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「オープンダイアローグ」をキーワードに、蘇生の現場を踏んできた筆者が、ひととひとの結びあう力、レジリエンスを問う1冊。
2022/03/03 11:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
精神科医の著者が日本の「自殺希少地域」(自殺で亡くなるひとが少ない地域)に行って、それぞれ1週間前後宿泊した記録。
どの地域も垣根がない。悪くいえば、個人情報など存在しない。困ったら、有無を言わさず助ける。助けっぱなしで、助けられっぱなし。
精神科の治療の多くは、病院の診察室で、形だけ話を聞いて、経験則で薬を出して、診察終了。これでは治るものも治らない。
(1)困っているひとがいたら、今、即、助けなさい(即時に助ける)
(2)ひととひとの関係は疎で多(ソーシャルネットワークの見方)
(3)意思決定は現場で行う(柔軟かつ機動的に)
(4)「この地域のひとたちは、見て見ぬふりができないひとたちなんですよ」(責任の所在の明確化)
(5)解決するまでかかわり続ける(心理的なつながりの連続性)
(6)なるようになる。なるようにしかならない(不確かさに耐える/寛容)
(7)相手は変えられない。変えられるのは自分(対話主義)
「オープンダイアローグ」をキーワードに、蘇生の現場を踏んできた筆者が、ひととひとの結びあう力、レジリエンスを問う1冊。
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生きる勇気が湧くとか、癒されるとか、そういう本じゃない。直面した現実の、多様で複雑な生きづらさを見つめて、どうしたらより生きやすくなるのかを淡々と、一緒に考えさせてくれる本だ。
読むと自分を振り返ってつらくなる。けど、つらさがあることに素直になれる。
共感できなくてもいいから、多くの人に共有してほしいことがたくさん書いてある。押し付けがましい善意の本ではない。
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20160712リクエスト
生きやすい地域での人間関係は、緊密ではない。
全く反対のことを考えていたので、驚いた。
みんなが知り合いだから、陰口は力加減がある。
著者はこう考える、というところに、緩やかな感じを受ける。こうすべき!ではなく。
理想論ではあるけれど、こんなのもいいな。薬づけの自分が住めるとは、思えない。でも、こういうところに身を置けば、薬が必要なくなるのかな?
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自殺希少地域、つまり生きやすい地域とはどんなところなのか、を考える本だが、著者も述べているように、そのためにドラッカーのマネジメントの考え方を援用しているため、いい組織づくりとは、とも読み替えられる。
NPOってよく分からないでいたが、いわゆる「市民の多様化するニーズ」ってヤツに行政の代わりにうまく応じることのできる仕組みなのか…。うまい役割分担が肝腎なのだな、とも。
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池袋の路上生活者支援を始めとした活動で知られている著者の最新作である。
著者が岡壇氏の自殺希少地域の研究に触発されて全国の自殺希少地域を旅して回り、その地域の人達と対話をして感じたことをまとめたルポであるが、文体はエッセイ様で読みやすい。
いろいろな地域を回った後で出会った「オープンダイアローグ(OD)」で、どの地域もODの7原則で説明できるとまとめられている。
著者の人に対する優しさが溢れた本である。対人援助職に関わる人には一読をお薦めする。
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舌足らずな雰囲気の文体は余り好みではありませんでしたが、自殺希少地域に赴いてのフィールドワークという、取り上げた題材のユニークさで読み進める事が出来た感じでした。
自殺希少地域とは、決して人と人との距離が親密であるということではなく、
他人との距離が近すぎても遠すぎてもいけない。挨拶する程度にそことなく存在を意識するぐらいの距離感が良いのだそうです。
放って置かない。面倒は最後までみるという共通点もあるとのことです。
また、名前を知らない知り合いが沢山いる状態で、しかも距離感が遠からず近からずなので、派閥が出来ない。という事も要因だということです。
日本にとって全く足りていない点である「男女平等」であると幸福度も高いそうでこれは、言い換えると機会が平等で、北欧諸国は機会を平等にするために多額の税金が投入されているということでした。
自殺希少地域は、男女の役割の違いを分かった上で、仕事の種類が違ったとしても、平等だと思っているという事などが述べられていました。
個人的に印象に残った箇所は下記の2点でした。
「ひとが多様であると知っていることは、生きやすさと関係する」
「多様性に慣れている地域は、ひとはそれぞれだと思うことに慣れている」というくだりにインパクトが有りました。
