投稿元:
レビューを見る
ちょっと!
全四巻の最初の1冊って、わかるようにしといてよ!
「ギケイキ 1」ってなってたら、完結してから読んだのに。
町田康が、義経の一人称で自分の人生を語る。
しかし義経くんがえらいのは、千年前の生活なんぞ想像もつかないようなわしらのために、今の言葉で、今の風俗をふんだんに取り入れて語っているところだ。
“そして人間はなんといっても見た目に左右される。(中略)そこで私は以下のようなコーディネートにした。
まず白い小袖、そのうえに唐綾(からあや)を重ね着て、薄い藍色の帷子(かたびら)を合わせる。白い、すそ野大きく開いた袴を穿いて、敷妙(しきたえ)といういい感じの、腹巻、といって胴に巻く防具を巻き、唐織のゴージャスな直垂(ひたたれ)を合わせる。
(中略)
って、いまこんな格好で歩いていたら、ロケですか?って聞かれるに違いないが、当時はこれはnew lookだった。このキャラに似合ったfashion' fashion'なのだった。”
でもまあ、語るべきところはそこではなく、やっぱりだらだらと、しかし何がなしいい感じのリズムに乗って語られるその文体。
会話文も地の文も、とにかく楽しい。
好き嫌いの別れる文章だと思うけど、私は好き。
義経青春時代といえば平安時代の末期。
そして義経は曲がりなりにも武家の生まれなわけで、結構命のやり取りがえげつない。
すぐ「殺す」とか「いってこます」とか、「首を落とす」とか言って、実際にやっちゃうし。
そんな中でも有名な暴れん坊が、武蔵坊弁慶。
しかし、なぜ弁慶がそのような人間に育ってしまったのかというと、生まれの高貴と顔の不細工がそうさせてしまったわけですね。
今の時代よりはるかに見た目が人生を左右する時代。
弁慶の不細工は致命的だった。
ならば己の腕力で世の中と闘っていくしかないだろう。
だから弁慶(幼名・鬼若)は暴れ狂った。
“そのとき、鬼若は楽しかっただろうか。愉快だっただろうか。
ちがう。鬼若の心のなかには無限の悲しみがあった。(中略)
爽快な暴力をふるいつつ、鬼若の心はズタズタに傷つき、血を流していた。”
弁慶の悲しみは悲しみとして、やってることはただの行き過ぎた暴力だし、人間性に問題があることを本人は気付いていない。
生まれがよくて、力が強くて、頭も秀才程度には良い。
だから野心があるのに、顔が悪いせいで認められないのが悔しい弁慶。
生まれがよくて、武芸に秀で、金はないけれど超イケメンの自覚がある義経。
この二人がようやく出会い、頼朝が平家打倒に立ちあがったところで、次巻に続く。やれやれ。
投稿元:
レビューを見る
なにこれ、おもしろい!!
すっぴんで町田さんの古典町田訳を朗読しててメチャクチャおもしろかったので、義経記がギケイキになっても絶対おもしろいと思って借りてみる。
既存の義経、弁慶のイメージ覆しまくり。
なんだ、こいつらとんでもねーーー、の連続。
義経記自体は読んだことないんだが、これ読んでから読むと結構おもしろいかも。
義経もなかなかのものんだが、弁慶の心内の描写がすごい。弱気弁慶と強気弁慶の血みどろ闘いが、こーゆー風にあらわすかあって感じ。
いやあ、町田さんの感性に脱帽。
未だ頼朝に会ってもいない。
どうやら続きがあるみたい。
頼朝の語りも聞いてみたい。
投稿元:
レビューを見る
あのー、これは古典文学の現代語訳ではありません。マジメな、本読みのお友達、ずーっと若くて、橋本治なんか好きだって言ってる方が、ついていけませんとおっしゃっていました。さもありなん。まあ、町田君の小説としては、あんまり出来がいいとは思いませんでしたが、町田康というのはこういう作家なのです。宇治拾遺をよもうが、義経記をよもうが、書いているとこうなって、あと、もう誰も止めることができない。しかし、何なんですかね、これって。高橋源ちゃんとも違うんですよね。そういうのを面白がってる自分自身も、少し怖い。
投稿元:
レビューを見る
「それって武士?ああ、武士だ。戦いにおいて武士はいつだって現実主義だ。血が噴き出し、目玉が飛び出し、内蔵も噴出する。それがすべての前提だ。…(中略)…後の世の武士道などというものは私から言わせれば泰平の世のたわごとだ」
源義経と言えば、気品あふれる悲劇のヒーローのイメージがあった。
こんなファンキーな義経は見たことない。
くほほほ、きゅははは、どひゃーん、ほえええ、ってそりゃなんやねん!
