紙の本
ハリーオーガスト15回目の人生
2017/01/17 20:31
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投稿者:kyon - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議な不思議な物語である。
ひたすら同じ人生の始まりを繰り返す、必ず死ぬ、が、また生き直せる・・・15回もである・・・イライラしながらハリーの人生を追いながら、次第にその全容が分かって来る。分かって来た時にハリーが取る手段・・・こんなこと・・・出来る訳はないはずなのに、どこかでハリーが生きているような気もするのだ。
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最初はなんだかゆったりとしていたけれどどんどん時の流れが、物語とともに加速さしていく
読み応えがすごい…
ただ繰り返す人生を順に語るのではなく
前後させているのが、魅力的に読ませる。
よく海外ドラマである「現在」と「過去」を交互に関連する出来事をつなぐ手法なのだけど
ハリーは何回も生きてるので過去が過去のような、感じもそんなにしないので妙
原題がハリー・オーガスト"最初の"15回めの人生」という解説を最後に読ませるあたりがにくい。
まだまだハリーの人生は続く
作者が、作者名から作品に印象をもたせてしまうことを嫌い、覆面作家として出版した話が「生まれ変わり」と繋がる。
ポッターよりコッチの方が好き。
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ハリー・オーガストは死んでも同じ状況で、過去の記憶を残したまま生まれ変わる男だった。
自分の生まれ変わりをする運命を受け入れたハリーは、同じように生まれ変わる男ヴィンセントの野望を知る。
人生をやり直す物語や過去にタイムワープするといった物語は、小説や映画によくある。
このテーマは人間が、あのときああしていたら自分はもっと幸せだったのでは、あのときあんなことがなければ時代は変わっていたのではないか、こういう過去が変えられたら未来はもっとよくなったのではという希望が基にある。
あのときああしていたらという思いは、生きていれば誰でも一度は思うものではないだろうか。
そしてこういうテーマで語られることは、過去は変えられない、過去を受け入れ未来を切り拓くことが大切だとまとめることが一般的だ。
この物語は一般的な今を懸命に生きることを奨励する物語とは少し異なる。
この物語では生まれ変わる男という設定から、同じ運命を生きる別の男との対決といった形に進む。
対決といっても殺しあうという直截な方法は、ただ生まれ変わってしまうだけなので意味はない。男の野望を知る主人公ハリーが、その野望遂行を阻止しようとする。
この物語はジャンル分けしにくい作品だ。
SFのようでもあり、対決するというハードボイルドな要素もあり、過酷な運命を担う男の人間物語でもある。
こういうよくわからない作品は、結局サスペンスという便利なジャンルに落ち着くのかもしれない。
登場人物は多くないため読みやすい。
最後まで読むとラストを踏まえてもう一度読みたくなる作品だ。
映像化したら結構面白く仕上がるのではないかと思う。
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死ぬと元の自分に生まれ変わるハリー・オーガスト。彼の15回の人生を描いた小説。
生まれ変わる人間が1人ではないこと、生まれ変わる人間にも違いがあること、彼らの団体ができていること、未来の情報の伝達方法。とても興味深い。
世界を滅ぼす敵、同時に友との戦いが後半のテーマになるが、読み終わるとそれほど意外なことは起こらない。でも味のある、いい結末だった。
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リプレイもの。
500ページほどですが行間が詰まった装丁で、物理的に読み応えがあります。
その上ややこしい。ただでさえ混乱しがちなリプレイ物なのに突然に画面転換が多いものですから、時も場所も一瞬混乱します。結果的に読み終えるのに随分かかってしまいました。
前半は多元宇宙論など考えながら、やっぱりタイムパラドックスは躱しきれないなあなどと考えながら、苦戦しながら読んでいました。
後半、面白くなって来るのですが、SF的というより心理戦的な面白さです。
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とても面白かった。
何度も人生を繰り返すリプレイもの。
手に取った時、読む前の印象は、怠惰にダラダラと無為に過ごすような、ある意味反面教師的な物語かと思っていたのだが、精力的に冒険・探求を繰り返す。中盤から、世界を(結果的に)終焉に導いてしまう敵役ヴィンセントが登場する。
物語は世界の終焉阻止を中心に描かれ、その合間にハリーの脇のエピソードが挿入される構成となっている。
サイド・エピソードは時系列に展開されないが、整理され読みやすく、メインとサイドで飽きることがなく、読み応えがあった。
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リプレイ物には甘くなる傾向があるけど、かなりよかったと思う。ありそうで なかった世界で とても楽しめました。
もっと膨らませても よかったような気もするし、ちょうど良い尺のような気もするけど。英国作家だからか?ラストもとても好感が持てました。
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タイムループ。その理屈についての屁理屈はナシ。カーラチャクラと呼ばれる人々は、死ぬと記憶を持ったまま過去に戻り自分として生まれる。カーラチャクラが死ぬのは生まれる前に母親を殺す事。
翻訳物というのもあるが文章が非常に読みにくテンポも悪い。オチも何と無く想像出来た。残念ながら期待外れ。
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1996年
78歳のハリー・オーガストは病院のベッドで『11回目の』死を迎えようとしていた。
そこに少女が訪ねてきて子供から大人へ、過去に向けた警告を伝えられる。
「世界が終わる。過去を変えなければならない」と。
*
ハリーは1918年1月1日にイギリスで生まれ、死ぬと前の人生の記憶を保ったまま同じ状況で生まれ直す体質(カーラチャクラ)だった。
2回目の人生では事実を受け入れられず発狂して自殺した。
3回目の人生で同じ体質を持つ人達「クロノス・クラブ」の存在を知り。
4回目の人生以降はクロノス・クラブを拠り所に生きた。
そして12回目の人生。
世界の終わりをもたらす人物を探すと、その人物もカーラチャクラだった。
何度でも蘇る人同士に勝敗はつくのか。
そんな話。
*
いわゆるタイムリープものです。
ただ、主人公だけがタイムリープ出来るのではなく、過去にも同時代にも未来にも同じ体質のカーラチャクラがいて、老人が子供に伝言ゲームで質問を送り、逆の流れで回答が来る要領で世代を超えて知識のやり取りが出来る設定が画期的でした!
