のすべてになった――。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。谷崎潤一郎賞受賞作。収録作:アイスクリーム熱/愛の夢とか/いちご畑が永遠につづいてゆくのだから/日曜日はどこへ/三月の毛糸/お花畑自身/十三月怪談
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短編集。
お花畑自身
家を買った女のセリフが印象的。
「なんでそんな恐ろしい状況にずっと身を置いたりできたのか。なんでそんなに他人に甘えられるのか。自分の生活を誰かに丸投げできるその感じが。怖くなかったんですか?不安じゃなかったんですか?」このセリフ、すごく共感する。
話の主題はそれではなくて、執念のようなものなんだけど、主人公の執念のありようがすごい。
十三月怪談
愛だなー、と思った。
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さいごの十三月怪談、がとてつもなく良かった。
時子のはかなさと潤ちゃんの真っ直ぐさが、美しい。
健気に「いま」を「生きる」二人が、美しい。
死についてどれだけ思いを巡らせたって、
いま生きているのだから、ほんとうの死を知ることはできない。
一緒にいること、生きてそばにいることがたいせつということ。
死ぬとは、見えなくなること。
潤ちゃん目線の、時子との最後のときの描写が、
やりきれなくてやりきれなくて、電車で読んでいたのに涙がとまらなくて、
とまらなくて、上を向いて鼻をすすって読み進めたけど
やっぱり涙の粒がこぼれてしまった。
めんつゆのいつもの味の尊さ、
大きな瞳で潤ちゃんのすべてを目に映す時子、
初めて?時子の前で涙を流して、ふっくらとした時子を抱きしめた潤ちゃん。
最後はやっぱりあのマンションの一室で、
いつともわからない十三月。
永遠にふたりに幸せであってほしい、です。
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アイスクリーム熱…なんとも寂しい。
愛の夢とか…のっぺりした近所付き合い。
いちご畑が永遠につづいてゆくのだから…熱にうなされている時の夢みたい。
日曜日はどこへ…本が縁となる出会いと別れ。
三月の毛糸…えもいわれぬ不安な気持ち。
お花畑自身…どれほどの家と庭なのかちょっと気になる。買い手の女の口から出る言葉は正論だけに意表を突かれた。
十三月怪談…評価はこの作品。妬けるほどロマンチックで美しい。これだけ強く結ばれたらこうなるのかと納得させられる文章で、不可思議さの中に永遠不滅を見た。
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素敵なタイトルに惹かれて読んでみましたが、私にはイマイチでした。。
この著者の小説は、学生が主人公のものの方が断然好きです。エッセイも大好き!
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七つの短編集ということで期待して読んだのですが、文章が文学的すぎて訳の分からない場面も多々ありました。
けれどどの物語もちょっとホラーっぽくて面白いといえば面白いです。中でも「お花畑自身」は恐かった。
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十三月怪談が良かった。読み進めていく内に何とも言えない気持ちになった。最後にまた二人が会えたのが嬉しい。映像化したら面白そう。
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わかりそうでわからない心の渦巻きが言語化されていて、気がついたら巻き込まれていた、みたいな感じ。一つ一つの文章はまったくよくわからないのだけれど、全体の、短編ごとの流れはわかる。共感もある。読み終わった後、鼻が苺に見えたし、口の中に土の味がしたし、部屋に誰かがいるような気がした。つまり、作品に思いきり影響された、ということだと思う。深夜、一人で、たっぷり時間をとっての読書がおすすめです。
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28.11.23読了。
一文一文が長くてまどろっこしくて大好き。
どの作品も納得できる自己解釈ができなかった…。
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初の川上未映子。文章がメルヘンチックで、日常の出来事を描いていてもどこかファンタジーっぽさがある。詩的な表現は嵌ればぐいっと小説世界に引き込まれる反面、嵌らないと置いてけぼりにされる感覚があり、当たり外れが大きいと感じた。『愛の夢とか』、『お花畑自身』は理解できなかった。以下、よかった作品について。
『日曜日はどこへ』
いつまでも自分だけが成長してなくて置いてけぼりにされている感覚にすごく共感した。電車で寝過ごしてしまえたらいいのにという気持ちもよく分かるし、どうせ降りる駅でちゃんと目覚めるという諦めの心境もすごくよく分かる。かなしい。
『三月の毛糸』
これが一番よかった。残酷なこの世界に子どもを産み落としてしまうという罪悪感や恐怖は母親になる人はみんな経験しているのだろうか。私の母親も経験したのだろうか。この気持ちを全員が一度経験すればもう少し生きやすい世界になるような気がする。
『十三月怪談』
ありきたりな恋愛感動物語かと思ったらそうではなかった。死んだ妻が思念体として残り夫を見守るのも面白いが、それ以上に死後の彼女が見た夫の生活と夫の口から語られる実際の生活が食い違っているところが面白さを増している。彼女が見ていたのは本当は死後の愛の夢というロマンチックさ。でもただロマンチックなだけでなくて、その夢の中で彼女が到達する考えははっとするような真実を言い当てているように思った。
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最初の方の作品は苦手で、表現も比喩をあまりに多用していて、それも個人的にはイメージしにくいものだった。でも、「お花畑自身」は、世代も生き方も全く異なる女性同士のドロドロとした対決が鮮明に描かれていたし、最後の手段にもびっくりした。「十三月怪談」もなかなか読み応えがあった。