紙の本
出会いとそれを生かすこと
2008/02/04 01:38
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、小学生高学年向けに書かれた野口健の自伝である。2月3日、私は、著者の講演会を聞いた。人間の極限状態における判断能力あるいは、清掃登山を始めるきっかけが、自分も意図せず記者会見で口から出た言葉だったと言う事等、非常に興味深く聞けた。本書は、講演会後の会場で購入した。彼が直筆でサインもしてくれた。サインをして貰いながら、私は、植村直己のこと、ジョージ・マロニーは、エベレストに登ったかとか2,3会話を交わした。彼は、的確に自分の意見を語ってくれた。本書は、サインして貰うのを待っている時間と少しの時間で完読出来た。
彼が、ハーフというより雑種的人種であること、「落ちこぼれ」だったこと、お父さんの教育方針、植村直己「青春を山に駆けて」との出会いからの変化、最初の登山が冬季富士山であるという驚き、無名山塾の岩崎元男さんとの出会い、世界7大陸最高峰登頂への挑戦、エベレスト・富士山清掃登山と著者の半生が子供に語る如く分かり安く記述されていた。
本書を読んで次の2点を強く感じた。第一に父親の教育方針である。「落ちこぼれ」の著者に対して、「勉強したくないならしなくて良い。人間一生のうち、何時か勉強したい時が来るものだ。その時に一生懸命、勉強すれば良い。」この寛大な何でも受け入れるという父親があったからこそ、今の著者があるのだと思う。第二に、出会いの大切さである。彼は、偶然、植村直己の「青春を山に駆けて」と出会い、その後の彼の生き方を決定させてしまう。また、山を始めてついた先生が岩崎氏という、また著名なる登山家と出会っている。何か運命と言うものを感じる。人には、人生を変える出会いと言うのが、必ず、2度3度と有ると思うが、受け手の自分がどういう思想を持っているかで、その出会いを生かすも殺すも出来るものである。
野口健は、7大陸登頂最年少記録を樹立した世界的登山家であるが、それよりも清掃登山と言う新たなスタイルを確立させた功績の方が大きいと思う。エベレストの清掃登山は、ゴミの多い、6300~8300mを中心に行なわれている。この高度での清掃活動が、どれほど過酷で辛いものか、今日の講演で充分理解出来た。実際、協力して貰ったシェルパ3名が命を落としている。また、富士山清掃登山においては、最初小さな個人的活動であったのが、大きな輪となり、遂には、一般登山者が自主的にゴミを拾うようになり、富士山からゴミが消えたこと。
著者が清掃登山に思考していった事には、運命的なものを感じる。講演会の生の声と自伝に拠る彼の半生を後追いすることに拠り、私も愛する登山による人格形成、人間賛歌を、新たに感じた気持ちである。
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小学3年生。勉強が嫌いで落ちこぼれだったところから始まる。自分がやりたいことは何なのか?見つけられなかった日から、登山を始めるところは、まさに運命というか導かれていたのでしょうね。文章もとても読みやすく、小学校中学年からの皆に読んで欲しい1冊。
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想像をはるかに超えて面白かったし、ためになりました。これはお勧めです。メッセージも良かったし、優れたノンフィクションは面白いものだということも教えてくれました。「落ちこぼれ」の学生だった野口健さんがいかにして冒険家への道を踏み出し、世界七大陸最高峰最年少登頂を成し遂げ、さらに清掃登山の活動を始めてたくさんの人たちへ広げていったかを子供にもとても伝わりやすいように書いてあります。生死をかけた登山の様子は普段想像もつかないような極限状態の冒険の話で驚かされたし、自称「落ちこぼれ」の状況からそのような影響力を持つように至った流れにも非常に納得がいきました。こういう風に人生を切り開いていくというか好転していくというか、そういうこともあるんだというケーススタディを納得のいく形で頭にしみこませておくことは、とても価値があることだと思います。小4と小2の子供たちも「この本面白いね」と素直に楽しんでいました。小2男児は「僕も環境学校に参加したい」とやる気を出していました。小4女児は「(野口健さんの)お父さんがいろいろいいこと言うじゃん。それが論語みたいで良かった」といっぱしなことを言っていました。(ただし、これは以前に「こども論語塾」を読み聞かせして、今回も途中で僕が論語の「過ちを改めざる、これを過ちと言う」みたいだね、と言ったからです)。実際、野口健さんのお父さんはすごく素敵なことを言うお父さんでした。良かったです。
