投稿元:
レビューを見る
【先のない男女ふたりが辿りついたのは日本海だった】漁師・長尾と「愛人」の紗江の二人がたどりついたのは日本海。「ずるい男」と知りながらも、彼と離れられない――色彩豊かな短篇集。
投稿元:
レビューを見る
「少年とプリン」「老人とアイロン」「あの日以降」「ア・ラ・モード」「漁師の愛人」
このうち「少年とプリン」「老人とアイロン」「ア・ラ・モード」はプリンに対する男たちの偏愛が主要な題材になって居て何とも可笑しい。
「あの日以降」は大震災後にルームシェアするアラフォー女性を描いた佳作。
そして表題作「漁師の愛人」。実はこのタイトルから、あまり興味のないドロドロした恋愛ものがイメージされて購入をためらったのです。でも違いました。
会社に首を切られ漁師に転職した男と離婚しない妻、そして漁師町で同棲する愛人。でもドロドロじゃなくて何やら乾いた感じの三者の関係と、閉鎖的な漁師町の女性陣との戦いがなかなか見事です。
投稿元:
レビューを見る
震災をもっとクリティカルに書いた作品に出会いたい。
でも、この作品は確実に震災以降に書かれた、震災を経験した「いま」を描いてはいる。
投稿元:
レビューを見る
なんとなくすっきりしない読了感でした。
とはいえ、確かに3.11のあとと前では何気ないところに変化がうまれ、それで人生が大きく変わった人がいるのも事実だんだろうなってしみじみ思ったりもしました。
投稿元:
レビューを見る
ありふれているわけではない、それでも腹の底がじくじくするようなリアルさ。概ね読後感は悪くないけど、疲れてるときは読みたくない。
投稿元:
レビューを見る
プリンス好きの切れやすい少年を描いた掌編3作は面白かった。周囲からは意味不明に思われる薄っぺらいこだわりは自分にもあった記憶あり。
投稿元:
レビューを見る
森絵都の作品って、青少年向けの作品が多いけど、まぁこれはタイトルからしてそうではないとは思っていた。タイトルは収録されている短編のうちの1つ。短編集だったのね。生活の変化に悩む女性たちの話と、やはり青少年向けの、ローティーンの少年が主人公になっている作品が2つ。たわいもないお話が1つ。少年の大人に対する醒めた目、「自分のことなんかわかってないくせに」という思いが伝わってきた。わかってもらえないことにいら立ちながら、自分の中はさらけ出したくないんだよね。
変化に悩む女性たちについては、実は震災以降ということが関係している。さてどうしていこうか。でもその彼女たちは震災の被害を受けたわけではない。少しだけ自分と人との人間関係に影響しているだけ。それは震災のせいにしているだけであって、本当はそれに自分がどう対峙するか、次第ということを気づかされる。
投稿元:
レビューを見る
漁師になるため故郷に戻った男に伴われた女性の疎外感と不思議な交流を描く表題作と、プリンを巡る男たちの思いが熱い短篇三作、そして大震災以降を生きる女性たちを描く「あの日以降」を収録した作品集。
断然、「あの日以降」が良い。実害はなくても、あの日以降私たちの意識に変化は生じた。生きていること、生きていくことを再確認した。登場人物たちに共感を覚えるとともに、『生』への感謝をする。
投稿元:
レビューを見る
60ページほどの短編2作とショート・ショート+αくらいの長さの3編からなる作品集です。短編のほうは震災後を舞台としたもので、こちらは文句なし。特にアラフォー女性3人が震災をきっかけに夫や恋人との距離を見つめ直していく姿を描いた「あの日以降」はなかなかの佳品だと思いました。表題作「漁師の愛人」も地方のある意味閉鎖的なコミュニティに正妻ではなく愛人という立場で関わらざるを得なくなった女性の心境がうまく描かれていると思います。
ショート・ショートの3編はいずれも少年が主人公のプリンをめぐるコミカルな話です。それなりに面白いのですが若干空回りしているような気も。
文庫版では解説を含めても200ページに届かない分量で、あっという間に読み終わり、正直もっと楽しみたかったというか、物足りない気持ちが残りました。確か次回作は長編のはずなので、そちらを待ちます。
投稿元:
レビューを見る
短編が3本と中編が2本の物語集。
3つの短編に共通しているのが、主人公を誰かが「君は」と呼ぶかたちで進んでいく小説で、その語り部の視点が誰なのか(あるいは誰でもないのか)分からないままであるところが、不思議さを醸し出していて面白い。
2本の中編の間に箸休めみたいな感覚で読めるところも良かった。
表題作は、タイトルそのままの物語。
