紙の本
雰囲気が抜群にいい
2017/12/14 22:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
13歳のフランクとその弟のジェイクはその年に、多くの死に遭遇した。緻密な描写ではないのに田舎の街並みや、フランクとジェイクの姿や表情が脳裏に浮かぶのは、ステレオタイプを刺激されたからなのか。一人の子供が事故で死んだということから始まるが、それが大事になることはなく牧歌的な雰囲気で話は進んでいく。ところがあるとき、フランクの一家に悲劇が訪れる。それを皮切りにして、両親の間にたまっていた不満が噴出する。一家がバラバラになる運命をたどり始めたとき、それを救ったのはありふれた祈りだった。
投稿元:
レビューを見る
父の本。面白いよ、と言われて読んでみました。
まだ11歳(だったかな)ぐらいの少年が事件に関わる、その関わり方が上手い。導入というかそうだなぁ、子供ってそう言う感じだよね、という所が至極自然。
田舎町におきた事故と事件。辺鄙な場所で外から来た人への偏見も多そうな地域で色々な過去を持つ者が居て…という前半部分がとても丁寧に語られていき、彼らの生活が目に見えそうな感じ。
謎解きよりも人々の描写が面白かったな、と思いました。
投稿元:
レビューを見る
米国の田舎 60年代? 少年兄弟が主人公、という状況設定だけでもう僕的には超好みなんですが、いやいや 予想以上に良い感じでした。
ミステリーというより群像劇でしょうか。犯人は誰か という単純な?問題ではなく人々の様々な思い・想念が重層的に描写され静かな感動が。。。
英語のOrdinaryは翻訳が難しい単語の一つですね。「ありふれた」というのもありだとは思いますが ほんの少し否定的な語感が強すぎるかもしれません。「普通の」「定例的な」「いつもの」... う〜ん難しい。
投稿元:
レビューを見る
ミステリ小説ではあるのだけれど、読後の感動は、まるで質のよい文学を読んだかのように、静かで美しかった。
こういうミステリーならば何冊でも読みたいが、そうそう現れないからこその傑作なのだろう。
投稿元:
レビューを見る
もはやミステリーというより、カズオ・イシグロのような純文学のジャンルであってもおかしくない作品です。
特に、語り手である少年の父親の存在は、聖職者とはいえ誰にでも公平で公正、家族にとっては時としてそうした態度が冷たく受け取られ家庭崩壊の危機にまで至るのですが、最後まで人を信じる強さで乗り切っていきます。
そうした重厚で繊細な人間模様に、ミステリー的要素が絡んでくるといった按配です。
大きな賞を同時に4つも受賞している力作です。
投稿元:
レビューを見る
60年代のアメリカの片田舎で起こった死に纏わる物語。事故死・殺人・自殺など様々な死が登場するが、本書は家族の絆や少年の成長を描いた清々しい側面が目に付く。
語り部でもある主人公の少年はようやくティーンエイジャーになったばかりの多感な年ごろ。思わず「アメリカのクソガキも似たようなこと考えていたんだなあ…」と共感してしまった。近所のちょっとエロい奥さんに興奮しているシーンは生々しくも憎めない。
所謂ミステリ小説に分類されているのかもしれないが、立派な青春小説だと思う。
投稿元:
レビューを見る
少年が大人への扉を開いたひと夏の出来事を綴った物語。
主人公の心理には無理な背伸びや虚栄心が見えて、いらだつ部分もあった。(それだけ10代のころの気持ちとは離れてしまったんだな)
むしろ吃音で皆に馬鹿にされても人として良心にしたがって生きようとしているやさしい弟のほうに好感が持てた。
家族を亡くした家庭がそれぞれに打ちのめされてしまうところは共感できた。彼らの家庭が崩壊しなくてよかった。うちはそうできなかったから。
感想は、普通。エンタメ小説に毒されてしまったのかしら。
フィールドオブドリームスの映画を見て感激できなかった時の気持ちと似てる。
少年時代への郷愁の気持ちに心がふるえないのかなあ。男のロマンが理解できないのかも。
投稿元:
レビューを見る
お盆の時期に読めて良かったのかも知れない。
人はみんないつか死ぬ。
おだやかに人生を見つめる話。
投稿元:
レビューを見る
これは、この物語の語り手であるフランク・ドラムがまだ13歳の少年で、ミネソタ州のニューブレーメンに住んでいたときの話だ。1961年の夏、彼の周りで3つの死があった。人生の途中で唐突に断ち切られる類の死が、ひと夏で3つも起こるなんてそうそうあることじゃない。
アメリカの小説の多くは、なんというか、言い回しが独特で日本のそれとはずいぶん趣が異なる。風景の描写が圧倒的に多く、子どもは大抵大人びていて、そして宗教が日常と深く結びついていることが多々あるように感じる。
主人公のフランクの父親ネイサンは牧師だから、この物語は神の存在について考える場面が度々出てくるし、彼の2つ下の弟ジャックは吃音を気にしてあまり人前で喋ることはなく、そういう子どもによくあるように非常に繊細で思慮深い。フランクの姉のアリエルは、母のルースから音楽の才能と美しさを受け継ぎ、加えて陽気でやさしかった。