*
そして、結末が良かった
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物語のドライブ感がすごい。
500ページ超という長く、複雑で、起伏に富んだ道程を、エンジン全開のトップスピードで疾走するような。
ループものの常として、時間軸が複雑である。そして登場人物の相関図が変化するのでややこしい。しかも人生単位なので尚更である。
ということを、実は読中にあまり感じなかった(というか気にしなかった)のだけれど、それはおそらく、物語の焦点が「主人公とその宿敵」に絞られていて、主人公の目的がはっきりしているからなのだろう。
あと、主人公の独白形式というのも意図的なんだろうと思う。「誰かに語って聞かせている」という前提に立てば、説明が説明くさくなりにくい。それから、「誰に、どういう状況で、何の目的で語っているのか」という疑問が、最後まで読み進める一つの引金になるし。実際、最後にその疑問が解けた時にはカタルシスがあった。
要するに、この「ドライブ感」を生み出すための仕掛けと技というのが実はすごいんだろう、ということである。
構成上、大きく分けて4つのパートに分けられるように思う。
その最初のパートで「この世界」の約束事がきっちり説明されていて、しかもその終わりにわざわざ冒頭の記述を繰り返して、「さあ、ここからが本題ですよ」と教えてくれている。だから後半に話が盛り上がったところでいちいち説明を挟む必要がないし、読んでいる方も「あ、あれのことか」とすぐにわかる。とても親切な設計。それも物語に没頭させる「ドライブ感」の理由の一つなのだろう。
彼の長い長い人生は、時には21世紀という「現代」にまでたどり着く。だからだろう、あり得ないSF小説のはずなのに、「カーラチャクラと呼ばれる人々は本当に居るのではないか」、したがって「自分のこの人生も、実は彼らによって引き起こされた何度かのループの一つなのではないか」なんてことを想像してしまったりもした。
本当は、誰もがループしていて。
そして時々、前の人生の記憶を持っている人が居て。
でもループ後の人生で干渉できる範囲は限られていて、それを超えてしまうとパラドクスが起きて、結果的に死ぬ展開に追い込まれるとか。
そのルールの例外が成立してしまったとき歴史が改変されて、後に「新事実」と呼ばれるものになるのだとか。
だから世界史上に記録を残すことが決定づけられている人物はループしないことになっていて、
逆に言えば「彼ら」のような人々は、何度人生を繰り返したとしても世界を変えることができないとあらかじめ決められているのだ、とか。
だとしたら、「世界に名を残す一度きりの人生」と、「何をも成し得ない繰り返しの人生」と、ではどちらが良いのだろうか。それらは等価なのだろうか。
この小説とは関係ないけれど、そんなことまで考えてみたりしてしまった。
こんなふうに物語の外の世界にまで働きかけてくる小説というのが、本当に面白い小説なんだと思う。
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死んだ後も前世の記憶を有して次の人生を送ることが出来るというカーラチャクラ。
主人公のハリーは思わぬ人物との出会いから壮大な戦いに身を投じていくことになる。
ありそうでなかった時間ループものの新境地。
本編と全然関係ないけど、年始に【STEINS;GATE】のアニメを観てたから、「ループ系に縁があるな~」と一思案。
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CROSS†CHANNEL以来大好きなループものジャンルにまたしても名作現る。それなりに文字量が多いが、無駄なところがないので一気に楽しめます。
夏目漱石の『こころ』と同じく、男性二人×女性一人(ただし女性の内面はない)の骨格を持った物語なのと、主人公と敵役の対決がだいぶ拗らせているため、BLに変換させて読むことも可能。
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私の好きな時間SFもの。傑作『リプレイ』を彷彿させる設定。このミス海外部門19位。
読む前からそそられるが、読後の感想は期待を裏切らないものでした。
リプレイしている人間が他にもいて関わりを持ってくるところまでは『リプレイ』と一緒だが本作はリプレイ連中が「クロノスクラブ」と言う団体組織を作っていて『歴史に干渉しない』をモットーにリプレイする人々の相互補助組織みたいな役割を果たしている。本作はこれがミソ。クラブに助けられながら世界を破滅から救おうとする。
生まれ変わると全く同じ人生を歩むわけでもないので微妙に死亡年齢も変わる、だいたい70~80歳くらいで死ぬので物語の終盤ではハリーは1000歳近くにもなっている。
人生5回分を費やして敵の懐に入り込み自己が犠牲になって遂に信頼を勝ち取る。
リプレイさせないためには生まれる前に殺すこと。
出生の秘密(物語では「起点」と言う。)を知られることが命取りに繋がる。2人の起点を巡る駆け引きがハラハラドキドキ、非常に面白い。
最後まで読ませる極上のSF&ミステリーでした。
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皮肉、皮肉、皮肉!一行を大切に読まないと伏線や展開の早さにおいていかれてしまう。ほんと面白い。この物語がどこに向かうのかまったく分からない。
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比較的厚みのある本だが、皮肉を効かせた物語であり、タイムリープものとしての展開の疾走感と随所に鏤められた伏線で飽きることなく読了。
この手の話は、往々にして拡げた風呂敷が畳み切れずに終盤失速して終了、という残念な流れになりがちだが、恐らく主人公と仇敵に焦点を絞り込むことによって、屋台骨が揺らぐことがなかったのかも。
個人的に、オチが良かった。