紙の本
平和のあり方を考える出発点
2018/05/05 22:47
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
なるほどそういう考えもあるなとか、いやそれはちょっとちがうやろ、とか思いながら読みました。
いまの違憲論争は統帥権干犯問題と似ているという指摘は、じっくり考えたいところです。かねてから、かつて日本が戦争への道を歩んだのは、統帥権干犯問題がポイントだと思っていたので。
いずれにせよ、このたびの安保論争が、平和のあり方を考える出発点である、という意見には賛成です。
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右往左往
2016/07/30 13:24
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投稿者:ぴーすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「戦争法反対!」と息巻いている人たちは大勢いるが
どれだけの人が「安保法制」をまじめに考えているのだろう?
そもそも「戦争法」なんて法律どこにもないのに。
国会の中でも、与党でいるときには、自衛隊やPKOを容認していた
人たちが、野党になると「反対」というのを見ていると、
内容ではなく、反対することに異議を見ているように思ってしまう。
まず、勉強しませんか?片手落ちではいけないのでは?
と感じる本です。
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「想定外」を許すな!
2016/11/04 20:31
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どのようにして平和を確立し戦争を防止するかについてその具体的な政策措置をめぐる提案が不明瞭な中、安保関連法の賛否を理解しやすい書であったと思う。
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本書とともに「国のために死ねるか」を読むことを勧めたい
2016/10/31 22:52
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投稿者:ライサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は政治、外交面からの国防論である
「国のために死ねるか」はその実戦部隊の自衛隊側からの国防を考えるのに適した本である
本書は左翼の矛盾点を冷静に指摘した上で日本がこれからの世界で、特にアジア地域において果たすべき役割についてを語っている
ユートピア的発想でなく現実と歴史を元にした考察が続くので学べることは多い。反面、読み進めるのに根気を必要とする本でもある
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議論の基礎を築くために
2016/08/21 03:31
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投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章の節々に細谷先生の憤懣やる方ない感情が滲み出ているこの本は、安全保障を議論する際に抑えておきたい論点が散りばめられている。
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慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一(1971-)による、20世紀および現在の東アジア安全保障環境に関する概観と「反安保法制」勢力への反論。
Ⅰ 平和はいかにして可能か
1.平和への無関心
2.新しい世界のなかで
Ⅱ 歴史から安全保障を学ぶ
1.より不安定でより危険な社会
2.平和を守るために必要な軍事力
Ⅲ われわれはどのような世界を生きているのか
1.「太平洋の世紀」の日本の役割
2.「マハンの海」と「グロティウスの海」
3.日露関係のレアルポリティーク
4.東アジア安全保障環境と日本の衰退
5.「陸の孤島」と「海の孤島」
6.対話と交渉のみで北朝鮮のミサイル発射を止めることは可能か
7.カオスを超えて
Ⅳ 日本の平和主義はどうあるべきか
1.集団的自衛権をめぐる戦後政治
2.「平和国家」日本の安全保障論
3.安保関連法と新しい防衛政策
4.安保法制を理性的に議論するために
5.安保関連法により何が変わるのか
第二次安倍内閣の下、再開した安保法制懇のメンバーに細谷は入っている。安保法制懇は2014年5月に報告書に提出し、その中で集団的自衛権が憲法解釈は一貫して否定されてきたのではないという戦後の文脈を提示し、集団的自衛権容認の憲法解釈変更を示唆した。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/
その後、2015年の安保法制審議において、同法案を戦争法案であると批判する野党勢力を中心に国会内外を騒がせ、憲法学者も同法案が意見であるという厳しく批判を行った。
本書は、「憲法九条」という体制のみで、これまで、そして現在の安全が保障されているわけではないという主張を展開する。そして、安保法制審議を「戦争法」と批判する行動が具体的な問題解決に寄与しないと指摘する。現憲法制定以後の東アジアの安全保障は冷戦期そして、ポスト冷戦期の現在においても軍事的バランスの中で成り立っており、国際法を遵守しない国家・地域への対応を、法的準備不十分で行うわけないはいかないという問題意識である。加えて、国連の平和維持活動への積極参加を日本の国策として勧めている。
