果報者ササル ある田舎医者の物語 みんなのレビュー
- ジョン・バージャー (著), ジャン・モア (著), 村松 潔 (訳)
- 税込価格:3,520円(32pt)
- 出版社:みすず書房
- 発売日:2016/11/11
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紙の本
献身的に生きるルネサンス的エリート
2016/12/19 03:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コピーマスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
「日陰者ジュード」を彷彿とさせる表題につられて思わず手に取ってしまった本書は、ササルという著者の知人の田舎の開業医について、切れ味の鋭い写真と文章でつづったエッセイの傑作であった。
他人のために献身的に生きるルネサンス的エリートであるところのササル医師のストイックな生き方の孤独と苦悩、そして幸福とはどのようなものなのか。
医師という職業の不思議さ、職業の人生における不思議さ、結局のところマウントする場所と時間をひとつ選択せざるを得ない人生の不思議さ、自分と他者、貧困と富、個人と集団、肉体と精神。激しくぶつかり合うパラドックスまで話題を広げ、片田舎のふとした日常の一コマからインフレーション的に演繹していく壮大さには圧倒される。
写真と文章のリズムの饗宴がぴったりとはまり、まるで音楽のようである。だが同時にそれは結論や評価が確定した演奏後の音楽ではなく、まさに演奏中の音楽のそれなのである。
かくいう私も、正直に告白するが、本書の内容をすべて消化しきれているとはいえないし、この書の魅力をつたない言葉ではとても十分に形容し得えない。むしろ、この書物のレビュー欄を拙文で汚してしまうことに罪の意識を感じる。しかし、あえてレビューを書くのは、これがめまいを覚えるほどの凄みのある書物であることは間違いないからである。
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