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201610/
人間関係は、緊密ではありません。
人間関係は、疎で多。緊密だと人間関係は少なくなる。
人間関係は、ゆるやかな紐帯。/
困っている人がいたら、今、即、助けなさい/
意思決定は現場で行う(柔軟かつ機動的に)/
この地域のひとたちは、見て見ぬふりができないひとたちなんですよ
できることは助ける、できないことは相談する/
解決するまでかかわり続ける(心理的つながりの連続性)/
なるようになる。なるようにしかならない(不確かさに耐える・寛容)/
相手は変えられない。変えられるのは自分(対話主義)/
「人生は何かあるもんだ」で生まれた組織=朋輩組
組織の発祥は約400年前だとういう。もともと次男三男たちが働く場所や生きる場所を探して集まって生まれた地であり、みな基盤がないゆえにお互い助け合わなければならなかった。
「問題が起こらないように監視するのではなく、問題が起こるもんだと思って起こった問題をいっしょに考えて解決するために組織がある」
組織の構成人数は8人から18人とさまざま。同世代で構成される。町内会ごとではない形。
主に冠婚葬祭のときにその力は発揮されてきた。誰かの親がなくなるとする。朋輩組の仲間が集まる。仕事を休んで集まる。もちろんそれぞれ事情があるから、どうしても来られないときは来られないと言うだけでいい。
「家族や親戚、あとは、町内のひとには言えないこともある。そういうのを相談するときに集まることもある」
人生は何かあるもんだ。何かあるもんだから、集まって、そして知識を共有して、それを蓄積していく。何かあるから助けるために存在する組織。知識は伝承され続ける。そのうえ強制力がない。なんという見事な組織だろうと思う。
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自殺者が少ない地域、徳島海部町、青森風間浦村、青森平舘村、広島下蒲刈島、伊豆神津島を旅し、人びとの特徴を記述されてます。どういう状態が生きやすいのか。なかなか説得力があります。
たくさんの人とのコミュニケーションに慣れていて、深いつながりは多くない。困った人がいると即助け、問題が解決するよう工夫する。
ベンチがいたる所にあるというのは、良い雰囲気だなぁと思いました。
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精神科医の著者が「自殺希少地域」(自殺で亡くなるひとが少ない地域)に行ってそこで気づいたことを書いている図書。
「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」というのは相手の話を聞いて深く同情したり、相手に合わすというのではなく、自分がどうしたいのかというのを自分で把握して発言・行動することが大事ということらしい。こんな解釈でいいのだろうか…
ひとはわかりあえない、という考えで対話していくことって案外重要かもしれない。
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【179冊目】自殺希少地域と呼ばれる自殺で亡くなる人が少ない地域数カ所を精神科医である著者がめぐった際に感じたことを記録にしたもの。そのエッセンスは、本書の最後の章に記載されているから、ここには何度も出てきて印象に残った言葉を記載したい。
・今、即、助ける
・できることは助ける。できないことは相談する
・コミュニケーションに慣れる、上手下手ではない
・助かるまで助ける
・なるようになる、なるようにしかならない
・相手は変えられない、変えられるのは自分だけ
ただ、不満なのは、きちんとした手法に基いて行われた研究ではないので、著者の旅行記とかエッセイという側面が強いこと。「自殺希少地域」の定義が曖昧すぎるし、フィールドワークと呼ぶにしてもその手法が説明されていない。自殺希少地域の母数がいくつあって、その中から著者はどうしてそのうちの数カ所を選択したのか説明されていない。題材が良いだけに、そこが残念。まぁ、だからこそ気楽に読めるのかもしれないけど、ここに書いていることが「著者が見たいものだけを見、感じたいものだけを感じた記録」になっている可能性は否めない。
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ゆったりとした空気感で、なんだか小説を読んでいるような気分になります。
タイトルは少々悩ましく、「精神科医」と入っているので、専門的な見地から自殺希少地域の考察をするのかなと思っていたのですが、どちらかと言うと「『自殺希少地域』を行く」が中身を表す言葉で、ルポや旅日記というカテゴリが適切なのかなと思いました。
分析や考察を求めるのなら、この本でも触れられている岡檀さんの「生き心地の良い町 ―この自殺率の低さには理由がある―」を読んだほうが良いかと。こちらもちょー読みやすく、まっすぐに書かれた印象を受ける良い本です。
読んだ感想としては、人とゆるく、広くつながるということの良さを改めて認識。しなやかに生きていきたいものです。
