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読んでいる間ずっと音楽に包まれていて贅沢な気持ちでした。どんどん先を読み進めたいのに、終わってしまうのが惜しくてこのままずっと続けばいいのにと思っていました。
途中、何度も出てくる「音楽を連れ出す」という表現、いまいちよくわかっていなかったのですが最後の最後でそれこそ雷のように心にすとんと落ちてきました。
ピアノが好きで、音楽が好きで、この本を手にとったので入り口は音楽でしたけど、途中から恩田陸さんの文学に引き込まれていて、気がついたら目の前には世界が広がっていました。世界には文学も音楽もすべて包んでくれる優しさがあるな、って微笑んでしまうような読後感です。
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これはすごい。
そりゃ音楽の世界が奥深いってことくらいは知ってましたが、こんなにもすごいとは・・・
一曲の説明が何ページにも渡り、それが押しつけがましくなく、飽きずにどんどん読めてゆく。
最後、ページ数がどんどん減ってきて、「このペースで大丈夫なんやろか?まさかの尻切れトンボ?」と恐れていたが、まぁうまくまとめてあり安心。
こんな小説は他の人には書けないだろうなぁ・・・
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直木賞受賞。かなりの分厚さだけど面白かった。
文章を読んで音楽が頭の中に流れる。ピアノコンクールが舞台。数人のコンテスタントを軸に周りの人の視点からも描かれるコンクール。子供がコンクールに出るのでスケールは違えど共感できる部分がたくさんあった。コンクールにかかわる人が思っていることを的確に表現してびっくり。
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いつもながら装丁買い。
しかし、中身も想定外だった。寝る時間を惜しんで読んだ。続けて2回読み返した。
よい耳を持っている人がうらやましい。クラシックを聴くことは好きだけれど、音の違いには気づけない。でも、音楽を聴いて、情景や物語を想像することは少しできるかもしれない。
ブラームス、ベートーベン、ショパン、リストなどなど過去の作曲家は本当にすごいなあと思う。今でも色あせない。現代も作曲家はたくさんいるのだろう。でも、彼らの創りだす音楽はどれほど後世に引き継がれていくのだろうか。
そんなことをつらつら考えながら読んだ。読めば読むほど、深い味わいを感じられそう。
そして「春と修羅」という曲がどんな曲なのか聴いてみたい。明石さんの宮沢賢治の思想に寄り添ったカデンツァを、亜夜のすべてを包みこむ大地を想わせるカデンツァを聴いてみたい。
久しぶりに読み応えのある物語に出合った。
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恩田陸がとある国際ピアノコンクールを描く、音楽小説。
方々で好評判だが、確かによかった。傑作あるいは名作というより、力作であり、読み応えがすごい。
ピアノ弾きを主人公に据えた作品は漫画では時々目にするし、そこにある天才の描写や、挫折と成長という青春・成長ストーリーも目新しいものではない。しかし、安定と鋭さを併せ持った文章がなすこの作品は、鮮やかでとても印象深い。
また、例えば年増のお兄さんを入れるあたり、物語の幅の取り方も上手い。
音楽や芸術を表現し、読み手に響かせるのは、難しくてセンスがいると思う。バラエティに富んだ作品を一定ペースで書き続けている筆者が書くと、こんなにも安心して読めるものか、としみじみ感動した。
4
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主人公たちが予選、本戦と勝ち上がっていく様子は、三浦しをんの箱根駅伝小説「風が強く吹いている」とも通じるサクセスストーリーでわくわくしながら読めました。クラシックの代表的なピアノ曲がいっぱい散りばめられていていくつかはYoutubeで聴きながら。。。
ずばり2016年下期のベスト!