ツッコミを入れながらの読書となった。
私の中の義経像が見事に覆される。
「これが私のやり方。オレ流の生き方だ」
と、どこまでも強気な義経。
忠実な僕・武蔵坊弁慶と共にいよいよ兄・頼朝の元へ。
どうかこのまま最期までオレ流を貫いてほしい。
ツッコミどころ満載のファンキーな町田流『義経記』。
千年の時を越え、義経が今まで胸に秘めていた思いをどこまでもさらけ出せるのか…。
この後4巻まで続くらしい。
このエネルギッシュな筆力を保ち続ける町田康さんはすごい。
この義経は俳優でいうと菅田将暉のイメージかな?
菅田将暉主演の映画で観てみたい。
投稿元:
レビューを見る
ネット上の知り合いが褒めていた町田康に初トライ。
好きな人にはたまらんのだろうな~と思いつつ、でも私はダメでした。
町田さんはパンクロックバンドのボーカリスト。同時に小説家としてドゥマゴ文学賞、芥川賞、萩原朔太郎賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞を受賞。凄まじい。
1行目からハルク・ホーガン→ハルク判官ですからね、と~~ってもパンクでファンキーな義経記(ギケイキ)です。
多分、感性のところでかみ合わない。
何故、こんなにノリノリの文体なのか?面白いかもしれないけど、なぜここまで露悪的に描くのか?などと考えてしまうのです。理解しようと思ってしまう。
でも本当は感じるものであって、考えるものじゃ無いですよね。つまり考えた時点で感性が一致しないのだと思います。
面白い箇所も随所に有って最後まで読みましたが、次には進まないでしょうね。
読者を選ぶ癖の強い作家さんだと思います。
投稿元:
レビューを見る
ジョイスのユリシーズじゃないけど、他言語に翻訳するのは難しいとゆうか、無理かも。日本語、関西弁が母語でよかったと思った。この本のニュアンスが大方理解できて。もっとも町田さんとはちょっと年齢差があるせいか、残念ながら「出典」がはっきり分からないこともあるけど。ギケイキ2も読んで、まだ単行本になってない文藝の連載も読んでます。
投稿元:
レビューを見る
源義経とか武蔵坊弁慶とか日本史の時間に確かに聞いて覚えたけれど、生涯を通じてはあまり知らなかったので読んでみましたが…「…何だこりゃ…」が正直な感想です。コレは何というか…お笑い芸人の「歴史上の人物コント」を見ているような感じと言うか、しゃべくり漫才を聞いてるような感じと言うか。関西弁を知らない人が読みこなすのは難しいんじゃないかとも思いますし…普通の歴史小説好きにとっては、歴史小説と呼ぶのが憚られるようにも思います。しかし、余りにもクセが強すぎて逆にクセになるかも(^_^;)
投稿元:
レビューを見る
源義経を題材に書かれた本書だが、町田康の文体で独特に描かれている。
読みやすいと言えば読みやすいが、三文芝居がかったやりとりが続きすぎて腹を下しそうになってしまった。
義経記には大変興味があったので、続きを読みたい気もあるが、別の作者を探したいと思います。