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アメリカの作家L・M・フィッツジェラルド、2014年発表のYA向け小説。祖父の遺した一枚の絵を廻っての探索の物語り。
ニューヨークの豪邸街にある一番古いボロ屋敷に住む13歳の少女が主人公。引きこもりで生活力ゼロの母親と画家の祖父との3人暮らしでしたが生活を支えていた祖父が交通事故で亡くなり、元々貧乏暮らしだったのが更に危機的状況に陥ります。祖父の最後の言葉「卵の下を探せ」をヒントに古い絵を見つけますが、イタリアルネッサンスのラファエロ作品のように見えるその絵は何なのか・・・。
祖父によって美術的感性を徹底的に鍛え上げられた主人公の少女のキャラが良いし、コミカルに描かれる明るい貧乏暮らしもとても良いです。美術品を廻る蘊蓄も、それほど深いわけではありませんが楽しめます。絵の謎を探求するうちに近所の超セレブの少女と出会い、孤独だった主人公少女の世界が少しずつ広がって行くストーリーにも好感が持てます。
後半、ナチの強奪美術品の話になってからは、何処かで聞いた物語りという感がして、少々興ざめしますが・・・。
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セオとお母さんとおじいちゃんのジャックは、つつましくくらしていたが、ジャックが亡くなった途端、生活費が全く入らなくなってしまった。お母さんは、心を病んで自分の世界にこもりっきりだから、セオがなんとかしなくてはならない。おじいちゃんが残した一枚の絵だけが自分たちを救うのか?絵の謎を追ううちに、様々な人との出会いが孤独だったセオを変えていく…。
絵に隠された謎が少しずつ解き明かされていく過程がとてもわくわくします。友達になったボーディは怖いもの知らずで、セオもどんどん積極的になっていきます。
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1枚の謎の絵をめぐるミステリー。
画家だったおじいちゃんの最後の言葉から、13歳のセオはある絵の謎を解き明かしにいく。
美術に詳しい貧乏なセオとスマホやネットを駆使するセレブのボーディのふたりがなかなかいいコンビ。本や人、インターネット等を使って自分たちでどんどん核心にせまっていく。ナチスのホロコーストやモニュメント・メンなど重くなりがちな歴史的な話も、そのなかですらすらと語られる。美術、歴史、戦争、人…それぞれがとてもうまく組み合わされて、読みやすく楽しいお話。最後のジャックの手紙が泣かせる。
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セオは、美術館の警備員をしていた画家の祖父にさまざまな美術品を見せられ育った。しかし、祖父は卵の下を探せという言葉を残して亡くなってしまう。
数学の問題を解くことに熱中する変わり者の母。住む家こそあるものの、貧乏の極みの生活をするセオと、有名人を両親にもつお金持ちのボーディーと謎解きに挑む。
著者紹介に好きな児童書が「アンクル・サムの遺産」と「クローディアの秘密」を挙げている理由がよくわかる。
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ちょっとできすぎのところもあるんだけど、それを差し引いても、時間空間を越えたスケール感と、それとは対照的にきれいに小さく着地するエンディング、そして明かされる真実の重さなど、とても満足の行く読み物だった。セオの前にとつぜん現れる少女ボーディ、いいよね~。セレブな家庭に育ってるんだけど、それってある意味不自由なわけで、そこの部分でセオと意気投合するというのがとても自然。図書館の人や街の人たちも、すごく人情を感じさせていい。
あ、あと、このお母さんはちょっと変わり者を越えちゃっててやばいよ(^_^;;
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久しぶりにぐいぐい引き込まれる面白ミステリ?だった。
絵のことはよくわからないけど、ある1つの着想から物語を拡げていったことが感じられて、興味深いものがあった。
周りの人達がうまい具合に何かしらの専門家なのはご都合主義的かも。
でも、このくらい気軽に読めて楽しめるのは良いことと思った。
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13歳の少女セオは、ニューヨークのスピニー通りに、働き者の祖父と数学にしか関心のない母の3人で暮らしていた。ある日祖父が急死してしまい、間もなく届けられた祖父の退役軍人年金支給終了の通知で、自分たちの収入が途絶えたことを知る。残った生活費は384ドル。彼女は、彼が最期に残した言葉「卵の下を探すんだ」「手紙が……」「それと、宝物(トレジャー)」「手遅れになる前に」を頼りに自宅の卵の絵やニワトリの卵を飾ってあるところなどを探し始める。
美術館がいっぱいあるニューヨークを舞台に、貧しいけれど美術品大好きなセオと、有名俳優を両親に持つ、探求心旺盛なボーディの二人の少女が古美術とその所有者の謎を追う美術ミステリー。
*******ここからはネタバレ*******
美術ネタがいっぱいで特にルネサンス期の作品がいっぱい登場するし、登場人物も個性豊かで作品を盛り上げる。
最後のところがちょっとうまくいき過ぎ感はありますが、それでも好奇心と探求心とで読み手をぐいぐい引っ張っていく、非常におもしろい本です。
戦争中の美術品の行方や、捕虜、収容所の人たちのことにも触れられているので、ここから関心を広げていくこともできます。
