紙の本
「小説家・小泉喜美子」に向き合う
2016/09/18 05:52
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっとぱらっと読むだけのつもりだったのに・・・読み終われなくてほぼ一気読み。
というか、「私、これ、以前読んだことある?」と思ってしまうほどの既視感(既読感?)。
いや、きっとそんなことはないはずなんだけど・・・1982年発表の作品だそうなので、多分それまでの先行作品と、これに影響を受けたのかもしれない後発作品とが私の中でいろいろないまぜになって出てきた、ということかもしれない。
著者の代表作とされる『弁護側の証人』は日本を舞台にしながらもどこか文体が翻訳調というか、外国モノっぽい雰囲気があったのだが(これの著者あとがきによれば『シンデレラ』を下敷きにしたそうで。納得!)、今作は間違いなく日本であった。
青山墓地で発生した幼女惨殺事件の犯人は死刑を宣告され、刑の執行の前に独房で奇妙な告白を始める。 そもそものきっかけは40年前、犯人の少年時代に出会った異国の公使館に住む、金髪碧眼の美しい兄妹との交流からだった。
その回想の合間に、惨殺事件を捜査する警部の努力と困惑が挿入され、ただの「嘘かほんとかわからない狂人かもしれない人物の告白」を論理的に補佐する。
東京大空襲をこんな形で持ってくるなんて!
火葬が一般的な日本では成り立ちにくいヴァンパイアものを歴史に絡めてリアリティを持ちこむとは・・・脱帽です。
「語り」の部分には特に目新しさはないものの、それが逆にラスト数行のさりげない描写に込められた驚愕をより強くする、というか。 ミステリやホラーは子供だましではない、優雅で高尚な嗜好品(もしくは芸術品)である、という作者の思いが溢れ出てくるような作品であった(その当時、このような作品への社会的評価は低かったような記憶がおぼろげながらあるので、余計にそう感じちゃったかな)。
小泉喜美子さんが<翻訳家>という認識でいたのは実にもったいなかった(なにしろ最初に読んだのが『時の娘』だったから)。 翻訳家でありつつわが道を行く作家であったと、もっと早くから認識すべきだった。 しかし早くに亡くなられている以上、もっと作品を!、と望むのは手遅れなのだが・・・。
あぁ、まったくもって、私はいろんなことに気づくのが遅すぎる。
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1982年に刊行されたものの復刊。カバーに『幻の名作ベストテン』とある。
傾向としては典型的な『好きな人はとても好きになるだろう』タイプだった。
そういえば、著者の訳書は何冊か読んだことがあるが、小説は初めて読んだな〜。
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小泉喜美子、こんなものも書いているのか。東京を舞台にした○○○物を、ここまで構築出来るとは。
「弁護側の証人」でもヤラレタが、「ダイナマイト円舞曲」も探さなくちゃ。
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コンパクトにまとまっててよかったです。
登場人物のうち、名前を与えられているのは異国人。
日本人は名前なしあるいは伏字。
そのあんばいが現実感は薄く/幻想感は濃く出ていました。
現代ではドラキュラ伝説が広く知られていますが、そうではなかった(らしい)発表当時に読んでいたらどんなふうな感想を持ったのかなあと思います。
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著者の「弁護側の証人」が非常に面白く、吸血鬼めいたお話も好みなので楽しみにしてたのだけど、ちょっちイマイチで残念。
独白だか、回想だかの部分が読み難かったのが敗因・・・。
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和製「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」。
ミステリーと怪奇小説の間を揺れ動く作品。
石の血脈、屍鬼、ポーの一族、白暮のクロニクルetcと国内作家が綴ってきたこのジャンルにまた一冊加えることができて嬉しい。
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「復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊」と出版社直々に書かれますと、どんなけ面白いんだ!?と、期待のハードルがグイグイ上がってしまうものですが、とくに山場らしい山場がないまま読み終わってしまった感がありました。
