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環境問題に関心が無い人にも説得力
2016/08/30 16:23
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投稿者:ZATO - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今では、水力発電推進というとプラスの意味でもマイナスの意味でも環境問題と結びつけて考える人が多いように思います。もちろん、そうした側面の話を抜きには語れませんが、地形から歴史を見ることに関する第一人者であり、そもそもは水力のプロである竹村公太郎氏のこの著作は、そうした観点を超えて非常に含意があるものです。環境問題に関心がない人にも説得力があると思います。少しさわり的な部分を記すと、ダムを新設せずとも、運用を変えたり、既存ダムのかさ上げや小水力の開発などにより、現状の水力発電量を2倍に増やせるとしています。人口減少を考えれば、かなり価値ある電力増産になると思います。
電子書籍
日本国内で自給できるエネルギーを考える
2019/09/07 11:44
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投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では東日本大震災以降、火力発電の割合が大きくなりました。火力発電に必要な石油は輸入に頼っていますが、ホルムズ海峡の治安が悪化すれば持続するのが難しくなります。
本書では、全国的に山林が多い日本の地形を活かした水力発電の可能性を解説しています。ダムに期待する役割の変遷や、主に利用するエネルギーの変遷を踏まえつつ、現代の日本に適した提案を述べています。昭和以降の社会情勢を知りつつエネルギーについて考えられる本です。
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その根拠は?
2019/04/30 23:53
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投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、水力ダム専門(ダム屋)の国交省高級官僚OB。今の時代、その自然環境負荷の大きさから、新たな巨大ダムを建設して水力発電量を増強しようという考えは通用しない。しかし、一方それまで堅持してきた原子力をベースロード電源とする国策的エネルギー政策は見直さなければいけないのが実情でもある。3.11以後、FITのスタート(現在は改正FIT)とともに、太陽光や風力発電を中心に新たな再生可能エネルギーを積極的に奨励する政策に舵を切る中、ロートル技術と思われている水力発電に果たして伸びしろはないのか?という素朴な疑問に対する、痒いところに手の届くような気の利いた論書はあまり見当たらない。本書は、そういう現状下に一石を投じ、水力擁護論を展開する、数少ない成書である。
しかし、本著者も巨大水力推進論者ではない。それでは、水力のどこに活路があるのか?本書によると、既にあるダムが水力発電の観点からすると十分に活用しきれていないらしい。一つは、既存水力発電ダムの効率の問題、例えば水位をもう少し上げることができれば発電量を2倍くらいに増強できるダムがあること、今一つは、全く水力発電を想定していない治水型ダムの利水型ダムへの転用、つまり水力発電設備を追加設置できる可能性があるのにもかかわらず、そういう可能性に対する真面目な議論が喚起されない現状があるのだ。ふつう巨大水力は初期コストが莫大で、さらに環境負荷が大きいので、比較的小規模な追加的初期投資で既存の別目的のダムを水力にも使えるようにする、という視点がすっかり抜け落ちているようなのだ。砂防ダムの様な一般にはあまり規模の大きくないものも水力発電に利用できるようになると聞くと、その可能性に対する夢は大きく広がっていくようになる。また他の自然エネルギー利用発電となると、太陽光にしろ風力にしろ供給量が常に一定しているわけではない。水力はそれらとの補完的な使用という意味でも魅力的に映る。日中の過剰な太陽光発電供給を揚水で「充電」し、夜間発電に利用する、等のきめ細やかなエネルギーミックスには将来性があると感じる。