本書冒頭、「国民的議論を抜きにした法案を押し通すのは許せない」「第9条の理念を際限のない拡大解釈によってねじ曲げれば、国家の最高法規である憲法は全く中身のないもになってしまう。これを法治主義に対する挑戦だと考えるのは、大げさだろうか」という朝日新聞の記事の紹介がある。これがいつ、何に対する記事だったのかは、本書を手にとってご覧いただきたい。と、言いたいところだが、ちくま新書のホームページに行けば読めるので、興味があれば一読をおすすめする。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/201
本書では問題の整理は行われているが、著者は日本外交や安全保障問題の専門家でもなく、新たな知見が提示されているというわけではない。その点で、戦後日本政治外交史や安全保障論の先行研究を何冊か読んだことがある人は、(本書を読むのにさして時間はかからないが)優先順位は下がるだろう。一方で、安保や軍事はとにかく危��だと思っている人には、一読して十分価値があるだろう。
個人的には細谷氏には、このような書物ではなく、専門のイギリス外交史で実績を重ねてもらいたいし、そちらの最先端の成果を新書にまとめてもらった方が一般読者にはありがたい。
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著者の細谷雄一氏は、国際政治史、イギリス外交史を専門とする国際政治学者で、2014年より国家安全保障局顧問も務める。
著者によれば、2015年夏に繰り広げられた安保関連法に関する論争において、安保関連法に反対する人々は、この法律を成立させれば、アメリカが将来行う戦争に日本が巻き込まれて国民の安全が脅かされると懸念し、安保関連法を成立させた安倍政権は、現状の安保法制では十分に国民の生命を守ることができず、状況が悪化している東アジアの安全保障環境下で平和と安定のために日本が責任ある役割を担うことができないと考えている、即ち、両者とも平和を求めて戦争に反対しているのである。そして、著者は、この奇妙な現実を踏まえて、現代の世界でどのように平和を実現すべきかを考えるために本書を著したという。(因みに、著者のスタンスは後者寄りのものである)
まず、著者の考え方のベースは、我々は現在、70年以上前の国民が総動員されて悲惨で非人道的な戦闘を行った太平洋戦争の時代とは異なり、主要国が協力して国際テロリスト・ネットワーク等の国境を越えた脅威に対応するための国際協調を深めることが必要な21世紀という時代に生きているということである。
更に、著者は、日本国憲法前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」、「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信じる」という一文が示す精神は、世界のあらゆる地域の戦争を防止し、勃発した戦争を終わらせて、平和を確立することであり、日本がそのような戦争に巻き込まれないということではないと強調する。
そして、国連事務総長のアナンの「外交によってなし得ることは数多くあるが、しかしながら、もちろんではあるが、強い意志と軍事力を背後に持つ外交であればより多くのことをなすことができるであろう」いう言葉を引きつつ、歴史を振り返って、外交と個別的あるいは集団的に十分な自衛力を組み合わせることで実効的に平和を確立できるとする。
最後に、今般の安保関連法について、その成立と施行は立憲主義・平和主義の終わりなどではなく、幅広い国民的コンセンサスを生み出すための、困難ではあるが不可欠な第一歩であったと述べている。
平和とは何か、世界において日本の成し得ることは何かという観点から安保関連法を考える上で、有用な一冊と思う。
(2016年8月了)
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「安保論争」について。日本の平和主義はどうあるべきかという議論は、当然、我々が今どのような世界を生きているのかといったリアルな認識が基礎となるべきであり、また歴史をきちんと踏まえなくてはならないという当たり前の主張がなされている。
しかし、この当たり前の主張がときに感情的な言論に押し流されてしまう場合がある。そこに著者の苛立ちがあり、かつて高坂正堯氏が指摘した「精神の腐敗」が認められる。
巻末に詳細なブックガイドもあり、きちんと安全保障論を学びたい人にとって有益。
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安保法制について踏み込んだ話はしてないけどなんで安保法制がこんだけ反対を受けてて、なんで自分はそれでも賛成なのかってのがわかりやすく書かれてていいし、日本の今後の安保政策はいかにあるべきなのかってのを考えるヒントをくれる。今度は『安保法制』みたいなテーマでそれぞれの条文がなぜ必要と思うか突っ込んだ議論して欲しいな。
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2018に再読したため、レビューを追記します
2015年の安保法制(平和安全法制)をめぐる議論を意識し、現在の日本の安全保障に関する議論のあいまいさを非難し、リアリズムに基づいた安全保障を紹介している。
しかし、安保法制反対派がこの本を読んだとしても、安保法制を受け入れることは無いと思う。そういう意味で、タイトルである「安保論争」を解決に向かわせる力を持っている本かというと、疑問に感じた。
安保論争は価値観の相違で生み出されているので、リアリストにとって価値があると思う話を連ねても、反対派に言葉が届くことはないだろう。
反対派が敵視するものは、戦争において人の死という犠牲が軽視される統治機構の非情さ、また、軍隊がしばしば陥った暴走の歴史、といったものなのだから、現在の平和を軍事的緊張とパワーポリティクスが支えている、という現実的な安全保障のメリットを説いてもかみ合う訳がない。
最後に、本書が勧めるように、日本が積極的に国際的な安全保障政策の枠組みに乗っかった場合、世界や地域の安定性は増すのかもしれないが、アフガニスタンのISAF部隊へ参加した多国籍軍のように、少なからず戦死者が出る可能性がある。
