紙の本
介護によって追い詰められる
2017/01/09 21:44
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投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
介護によって普通に生きてきた人でも追い詰められ、殺人を犯してしまう。毎日新聞が追ったルポである。これだけのことが起きていながら、日本の介護を取り巻く状況は劣悪化するだけであるのはなぜだろうか
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メディアリクエスト
この国が声高に在宅介護をうたっているのに、実際はお粗末なサービスでしかないのが、伝わってきた。介護者の、とても大変な、そんな言葉では表せないほど壮絶な現実を、官僚は知ろうとしていないのかもしれない。でも私も、なんとなくの知識しかなかったので、勉強していかなければいけないと強く感じた。67歳の母親が一人暮らししてるので、他人事じゃないと思う。
素晴らしい本だった、多くの人に読んでもらえますように。
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ニュースを見ていると、しばしば目にする「介護殺人」の文字。介護への疲れから逃れるために、殺人へと発展してしまう痛ましいこの事件。超高齢化社会を迎えた日本において、1年間に発生する介護殺人の件数は数十件にのぼると見られており、もはやありきたりな事件のひとつとなってしまった。だが、毎日新聞大阪社会部取材班による書籍『介護殺人』(新潮社)を読めば、そんなニュースに立ち止まらざるを得なくなってしまうだろう。介護殺人事件の「加害者」たちを追った本書に描かれているのは、愛するがゆえに殺人にまで追い込まれてしまった介護者/殺人者たちの苦悩である。
木村茂(仮名)は、2011年から連れ添って45年あまりになる認知症の妻・幸子の介護を行っていた。物忘れや徘徊だけでなく、まるで人格が変わってしまったように怒りっぽくなり「ご飯の準備せえ!」と茂を怒鳴りつける幸子。それにもかかわらず、入浴、着替え、トイレまでも、茂がひとりで懸命に介護し続けた。「お前は誰や!!」と言われ、汚い言葉を投げかけられたときには、うんうんと頷きながら、茂は幸子の背中を擦り続けていた。
2012年夏に、幸子はあまり眠らなくなった。夜中に目を覚まし、大声で茂をなじる声に、近所からも苦情が届くようになる。さらに、幸子は、毎晩のように「どこかへ出かけたい」と駄々をこね、茂は彼女を毎晩ドライブに連れ出した。昼は家事、夜はドライブという毎日に追われ、茂の精神は疲弊していく。施設に頼ろうとも考えたが、介護保険施設には全く空きがなく、民間の高級老人ホームは年金暮らしの夫婦に払える金額ではない。茂は「幸子を介護できるのは自分しかいない」と言い聞かせた。
けれども、もう限界だった。
夏のある夜、幸子から激しくなじられ続けた茂は、幸子の首をタオルで絞めて殺害。茂も、死のうと思って睡眠薬を飲んだが、死にきれなかった……。
介護殺人の加害者たちは、被害者を献身的に介護をしてきた人々だ。茂のケースはおよそ1年半だが、数年間、あるいは数十年間にわたって、自らの日常生活を捨てて介護に勤しんできた人々も数多い。施設にも頼らず、自分の手で家族の介護を続けた彼らは、ある日、その責任感に押しつぶされ、殺人に手を染めてしまう。その判決では情状酌量が認められ、執行猶予の判決がくだされることがほとんどだが、誰よりも自らの犯した罪を許せないのは、被害者を介護してきた自分自身だろう。茂は、拘置所でこんな言葉をノートに書きつけている。
「あなたを殺したくて殺したわけではないの。あなたを愛して愛していたのに、あの日はなぜかマイナス思考になっていた。あなたを介護したい自分がおること。自分がしたいが思うようにできない事などがあって、殺して自分も死のうと思って。自分だけが生き残ってごめん」
2015年の国勢調査によれば、65歳以上の人口は3342万人。国では、800万人の団塊の世代が75歳となる2025年をにらみ、社会保障費圧縮のために施設ではなく在宅での介護を推進している。もちろん、在宅介護は、介護者となる家族の生き方をも大きく変える。しかし、在宅介護者への現金支給や休暇取得制度などを導��し、介護者が休息する権利までをも掲げている英国をはじめとする諸外国とは異なり、日本では、介護者をどのように支援していくかという視点を持っていない。その結果、介護に追い詰められた介護者が、愛する家族を殺してしまうのだ……。
誰もが、ある日突然、介護という現実を突きつけられる。もはや、介護は誰にとっても他人事ではない。一刻も早く、この悲しい殺人事件が、日本からなくなることを願ってやまない。
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こんな話読みたくない。と思っている人ほど手に取った方が良い本のような気がしています。毎日新聞の調査報道渾身のシリーズの書籍化です。
老老介護、二重介護など高齢化社会及び福祉を巡る問題は、年々深刻さを増していると思います。書籍の題名通り、人を助けるために介護を始めた家族でさえ、最後は殺人に至るまで追い詰められるこの国の状況は、個々人が改めて認識することから、やらないといけないと、この本を読んで改めて感じました。
今は、全く介護に携わっていなくても、いつかは自分もこのような境遇に陥るかもしれない。と読んでいる人の殆どが感じてしまいそうです。
読み進めていって辛かったし、なにより取材に登場している当事者は、皆さん、ごく普通の市井の人々である事が、事件の重大さを逆に感じさせる構成でした。
最後の章は、何とか介護者の苦境を打破出来るものは無いかと、提言をしていますが、何とも心もとない手段しか現実は無いことが分かります。
国の方針は、社会保障関連費用の増加が要因だと思うのですが、自宅で介護という方向らしいです。
明らかに、今の社会構造に合致していない政策だと思うので、悲しいけれども、介護殺人や心中は今後も増えるんだろうなあという何ともやり切れない思いだけが残りました。
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「介護」、介護内容の差によって、介護者の疲労の程度は「天」と「地」でしょうね。介護を受ける者、介護する者どちらも大変、まして認知症が加わると・・・。家族と介護施設の職員とではまたその在り方在り様に違いがあるでしょうし、かかる費用も大変ですよね。介護疲れによる心中や殺人・・・、あまりにも哀しい出来事です。
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大阪の新聞のコラムからの派生した本。
何故、介護者が殺人を犯してしまうのか?