この肩透かし感は出版社のふれこみを真に受けてハードルが上がりすぎてしまったからかと考えてみましたが、やっぱりこの作品はホラーと呼ぶには物足りなく、ミステリーと呼ぶのも物足りない。「血の季節」というタイトルから何となく想像できると思うのですが、その辺のゴシック感もやっぱり物足りない。
恐らくですがこの作品が刊行された当時は、私が物足りないと思ったすべての要素が水準以上で、この物語の妖しい雰囲気がたまらなく、復刊を待ち望んだ方々の記憶の中に生き続けていたのではないかと思います。
ただミステリーもホラーも妖しい雰囲気の小説もこの35年でどんどん水準が上がっていってしまい(表現もどんどんぞくっぽくなっていっているし)、今の基準に慣れきった者は物足りなく感じてしまうのではないかと思いました。
超個人的な感想としては、もっと美少女の蠱惑的な面を見たかった!それがいちばん物足りないと思った点でした笑
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ちょっと気になって読んだ作品だ。
文章は自分として好きなタイプだ。
ストーリー展開も興味が湧く。
ただ結末が物足りない。
それに尽きる。
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恩田陸さんの推薦文が書かれた帯を見て購入。
この前どハマりした古野まほろさんのセーラー服シリーズも恩田さんの推薦文がついていたのを思い出して、レジへ直行。
まとまった物語で、さらっと読めました。でも警察小説として読むには物足りないかも...
戦時中、吸血鬼、外国人の美少女、とかこの辺の要素が好きな人には軽く薦められる本かな。
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本屋で平積みされていたので偶然手に取りました。それまでこの作家さんを知らずにおり、なんと損をしていたことか。青山墓地で発生した幼女惨殺事件の犯人の奇妙な独白。時代設定、登場人物、事件の内容等々、シチュエーションが素晴らしく、ハマってしまった。80年代に書かれた作品ということもあり、この時代の作家さんの文体が好きな私には大変満足です。しかしながら、これのオチはミステリーかホラーとどちらにもとれますが、個人的にはホラーとしたいです!
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2017年39冊目。
幻の名作の復刊、そして「弁護側の証人」の著者ということで手に取った。淡々と読み進めていたけど、中盤以降から吸血鬼をうかがわせるような描写やリンクしていく様などは大きな盛り上がりはないもののまぁまぁ面白かった。
両方の見解が書かれていたが、最終的にはどっちなのかが明確にならないままのあのラストは結構好き。
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復刊ありがとうー! タイトルからもちょっと彷彿とさせますが、吸血鬼をメインモチーフに置いた、ミステリ+ホラーな作品(帯に謳っている、警察小説、サイコパス辺りの要素は、そうかなぁ?と思う程度にしかないので期待しない方がいい)。
作中、少年期~青年期と回想が進むにつれ、最初は匂わせる程度だった吸血鬼ネタがジワジワと現実味を帯びて迫ってくる感じが凄くイイ。(この情報を出していく塩梅が絶妙)
某国大使館に住む美しい兄妹。東京の空襲、広島と生き抜いた「運が良い」主人公のぼく。読み方によってホラーにもミステリにも取れる。サクサク読めるしさすが小泉喜美子。
『ダイナマイト円舞曲』もいつか復刊されるといいなぁ。
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んんん・・・・・・
帯に「吸血鬼+サイコパス+警察小説」と書いてあるが、どれも中途半端というか生ぬるい。
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読了日2017/10
とても評価が高かったの期待して読んでみた。
最初は、だいぶ昔の本らしく言葉の言い回しとか読みにくく感じたけど、ラストの吸血鬼か否かの謎解きはドキドキワクワクしながら一気に読んでしまった。
謎解き章で、ドキドキする本はあってもワクワクさせてもらえるのはあまりないような。
40年近くも前に発表された作品なのにこの最終章は秀逸。
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外国大使館の子供との交流、美しく残酷な一面をみせながら成長する美少女など、ゴシックホラーな雰囲気が満点。
ドラキュラものです。
ラストの怒涛のどんでん返しがざわざわきます。