紙の本
あたりまえのことができるようになるまで〔ネタバレあり〕
2017/11/01 15:23
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投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えて、ローレンス=ブロックの『八百万の死にざま』に似ている、と思った。あたりまえのことができるようになるために、命に関わる危険や悪意や憎悪にさらされ、傷つき、疲労困憊して、やっとたどりつく。『八百万の死にざま』では、アルカホリックアノニマスで「わたしはアル中です」の一言を言えるようになるために。『雪の鉄樹』では、人と一緒に御飯が食べられるようになるために。
主人公はもちろん深く傷ついているが、まわりの人々も、深い傷や歪みを抱えて生きている。それにしても、どうしてここまで、というほど、雅雪は子供のときから、とことん、傷つけられている。彼はほんとうなら、というよりも彼こそが、もっと怒りと恨みと憎しみでいっぱいになってもいいはずなのに、ひたすら、謝り、償いを続ける。
あまりにも理不尽なことが多すぎると思うのだが、庭造りの美しさが、救いになっている。雅雪の祖父の理不尽ささえ、美しいものを作ることにたけた人は、こういうものなのか、と思ってしまうほどだ。
電子書籍
読みふけってしまいました
2018/06/29 08:33
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投稿者:ぶちねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めたら区切りがつけられず、寝る時間になっても読みふけってしまいました。最初は背景も分からないからそれが気になって読みふけり、雅雪の過去が見えてきたら彼の行く先が気になってしまい読みふけってしまいました。 雅雪がまともに見えながらあまりに歪んでいて、どうしてそこが分からないのだろう、どうしてそっちに考えるんだろう、と腹だたしくもどかしく、それだけに哀しくなりました。
紙の本
この感じ
2017/11/14 16:32
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投稿者:いとさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなり浸れました。感動、涙ものです。初めて遠田さんの作品を読みましたが、また他の作品も読みたいと思いました。
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女性も含めて登場人物のほぼ全員が「嫌な奴」「しょうがない奴」又は「どうしようもない奴」である。
頑なで、融通がきかなくて、心の奥底と行動がずれているにも関わらず心の底を見ようともしない。
「不器用」などと気の利いた表現では収まらないバカばかり。
13年も悩みに悩んで訪れた「その日」以降の展開があまりにあっさりしていたのがちょっと残念だけれど、そうじゃない展開だったら、読み進めるのも困難だったかも。
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私は、傷ついた時に、それを表に出すことを恥ずべきことと思っている節がある。
「そんなことで傷つくほど弱くない」と、思うこともあるが、自分が加害者になったときに、「傷つけられた!」と感情を顕わにされた相手に「えっそこまで?」と困惑することがあるからかもしれないし、なんというか、大人はクールに対応できて一人前という気もしている。
この本を読んで、人が心を傷つけられるというのがどういうことなのか。どれだけ辛いことなのかを、冷静に説明された気がする。
かつて、傷ついたことのある人に、そして、人を傷つけたことのある人に薦めたい本。概ね誰でも読むとよい。
なお、この本は自己啓発書ではなくミステリです。たぶん。
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ずーっと読みたかった一冊。
なんと暗く、悲しい展開だろう。
でも、この方の作品、もっと読んでみたくなりました。
自分の中では、今年一番衝撃を受けた本。
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前半はもっさり。最後は怒涛の展開で胸が熱くなる。もう30ページ増えてもいいので、遼平と舞子か邂逅する場面を書き込んで欲しかった。
ただ、あまりに現実ばなれした話に感情移入はままならない。脇役もいいのだが、なぜ、皆かくも一癖二癖あるのだろうか。普通の人が殆ど登場しない小説だ。
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濃厚。絶賛の嵐というのも頷ける。結末に思わず涙。
あらすじ(背表紙より)