自分が介護者になった自分が言えるのは。
介護者が救いを求める時=すぐに救って欲しい時
なのだ。
相談して、救って欲しい時は即救って欲しいのだ。
我慢が限界を超えて、すぐに手を差し伸べて欲しいのに。
そこで手続き、入所待ちなどの時間は永遠に感じる。
周りからの励ましや、頑張れなんて意味がないのだ。
介護者のケアは一体誰がしてくれるのだろうか?
もっと、身近に考えて欲しいと思った本。
未だ進行形で答えが出ていない。
前向きとはいえ問題定義だけの内容。
自分は ツッコミが入れられる本 でした。
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両親ないが、自分や夫、妹たちが
認知症になったら…
答えはなかなか出ない、重い問い。
西道先生、早く予防薬作ってください‼︎
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内容(「BOOK」データベースより)
なぜ、彼らは最愛の人に手をかけたのか?―家族の絆が悲劇に変わる「魔の瞬間」は避けられなかったのか。当事者取材で明らかになる、在宅介護の壮絶な現実と限界。
当事者取材がどこまて深くされているのか気になって読んでみましたが やはり当事者の立場になったらそうそう深く答えることは出来ないですよね。
いつかやってくるだろう介護が今の世の中では不安でしかありません。介護する立場から今度は介護される立場にいつかなるであろう自分の事で子供達に迷惑をかけたくない気持ちでいっぱいです。
医療の発達で助かってる部分があるのは確かですが 寝たきりで訳もわからず生き続けていくのはどうなのか...?と考えてる方なので家族には延命治療は必要ないとは伝えています。
日本は平均寿命を伸ばす事に力を注ぐのはこの辺でストップして 国は社会保障費を抑えようと在宅介護を推進するのなら 英国やオーストラリアのように介護者支援の法整備をもっとしてゆくべきだと思いました。
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重い。。。重すぎる。
睡眠って大切だな、もっと社会で考えるべきだけど、自分に何ができるのか?考え込んだ
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最愛の家族に手をかける「介護殺人」
最悪なことだとわかってはいるけど
どうしようもなく追い詰められてしまい
介護者も心が病んでしまい選んだ選択を誰も責められはしない。
うちの祖母が介護が必要になった時、
母がした苦労や生活は本当に凄まじいものだった。
気丈な母が介護に疲れて電話口で泣いたときに
ひどいことに私は駆けつけることができなかった。
でも、この本を読んで「なぜあの時に私はすぐに駆け付けなかったのだろう…」と後悔している。
母は祖母の介護をなんとか成し遂げた。
それはギリギリのところだったのかもしれない。
もしかしたらの悪い選択もあったかもしれない。
「介護殺人」
それは少し歯車が違っただけで誰の人生でもありえることなのだ。
私が自分の両親を介護する立場になった時
私は自分が「介護殺人」を犯してしまうのではないか…
そんな恐ろしさは消えるどころかますます深くなった。
そんな恐ろしさを感じた一冊。
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長寿社会、高齢化社会に制度が追い付いていない現在、介護の現実は厳しい。長期間の介護、介護離職、二重・三重介護…。責任感のある人ほど一人で抱えこみ心身共に追い込まれている。介護殺人は起こるべくして起きている。助けを求めてほしい。
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「地裁が泣いた介護殺人」など、毎日新聞が書いた介護殺人がテーマのシリーズ記事記録。
長い介護の末に殺人を犯してしまった人などに取材をしている。この本の中で介護殺人まで追いつめられているのは不眠、完璧な介護をしようとする生真面目な人が多い傾向。長期間不眠を強いられた介護者はうつを発症すること。
老老介護、二重介護、障害児を半世紀近く介護する老障介護等紹介されていますが、介護の壮絶さはあまり書かれておらず伝わってきません。
家中に沁みついた排泄物の匂い、夜中の喚き声、削られていく睡眠、その状態で家族が1人なら仕事まで…もっと凄まじいものだと思います。
結局は施設入所が良いんだろうけど、お金がない人は自宅で介護するしかないし、怪しい施設も多いし…。
そう思わせることがこの本の目的じゃないだろうけど、読み終わった後心底長生きしたくないと思いました。
早くレスパイトケアとか広めて充実してほしいですね
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長寿って本当に良いのか?医療の進歩は喜ばしいけど、長生きの先にある問題を知ることが出来た。私は長生きを特に意識はしていない。本書を読んで長生きしたいと思う人は少ないだろうと思う。介護家族の辛さ、被介護者の辛さ、双方にはお互いに深い確かな「愛」がある。会社の先輩が50代で90歳の両親の介護をしている。施設は2年待。
身近な問題だ。
現在は介護と無縁でも、当事者の話、体験談は知る機会は必要だと思う。介護保険制度の概要も。
社内教育や学校の現場でも高齢社会についてのセミナー等あればいいなと感じた。
介護殺人。内容はあまりに辛い。自分の価値観は変化した。