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読みながら、やはり恵まれた人なんだなと思った。
勉強ができなくても感受性が豊かだたら、彼のようには生きられなかっただろうということ。劣等感はあっても、明るさと単純さが、いい方向に彼を導いたように思う。
もう一つは、家庭。彼が勉強できなくても、両親が離婚しても、のびのびと生きてこられたのは、父が外交官で、知性があり、金銭的に不自由がなかったことがものすごく大きいと思う。
勉強できなくて、片親で、貧しくて、親が無教養だったら、かなり悲惨だ。
大学生になってからはスポンサーを自力で見つけて費用を賄った(そのこと自体は素晴らしいと思う)が、高校まではモンブランもキリマンジャロも、かかったお金は父が出してくれたのだろう。
子どもが学校からドロップアウトして、登山がしたいといっても、簡単に海外に行かせられる余裕のある親は一般家庭ではなかなかいない。
そういう意味で、やはり運ってあるんだなと、思う。
この本を読んで、子どもには「勉強できなくても、立派に社会で活躍できる人になれる」ととりあえずポジティブに感動してほしい気もするが、まあ、私が子どもだったら、そういう風には感じないだろうね、残念ながら。
ベントレーみたいな人の伝記の方が心に沁みる。
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人生を生きる上で大切なことがシンプルに書かれている
文章は愚直だけど、その内容は瑞々しい
小学校高学年向けだと思うが、大人にも十分おすすめ
▶︎一番大事なことは、自分がしたいことをして満足できるかどうか。人が進む道と同じ道を進むことが大事なのではない。自分の道を見つけて自分の満足できる道を自分の力で進むことが大事。そうすれば、たとえ失敗しても、自分は自分なりにやった、しょうがないと満足して思える。
▶︎ぼくは点にすぎない。ぼくは青い空を見上げて、しみじみと透き通った世界を感じていた。美しくて透明な気持ちにおそわれていた。その時ぼくは何か大事なことを発見したような気がして感動していた。日頃の悩みや、いろいろなつらさ、さまざまなコンプレックス、そんなものはじつにちっぽけなことにすぎないことがわかった。すべては点だ。点にすぎないのだ。点にすぎないことが社会の中にいるとわからなくなってくるが、ここにくればわかる。
▶︎間違いや失敗はある。間違っていることを見つけたら、それを訂正して、勇気を持って新しい行動を始めることが大事。悪いのは、間違ったこと、ではなく、間違いを直さないこと。
▶︎いろいろな考え方をする人がいるから、自分の考えが正しいからといって、社会ではそう簡単にはうまくはいかない。いろんな立場がある。でも、だからといって悲観することはない。世の中はそんなもの。とにかく元気に前に進むことが一番。
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児童向けなので読みやすい。野口健さんに興味を持ったのは、、いいとも?山にはゴロゴロ死体やゴミがあるとか、飄々と話していて新鮮でした。
お父さんが結婚に失敗して劣等生になって、高い所から降りて自分の近くに来たことがうれしかった、というところがいいな、と思った。生活は荒んだけど、長い休みには2人で世界を旅するところ。エリートになるのだけが自立じゃない、自分がしたいことをして満足できるかどうかなんだという教え。こういう親でありたいが果たして。
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私はこの本に出てきた「今、悪い方向に向かっているものは訂正し、良くしていき、未来へ繋げていく。」その言葉に心を打たれた。そして、良い未来に向けて生きていくことが冒険だと思った。