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地上が居住不可能となった大戦争後、浄化までの300年を地下シェルターで生き延びた人々は、地上にオルテシア共和国とカザール自治連邦の二つの国を作り、地下資源ソリド・マグマを巡って争っていた。専制主義的な学舎に嫌悪しながら空を飛ぶことを夢見る16歳の一般市民の少年ノニは、同じく空に憧れる特別市民の友人イアンとともに旧時代の図書館を発見し、そこで考古学者のユパンキ博士と出会う。博士は、自由で科学も発達していた旧時代に大戦争が起きた理由を調べていた。二人はそこで、旧時代には本当に人々が翼を持っていたこと、今は翼が生えないよう予防注射されているが、戦争は翼人のせいではなかったこと、今でも精神的、肉体的条件さえ揃えば翼が生じるものがいるということ、また、地下資源ソリド・マグマは、荒れ地の有害な砂の原因で、旧時代を壊滅させた爆弾と同じものではないかと考えられることを知る。学舎に我慢できなくなり飛び出したノニは、体を壊して入院したイアンから「飛翔学」の翻訳とともに空飛ぶ夢を託される。彼は、祖母に別れを告げ、ユパンキ博士の逮捕と図書館への放火を目撃し、空を飛ぶ決意をする。
大戦争後の世界を舞台に、自由を求めて苦悩・奮闘する少年を描くSFファンタジー。
大戦争後の世界を描いた作品ということで「風の谷のナウシカ」を、飛翔方法の模索ということで「かもめのジョナサン」を、情報統制と専制政治ということで北朝鮮や旧ソ連を連想させる。
翼を自由の象徴として用い、その色が気持ちを表すという設定はとても興味深いが、特に後半が都合よく展開しすぎて興醒めになる。
政治体制や放射性物質と思われる資源についての記述もあるので、高学年以上向けではあるが、中学生には物足りないと思う。