紙の本
建築家自身の真摯な姿勢が伝わる
2017/02/04 11:33
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投稿者:kaz - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災を経験しての建築家自身の志向性の変化と、地方の彼の仕事が紹介されている。その仕事を通じて、今後の日本の在り方を提案している。真摯な姿勢と熱意が伝わる本です。
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タクシー代で、本は買える。これからの建築をきっかけに読んだ伊東豊雄氏の本。近代的な建築が及ぼす都市東京に対する問題提起。本当の豊かさとは何か。その突破口は地方にある。建築とはトップダウンで建物を作ることではなく、コミュニケーションを生み出すこと。みんなで作ったものだと、そこへの人の関わり方が変わってくる。自然と共存していた江戸時代。自然から人工的に隔離されている現代。これからの建築の第一歩として大三島やぎふ、せんだいでの伊東氏の建築の発想を軸にこれからの建築を語っているほ本だった。
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オフィスビルで働く一人当たりの二酸化炭素排出量はそうでない人の10倍。
経済の豊かさより心の豊かさへ
1.自然との関係を回復
2.地域性
3.土地固有の歴史や文化の継承
4.人々の繋がりやコミュニティの場つくり
光や風といった自然そのものを建築に取り込む。
「ぎふメディアコスモス」
大きな家の中の小さなそれぞれの家=開放型のパオのようなグローブ。
建築とはコミュニティに形を与えること。
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誰が見ても素晴らしいと思うモノを追求する必要はない。
それよりも今近くにいる人たちと、幸せを感じられるほうが大切である。
その幸せを形にし、積み上げていくことが、
建築が担ってくれる一つの役割なのかもしれないと思いました。
(以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
●「経済の豊かさより心の豊かさへ」
一、自然との関係を回復する
二、地域性を取り戻す
三、土地に固有の歴史や文化を継承する
四、人々の繋がりやコミュニティの場をつくり直す(P.56-57)
○一方、設備環境はというと、構造や空間が固まってから検討を始めます。つまり設備は後づけだったのです。けれども最近はテクノロジーが発達して、初期の段階から、構造と並行して光や空気の流れもシミュレーションできるようになりました。(P.66)
○まるで空間のなかにいるような感覚でリアルに想像することができました。今では構造と設備を同時に進めていくことによって、より自然に近くて快適な空間ができると確信しています。(P.67)
○建築というのは、このよに目指していることを共有できるたくさんの人たち、みんなでつくりあげるものなのです。(P.87)
●フランク・ゲーリー、菊竹清訓、ル・ゴルビジェのカップ・マルタン(P.142)
●コミュニティデザイナーの山崎亮(P.148)
●丹下健三さんの香川県庁舎、倉敷市庁舎、広島ピースセンター、前川國男さんの岡山文化センター、大高正人さんの坂出人工土地(P.158)
●カーテンウォール、プレキャスト工法、ブリーズ・ソレイユ(P.168)
●コンスタンティン・プランクーシの無限柱、磯崎新の水戸芸術館(P.171)
●アルヴァ・アールト(P.178)
○そして少しずつわかってきたことは、私たちが日常的に使っている建築言語では、建築の専門家ではない普通の人たちと同じ目線で対話ができないということでした。(P.183)
●村野藤吾、白井晟一(P.196)
○プロジェクトは単なる調査研究ではなく、より実践的に、「大三島を日本でいちばん住みたい島にする」に近づくために、自分たちも楽しみながら行動してみようということです。そのため、プロジェクトの運営方法やゴールはあえて決めていません。効率的に進める近代主義的な発想ではなく(P.114)
○私たちのように、島とはもともと関係のない人間がゼロから何かを始めようとするときには、まず島の方々かに受け入れられることが重要です。信頼を得なければならないのです。その一歩は、誤解を恐れずに言ってしまうのならば、「この人たちもいいやつなんだ」と認めてもらうことだと思うのです。(P.119)
○最近、ハーバード大学に限らず、世界中の大学から建築を学ぶ学生がワークショップや短期プログラムで日本に来ています。日本の建築は国内ではあまり話題にもなりませんが、世界からは注目されているという何とも皮肉な状況です。(P.131)
○興奮状態の現場と静かな病室のギャップもあって、このような「芸術的」とも言える建築をつくるのはこれで最後にしようか、と考え込んでいました。これほどの時間とエネルギーを注ぐ仕事は、自分の建築人生で、もはやあり���ないだろうと思ったからです。(P.198)
○東日本大震災の復興と新国立とが共通しているのは、相手が公共の場合には誰も個人としての顔を見せてコメントしないこと、オープンな討論は一切しないことです。(P.202)
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釜石のプランもすごく良さそうだったのに、結局全然取り入れられなかったのですね。ただ、地方に可能性を求める伊東さんのこれからが楽しみです。
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近代主義、資本主義の象徴となる都市は均質な空間を提供する一方で人同士の繋がりを断ち切ってしまった一面もあるという。
自然と向き合う、地域を見直す、繋がりを作り直す。
建築を皆で関わることで新たな人としての豊かさを考えましょう、と諭すようなやさしい表現で綴られています。
そんな伊東さんと近代、都市、コミュニティーなどの解釈について、現在活躍される様々な建築家やクリエイターの方々との議論を聞いてみたくなりました。
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伊東豊雄さんの建築への眼差しが強い言葉で表現されている一冊。
地方からコミュニティを通じて建築を考える。近代主義建築の言語ではない新たな言語の再構築。
これからの建築家に求められる職能が明言されている。
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岐阜メディアコスモスを作った人の本。
東京の魅力がなくなってきている。なぜなら、自然や土地に何も配慮しない建築をしているから。今こそ、自然や土地に合わせた建築をするべき。それを実現させた4つのプロジェクトがあり、その一つがメディアコスモスである。空気の流れや光の入り方などに配慮して設計してあり、地域密着型の建築ができた。