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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的には、身近な街である久里浜が舞台となっているのが、なんとなく嬉しかった。久里浜が出てくる小説って少ないような?冬乃と川崎という、最初は関係も希薄で、性格も全然違う二人が視点人物になっていて、でもその関係性がだんだん濃厚になっていくとともに、実は二人とも同じような苦しみを抱えているいわば同志なのではないだろうか、と思わせるような展開になっていて、そこがうまく描かれていると感じた。
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夫婦がそれぞれに悩みを抱えているのに、
それが夫婦なのにある一定の隙間で保ち生活を送ってしまう。
そしてそれがとうとう心身共にギリギリになったところで
お互いの悩んでいた所にやっと踏み込むでいくという
よくある夫婦のタイプでもありますが、
これがお互いに信頼していたから言い出せないのか、
それとも信頼できないから言い出せないのか。
これは実際の夫婦でもギリギリのせめぎ合いがあるのでよく分かります。
これが夫婦ではなかったらどんな風な展開になっていたのだろうかと
思ってしまいました。
その一方で芸人に挫折し会社員となった夫の後輩が
程良い距離感で上手く付き合いながらも、
一人しきれず夫婦とは違った青年らしい悩みを抱えて
生き方を出していく姿が泥臭いですが
自分に正直に生きている感じが好感を持てました。
姉妹で良い仲だと思ったらまたここにも少しの隙間があったり。
その原因にもなっているのがこの家族の秘密があり
これが夫婦の悩みに少し加担したところもあり
前半よりも後半はかなり状況が蜜になってきた場面が
多くて思わずページを捲る手が止まりませんでした。
妻が誰にも悩みを言うことが出来ず、
自分の膝を抱えて泣き過ごしていくという気持ちが
とてもいたたたまれなかったです。
側に誰かいるのに誰も打ち明けることができなくなってしまうと、
自分で自分を慰めるしかないかと
大人になればなるほど孤独な世界があるかとこの本でも痛感します。
けれど妻に仕事をはじめてから徐々に本来の自分を
取り戻していく場面は、とても生き生きとしている環状が伝わり
思わずそのまま頑張れと励ましたくなりました。
夫婦とのあり方も大事だと思わせる作品でもありましたが、
家族とは別に側にいて誰かいて励ましてくれている人の姿や言葉が
とても心を動かされました。
中でも
「力まなくていいよ。
生きていくということは、やり過ごすということだよ。
自分の意思で決めて動いているようでも、
ただ大きな流れに動かされているだけだ。
成り行きに逆らわずに身を任すのがいいよ。
できることはちょっと舵を取るくらいのことだ。」
この言葉に私も背中を押された気持ちなので、
辛く悲しくなった時には思い返したいと思っています。
久しぶりに山本さんの作品を読みましたがとても心が温まり、
夫婦、家族をはじめとして全てを取り巻く状況の中で
それぞれに目を向けることに大切さ、
そしてまた前向きになっていこうと思える作品でした。
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まあ淡々とおもしろく読めた。舞台が久里浜。こういう具体的な地名が出てきてイメージできる小説、ちょっと旅した気分になり好きです。
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冬乃と、その夫の部下川崎の2人の視点で語られる。冬乃は夫とうまくいってないし、川崎は芸人をやめて就職した先がブラック企業。冬乃の妹、菫が姉を頼って久里浜へとやって来ることで生活が変わっていく。冬乃は重い荷物を背負っていて、川崎は完全に行き詰っている。それでも、ベースに爽やかさを感じるのは自分を変えたいという想いが伝わるからかな。冬乃を何かと助けてくれる所ジョージ似のオジサンが素敵で、彼の言葉は私の胸にもじんわりと沁みました。一区切りついたところで話は終わっているけど、もう少し先が読んでみたかったなあ。
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冬乃の本質的な強さを徐々に引き出して行くストーリー展開が、面白く感じた。
妻として、姉として、カフェを営むものとして、そして、娘として対峙する冬乃の成長が、どこか励みになる。
もう一人の語り手、川崎君なりの決意もあと味は良かった。
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本の雑誌ベストから。山本文緒作品は初だったけど、面白かった。ざっくり言うと、主人公たちの自分探しってことになるんだろうけど、それをしているのが、学生とか若者ではないところが良い。社会に出て、仕事も経験して、恋愛や結婚も経て、みたいな人たちが、ふと立ち止まって自分を顧みたとき、”あれ?”みたいな感じで生き方に疑問を抱く。どこまでを人に相談して、どこまでなら自分で解決して、みたいな線引きまで丁寧に描かれていて、身につまされる思いでした。素敵作品。