ただ、本書の想定している対象読者層と評者の興味の対象とするところにギャップがあるせいか、著者の主張に定量的な裏付けが極めて少ないところに、不満が強く残る。国内の既存の非利水ダムを水力発電ダム化工事するのにいかほどの投資が必要なのか、そしてそれによる発電増強量はどれほどなのか?読後の評者の最大の興味がそこに集中したのだが、本書に説得力のある数値的データおよびその根拠の提示はない。もちろんこういう本に書かれる数字を読者は決して鵜呑みにしてはならないのだが。まずできるだけ少ないコストで実効性のある検証をして見せるというテストケースデモが、実効性のある、段階を踏んだ政策立案には必須なのだ。是非とも、本書にインスパイアされ、実践的な数値に落とし込んだ国家戦略的な政策立案ができる行政或いは政治関係者が多数発生してくれることを切に期待する。
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提案はよいが
2017/02/23 19:55
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章は分かりやすいし、文意も明解だ。それだけに誤解を与える内容を含んでいる。
日本のダムが安全であることを縷々説明している。その理由を3点に絞っているが、想定しているのは重力式コンクリートダムと思われる。では、アーチダムはどうか、アースダムはどうか、他の型式のダムはどうであろうか。
コンクリートに鉄筋がないというのも正確ではない。ダムは無筋コンクリートで造られていることを示しているが、構造用部分は鉄筋コンクリートの設計で造られている。ダムの堤体基本構造は無筋だということである。
コンクリートが天然の岩と同じだと言い、凝灰岩は100年、200年と年代を経るにつれて堅く強固になっていくというが、これは地下にあって圧力等が作用している状況下の場合であって、地表に露出していれば気象の作用などによって風化していくものである。コンクリートは確かに水和反応により強度が漸増していく一方、ダムの立地環境により凍害や塩害等も受け、劣化もしていく。日頃のメンテナンスが必要である。
ダムの厚みが極めて厚い巨大な山と言っている。ではアーチダムはどうか。氏が従事した川治ダムはアーチダムだ。
以上のような説明は、かつて治水事業者よく行っていた、「治水ダムができると下流河川の沿川流域は洪水がなくなる」式の分かりやすいメッセージによる説明方法を踏襲しているようだ。
水を貯めるダム、しかも大きな水深の貯水を行うことに対してダムは構造的にも岩盤の止水技術的にも安全性を確保していることを示すほうが良かったのではないか。
地震国日本で古来より約3000のダム(高さ15m以上)が造られてきた。少なくとも近代以降のダムでは、どのような型式であれ、ダム技術者たちが十分に安全を考慮した設計がなされて造られてきたと思う。
大型のダムを造る時代ではないということには勿論賛成だ。同時に既設のダムを活かすことも大切だと思う。福一原発事故問題に端を発したエネルギー問題の深刻化は国家の大きな課題であろう。水力発電エネルギーの増産の提案は有益な提案だと思う。
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環境問題を考える上で、単に自然を守ろうという言葉は、すでに時代遅れの考え方であろう。
と言うのも、少なくとも高度経済成長期においても、自然環境破壊は理解され、それと経済的メリット発展のバランスをとろうとしていたのである。残念なことに、その時代は経済発展を優先することが多かったのである。
上記も軽く触れられながら、本誌では何よりも日本の地形を最大限活用するためには、水力発電を活用することが望ましいことを、様々な面から説いている。
説明されている内容は実に納得がいくもので、国土の約7割が山間地域で有り、年間降水量が3000mmmという条件は正に水力発電に向いているといえる。
水力発電を広げていくためには2つの課題があると思える。
1.水は誰のものでもなく共有財産であるという理解を構築すること
2.共有利用できるための法整備
3.これまでのダムの改修
これらが一部でも解決出来ると、そこからできる改善策を打つことができるはずである。これから、永遠には無いと分かっている、地下埋蔵資源に頼り切るのではなく、どこにでもある水力発電を活用することが良いと考えています。
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水力発電だとか、ダムだとか。そういったものにこれまで全く興味を持たれなかった人にとってのとっかかりとしてはよい一冊だと思います。
