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今年最初のミステリは、去年からの流れで引き続き北欧モノ。1990年代に起きた銀行強盗事件を下敷きにした犯罪小説。強盗視点で書かれているせいか、彼らの背景の複雑さのせいかハラハラしながら見てしまう。あとがきに犯人本人たちのコメントが掲載されるくらいに事実を踏まえているのだとすると、手口の鮮やかさとその狂気に、やっぱり現実って凄いなと変に感動させられた不思議な一冊。
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長い話を一気に読みきりました。
話の構成が上手い。
少しづつ話が加速して行くので知らず知らずに
一気に引き込まれてしまいます。
家族の絆。
とても重いテーマです。
父親の背中をいつの間にか追っている長男の姿が
とても哀しかったです。
久々の名作でした。
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どうしても「なんでレオは、そんなに銀行強盗に固執するの?」ってことばかりが気になってしまった。
レオ父はなんだかとんでもないやつで、あんなのが夫だったらそりゃ妻は逃げ出すわな。
でも、レオがいじめっ子に殴られた時、仕返しをすすめたのは、私は決してダメな事じゃないと思ってしまうんだよなあ。
だって、いじめっ子は普段からとんでもないやつだったんでしょ?それで、仕返しされるのは自業自得じゃないのかな?「目には目を」的な考えはダメ?
よく「そいつらと同じレベルになっちゃいけない」とか言うけど、本当のバカは同じレベルで同じことしてやらないと絶対わからないと思ってしまう。
本の内容に関しては、途中からレオ父が加わった時点でなんだかよくわからなくなっちゃった。
結局とんでもない父親がいると、その呪縛から息子はなかなか抜けられないのかな。
そしてカリスマ的存在のレオから離れられないヤスペル君もちょっと気の毒。
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9件の銀行強盗、1件の現金輸送車襲撃、軍の武器庫からの銃221挺の窃盗、ストックホルム中央駅での爆破事件―。
史上稀にみる凶悪な犯罪でスウェーデン中を震撼させた〝実際の事件〟をモデルにした犯罪小説です。
「軍人ギャング」(この犯罪集団の通称)たちが、次から次へと起こす犯罪にクラクラと眩暈がするような思いで読了しました。
犯行の途中で何度か「危機」に陥るのですが、読み手の僕はあろうことか軍人ギャングに感情移入して、何とかこの「危機」を回避して欲しいと、祈るような気持ちで読み耽りました。
こんな凶悪な犯罪集団に肩入れしてしまうのは、ほかでもない、そこに人間が描かれているから。
本作は、犯罪小説であるとともに家族小説でもあるのです。
それも最高度に濃密な。
軍人ギャングはレオとフェリックス、ヴィンセント、そしてレオの幼馴染で軍人あがりというヤスペルの4人。
レオとフェリックス、ヴィンセントは粗暴な父イヴァンの抑圧下で育ちました。
不良に喧嘩で負けたレオに、殴り方をとことん教え込む父の姿は一種異様なものがあります(ちなみに本書のタイトルは、人を殴る際のステップの踏み方が由来です)。
そんな夫に愛想を尽かして実家へ戻った母ブリット=マリーを追いつめ、実家に火炎瓶を放り込んで全焼させてしまうのですから、もうクレイジーと言っていいでしょう。
刑期を終えて自宅に戻って来たイヴァンは、母を暴行して半死半生の目に遭わせます。
本書では、この一件にまつわるエピソードが最後まで尾を引き、繰り返し言及されます。
そして、ラストのカギとなります。
もちろん、それは言わぬが花でしょう。
声を大にして言いたいのは、本書は一見、派手な犯罪の方に目を奪われがちですが、この3兄弟と父との魂のぶつかり合いこそが肝だということ。
表にこそ現れませんが、行間には彼ら4人の慟哭が通奏低音(常套句ですね、ごめん)のように響き渡っています。
帯に深緑野分さんが「すさまじい傑作です!」と激賞していますが、うん、異論はありません。
そうそう、何が驚いたって、本書の著者であるジャーナリスト出身のアンデシュ・ルースルンドの共著者、ステファン・トゥンベリという人物の経歴。
実は、この作品の元になった事件を起こした犯罪集団とは、血のつながった兄弟なのです(!)。
細部まで実に詳細に描き込まれているのは、そのせいもあるのでしょう。
下巻の最後の訳者あとがきに、犯罪集団の3兄弟それぞれが本書を読んで語ったという感想が紹介されています。
それを読んで、この作品は文字通り「リアル」なのだと再確認した次第。
おススメですぞ。
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分かってても,『黄金を抱いて跳べ』みたいに終わって欲しいよ,と思いながら読み進めた。全体的に漂う,寒い張り詰めた感じがすごく心地よかった。訳の巧さなのかな。
しかし,ヨン・ブロンクスがフィクションなら,恋愛ネタは要らんかったと思うけどな。映画にするときはあった方がいいんだろうけど。
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ますます犯罪をエスカレートさせて暴走気味になる長男、その活動に疑問を持ち出す次男、三男、さらには長男の奥さん、愛憎の対象でもある父親までが絡んできた物語は終盤を迎える・・・。
強盗そのものより、彼らの愛憎に満ち満ちた家族間のドラマがメインというのは後半も変わらず、捜査陣である刑事の事件に対する関わりがえらく薄いままで終わった。
と思って読み終わってみたら、なんとこれは実話!
