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紙の本

裁判制度の限界

2020/09/30 21:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者が以前地方検事補として働いた経験があるということで、裁判の舞台裏や捜査に関わった刑事や検事補たちの心情まで臨場感たっぷりと描かれとても読みごたえがあった。
作者の『心神喪失』も、やはり実際の裁判に臨んだものでなければうかがい知れない独特な法廷の雰囲気、心神喪失を理由に無罪に持ち込もうとする被告側の作戦など、似たような題材を扱った他作品が多い中でも、ダントツのリアリティが感じられ、さらに言えばこれらの裁判が当初の目的から大きく外れ、関係者の思惑に振り回されてしまうという一面もしっかり描いていることに改めて目を開かされた思いがする。
刑事裁判といっても、しょせん生身の人間が動かすシステムである限り、様々な思惑が絡まりあってあさっての方向へいってしまうのは、ある程度仕方のないことかもしれないが、それにしても今作のはひど過ぎる感じだ。
被害者でも、被告でもない傍観者がたまたま悪い状況で事件の一端を目撃してしまったばかりに、本当に嵐に巻き込まれ、たたきつけられ、粉々のかけらに砕かれてしまうのだから。そして世間やマスコミ、被告側弁護士はその第二の被害者といってもいい女性に襲いかかり、相手の人生を食い尽くしてしまうまで攻撃を止めない。
本当に嫌な展開だが、作者は実際の裁判でこれと似たような人々を多数見てきたにちがいない。
物語の序盤と終盤で、象徴的な嵐が吹き荒れるが、目撃者と加害者のその後はすべてを失い、不思議なほど似通った精神状態にあるというのがなんともいえない読後感だった。

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2016/11/28 16:53

投稿元:ブクログ

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