これについても言及するのがフェアではないだろうか。
---------------2016年投稿ぶんはここから
著者は国際政治学者で、雑誌への起稿をまとめたものと、描き下ろしの原稿で構成されている。
2015年の安保法制(平和安全法制)の審議に対する反対運動を意識しつつ、
・集団的自衛権を含む集団的安全保障が戦後の安全保障の根幹であり、世界が不安定化しつつある今、集団的安全保障は重要性が増している。
・日本は国際的な安全保障の責任分担よりも国内の感情的な嫌悪感を優先し、外国が実力で維持している平和にタダ乗りしてきている
・内閣法制局の従来解釈や憲法学者の違憲が集団的自衛権を否定している、という指摘はいくつか欠点を抱えている(内閣法制局は諮問機関にすぎず、また過去には日本の集団的自衛権行使を一部肯定していたし、自衛隊を違憲だと考えている憲法学者が多いのに、それには目をつぶって憲法学者が安保法制に反対していることを反対の論拠にするのはダブルスタンダードだ、といったもの。
日本政府の集団的自衛権に関する解釈については知らないことが多かったので、これは面白かった。
一方で、この本を読んでいて気になったのは、バラバラな媒体の原稿を集めた故かコンセプトが不統一で、積極的な安全保障への参加を推進したいのか、安保論争に欠けている要素を指摘したいのか、イマイチやりたいことがはっきりしていない。
その上、「安保論争」というタイトルにも問題があって論争の一方の側…反対派の議論がほとんど掘り下げられていない。
SEALDSの「私たちは、対話と協調に基づく平和的かつ現実的な外交・安全保障政策を求めます。」
という主張が実現困難、という批判はしているのだけれど、自分が考えるに、彼らが21世紀版ネヴィル・チェンバレンみたいな事をまじめに考えている連中だとは思えない。
むしろ、保守政治や武力を用いた安全���障への何となくの嫌悪感といったセンチメンタルな理由から反対していると思うんだけど、著者の専門である殺伐とした国際政治や外交と相性が悪く議論が成立しなさそう。
著者は、日本は平和国家として活動していくことを決めているのだから心配するな、と言うけれど、本当に信じていいのか?
理性的に行動している、平和を求めていると言いながらミニタリズムに入れ込んで無謀な挑戦をしたあげくに国を滅ぼした指導者はいくつも居て、そのような不信感が安保論争を引き起こしたという面があるのではないか。
そのような反対派の思考にフィットしない反論が気になる。
図書館で借りました。
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「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信じる」という一文が憲法前文にあるのだから、自国のみ戦争には参加しない!と言って道徳的に優れていることを誇るのはおかしい。
この理念を憲法が謳っている限り、日本は「積極的平和外交」を行っていくべきだろう。
というか、戦力=悪ではなく、戦力=防御力であるということも理解すべきではないかと。
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平和のために軍事力を持つことが必要という、一見あべこべのように感じていた理論を、わかりやすく説明してくれた本。今までの世界の歴史から、今の国際情勢、日本の立場について知れたし、理想論だけでなく現実的に世界を見て日本がどのようにあるべきかを示してて、かなり勉強になった。
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国際政治の専門家による、安全保障の話。安全保障についての意見には賛同できる。また、わが国の安保論争について、歴史的な説明はよく纏まっており、参考になった。
ただ、いろいろな人が言っている言葉や意見が多く掲載されているが、著者がそれを使って何を言おうとしているのか曖昧なところがある。やや、論理性、学術性に欠ける。
「(オーウェル)私ははじめて、嘘をつくことが職業である人物に出会ったが、なんとその人のことを人々はジャーナリストと呼んでいる」p18
「(トロッキー)あなたは戦争に関心がないかもしれないが、戦争はあなたに関心をもっている」p57
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平安法制肯定派の国際政治・外交史の研究者による、独善的、感情的で党派的なものになりがちな我が国の安保論争、平和と戦争をめぐるこれまでの歴史と、今日の安全保障に対する知見なき「平和」への批判。
ただ、それだけでなく、現下の安全保障環境と平安法制の必要性との関係についてもわかりやすく説明されており、その観点からも読む価値はある。
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【外交によってどのように平和の実現が可能なのか。また、外交によって可能なことと、外交によって不可能なことは何なのかを知ることが、不可欠となる。外交とは魔法と同じではない】(文中より引用)
2014年から2015年にかけ,右派・左派の双方から激しい言葉の応酬が見られた安保関連法の制定過程。噛み合わない議論と現実に基づかない認識に歯がゆさを覚えた著者が,現代の国際環境をにらみつつ,安全保障を語る上で必要不可欠な視点の提供を試みた作品です。著者は、慶應義塾大学法学部教授を務める細谷雄一。
当時の加熱する報道・意見合戦を思い起こしながら読み進めてみたのですが,本作での主張を踏まえた議論がなされていたら,その様子はどのように変わっていただろうかと思わずにはいられませんでした。著者の憤りがかなり前面に出た作品ではありますが,外交史から国内政治まで,幅広い分野からの視点が押さえられており,安全保障について考える上で大変参考になる一冊ではないでしょうか。
平易な言葉で書かれている点も☆5つ