祖父と父が日々女を連れ込む、通称・たらしの家で育った庭師の雅雪は、二十歳の頃から十三年間、両親のいない少年・遼平の面倒を見続けている。遼平の祖母から屈辱的な扱いを受けつつも、その傍に居るのは、ある事件の贖罪のためだった。雅雪の隠してきた過去に気づいた遼平は、雅雪を怨むようになるが…。愛と憎しみの連鎖の果てに、人間の再生を描く衝撃作。
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『ーーー今日の仕上がりではない。先を見ろ。五年、十年後の庭を考えて仕事をしろ。』
若き庭師が、雪をかき分け、茨をかき分け、十数年かけて世話し続ける庭の話。庭師の才能に溢れた心安らぐ日本庭園がお楽しみ頂けます。
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本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン2017の第1位ということで読んでみた。なるほど。これはすごいわ。
ヒトは誰もが誰かに認められたくて、愛されたくて、ずっとそれを求めて生きているのだな。それが与えられないまま生きてきたヒト同士が巡り合ったときに必ずしもプラスになるとは限らない、この悲劇。
祖母と暮らす少年と、庭師の男。2人の関係の謎。少しずつしかわからないもどかしさに読む手が逸る。
圧巻のラスト、この形をよしとするか否か。少年の祖母の気持ちを思うと心震えながらもどこかで醒めた声も聞こえる、自分の中で。
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非常に暗い気持ちになる話なのだが、読み進めずにはいられない。
そんなに簡単じゃない、と思いながらも、そうであってほしいと思う。
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これは凄い。「文庫王国」で見て、是非にと思って手に取った作品。タイトルからは内容がほとんど見えてこなかったけど、何の先入観も持たずに読んでみて正解。圧巻の文章展開に翻弄されつつ、気が付いたらページを繰る手が止まりませなんだ。広い意味で言うと、”被害者と加害者”を扱った作品ではあるんだけど、どんな罪に対してのっていう部分がなかなか明かされないこともあって、読み手の側も、贖罪について色々と考えさせられる。過去と現在の行き来も絶妙で、理想的な順序で事件が語られていると思う。いやいや参りました。他の作品も読みます。
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「2016年文庫第一位」という宣伝文句のみで買ってしまったが大当たり。凄かった。壮絶な過去と復讐の連鎖に贖罪。思い話だったけど一気読み。初めて聞いた作家だったけど、他のも読まないと。
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雅雪、郁哉、舞子、そして遼平。みんな哀れすぎて、また雅雪の祖父や父親、郁哉と舞子の母に対する苛立ちと憎しみが強すぎて、読んでいて辛い気分になってしまいました。
ページをめくる指も重く、読むのにとても時間がかかりました。あまり辛い気持ちになるので、何度も読むのを止めようと思いました。けれど「なぜ雅雪はそこまで献身的になれるのだろう?」という疑問が読中ずっとつきまとって頭から離れず、読むのを止めることができませんでした。
その真相に関しては、間接的に関わりがあったとはいえ、そこまで自責として受け取れる話でもなかったため納得できず… けれど雅雪の真面目な性格を考えれば彼ならあり得ると理解はできます。このギャップが同情を誘うのかもしれません。
辛い境遇の中でも、幼い遼平と接することに悦びを感じていたことを語る場面は涙を誘われて困りました(読んでいたのが電車の中だったので)。
そしてなにより、ラストで舞子と一緒に朝ご飯を食べるという普通ならなんということのない場面。けれど本作では、これがとりわけ感動させられました。「あの雅雪が二人で飯食っとる」と思うだけで、いい年したおっさんが部屋で一人号泣する事態になるほど(苦笑)
読中は辛い気持ちを引きずりましたが、前向きな気持ちになれるラストシーンに少しだけポジティブな気持ちになりました。すごい作家さんがいたものですねぇ。他の作風がどんななのか分かりませんが、とりあえず心が元気になったらw 他の作品も読んでみたいと思います。
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内容(「BOOK」データベースより)
祖父と父が日々女を連れ込む、通称・たらしの家で育った庭師の雅雪は、二十歳の頃から十三年間、両親のいない少年・遼平の面倒を見続けている。遼平の祖母から屈辱的な扱いを受けつつも、その傍に居るのは、ある事件の贖罪のためだった。雅雪の隠してきた過去に気づいた遼平は、雅雪を怨むようになるが…。愛と憎しみの連鎖の果てに、人間の再生を描く衝撃作。