東京で音楽プロデューサーをしていた長尾が、仕事を辞め郷里で漁師を始めた。長尾について行きそこで生活を始めた愛人の紗江だったが、その立場から田舎の狭いコミュニティからは明らかに拒絶されてしまう。
そんな中、長尾の妻である円香から定期的に電話が掛かってくるようになり、妻である円香と愛人である紗江が電話で普通に会話をするという、奇妙な関係が出来上がっていく。
愛人の立場の紗江は、不安はあるけれど全く未来が見えないわけではない、という状況。だけど地域で省かれて居心地は悪く、どこか呑気な長尾に苛立ちを覚えたりもする。
紗江を気にかけてくれる人も僅かながらいるけれど、何よりも彼女の支えになったのは、長尾の妻の円香との他愛のない会話だったのかもしれない。とても奇妙な現実だけど、常識を取っ払った時に見える関係はけっこう温かかったりもする。
真っ当とは言えないけれど、紗江のことも円香のことも憎めない感じがある。
もうひとつの中編「あの日以降」は、東日本大震災が軸になった物語。
はっきりと被災地とは言えない東京で同居する女3人が、震災によって考えを変えたり人生自体を変える決断をする。その途中の心の揺れがリアルに描かれている。
震災という大きすぎる出来事に心を揺さぶられた人が数多いたというのは恐らく事実で、この本が出版された頃はとくに、震災に何らかの意味付けをすることに意義を感じていた人が多かった時期なのかもしれない。
それはもしかしたら、被災して本当に辛い思いをした人たちではなくて、それを少しの距離感を持って見ることが出来ていた、ある意味幸福な人たちだったのかも。
ひとつの出来事が色んなかたちで色んな人に影響を与えるということ。後から考えてみれば自分の行動に理由を付けたかっただけなのかもしれないけれど、きっかけとしてはあまりにも大きい。
薄めの本ながらも、とても充実した内容だった。
投稿元:
レビューを見る
森絵都の漁師の愛人を読みました。
5つの短編が収録された短編集でした。
既婚者の長尾とつきあっていた紗江は、長尾が勤めていた音楽事務所の倒産を機に漁師に転職してしまったため、長尾について海辺の街に引っ越しました。
長尾の妻から時々なぜかかかってくるとりとめのない電話や、豊漁の時はうれしそうな長尾の様子を見ながら暮らしている紗江ですが、長尾の同僚の妻たちからの悪意のある視線に辟易しています。
長尾が実は妻と連絡を取っていたということを長尾の口から聞いて、紗江は...
震災後をテーマにした物語2つは面白く読みましたが、プリンを題材にした3編は全然面白いと感じませんでした。
投稿元:
レビューを見る
短編集が得意な森絵都の短編集
だけどいつもと違う感じの内容
スモーキーな感じ
大人向け?かもだけど
疲れているときは読まないほうがいいかも
だけど子供にはつまらないかも
投稿元:
レビューを見る
なかなか読書の時間が取れず、読み終わるまで何ヶ月かかかった。表題作では漁師町の閉塞的な人間関係が地元のそれを思い出させて苦笑いするほかなかった。東日本大震災は仙台で被災したから、「あの日以降」に共感するところも多かった。
投稿元:
レビューを見る
森絵都さんの短編ってセンスがあるなあ、といつも思います。普通の人なら見逃しそうな日常の中のさりげないシーンや、そんなことを思っていたことを忘れてしまうような感情も、切り取り方一つで小説のシーンにしてしまい、一つの短編に仕上げてしまう。そんな印象を抱くのです。
この短編集で取り上げられるプリンをめぐる三つの短編。それは担任の先生との言い争いであったり、親子ゲンカであったり、喫茶店で売り切れていたりと、いずれも一見したところでは、特に小説になるような話ではなさそう。
でも森絵都さんの手にかかれば、それは短いながらも一つの物語に変身します。やっぱり森絵都さんの視点はすごい……。
いずれも心理描写が巧みで、まるでエッセイを読んでいるかのように、それぞれの言葉がスッと入ってきます。また当人はいたって真剣にやっているのに、第三者から見ると可笑しい、ということは日常生活でもあると思うのですが、その雰囲気がこの三編それぞれに出ています。
いずれの短編も真剣さに共感できるところと、可笑しいところがあってクスリとしてしまう箇所があるのです。身振りや表情も使えず、文字だけで人を笑わせるって難しいと思うのですが、森絵都さんの短編には、時々そうした笑いの要素が入ってくるのも、スゴいと思います。
特に給食のプリンが一つ足りない件で、先生と生徒が言い争う「少年とプリン」が良かった!
