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歌舞伎では、主役をやってじゅうぶんお客を呼べる人気と実力と、そしてまだまだ若々しい引き締まった肉体とを併せ持つ、まさに花盛りな年頃の役者を花形といいますが、いま、「花形」世代といったら、市川染五郎(1973/1/8生)くらいから中村七之助(1983/5/18生)くらいのことを指すようです。
(染五郎さんは幸四郎を襲名するし、もう花形は卒業なんでしょうか)。
この本でスポットが当てられているのはその下の世代。
尾上松也(1985/1/30生)を筆頭に中村橋之助(1995/12/26生)までの若手役者15人に、元NHKアナウンサーの葛西聖司さんがインタビューしたものです。
2016年10月出版の本で、取材時期はその少し前。
1984年5月生の私はちょうどどちらの世代グループにも重ならないのですが、松也さんは早生まれなので同学年で親近感があり、境目だけどどちらかと言えば私も若手…という気持ちで読みました。
…といって、自分の年を歌舞伎界に投影しても何の意味があるかはわかりませんが、それでも「若手の終わりかけ」というお年頃感は、やはり相通ずるものがあるような気がします。
歌舞伎ファンとして楽しく読んだのはもちろんながら、同時代の同世代の彼らと一緒に私もがんばろう的な思いを抱かされたのは、予想外の収穫。
以下、備忘メモ。
・尾上松也。お父さんを早くに亡くし苦労している、ということはなんとなく知っていたが、もがきながら色々挑んだ頃の語り、ぐっときた。
・中村萬太郎(1989/5/12生)。故勘三郎の思い出。細かいことは言わない、基本は「いいんだよいいんだよ」、本番はおじさまの目を見るだけで台詞が出てくる。すごい人だったのだなあ。萬太郎くん不器用そうなところが好きです。
・中村壱太郎(1990/8/2生)。愛之助ブレイクを間近で経験しましたね、の問いかけに、おにいさん自身は全く変わらないところが素敵です、とのこと!上方でよく拝見していたので上方の人と思っていたが、生も育ちも東京なのだそうだ。意外。
・坂東新悟(1990/12/5生)。お父さん(坂東彌十郎)、すごく怖く厳しくて、萎縮しているところがあった(ある?)らしい。ラジオでは別の歌舞伎役者から、昔からおとなしい印象と評されていた。そんな人となりを知りちょっと興味がわいた…。
・中村隼人(1993/11/30生)。イケメン君ですが、そんな特性を自覚してか(?)、片岡仁左衛門様を意識している模様。2015年の大阪松竹座で共演した際にガンガン教えを乞いにいった姿を見て、周囲からも「すごい度胸だね」と言われたとか。仁左衛門様、聞けばなんでも丁寧に教えてくれたそうです。