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この作家の作品を読むのは初めてだが、上手くのめりこむことが出来なかった。どうも物語の「構図」や「意図」に注意がいってしまう読書体験だった。
風間塵の天才性、存在感はともかくとしても無垢を表現するための行動と「台詞」があまりにもマンガ的というか記号的というか、ファンタジー過ぎて、ほかのキャラクター(特にアヤとマサル)もマーケティング的な意図がばっちり見え透き、想定を決して超えない流行りもののアミューズメントを書いてみましたという感じ。
作家の方のご苦労を思うと、うまく乗れずに申し訳ない気持ちである。
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本当に素敵な物語でした。
その一言で終わらせたいくらいに。
国際的なピアノコンクールをモチーフとする。
そのこと自体の難しさを想像すると気が遠くなります。
でも
そこに載せるメッセージの尊さを読者に伝えるためには
避けられないモチーフだったこともすごく理解できます。
恩田さんは 学生ジャズオケの名門
ハイ・ソサエティ・オーケストラで
サックスを吹いていらっしゃったとか。
決して音楽とは無縁ではなかった恩田さんでも
クラシック界のブラックボックスぶりには
手こずられたのではないかとお察しします。
閑話休題。ここからが全力のレビューです。
どなたかも書いていらっしゃいましたが
塵と亜夜のセッションから 物語は大きく動いた
と思います。
ホフマン先生の「ギフト」という言葉の謎が
解きほぐされていく…その過程を そうして
過去の呪縛を自らの意志と音楽への愛で
断ち切っていく亜夜の 塵の演奏に触れるごとに
大きく変化してゆくその姿を
追っていく喜びは もう…言葉になりません。
音楽を外へ…というメッセージには
おそらく多くの方がレビューで触れると思うのです。
なのでわたしは 私の琴線に触れた二つのことを
書きたいと思います。
「春と修羅」のカデンツァに対するマサル 亜夜
そして塵の解釈と演奏には目を開かされました。
宮澤賢治を愛し かつて研究していたわたしには
恩田さんの賢治への深い理解が伝わってきました。
でも。
コンテスタントたちの解釈の中でも 最もわたしの
心に響いたのは 高島明石でした。
だからこそ 二次予選で敗退した彼にかかってきた
事務局からの電話に「よしっ!よしっ!」と小躍り
せずにはいられませんでした。
物語の中で 明石の存在はとても大きい。
塵が「ギフト」ならば 明石は亜夜にとっての
「救い」であり 亜夜もまた明石にとっての「救い」
だったと思います。
そうしてもうひとつ。
この物語の素晴らしさは最後のページに尽きます。
そこには表彰者の名前が並んでいます。
1位から3位までの入賞者の序列と
奨励賞にチャンが入っているという事実は
今のクラシック界の暗い現実を強く反映しています。
そして
明石の受賞は 音楽の未来への大きな希望を感じます。
痛快なのは
1位から3位までの誰もが
このコンテスタントで過酷な予選を勝ち上がり
本選で素晴らしい音楽を作り上げた3人の誰もが
本選のステージでは
賞などよりももっと大きくて大切な
それぞれが目指す それぞれの何かを求めて
自分の演奏を そして互いの演奏を
心ゆくまで楽しんでいただけだったということ。
そうしてそれぞれが
賞ではない素敵な何かをつかんで
コンクールを終えたこと。
彼らが未来においても友人として
互いの演奏を聴き ���れを楽しむ人生を送ることは
イメージとしてあちこちに暗示されています。
そんな素敵な人生を可能にした天才ピアニストたちの
純粋無垢な友情と互いへの敬意こそ
わたしには とびきりの「ギフト」でした。
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上下段組500ページを超える作品だが、長さを全く感じないどころか、終盤は残りページが減るのが名残惜しいくらいだ。
たまに疑問作もある直木賞だが、本書は文句なしだろう。
音楽演奏を文字で表現するという本質的な不可能に挑戦し、成功している。
この本に書かれた曲や演奏を聞いてみたいと、強く思った。
数多の才能がひしめく音楽の世界で、それでも天賦の才能に恵まれた者のみが勝ち残る不条理故に生まれる人間模様が、何よりも印象に残る。