私自身は、実はそうでもないものですので、知っていることも多かったりいたしましたので、ちょっと物足りない感がございました。
付箋は12枚付きました。
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今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせるという副題がついていた。
第1章 なぜ、ダムを増やさずに水力発電を二倍にできるのか
第2章 なぜ、日本をエネルギー資源大国と呼べるのか
第3章 なぜ、日本のダムは200兆円の遺産なのか
第4章 なぜ、地形を見ればエネルギーの将来が分かるのか
第5章 なぜ、水源地域が水力発電事業のオーナーになるべきなのか
第6章 どうすれば、水源地域主体の水力発電は成功できるのか
終章 未来のエネルギーと水力発電
というような内容である。
国土交通省のダム屋として経験し培ったノウハウたるや国の知的資産だと私は思う。
後は、この本を提言を受け、日本国が取り入れる度量があるかどうかだと思う。
理系の頭脳で、ち密に計算した「案」だと私は思える。
地形から見れば歴史は読み解けるからの竹村さんのファンとして、とってもすばらしい本だと思いました。
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日本に多く作られているダムは治水と利水の両方の目的
だから満水の半分くらいしか水をためていない。
もっと貯めれば発電に有利。天気予報を活かせば治水も可能
化石燃料 エネルギー密度高い
風力、太陽光 エネルギー密度低い
ダムのコンクリートには鉄筋がない、壁が厚い、土砂がたまりにくい(洪水吐)
原発による夜間の余計な電力がないので、揚水発電は現在意味がない
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2017/08/10:読了
燃料電池と水力発電の組み合わせ。
日本の100年後のエネルギーは、この組み合わせなんだと思った
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副題が
今あるダムで年間2兆円の電力を増やせる
元国土交通省河川局長 竹村公太郎著
何も今更大きなダムを作ろうなんてことではない。
今あるダムの運用を
最新技術を使ったシステムに変えれば
年間2兆円分の電力が生まれると言う話。
ダムの運用に関わる法律は昭和32年(1957年)に
制定されて以来、根本的には一度も改正されていない。
59年前の社会事情のまま、運用されていると言うこと!
原発問題、温暖化問題、、、。そして最近のゲリラ豪雨のような
かつては考えられない規模の大雨!
それらに役だつダムの運用方法。
かつては治水、利水という観点からダムが作られてきた。
電力を作り、水がないときに利用する利水。
洪水が起こらぬために、、の治水。
本来、一つのダムで完璧なこれら二つの利用を
こなすのは矛盾点も多くなるが、
昔はそれができなかった事情も確かにある。
が、今はどうだ。ドローンも使える時代、
遠隔操作でのダムの貯水の加減も可能。
そのソフトパワーをもっと使えば、
時代に即した利用法ともなろう。
官庁というところは、著者の竹村氏の経験からも
『予算の獲得』が第一義で
ハードには目を配っても、
その利用法を改良するソフトには
なかなか目がいかない体質なんだとか。。。
プロデュースが下手と言われる日本人だが、
昨今新しい人々が、ネットも使い地方の埋もれた技を
世界的に広めたり、資本がないが優秀な技術や社会貢献できる
小さな会社に、金を集めることもできるようになっている。
官庁という巨大なバケモノの中に
収まらない若く清新な人材が、集まって
こういう提案を実行してほしいものだ。
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多目的ダムの矛盾=利水と治水。半分くらいしか水を貯められない仕組み。
グラハムベルはナショナルジオグラフィックの編集責任者だった。
ダムは半永久的に壊れない。鉄筋を使っていない。岩盤と一体化。コンクリートは100m。
多目的ダムは砂が溜まりにくい。砂を流す穴がある。電力ダムはない。
水路式発電ならダムはいらない。ただし減水区間が生じる。
逆調整池ダム=下に30mくらいの貯水ダムを作って、余った電気で揚水する。
かさ上げ工事をすれば、容量が増える。
