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10代後半まで北朝鮮と中国の国境の街・恵山で比較的豊かに暮らしていた著者が、「少し隣の国を見てみたい」と川を渡った後、10年に渡る中国での生活を経て韓国に到着する。
パク・ヨンミ著「生きるための選択」と比べると、この本の著者は比較的「幸運」といえる内容だが、それでもただ普通の女の子が異国で身分証明書もなく、脱北者の知り合いに密告されたりして送還の恐怖に怯えながら暮らさなければならないというのはとんでもないことだ。
著者の家族は北朝鮮では高い成分(北朝鮮の非公式な身分制度)に属しており、軍の高級幹部であった父と、商売の才覚があった母のおかげで、「苦難の行軍」の時期に周囲の人が飢えて死ぬような状況の中でも、食べることに困ることはなく、また中国製のおしゃれな服を着ていた、という。高い成分や、様々な賄賂のおかげで著者は誰からもとがめられることなくおしゃれをし、個人主義的な傾向をも強めていく。それは本来、北朝鮮では絶対に許されないことだ。
そんな祖国に少し息苦しさを感じていた著者は、大人になる前に隣の国を見てこよう、と気楽に国境を越え、親戚の家に遊びにいく。その数日の間に、彼女が脱北したとの噂が広まり、彼女の家族は窮地に陥り、また彼女自身も北に戻ることができなくなってしまう。
親戚の勧めによって中国の裕福な朝鮮族の男性と結婚させられそうになった彼女は、親戚の家から逃げ出して中国で一人暮らしをすることになる・・・のだが、そこからが苦難の始まりだ。未成年で、中国語も最初は流暢でなく、身分証もないという状態で彼女は時に危機に陥りながらも必死で生活を立てていく。その期間は10年に及ぶという。
韓国に到着した後には、自分の母と弟を脱北させるために自ら中国やラオスに赴き、想像するだけでもつらくなるような経験をするのだった。
どの国でも通用し、大手を振って旅行することのできる身分がどれほどありがたいかを思い知らされる。
彼女は今、脱北者のために世界各地で講演を続けているという。本当に努力家で前向きな人だと思う。
ただ、英語から日本語に訳されたらしい同書は、何度も繰り返し出てくる単語でさえうまく訳されていないという欠点がある。韓国語を知っている人間、あるいは北朝鮮について知っている人間であればすぐに訂正できたはずのものだ。その点だけが残念である。
・パンジャン→(人民)班長
・ボウイブ→保衛部
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図書館へ行ったら新刊コーナーに並んでいて、何の予備知識もなく借りた本。
借りたはいいがなかなか読めず、返却日が2日後に迫ってしまい何とか読み終えた。(読むのが遅いから)
出来過ぎのストーリー。
これがノンフィクションだというからすごい。
映画になりそう。
元々頭が良い人なんだろうな。
数々のピンチを切り抜け現在に至る主人公は強運の持ち主でもある。
占いを信じる、お金で物事を解決すること、ドラッグ、密輸密売も当たり前、逞しい商魂、強い血縁関係。
北朝鮮という国について少しは理解出来たと思う。
「正義」の定義からして違うのかもしれないが、とにかく何でもかんでも金金金…賄賂が横行していて嫌気がさしたが、途中、ようやく?欧米人が出てきてホッとしてしまった。(これって欧米崇拝?)
ひどい国だなとは思ったし自分は移り住みたいとは思わない。
でもその国に生まれ育った人達が脱北出来て良かったのかどうか。
それが本当に幸せだったかどうか。
いろんな人を犠牲にして脱北することが幸せなのか。
それについてはご本人達も生きている限り悩むのかもしれない。
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生きる為に7つの名前を持っていた女性の話です。これはフィクションではなく本当に起こっている話です。世界にはこのような壮絶な人生を送っている人がいる事も想像できていなかった私は、とても恵まれていると思いました。パクヨンミさんの本も読みましたが、脱北の方法や韓国への入り方も異なります。ですが想像し難い思いをしているのは同じです。それでも前向きで読んでいて自分自身を見つめ直しました。彼女達にとっての祖国で大切な場所なので、無くして欲しくないですが、これ以上同じ思いをする人は増やしてはいけないと改めて思いました。
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とてもノンフィクションとは思えない物語でした。
よく韓国までたどり着いたと思うし、よく家族を救い出せたとも。
でも、一番衝撃だったのは、わたしと同年代のこの子がこんな人生を送っていたということ。
彼女が中国に行ったとき、中国で危ない目にあったとき、韓国にたどり着いたとき、家族を救い出したとき。同じ歳のとき、わたしは何をしていたかと考えてしまいました。
これが、50年前の話だと言われたら、ここまで衝撃を受けなかったと思います。
同じ時代に生まれた彼女の話だったから、とても感じるものがありました。
読んでよかったと思います。
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国同士の違いがこんなにもあるのかと、また国民は属する国の文化や風習を自然に受け入れ、その国の国民にならなければならない。ことを考えさせられる。また、ノンフィクションなので、本当にこれは実話なのかと目を疑う。