あの夏が来るまで、ドラム家はどこにでもあるような幸福といって差し支えない、ありふれた家庭だったのだ。おそらく。ありふれた家庭にありがちな些細な問題をいくつか抱え続けていたとしても、見て見ぬふりを続けていくのは容易であると家族全員が信じている程度は。
あらすじを言うとすべてがネタバレになってしまうので何も言えない。読むのに多少時間はかかるかもしれないが、とてもよい小説だと思うので是非読んで欲しいと思う。可能であるなら、原文でもう一度読んでみたい。
耐え難い苦しみに直面したとき、一番救いになるものは一体何なのか、知りたいとわたしは切に願う。
やはり人はそのとき、祈ることしかできないのだろうか。だとしたら、わたしのような人間は何に祈ればいい?そのとき誰の名前を呼べばいいのか。
昔、母が難しい不治の病で苦しみながら死んでいったとき、やはりわたしたちは必至で祈り続けた。あれは何に向かって祈っていたのだろうかと考える。
投稿元:
レビューを見る
今月の2冊目。今年の6冊目。
積読だった1冊。日本のミステリ小説に馴染んでいると海外ミステリは癖があると感じます。まさにその1冊。後半から物語が動きます。
投稿元:
レビューを見る
なんか思ってたのと違った(笑)
5人死ぬっつっても2人は関係ないし。犯人すぐ推測できちゃうし。
スタンドバイミーみたいな感じ。
投稿元:
レビューを見る
次々と身近で起きた死が、13歳の少年を、町を、家族を揺るがせてゆく。
当時の不安、いらだち、痛み、そのままに、それを遠くから俯瞰するように見つめる大人となった自分がいる。
そのさりげなさ、距離感が心地良い。
そしてこのラストへ導く空気感。
時を経てこその寂しさと郷愁がしみる。
ミステリーが苦手な方にもおすすめしてみたい。
投稿元:
レビューを見る
北上次郎氏の文庫版解説によると2016年度ミステリが読みたい一位だそうだが、クルーガー(コーク・オコナー・シリーズ)だというのにノーチェックだった(単行本だった?)。
60年代のミネソタ州、独立記念日を間近に控えて浮き足立ってる田舎街で自分の身近に死を感じるフランク兄弟の物語。犯人探しはゆっくりだけど、兄弟の成長物語としては秀逸。汗が出てくる感じ。3.8
投稿元:
レビューを見る
この読了感だ。
思考が宙に浮いたような、静寂の水面に落ちる一滴の雫になったような気持ち。周囲に広がる波紋のように、僅かに風景が波打って、四方の壁とさえ物語の終わりに立ち会えた喜びを分かち合えるような。そんな読書になった。
以下、ネタバレあり。(備忘録)
最後の一文に救われたのは私だけだろうか。
綺麗すぎるまとめ方に関心しつつ、否定することのできない単純なこと。
まずはその一文を記しておきたい。
『彼らは私たちの心の中に、意識の上にいつもいる。とどのつまり、彼らと私たちをへだてているのは、ほんの一息、最後の一呼吸にすぎない』
戦後のアメリカ。退役した軍人たちはそれぞれの戦争を記憶に留め、互いに傷を舐めあいながら、無かったことにはできない死を想っていたんだろう。
牧師の父も例外ではなかった。
芸術家の母、音楽の才能を開花させようとしていた姉、フランク、末っ子のジェイク。平穏な日々に見えた。確かに闇はあった。それでも家族は幸せだったと思う。
アメリカに根深く残るネイティブアメリカンとの歴史問題も垣間見える。
フランク少年の視点で回想される物語。
フランク少年とジェイク少年の活劇といってもいいかもしれない。大人との関わりも見所の一つである。家族も含め、少年たちは大人たちとの関わりの中で、大きな出来事の中で思案しながら複雑な感情を抱くことになる。
戦争が父を弁護士から聖教者へと変えた。そんなはずじゃなかったと卑屈になる母。母の元恋人である盲目のエミール・ブラント、エミールに師事する姉アリエル、聾唖のリーゼ、父の友人ガス、警察官のドイル、ブラント家の若者カール・ブラント、ネイティブアメリカンのレッドストーン。
様々な登場人物が兄弟の夏に登場する。差別や偏見が何を思わせたか。誰かの死が、
少年の死が、男の死が、姉の死が何を別つことになったのか。
家族愛、父の生き様。
彼らの母はただただ平凡だったのかもしれない。
許すことや、怒りとの決別は私には縁がないものだとは思う。
でもフランクの回想を通して『そんな世界もあるのかもしれない』と、ちょっとくらいは素直に考えることになった。
良い読書だった。
読了。
投稿元:
レビューを見る
海外の本格的なミステリ本をめくると、どこでもドアを開くのと同じくらい、あっという間に遠くに行ける。どこでもドア、開けたことないけど。
大人になった語り手が、少年のころに起きた悲惨な出来事を回顧しながら物語は進む。ひとりの少年の死から始まり、なんだなんだ、これから何が始まるんだ、と読んでいくと、しばらくは閉鎖的な田舎町の登場人物と、彼らの関係にページ数が割かれ、それがまた興味深く引き込まれる。だからこそ、訪れるある人物の死に、読み手は大きな衝撃を受け、ちょっと、はやく解決してよ、とまたさらに深くのめりこんでいく。
たまに読む、秀逸ミステリはほんとに気分転換になるしストレス解消になる。自分の意識を遠くに連れてってくれる。読書の醍醐味のひとつだ。