しかも共著のステファン・トゥンベリがその強盗団に加わらなかった4人目の兄弟と知ってびっくり。だからこその内面描写の濃さだったんだ。たしかに実話であれば犯行は(ある程度)周知の事実なわけだし、そこに関わる人も多いから余り色々書けないだろうしな。
しかも刑事は架空のキャラクターというので納得。結局、捜査陣(第3者もしくは反対側の読者)の立場から犯行を俯瞰する視点として設定されたわけで、事件に対して能動的に働かなかったのもうなずける。
濃厚で読みごたえがある作品で、これは映画化向け。
監督はベン・アフレックでいかが?そうなると場所はボストンに移ってしまうだろうけど…
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暴力に支配されるか、コントロールするか
父とは違うことを確信している主人公だが、次第にかつての父のような支配的な言動を取り、弟たちが離れていく
家族としての結束を何よりも大切にしたいだけなのにバラバラになっていく…
父や主人公が夢見た光景が切ない現実として立ちはだかる
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いつものことなのですが、私は外国の小説を読むと情景が思い浮かばず、読み始めは楽しめないのです。
ただ、途中からは面白いと感じるから不思議です。
今回読んだ熊と踊れも最後のほうはのめり込んでいました。
1点だけ気になったのは、母親を父親が殴るシーンが昔のどのタイミングで発生したのかがいまいちわからなかった点です。実は書かれていたが私が気が付かなかったのかも知れませんが・・・。母親が家を出て父親が母親の実家に火炎瓶を投げ込んだ後なのか前なのかなどつながりが見えなかった。。
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外国小説は苦手なのだが、読んでみるとビックリするほど面白いものも少なくなく、本屋で見つけ手に取ってみる。
子供虐待は心が痛む。外国小説は心情描写が少ない、あるいはぴんとこないのか、話にのめり込むには時間がかかったが、中盤からは楽しくページをめくる。
実際の事件を元に描かれた話のようだな。軍の武器庫から大量の銃を手に入れた兄弟と仲間、銀行強盗をするが、手際も良く、警察にも尻尾をつかませない。頭の良い兄貴が計画を立て、兄弟たちと強盗を繰り返す。時折、父との暗い過去にシーンが切り替わり話は進む。
最後はあっけなかったが、本当の話であれば、まあこのような物だろう。犯罪者でも勿論、家族があり、葛藤があり、生活をしている。強盗を続けていくこと、辞め時、チームをまとめていくことの大変さを感じる。この後も気になるが、語られない所を見ると、語るべき物もそれ程なかったのかな。
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完璧な犯行に警察もお手上げ。前代未聞の銀行強盗。犯行を行う事前の準備までもが、大がかりで末恐ろしい。スリリングな犯罪小説。に沿った家族小説である。圧倒的な暴力。その理不尽なものからの解放がテーマである。主人公三兄弟が絶対に逆らうことの出来ない存在。父親。目の背けたくなるほどの邪悪。そして憎悪。彼らの生きる根底は、歪み、縛られていくのだが、結局は、家族の血の流れは止めることは出来ない…父親の行動はほとんど理不尽だが、どこかで肯定できてしまう。父親の教えというのは、どこの家族でも言えるのだが、身近で一番信頼できるはずのものなのだから、抗うという発想すら中々難しい。刷り込まれていく…長男レオの没落が物悲しい。全て引き受けた上でのリーダーであり、家族を守る存在として生き続けることを選んだのだから。彼らの行く末。兄弟揃ってこれからも進むことを願う。「だれがドアを開けたのか?」三兄弟がそれぞれ悩み続けたこの種は、未来を開く答えであり、希望である。続編が出るらしい。ヨン警部の、複雑な環境をもう少し掘り下げてほしい。彼も兄弟と同じ匂いがする存在。
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題名:熊と踊れ (上・下)
原題:Bjorndansen (2014)
著者:アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ Anders Roslund & Stefan Thunberg
訳者:ヘレンハルメ美穂・羽根由
発行:ハヤカワ文庫HM 2016.9.15 初版 2016.11.26 4刷
価格:各¥1,800
『このミステリーが凄い』2016年の圧倒的一位を獲得した年、ぼくはこの作品を不覚にも未読で、翌年、これを読んで歯噛みしたものだった。どうみてもこれは圧倒的な作品だったからだ。分厚いだけではなく、スリルとアクションが親子・兄弟の人間ドラマと表裏一体となって驀進する大型重戦車の出来であったのだ。