中学生向けで取り扱われていますが、大人も十分楽しめます。
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子ども向けの体裁の本だけど、大人向けのご都合主義ミステリーの比ではないくらいよくできていると思いました。物語の幹の部分もおもしろいし、味付けとしてふりかけられているメッセージもけっこうよくて、たとえば、37ページあたりに書かれている美術品に対する対峙の仕方などには、けっこうグッときました。読んでよかったです。(2017年11月25日読了)
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2017年読書感想画コンクール中学・高校の部の指定図書。
表紙の絵が好みで、読みたい!と思いつつ積読状態になっていた。
これは表紙の魅力を裏切らず、面白かった。児童書というカテゴリーに入れてはいけないだろう。
2014年にジョージ・クルーニーが監督して話題になった映画「ミケランジェロ・プロジェクト」を思い出した…観たかったが観れてない…トホホ。格差が広がる現代社会と人類の大きな過ちである第二次大戦、苦境の中の友情がどちらの時代にも光る。
余談。読書感想画は中学と高校が同じ枠で指定されているのだが、この本は今どきの中学生にはちょっとハードルが高いかもしれない。
というのは、本題までが結構長いのだ。動画世代の子ども達は前置きが長いと、「無理!」となってしまうことも多い。
近ごろのブックトークでは、「続きは、読んでのお楽しみ」では読んでくれず、最後どうなるか教えると安心して読んでくれる…という(映画やゲームのノベライズが人気なのもこのあたり)、これはもう考え方を180度変えないと本離れが加速し続けるであろう…。2019.5.24
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「卵の下を探せ」事故で亡くなった祖父が最後に遺した謎の言葉。祖父の絵の下から現れた古い絵の正体とは?
生活を支えてくれていた祖父が亡くなって、生活の全てが13歳の少女セオが背負うことになってしまう。論文にしか関心を示さない母親を支え、日々の食糧にさえ事欠き庭で自家栽培の野菜を育て、鶏を飼い卵を得る。下を向きながら街を歩き、使えるものを拾う。そんな毎日。
もしかしたら祖父が遺した絵は、そんな生活を一変させてくれるかもしれない。セオはそこに一縷の望みをかけ、偶然出会った有名な俳優を両親に持つセレブ女子ボーディと共に謎に挑むのです。
絵の謎は、ルネサンスから第二次世界大戦時の悲劇へと渡り現在に繋がる。絵に描かれた内容の謎と、持ち主に関わる秘密が明かされていく様に心奮えます。
謎の絵の正体を探るミステリとしても楽しい1冊ですが、それだけじゃないのです。アメリカのYA作品らしいなと思えたのは、物語の中に社会の問題や構造をそっと差し入れている点です。
貧困家庭のセオとセレブのボーディの感覚の違い。でもそんなことは関係なく築き上げる友情。セオに対して辛く当たる大人もいれば、そっと助けてくれる大人もいる。
謎を調べるときにセオが利用するのが、図書館と美術館。図書館では無料で本が借りられる。職員に質問して調べごとを手伝ってもらえる。美術館も払えるだけの金額だけで中に入って、本物の美術品を見ることができる。
セオが動くことでセオが街と繋がっていくのです。謎が解けたとき、セオはこう思うのです。「わたしはこの街の一部になった。そして、この街はわたしの一部になった」孤独で貧困環境の少女に手を差し伸べてくれる大人や社会構造があるよと伝えている。街がセオをひとりにさせなかった。そのことが嬉しく感じたのです。
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祖父と母と、貧しくも心豊かに暮らしてきたテオ。心が不安定な母親に代わり、いろいろなことを教えてくれた祖父ジャックが不慮の事故で亡くなってしまう。ジャックが残した言葉を頼りに、塗りつぶされていた一枚の絵を見つける。この絵の謎解きに挑んでいくのだが、大切な相棒ボーディーと出会い、友情を深めていく。彼女のおかげでたくさんの人の力を借りて、絵の秘密に迫っていく。その最中でテオも知らなかったジャックの過去もわかり、心中穏やかではなくなってしまう。しかし、最後は私も驚きの展開だったし、ジャックが残していた手紙にはテオやテオの母親に対する愛情があふれていた。良書に出会えて幸せだ。
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「ニューヨークのメトロポリタン美術館を庭のようにして育ってきたセオの人生は、ある日とつぜん大きく変わってしまう。生活の支えだった祖父が事故で亡くなったからだ。最期に「卵の下を探せ」という謎めいたことばを残して。手がかりをひとつ見つけるたび、謎はますます深まるばかり。そして、思いもかけない歴史の暗部にまで・・・・・・。13歳の少女が活躍する極上の美術歴史ミステリー。」
「意見が対立し言い合いをしても理由がわかれば納得できる、このセオとボーディの距離感がいい。学校以外の余暇の時間は祖父と美術館で過ごしたセオ。両親とともに各地で暮らしインターネットや家庭教師のもとで自由に勉強してきたボーディ。ふたりはそれぞれ自分の世界を持ち、自分で考え行動できる。セオの世界はボーディによって広がり、ひとりぼちで歩いた街は親しい人のいる可能性の広がる街に変わる。」
(『子どもの本から世界をみる』かもがわ社の紹介より)