紙の本
蘇芳屋萩太郎の苦悩と喜び
2017/04/26 17:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BHUTAN - この投稿者のレビュー一覧を見る
歌舞伎界のいわばミステリー。
蘇芳屋萩太郎の苦悩と喜び。一気に読んだ。
伝統芸能の世界を題材とした近藤史恵の小説はいつもおもしろい。
歌舞伎界でけでなく、文楽・能・狂言の世界でのこのような小説を読んでみたい。
電子書籍
歌舞伎の世界のお話
2017/02/08 00:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プロビデンス - この投稿者のレビュー一覧を見る
今度歌舞伎もみてみたいなーと思わせる作品です。世襲でなければあれもこれも小さい時から習わすことができない、というのが面白かった。
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誰が悪いわけでもないけど、秋司の身に起こったことは辛すぎた。
萩太郎の苦悩もわかるし、読みながら自分ならどうするかと思った。
ラストはとても良かった。
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市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司のおたふく風邪が発覚。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が……。
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大好きな近藤史恵さんの歌舞伎物。伝統芸能を受け継ぐ家に生まれるということは、我々には計り知れないいろいろな葛藤があるのだと思う。
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歌舞伎役者・市川萩太郎は、急逝した先輩役者の息子、7才の少年の後見人を任される。
後見人と言っても世間一般のそれとは違い、名ばかりではなく、実際に歌舞伎役者として育て上げることも意味する。
萩太郎には、少年と同じ学年の息子がいた。
梨園という特殊な世界では、伝統芸能を後世に伝えていくために、男子は生まれた時から、役者として生きることを運命づけられ、幼児の頃から、必要な稽古をみっちり仕込まれる。
学校よりも家業が優先されるという、これも今時特殊である。
そこに生まれた男子に、芸能の才が無かったら?
向いていなかったら?
実の息子と、託された「義理の息子」を抱え、萩太郎はさまざまに悩むこととなる。
子育てが父親の視点で描かれるのは、現代物では珍しいだろう。
一般的な父親は、子育ては妻に任せきりだから。
義理の息子には、天才的な踊りの才と共に、子供を守りたい一心の病的なまでに神経質でヒステリックな母親という疫病神が付いて来る。
彼女の浅はかな行動が問題を起こす。
萩太郎の誠実な性格、少年たちに注ぐ真摯な視線が、ドロドロになりそうなストーリーを浄化している気がする。
やはり、近藤さんの伝統芸能物は好きだ。
少年たちの今後も見たい。
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歌舞伎役者の父が急逝し、残された7歳の少年・秋司の後見人になったのは中堅役者の萩太郎。
萩太郎にも同学年の息子・俊介がいたが、全く歌舞伎に興味が無い様子。
秋司の踊りを見てその才能に驚いた萩太郎は、俊介と秋司の初共演に秋司に難しい役をやらせることにする。
しかし、秋司の急病のため、彼の役を俊介に変更したことにより、秋司とその母親との関係がこじれていく…。
歌舞伎の子役に焦点を当てて描かれた長編物語。
梨園の特殊で独特な世界の仕組みがわかりやすく描かれているので、すんなりと作品世界に入っていけました。
歌舞伎を全く観たことのない方も興味のない方も問題なく読めると思います。
役者たちの日常や等身大の悩みも垣間見られるし、世襲制が基本の梨園で後見人の父を失うことがどれほどのことなのか、すべて読んでいるうちに理解できました。
役者同士の仲が良くても基本的にはライバルだし、中でも御曹司はスタートから異なり、配役にも差があるらしい。
人に見られる華やかな業界だけど、内実は一般社会とそんなに変わらないんですね。
同様に、親が子を、子が親を思いやる気持ちは誰でも一緒なんだと、読んでいてつくづく思います。
また、才能や運命とは何なのか、考えさせられました。
生まれつきの天才だけではなく、努力を重ねて芸を磨き続けることができるという才能もある。
才能が人を不幸にすることだってあるし、才能の有無が人の幸不幸を左右するわけではないのです。
秋司の運命は一見悲劇のようにも見えるが、歌舞伎から離れた十数年は彼にとって運命を甘受し、耐え忍ぶ雌伏の時だったかもしれない。
この離別は母を守るため、そして人生をより良く生きるための力を涵養していた、子どもなりの生存戦略だったのかも。
配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、そのカードをうまく使って運命を乗り越えようとする意志の強さ。
案外、人間って強いものだし、前を向いていかざるを得ない本能を持った生き物なのかな、と思います。
これを悲劇とか運命とか、どう呼ぶかは他人が決めることじゃないよね。
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近藤さんが書く歌舞伎の物語が好きだ。
ともすると閉鎖的な社会のように感じてしまう歌舞伎の世界が、近藤さんの物語を通して少しだけ身近なものに感じられる。
歌舞伎の世界に生きている人たちの、外からはうかがい知ることが出来ない厳しいしきたりや稽古に励む日々。
ミステリー感もサスペンス感もほとんど感じられないが、読んでいて引き込まれるものがあった。
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面白くて ぐいぐい引き込まれた。
繰り返し何度も読んだ。