子どもなので上手く言葉が出てこない、であるとか、声変わりを気にしながら先生とケンカ腰に話すところとか、本当によく気を回して書けるなあ、と感心しきり。
それでいて大人の身勝手さやズルさをこのケンカから描き、痛快な結末まで用意されています。
給食でデザートが一個足りない、というのはあるあるネタだと思うのですが、そんなワンシーンをこんな短編に仕上げるのは、やっぱり森絵都さんの視点の細やかさとセンスがあると思うのです。
他に収録されているのは、3.11直後の女性たちのシェアハウスの生活を描いた「あの日以降」と、正式に離婚が成立していない恋人の漁師の地元に移り住んだ女性を描く表題作の「漁師の愛人」
「あの日以降」で妙にリアルさを感じたのは、震災後不倫相手への感情が冷めたという、主人公と同居する女性のエピソード。
なんでも余震のせいで「電車が止まるかもしれない」という理由で、会う回数が減ったそうなのですが……。いや、絶対これ実話だろ、と心中で思わずツッコみいれました(苦笑)
こうしたことをはじめとした、短編のなかの物事のリアルさはもちろんなのですが、心理描写もやはりリアル。
3.11直後、日本中が覆われた暗い雰囲気と自粛ムード。東北の方が大変なのだから、自分たちは弱音を吐いてはいけない。そんな鬱々とした雰囲気を大げさにならず、あくまで東京に住む女性たちの等身大の姿としてリアルに描き、
中年ならではの思い切りの悪さというか、スパッと格好よく物事が決まらない、進まない、そんなカッコ悪さを描き、
それでも、カッコ悪さの中にも、きっとあるであろう人生の明るい転機や希望が描かれるのです。
等身大��震災文学と言えるような、味わい深い作品だと思います。
そして表題作「漁師の愛人」も味わい深いです。
正式な妻がいるのにも関わらず、相手の男の故郷に移り彼と一緒に住む女性。しかし故郷のコミュニティは、彼女に冷たい視線を向け……
一歩間違えば、ものすごくドロドロしていて読んでいて疲れそうな話なのに、女性の追い込まれていく気持ちを描きつつも、彼女の回りの人間の不思議な魅力もあって、重くなりすぎずに読ませるのは、流石だと思います。
そして、この話も結末が鮮やか! ラスト一文を読んだときの爽快感は、なかなか言葉では言い表しがたい……。
何気ない関係性が誰かを救っていたり、一種の決意や覚悟、開き直りであったり、鬱々とした感情がそうしたものでスパッと断ち切れるような、そんな感じでしょうか。とにかく最後の一文が力強く、気分がスッとなりました。
森絵都さんの作品読んだのは久しぶりですが、改めて森絵都さんの視点や、シーンの切り取り方、そしてどこか暖かさを感じる雰囲気を堪能し尽くしました。森絵都さんのこういう短編は、毎日でも読めそうな気がするなあ。
投稿元:
レビューを見る
読んだあと、無性にプリンが食べたくなる一冊。
久々にプリンアラモードを食べに喫茶店へ行きました。