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私の理解では、今年(2016)初旬から、我が国では「マイナス金利」が導入されました。将来の日本を考えた場合に、マイナス金利を含めて、現在、日銀のやっている金融政策がどのように影響するのでしょうか。
私がこの20年ばかり追いかけてきた人の一人に、この本の著者の増田氏がいますが、彼の論調は、日銀も含めて世界にある中央銀行による金融政策は効果がない、と結論付けています。この本では、その結論に至るまでに生じるであろう、様々な質問に答える形で、論を進めています。
マイナス金利の影響を実際に私のような庶民が感じるようになるのは、もう少し後の事のような気がしますが、その成り行きを見守っていきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・中央銀行とは、通貨発行の独占権を与えられた団体のこと、それが国直属の組織化、私企業であるかは枝葉末節の問題、通貨発行を独占する、というのが一番大事なこと(p12)
・通貨発行の独占権を中央銀行に与えるようになったかは、国と独占を許された金融業者が儲けたかったから(p14)
・イギリスには当時3つの大きな独占企業があった、1)東インド会社:インド大陸を侵略して、植民地経営する会社、2)イングランド銀行:通貨発行権を独占している、3)南海会社:新大陸で使う奴隷を独占的に供給する会社(p17)
・南海会社は、1720年の急落後も安定して利益を出し続けて、1851年までのデータでは株価も順調、フランスのミシシッピ会社は合併させられて破綻した(p19)
・連邦準備制度が誕生してから、アメリカは金利も債券価格もすごい乱高下を起こし、慢性的なインフレになった、創設前にはデフレが頻発していた(p31)
・世界中の大都市の人口10万にあたりの殺人発生件数を見ると、植民地だった国だけが高い殺人件数率を記録している(p46)
・オランダがインドネシアを植民地支配するようになったとき、中継貿易だったトルコのオスマン帝国とも関係ができ、トルコ原産のチューリップ球根がオランダに持ち込まれた。オランダは1602年に東インド会社を設立、1609年に中央銀行に等しいアムステルダム銀行という、潤沢に資金を供給できる機関を創設した(p59)
・植民地そのものが略奪経営から、持続性のある植物栽培経営に変わったという背景があったからこそ、ものすごく価値がつく、チューリップの変わり種子に、人々が飛びついた(p61)
・大部分が18-19世紀に設立されたヨーロッパ列強の中央銀行は、基本的には巨大な資金が必要な植民地経営のために機能した(p61)
・1930年に設立された国際決済銀行(BIS)は、各国の中央銀行をメンバーとする組織で、日本も創設時には株主として参加している。ドイツの第一次世界大戦の賠償金支払いの行き詰まりを打開するために生まれた(p72)
・フォードのシェアは1920年は60%を超えていたが、26年には20%を切るほどであった(p76)
・イギリスは���理やり金固定相場にして、1ポンド=4ドルでポンドの価値を維持しようとした、何度も「ポンドは下がる、ドルは上がる」という投機を仕掛けられ、ぼろ負けして国力を疲弊させていった(p124)
・フランクリン・ルーズベルトは、1932年に当選し、1933年に就任したが、初仕事が、アメリカ国民の金所有禁止であった。4月6日に通知し、5月1日までに保有している金を提出し、22ドル(1トロイオンス)で交換するとした(p126)
・買い上げがほぼ済んだ翌年に、金の公定価格を35ドルに引き上げた、保有等が許されたのが、1964年、金地金保有の自由が復活したのは、1974年であった(p127)
・外国人投資家は、日本株を売ると買った時に借りた円を返さなくてはならないので、円を市場から買い取るので、株安円高となる(p137)
・三菱東京UFJ銀行は、2016.7.15付けで、プライマリーディーラーの返上を届けて、取り消された。これは、同年4月29日に、マイナス金利を更に大きくする可能性があることを、日銀黒田総裁がコメントしていることと関係がある(p142)
・日銀がマネタリーベースを増やしている時期も、国民はカネを使わず、つまり貨幣の流通速度を下げて、マネーサプライは平準化している。日銀が債権放棄をしても、流通速度を自然に上げれば被害は無いだろう(p196)
・ドイツ経済の実力に対してユーロが低すぎるので、ドイツ国民は損をしている事になる。ドイツはユーロにしがみついているのが不思議(p201)
・ソ連邦はロシア連邦を始めとして、14・15の国家に分裂した。中国は、言語圏ごとに、北京語・上海語・福建語・四川語・広東語などに分かれるだろう(p215)
2016年10月10日作成