山中にある謎の施設が実は軍の武器庫であったと知ったときから、ドゥヴニヤック家三兄弟の犯罪は始まる。武器庫襲撃、そして次々と間髪をおかずに、警察の包囲網を嘲笑うかのような手法による現金輸送車や金庫の襲撃が始まる。一度ではなく、同時に連続して何か所もという複数犯罪も一つの特徴である。
作戦参謀が天才なのである。長兄のレオ。そして以上は現在。彼らの犯罪のモチーフとは何であったのかを語るのが、過去。そう。本書は犯罪ファミリーの現在と、なぜ彼らがそうなったのかに至る家族の悲劇を描いているのだ。凄まじいほどのDV。壊され傷つけられる幼い人格。最早、望んでいた普通の家族生活に手に届かなくなった時に、犯罪モンスターとして世界に対峙する存在となってゆく彼らのドラマが生まれてゆく。
実はこの凄玉犯罪プロットは、スウェーデンをかつて震撼させた実際の事件を元にしている。この兄弟では描かれなかったもう一人の兄弟は実在している。アンデシュ・ルースルンドの共著者であるステファン・トゥンベリがその一人である。彼は父親による嵐のような家庭内暴力を実際に体験した一人なのだ。犯罪に手を染めてゆく兄弟に加わらなかった一人として本書の執筆に手を貸している。現実と創作の境界がどこにあるのかは、この本からはわからない。
しかし現実の凄みこそが、この作品のリアリティを圧倒的に高めているのは確かである。人はどうやって怪物的で天才的な犯罪者に育ってゆくのか? そしてその心のうちは? 兄弟たちの葛藤は? 父と母と彼らとそれぞれは運命の中でどのように愛や憎悪や赦しを交わし、あるいは離反してゆくのか? 様々な運命の矛盾は現実を土台にしか生まれ得ないと思われる。この小説の持つ行間に溢れる切迫感、スピード感は、そうした負のエネルギーを動的内燃機関経由で爆発させた結果生まれたものに違いない。
20年に一度の傑作がここにある。この本を契機にアンデシュ・ルースルンド関連の作品はすべて手に取るようになったが、どれも共通して言えるのが、現実に材を取った少なからず社会的小説と呼べるものばかりだ。本作品は二作構造となっており、昨年『兄弟の血 熊と踊れII』が邦訳された。そちらは現実をもとにした本書の、創作された続編であるが、セットでお読みいただくことを強くお勧めする。
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下巻に入り話の展開が加速する。実際の事件をベースにし、実在の犯人兄弟グループの実弟が共著者であるということが凄い。犯罪者がなぜ法規範を無視するようになるのか、という心理推移や、家族というグループの中で暴力が再生産されていく様子の描写もリアル。
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凄い小説。スウェーデンで実際に起きた事件を元にしてるのだが、犯人グループの実の兄弟と作家との、長い時間をかけた対話から生み出された作品であり、巻末でモデルになった三兄弟の、作品に対する感想まで知ることができる。何の前科もない、強い絆で結ばれた三兄弟が次々と大胆な強奪事件を強行していく、ハラハラドキドキのフィクションとしても充分楽しめるのだが、その豪胆な犯罪の背景にある圧倒的な暴力の影、破綻した家族の中に育った兄弟の絆に圧倒される。憎むべき犯人達なのだが全く憎む気になれず、むしろ無事逃げおおせて、それぞれの幸せをつかんでほしい、と願ってしまう。
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昨夜深夜に読み終えて、頭が冴えきってしまい眠れなくなった。上巻から続く兄弟愛、そして家族の絆。愛情と暴力は表裏一体なのだろうか。そしてこれが実話に基づいているものだというのだから驚きだ。日本人だからなのか、自分自身の問題なのか、自分にはここまでの家族熱がないので、どこか冷めて見てしまうところがある。しかし、北欧ミステリーを読みだしてからはニュースなどで流し見していた北欧の情勢などにも以前よりは興味をもてるようになったのは自分にとってプラスになりました!
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あらすじ
次々と銀行襲撃を成功させていく4人。しかし、ヤスペルとヴィンセントのいざこざがきっかけで、下の兄弟二人は抜ける。それでもレオは強盗を続けるために、父親を引き入れた…。
あっさり次々と犯行を成功させていくレオ。でも悪役って感じじゃない。父親代わりの役割をつとめ、家族の絆を求め、スウェーデン史上まれにみる犯行を目指す人物。エネルギッシュで家族思い。最後は恋人・親友・父親を束ねるのに苦労して、むしろ同情してしまった。