奈良盆地から京都への遷都はエネルギー不足。
江戸幕府は関東のエネルギーが魅力だった。
幕末は文明の限界。石炭がエネルギーであることを知らされた。太平洋戦争は、インドネシアの石油が目的。
文明あるところ環境破壊あり。メソポタミア文明による砂漠化、黄河の砂漠化=黄砂の原因。
今回の人口減は、エネルギーの限界からくる?という仮説。
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◯ダムを増やさず水力発電を2倍にする
・家庭や工場、農業、発電に水を使うのが「利水」、川の堤防の決壊から守るのご「治水」、双方の目的を果たそうとするのが多目的ダム。
・国土の小さい日本のダムは2つの矛盾した目的を持つ多目的ダムが多く、これは河川法で半分しか貯められない。雨量の多い時期は放水してわざと貯めない。
◯日本は資源大国
・多雨で山岳地帯のため雨を集めやすく、河川の高低差があるため水力発電の適国
・既に過去に作った大量のダムがある。
・大都市は難しいが、地方は水力を中心として太陽光や風力を組み合わせて発電するかたちが良い。
◯日本のダムは200兆円の資産
・ダムは壊れない、震災でも本体が壊れたダムは皆無だった。
・鉄筋なしで、セメントと砂と石だせでできているため錆びない。これは石灰岩で、天然の岩と同じ。
・風化している表層の岩盤を取り除いた上で直接頑丈な岩盤と固定するため、揺れが非常に小さい。
・ダムの壁が極めて厚い。
・新設ダムの工事費は総工費数千億円の1/3以下、大半は水没村の補填費用。
・嵩上げすると、発電量を倍に増やしても、新設の工事費用分でまかなえる。
・日本に降る雨や雪の位置エネルギーを全て電力に変えられると70%賄える。現実的には潜在力を発揮すれば総需要の30%を賄えると試算。
・落差10mクラスの小さな砂防ダムでも100〜300kw程度は発電できる。
・30MW未満の開発可能箇所は2万箇所以上あり。その合計は14000MW。
◯地形からわかるエネルギーの将来
・昔からエネルギー(木材)が政治を左右してきた。奈良から京都への遷都、家康が江戸を選んだのも木材の確保のためだと考えられる。
・ペリーの蒸気船をきっかけに石炭が使われるようになる。当時国内で産出できた。
・石油へ移って問題は輸入せざるを得なかったこと。当時ほぼアメリカが産出していた。石油が無くて戦争し、石油がなくて負けた。
・人口もエネルギーの変遷とともに急拡大している。
◯水力発電のオーナー
・水力発電の建設には小型であっても流域地域の住民の合意が重要。
・川は基本的に国のもの。
・持続可能な発展のための公共的プロジェクトと割り切り、水源地域の利益のために。
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これからは再生可能エネルギーの時代だが、その中でも「水力発電」が最も有望であることが非常によくわかった。
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なんだろう、このいらいらする感じ。
「私はダム(水力)の専門家、3つも作ったような人は珍しい」とか「私たちダム技術者にはこれぐらいわかる(簡単なこと)」とかいった、パターナリズムが強い。
まさに昔の官僚ってこんな感じだったのであろうか?(笑)
河川法の目的に「最大限発電」と書くだなんて、バランス感覚のかけらもない。
ましてや「それが今求められている」とまで言うとは。
そんなに言うなら、なぜ自分がしなかった(外野になってから評論されてもねぇ…)。
事前放流を(予測のしやすい)「台風上陸」でしか説明しなかったり、
電力ダムでなく多目的なら堆砂は排砂できるから問題ないと言ってみたり、
イタリアのアーチダムより日本のダム(重力)は分厚いと言ったりしていて、論理もひどい。。
「位置エネルギー」への視点は妥当、だが、それのみを繰り返し、紙幅がもたなくなると人口や文明をエネルギーとの関係の歴史でのみ語る章が突然登場するのみ強烈な違和感。
なんというか、こんな人が局長がやったんだなぁ、、やったとはなぁ、、
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とても分かりやすい主張で理解しやすかった。
既存水力発電の運用面の課題や、ダムの改修を加える事で、化石燃料に頼らない世の中を作り上げることが出来る気がしたが、再エネが普及しない今の電力業界の根本の課題が薄い。ダムの活用促進だけでなく、系統の増強などもセットで考えないといけないと思う。