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初読。図書館。ピアノコンクールを舞台にいろんな背景をもった若き男女が栄光を目指して競い合う。OH!なんて爽快なまでの単純な物語!マンガかラノベか!。しかし恩田さんが、圧倒的なまでの筆力で音楽と音楽家を緻密にそして劇的に描き上げる。そのパワーに押し流されるように読むのがやめられない。いつもの恩田さんに特徴的な謎も不穏さも歪みも恐さもかけらもなく、どこまでも清々しいほどのまっすぐさ。かえって「こんな直球書いていいんですか?」と心配になるくらいの新境地。音楽を「読む」快感を堪能できる、今年ベストの1冊。
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ピアノコンクールって大変なんだと、痛感させられた。
普段はクラシックなんて聞かないが、彼らが音楽を通して描く世界を垣間見たくなってくる。
ただ残念なことに、1次・2次・3次と進む毎に、音楽を表現する言葉に新鮮味が薄れ、逆に哲学チックなしつこさも。
塵についてもどんな展開になるのだろう、何をしてくれるのだろうかと期待していたのに、なんか中途半端に消化不良な感も。
塵が父親と一緒に養蜂しているシーンや、ホフマン先生との話ももう少し欲しかった。
とはいえ、500頁2段組の長篇を飽きずに読ませるのは流石。直木賞も納得。
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「夜のピクニック」の恩田が帰ってきた!と言っても過言ではない珠玉の青春小説は12年ぶり(夜ピク以来)の五つ星(笑。こういうのがあるから追っかけがやめられないのです。
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この作者の作品は好きでよく読んでいるが、好評に期待感が募ったものの、序盤だけ読んだ限りではやや薄い印象。
コンクールに入ったら盛り上がるのだろうか…。
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正に傑作。恩田作品としてかどうかは分からないけれど、私には傑作で、読書で最高の贅沢を味わった気分です。「さあ、音楽を始めよう」に涙。こんなにも膨大なイメージの羅列で音楽をここまで鮮やかにうかびあがらせる事ができるなんて。音符を譜面通りに鳴らせば楽曲は弾ける。でも肉付けするのは奏者の音楽性…つまり想像力、イメージ、物語の創作性。恩田さんがピアニストなら相当の実力者だったんじゃないかしら。コンテスタント達が塵の存在で大きく覚醒し変化し、音楽への愛を深める課程は素晴らしいの一言。ラストの順位はもはやオマケ。
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文句なし。面白い!一気読み。
恩田陸さんの、瑞々しさとスピード感はいつもながら。
国際ピアノコンクールの一次予選から最終選考までの物語。
この手の物語だと、選考が進むにつれて描写が長〜くなってきがちだと思うけれど、この作品ではむしろ逆。
コンクールを誰が勝ち抜くのかということより、コンクールという特別な日々の中で、4人のピアニストたちが、お互いの音楽にふれあい、急激に、鮮やかに花開いてゆく過程の物語だから。
亜夜。
マサル。
明石。
そして、塵。
亜夜は、自然も人の営みも全てを楽しむ鳥のよう。
マサルは、山の頂にあって、力強く揺るぎない。
明石は、地上の普通の人々の隣に。
塵は、まさに神の視点から。
世界は音楽に満ちている、と作中にあるけれど、世界から音楽を引き出し、楽譜に表現し、奏でるという、関わったひとそれぞれの在り方によって、また音楽は無限に広がっていくんだと、4人が教えてくれる。
凡人の身では、彼らのようには音楽を受け取る事は出来ないとしても、音楽は特別な力を持つ、素晴らしいもの。
クラシック音楽の知識がないことが、こんなに残念だった事はないかも。
巻末のオマケにでも、4人の選んだ曲のリストがあったら、曲を聴きながらもう一度味わいたいと思う。
もちろん、できることならぜひ、恩田さんの脳内イメージで選んだ演奏で!
それにしても不思議なタイトル。
私は、塵が、地上にあって人の間で音楽を奏でて生きていくためにある両極のもの、と感じた。
人のささやかな営みに愛を感じさせる「蜜蜂」と、神が自然を通して無慈悲な運命を告げる「遠雷」。
どちらにもふれているから、塵の演奏は天上と人の間をつなぐことができるのではないかなぁ。