読むたびに面白さが増す。涙が出た。
近藤史恵は好きな作家だし この人の描く歌舞伎ものも好きで読んできたけど その中でも1番面白かった。
それぞれのキャラクターが秀逸。
途中読むのが切なくなるほど 秋司は運命に翻弄されるが
話はハッピーエンドで終わり ホッとする。
この先 秋司の歌舞伎役者としての人生はまだまだ苦難が続くだろうが 長くそしてハッピーエンドで終わることを祈る。
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剣呑そうなタイトルとは違って、歌舞伎役者である父を亡くした子役の後見となる別の歌舞伎役者の人生が静かに進行していく内容であった。毒親は毒親だけど同情も無くはないな。
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図書館で。ミステリーというよりは小説かなぁ。
自分もこの数年、歌舞伎を観るようになり俄ではありますが多少は演者の名前や演目も覚えるようになりました。というわけで大分楽しく読みました。まだまだ見たことない作品が多いなぁ。
それにしても梨園の世界は入り組んでいる。特に親戚・姻戚関係がむっずかしい。襲名すると父の名を継ぐから何代目かってのが又難しい。でもそうやって受け継がれてきた世界なんだよなぁというのはなんとなくしみじみ思うわけです。
若いころに後ろ盾を失くした御曹司…今も昔もよくある話なんだろうなぁ… そして上手い人よりはそれなりに名のある人や縁の人がお役を勤める事が多いから…大変だろうな。個人的には歌舞伎座こけら落としの時のような、劇団や部屋を越えて共演してくれたらいいのになぁなんて素人は思ったりもします。ただそうすると一座の人の出番が無くなっちゃうからそれはそれで難しいのかなぁ~
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梨園の物語。知らない世界を探検するような気持ちで読んでみた。ひきつけられる内容ではあるけど、サスペンスというのは、ちょっと違うかも。
語り手は、パパと呼ばれるのが似合うような歌舞伎役者さん。自分の息子と同じ年頃の先輩の忘れ形見の後見人となるところから、物語が始まる。
特別な世界で、幼い二人に才能の(種類)の違い、性格の違い、立場の違いがあるとなると、どろどろの展開を予想してしまうけど、語り手の口調は、芸の道を探求する男性というよりも、善良で穏やかな父親という感じ。
この年頃の男の子二人が、そんな大人びた考え方するんかいなと思うけど、この世界なら、そういうこともあるのかも。二人とも、優等生だぁ。
私はど素人だけど、最後の舞台は、どんなに美しいか、ちょっと見てみたい。
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主人公は女型の歌舞伎役者。親交の深かったとある歌舞伎役者が急逝したことにより彼の息子、秋司の後見人となり預かることになる。秋司の踊りを見た主人公は彼の才能に驚き、同い年の息子の初舞台もあることから一緒に稽古をさせる。そのことで今まで歌舞伎に向いていないと思っていた息子の意外な才能を発見したり、秋司の才能に改めて感心させられる。
しかし初日直前にトラブルが起き秋司が舞台に上がれなくなったため、秋司がやる予定だった役を息子が演じることに。これをきっかけに息子は歌舞伎の面白さに目覚め歌舞伎役者として精進していく一方、秋司は辞めてしまう。
時は流れ息子は大学生になり、期待の若手役者として注目を集めていたが、あるきっかけで秋司が踊りを続けていることを知る。居場所を探し出し主人公も一緒に秋司と会い、今までのことを聞き出すのだが、それは幼くして一世一代の役を演じる決意をせざるを得なかった事情があったのだった。
紹介文にサスペンスだとかミステリーだとか書いてあるが、個人的にはそんな感じはしなかった。テーマは親子の心の葛藤かな、と。そこまで深く書いているわけではないが、さわやかに読める。
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帯には「梨園を背負うふたりと親同士の、白熱心理サスペンス」。
裏表紙のあらすじにも「幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、子役と親の心の内を描く白熱心理サスペンス!」
「解説」でもこの作品がいかに「ミステリー」であるかが述べられている。
なんとゾクゾクすることか!
そのゾクゾクを感じながら、タイトル『胡蝶殺し』に思いを馳せれば、一体そこにどれほどのドロドロが待っているのか、楽しみで仕方がない。
思うに、ミステリーやサスペンスは、現実ではなかなかお目にかかれない(あるいは、目を背けている)ドロドロを味わうためにあるのではないか。
読み終わってみて、しかし、と思う。
本書は果たしてサスペンスなのだろうか。ミステリーなのだろうか。
たしかに、ドロドロはあった。ミステリーやサスペンスの文法に則った作品だという評価も嘘ではない。
しかし。
読後のこの爽やかな気持ちは何であろうか。
違う。求めていたのはこれではない。
しかし。今はこの心地よさにしばらく浸っていたい。
ジャンルというものの大切さを思い知った一冊。本書はサスペンスでもミステリーでもない。ドロドロを求めるのではなく、人間賛歌を求めて本書を手に取ってほしい。それでこそ、本書は真価を発揮する。
【目次】
胡蝶殺し
第一幕
第二幕
エピローグ
文庫版あとがき
解説 佐久間文子
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近藤史恵さんは、小説を通して、この世にある様々な未知の世界を教えてくれる存在。本当に幅広い。
私は歌舞伎のことは全く分からないけれど、それでも、知らない世界のほんの一部を垣間見るように、楽しく読ませてもらった。
梨園のことや、歌舞伎の演目や舞台に詳しい人だったら、きっと馴染みがあって、更に楽しめたのかもしれない。
題名から、歌舞伎を舞台にした殺人事件ミステリーかと思ったら、全然そういうのではなく、ヒューマンストーリー。
子供が大人になる時っていうのは、大人にならざるを得ないから。