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シン・ゴジラは今年度の語りたい映画第一位ではないだろうか。そんなシン・ゴジラについて、様々な人々が自説を述べる本。
意外なほど見方は、多くの人の間で統一されているようだ。
当然ながら岡本版「日本の一番長い日」への言及が多かった。(蛇足ながら原田版は良くない。昭和天皇像も間違っている)あと市川崑。
元祖ゴジラの公開は、太平洋戦争終戦から9年しか経っておらず、日本人の共通認識として戦争が身近であり、その中であれを見ることを、非戦争体験者が現代に見ても、完全にはそのメッセージを受け取れない。それと同じく、東日本大震災を実体験していない人がシン・ゴジラを見ても、その表現しようの無い感覚というものは、体験できないのであろう。
「庵野監督の色はこの映画には出ていない。監督色は白だ。これは監督が好きなものを反射しただけの映画だ。」という論に納得した。
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借りたもの。
『シン・ゴジラ』鑑賞後の感想同人誌(みたいなもの)。
『「シン・ゴジラ」、私はこう読む』』( http://booklog.jp/item/16/28154771 )同様、多業種な物書きによる寄稿文は、時に腑に落ちなかったり、共感したりと公平なまでに多様な解釈を楽しめる。
それでも以下の点に関して、著者人は共通しているように思われる。
◆戦争と震災の追体験。
◆『シン・ゴジラ』は庵野監督の独創性がある訳ではない。岡本喜八氏へのオマージュ、自作のパロディ。
◆後半は虚構であり、「ニッポンの底力」なる、日本讚美ではない。
『ゴジラとエヴァンゲリオン (新潮新書)』( http://booklog.jp/item/1/4106106779 )の著者・長山靖生氏の寄稿もあり。映画も解禁となり、前著作からより突っ込んだ印象を受けた。映画における“虚構”と“現実”について……
日経ビジネス『「シン・ゴジラ」、私はこう読む』でも対談されていた石破氏の「何故ゴジラの襲来に対して自衛隊に防衛出動が下令されるのか、どうにも理解が出来ませんでした」に対しての反論もありと、なかなか充実している。
勿論、この本に書かれていることは全てではないし、寄稿している方々にも見落しとおぼしき箇所がある。
Blu-ray発売前でもあるからだろう。
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日経BPがゴジラ本を出したのが話題であったが、あちらが「ゴジラ観察の記録」だとすれば、こちらは「ゴジラをめぐる思索の記録」。といってもその差に大して深い意味はない。
こちらでも、一流の執筆陣がメジャー足り得たゴジラを屈折せずに論じている。赤坂真理氏はあからさまなまでに「日本は米国支配下」であることを確認しなおすし、安藤礼二氏は意表をついて民俗学アプローチではなく生物学的に考察。春日太一氏の「岡本喜八論」も秀逸すぎる。宮台真司氏も相変わらず衆愚を侮蔑しつつゴジラが傑作であることには異を唱えない。音楽評論家の高橋健太郎氏の考察も素晴らしい。
共通しているのは、世のいわゆる「生粋のゴジラファン」たちが、「俺はゴジラは全部見ている。シン・ゴジラはあそこが違うここが違う」と指摘することから出発するのに対し、本書は「これ自体が傑作じゃん」から始まること。経緯を知っていることが村での地位を決める時代が終わり、革命的な作品が新しい知見を呼び込んでしまった。どんな分野にせよ、それは基本的にはよいことだと私は思う。
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2019年1月9日読了。2016年公開のヒット作「シン・ゴジラ」を各界の識者が読み解く本。抜群に面白い映画であったがもちろん単純に「面白かったー!尾頭さん萌えー!」みたいなことを言う識者は一人もおらず、「初代ゴジラとの関係」「3・11の災害との関係」「岡本喜八・市川崑へのリスペクト」「日本・自衛隊礼賛なのかどうか」など読み解く軸がいくらでもある本作を更に深読みした意見ばかりなのだが、概ね「政治的には踏み込みが足りない」「でもゴジラが夜の東京を破壊するシーンは理屈抜きにしびれた」「一般人の見方は浅い」というあたりに全員の意見は集約されるのではないか。ここまで「日本人が語りたくなる映画」ってなかったのかねえ。続編、作られないだろうが庵野秀明以外の監督が新たなゴジラを作るには、それこそ外国との戦争とか「未曾有の災害」が起きない限り無理なのかもしれない。