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エビデンスに固執せず、かといって無視もせず。
NPOのあたりは、まだまだなのにな、リーチできていないなのに、過大評価だな、と感じる。最後のまとめもおおざっぱすぎる。
しかし、その体験、思索の過程で紡ぎ出された言葉は千鈞の重みを持つ。
・重要なことはベンチに意味があることを知っているかどうか。
・困難の解決に慣れている。
・うまくマネジメントされていなければ、問題を起こした人は排除される。居場所を失う。多くの人は、再び問題を起こすことを恐れ挑戦しなくなる。そして互いを監視し合う。ついには変化を生み出すようなひと、挑戦をしようとする人を排除するようになる。組織は古くなりやがて新しい人が入らなくなる。
・「派閥がない」。よく話し合いをする。誤解があったとして、誤解をそのままにしていたら地域で住めなくなる。だからよく対話する。それで派閥がなくなる。
・自殺で亡くなる人の少ない地域は、外に出て行く力がない人も死なない地域である。
・つらいことも多いのかもしれないが、地元の人たちはそれを根性と気合いで乗り越えるのではなくて、工夫をして越えていく。工夫をする習慣があるというのが正しいのかもしれない。
・周囲の人の工夫が足りない場合、特に、相手を変えようとする人が周囲に多い場合には、本人との喧嘩が絶えなくなるかもしれない。イライラをぶつけてしまう。「何度言ったらわかるんだ!」と怒られても、本人は覚えることができないから、それを直すことはできないから、また同じ怒られるようなことをしてしまう。一方で本人からしたらなぜ怒られるのかわからない。理不尽だとさえ感じる。嫌な感情だけは残り続ける。
・「できることは助ける。できないことは相談する」
・意向を質問すればするほど拒否していく。弱っている時は「入っていいですか?」と聞くのではなく、「助けに来たよ」と入っていく。
・北欧。「この国の人は、自分が誰かを問う」
・(ここの)特養の中にいる人たちは、全員、誰がどこに住んでいてどういう人生を過ごしてきたかがよく把握されていた。病歴はあっても生活歴は書かれていない場合がおおいのに。
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新聞の著者インタビューを読んで、手に取った。
精神科医の著者が日本の「自殺希少地域」(自殺で亡くなるひとが少ない地域)に行って、それぞれ1週間前後宿泊した記録。
どの地域も垣根がない。悪くいえば、個人情報など存在しない。困ったら、有無を言わさず助ける。助けっぱなしで、助けられっぱなし。
精神科の治療の多くは、病院の診察室で、形だけ話を聞いて、経験則で薬を出して、診察終了。これでは治るものも治らない。
①困っているひとがいたら、今、即、助けなさい(即時に助ける)
②ひととひとの関係は疎で多(ソーシャルネットワークの見方)
③意思決定は現場で行う(柔軟かつ機動的に)
④「この地域のひとたちは、見て見ぬふりができないひとたちなんですよ」(責任の所在の明確化)
⑤解決するまでかかわり続ける(心理的なつながりの連続性)
⑥なるようになる。なるようにしかならない(不確かさに耐える/寛容)
⑦相手は変えられない。変えられるのは自分(対話主義)
「オープンダイアローグ」をキーワードに、蘇生の現場を踏んできた筆者が、ひととひとの結びあう力、レジリエンスを問う1冊。
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この地域の住む人々との対話の記録。生活に対する、人と関わることへの心構えに特徴がある。典型的な都会人とは全く異質。でも、都会でもできるかも。
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2017.7.1市立図書館:多忙につき目次眺める程度で返却期限で無念。
2017.7.22市立図書館
借り直して旅のお供で読了。国内外には他と同じような風土であっても他所と比べて相対的に自殺が起こりにくい「自殺希少地域」があり(これは先行研究がある)、そうした地域に共通する自殺を予防する因子があるのではないか、と実際に足を運んでフィールドワークを通じて感じとったことをまとめたもの。
「みんな違ってみんないい」を体得していて、人が違うことを前提に是々非々で対応できることが生きやすさにつながっているらしい。これまでに出会った人を思い浮かべて、人助けの上手い人(組織)とそうとはいえないタイプの人(組織)はたしかにいるなぁと得心した。
「できることは助ける、できないことは相談する」「なるようになる、なるようにしかならない」「相手は変えられない。変えられるのは自分」「困難があったら(堪え忍ぶとか根性で乗り切るではなく)工夫する」などの人生訓は自分のために覚えておきたい。
人を孤立させない(自殺に追い込まない)ネットワークや対話の方法は、自殺とまではいかなくても、老若男女さまざまな弱い立場の人を助けたいとき(たとえば子育て)に役に立ちそうだと思えた。たらいまわしや事なかれ主義な対応から、本来うけるべき支援に期待できなくなったり、支援を受けることを恥じたり敷居が高く感じたりするようなことは避けなければいけないのだということは心に留めておきたい。