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幼い頃から縁のあった久里浜が舞台なので読んでみた。久里浜感がちゃんと出てる。たまに横浜も登場する。あー、あそこの事だな。なんてそれぞれの場所が浮かんできて入り込みやすかったし、久しぶりに久里浜に行きたくなったな。
3分の2くらいまでは色々ありつつもふんわりと話が進む。飽きることはないが、終盤一気に展開しあれもこれもどうなるの⁉︎ってまま終わってしまった…
続きが読みたい。この人の文章は好きだ。
所ジョージ似の韮崎さん、素敵すぎる。私もそんな人に巡り逢いたいもんだ。
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久々の長編。
故郷を離れて夫と暮らす冬乃のもとに、妹の菫が現れ、静かで平凡な生活に変化が生まれる‥。
複雑な事情が見え隠れする冬乃の実家。一方で本心をなかなか見せない夫の佐々井。不思議な均衡を保つ彼らを、絶妙な視点で描写する佐々井の部下川崎。
ああ、そうだった。この描き方が作者だった。と思う反面、こんなに分かりやすく希望を残したラストを描くのだったか、と意外な感じがした。
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色んな視点で語られる様は、とても面白い。ただ誰が主人公なの?と感情移入し難い面もある。
あらすじ(背表紙より)
故郷を出て佐々井と二人、久里浜で暮らす冬乃のもとに、連絡を絶っていた妹・菫が転がり込んできた。一方、芸人に挫折し会社員となった川崎は、勤め先がブラック企業だと気付いていた。だが上司の佐々井はどこ吹く風で釣り三昧。妹の誘いでカフェを始めることになった冬乃だが、夫に言い出せずにおり―。小さな秘密が家族と暮らしに変化をもたらしてゆく。生き惑いもがきながらも、人生を変えてゆく大人たち。傑作長篇!
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山本文緒さん(1962年神奈川県横浜市生まれ)の作品を読むのは、初めて。
今回は、『なぎさ』を手にしたが、山本文緒さんという人物に興味があったため。
それは何かというと、山本文緒さんは、2003年(40歳の時)にうつ病を発症しており、治療のため執筆活動を中断し、約6年の闘病後に復帰されたとのこと。
作品にはあまり興味がなかったので、81ページまで読んで、終了。
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久々に読んだ山本文緒氏の作品。最近見かけないなとは思ってたけど、休筆してたとは知らなかった。それも鬱で。図書館で見つけて手に取る。
最近夫となんだか上手くいっていない主婦の冬乃と、冬乃の夫の部下である川崎。どちらも生きにくい日々の生活の中でもがきながら人生を変えていく物語。
うーん、読後感としてはさっぱりとして何も残らないというか、良くも悪くも休筆前の作品のような毒々しさはないというか。
鬱を患っていたという先入観があるからか、登場人物たちの病的な危うさは伝わってきた。
でも決してマイナスなイメージで終わるわけではなく、力強く一歩を前に踏み出すパワーを感じた。
舞台である久里浜の海岸や、おしゃれカフェなど、その雰囲気を何となく味わっているだけでも楽しめた。
2017/11
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不器用な人がたくさん出てきて愛おしくなる物語。
久しぶりの山本文緒さん。
何故かしばらくして悲しくなった。
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妹に憧れる姉。
姉と 一見温厚そうな夫。
夫と 何事も続かない部下。
疎遠になった両親。
絡み合った人間関係が
それぞれの視点で語られているので
非常に立体的というか。
さっきまで
心の中を覗き込んでいた
登場人物も
他人の目を通すと
こう見えているのだーという驚き。
夫婦の静かな生活に
妻の妹が、妹の不穏な友人が、
夫の部下が、次々と闖入し、
かき乱していく。
日常の小さな躓きや逡巡を
繰り返しながらも
少しずつ逞しくなっていく
女性の姿に共感できます。
山本文緒作品には
非常に人当たりが良く
チャーミングなのだけど
恐ろしいくらい
無責任で身勝手な人間が
度々 登場するのですが
妙にリアリティーが
あるんですよね。
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感想がまとまらない。
わたしの母親は、いつも誰かの愚痴を言っていて、お酒しか飲まなくて、いつも私の事を下げて言う。
お母さんに言っても嫌な事言われるだけだから何も話さなくなった。わたしは、自己肯定感が低い。
楽しいことも確かにたくさんあったのだ。