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2016年36冊目。
このタイミングで、この本に出会えたことに感謝。
所属NPOの代表の著書を出してくださった出版社さまが、
その本をトランスビュー取引代行で流通させてくださっている。
少しでもこの本を広げたいと、トランスビュー方式についてちょうど詳しく知りたいと思っているところだった。
本を開いてみたら、それ以上の収穫だった。
普段書店営業を行っている身として、著者の経験談はとても他人事ではなかった。
この本の優れているところは、
◆「直取引」「トランスビュー方式」の可能性を示唆するものでありながら、決して単なる礼賛ではなく、不完全な部分にも言及している点
◆「出版社」「取次」「書店」へのインタビューがあり、関係者の様々な視点から観察されている点
◆そのインタビューの際に、著者が物怖じせずに深く切り込んでいる点
◆トランスビュー方式を使う際のコストが、項目ごとに一桁円単位で提示されていて、これからこの方式の使用を検討している人にとって大変参考になる点
「ここはどうなんだろう?」と疑問が湧くたびに、きちんとその疑問が解消される内容が次に出てきて驚いた。
そして、トランスビューの工藤さんの信念と度量の大きさにも脱帽。
「待ち」の姿勢の凄さ。
取引代行を使用する出版社が増えるかどうかも「意識して増やそうとはしないけど、自然と増えると思う」という姿勢。
書籍の営業に関しても「売り込むのではなく、書店の自主的な発注を待つ」という姿勢。
「書店の粗利益を増やす」「書店員さんが自発的に頼みたいと思える書籍を作る」、そういう「正しいこと正しくやっている」という揺るがない信念があれば、分かってくれる人たちが自然と集まる、ということなのだと思う。
出版に関わる全ての人が読むべき本だと思う。
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出版業界の〝新しい〟流れ、直取引。
実は別に新しくは無いんだけども。
より個性ある本を並べたいと思ったら、浮かんでくる仕入れ。
でもこれが中々難しい。手間がかかる。
この本は、そんな直取引の解説書であり、また出版業界の様々を知るテキストにもなる。
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現行の取次主導の出版流通に風穴を開ける、的なトランスビュー礼賛かと思いきや、苦言ってほどではないにしろマイナス面、批判的意見も書かれてて、踏み込み深い割に立ち位置フェアな印象。こういうのって難しいよね、片一方に寄せるのは簡単やけども。惜しむらくは太洋社だけやなくてトーハンか日販からもトランスビューをどう見てるか聞いてほしかったかな、いや、出てこないか。
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出版業界紙の新文化の元記者による、出版社トランスビューの書店直取引についてまとめたインタビュー本。
事細かに料率や手数料のことまで書かれていて、中々に面白い。
一方で、取次による配本モデルが崩れる中のオルタナティブとして、トランスビューの取引代行を割と推しているけど、手数料などのことを考えると結構難しいんじゃないかなぁとは思ってしまったり…。
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出版社が本を出すと、まず取次から新刊配本され、書店に届く。
というのがオーソドックスな書籍の流通。
しかし、この流通が今、変化の時を迎えている。
大量に配本し、大量に返品して、その中でうまく読者の「買いたい」気持ちにマッチした本だけが売れていく。
その構造とは、違うやり方を実践しているのがトランスビューである。
他にも、直取引を行っている出版社もあるが、
そのシステムをオープンにして、小さな出版社の取引代行をしている版元だ。
この会社のラインナップだからこそ、成立するシステムだという評が多い中、
代行を請け負う会社が増えていっても、変わらずシステムはうまく動いている。
小さな出版社にとって、決して金銭的には楽なシステムではないが、
自社と書店との間の信頼関係を強く結びたいと思っている版元には、
ありがたいシステムだと感じる。
そのためには、出版社は「本」に対する志を強く持ち続けなければならず、
書店もどういった本をうるのかという明確な意思が必要だ。
ほんとは、当たり前のことだけど、ついつい流されてしまって、そうではなくなっている実態をもう一度考えることになる。