紙の本
児童文学の枠に入れるには毒が強い。
2017/01/11 17:06
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投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
乾ルカ氏の作品はざっくりと刺さる。そしてずきずきと刺さったことを主張する。
この作品もそうだ。
おそらくその理由は、登場人物すべてが「何者かでありたい」理想を持ちながらも、そこからずれていることにあるのだろう。
さりげなく東日本大震災に触れられているが、被災者であろうとなかろうと、一つの大きな出来事として彼らが受け止めているように自分も受け止めたいと思う。
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北の大地の片隅に、ぽつんとたたずむ中学分校。生徒は五人。そこに赴任してきたのは、やる気のない若い教師。
廃校までの一年間。それぞれの物語。
青春小説。
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自分が何者であるのか悩み、苦しみながら成長していくのだ。自分にしかない特別な何かを求めて。
でも、それが息苦しさを助長することもある。オリジナリティとか個性とか。そんな言葉に踊らされる必要はない。「普通」であることに固執する必要も「普通」であることに落ち込む必要もない。自分らしく生きられるようになればいいのだ。その「自分らしく」というのがまた厄介なものだったりするのだけれど。
きっとティーンエイジャーが誰しもぶつかる壁とそれをちょっぴり乗り越えていくお話。中学生に読んでほしいな。
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紀伊国屋で見かけて気になって手に取った作品。
この作者の本は初めて読みました。
解説にも書かれていましたが中学生の時に読みたかった作品です。
翌年には廃校になる過疎の村の中学校(分校)の話。
新任教師と5人の生徒がそれぞれ主人公になる章立てで最終章は
エピローグといった感じです。
初めの3章は新任教師、中3女子、中1女子が主人公ですが
その主人公があまりに幼稚で独りよがりで自分勝手な考えのため
ちょっとイライラしました(最終的にはイライラは収まりますが)。
特に超感動ということもなく淡々と読み終わりましたが
この5人の生徒がどんな大人になるのかなぁと思うような
親心が芽生えました。
印象に残ったところは神童の学君が過疎の村という環境のせいで
勉強について大きなハンデがあると弱音を吐くところを
親友の憲太君が諭すところです。
身につまされるというかそんな感じでした。
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目線が変わるとものごとの見え方は全然違う。
ということを切実に感じた一冊。
普通にしてたら一方向からしか見えないわけで。
見えたらこわいけど。
見えなくても、考えられる人になりたい。
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まさに真冬に吐く白い息みたいな小説。
生徒数5人の田舎の分校が舞台。
舞台が舞台だけに、登場人物は少ないものの、風景や場面、キャラクターの心情描写がみずみずしく、どこか切ない。
過激な表現はなくて、むしろ穏やかな時間の流れを感じさせるストーリーで、特に自分と重なるシュチュエーションはないのに、なぜか心に刺さるポイントが多い。鼻の奥がツンとなる、哀しいような、懐かしいような、なんとも言えない感情に襲われます。
思春期のリアルな心の機微を感じつつも、それぞれが己を語る場面では、いやいや、中2でこんな出来た子たちフィクションじゃないとありえない、というツッコミが頭の片隅から聞こえてしまう自分の心の貧しさにうなだれる。
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これぞ青春小説ど真ん中! 青春のイタさも爽やかさも切なさも、とても上手く表現されています。
舞台となるのは北海道の全校生徒5人の小さな分校。そこに林という一人の新人教師が赴任してくるところから物語は始まります。
この教師がまあやる気が無い。彼女に振られた腹いせに司法試験を受けようとする彼は、生徒にテストを受けさせている間に、自分は司法試験の参考書を読む始末。林の歓迎会も仮病を使って帰ろうとします。しかしその仮病を村の久松医師は勘づきつつも、話を合わせます。
この二人の会話のシーンは良かったなあ。過去に囚われる林に対し、責めるでもなくゆっくりと促すように話す久松医師。人生を時間や一日で例える話が出てくるのですが、それが心に染み入る。読者である自分も、勇気づけられているような気もしてきます。
そして前を向き始めた林に対し、ある生徒から投げられる痛烈な言葉。その場面が読んでいて痛かった。まあ、全面的に林が悪いので、こっちが痛がる理由もないのだけど、なぜか林の心情の波長が自分にも伝わってきたような気がします。多分心理描写が上手いのだろうなあ。
そして語り手は中学校の生徒たちへ。学校唯一の三年生・弥生は、本校の生徒たちと一緒に修学旅行へ行くことになるのですが……。
これもとにかくイタい話。修学旅行に行かせるのは学校にとっては大事なのだろうけど、いきなり女子のグループに一人放り込むかね、などと思ってしまいます。
放り込まれた方の心情も痛いほど分かるし、そこも感情移入できるのだけど、それを受け入れたグループ側の言い分もとてもよく分かる。そこでまた、弥生の一種の傲慢さや、ふて腐れた心情が露わになり、これがまたイタい……。
続く章では、自分に霊能力があることに気づいた少女の顛末が語られるのですがこれもイタい……。同級生と彼女の会話のシーンは、自分は絶対に居合わせたくありません(苦笑)。見てるこっちが恥ずかしくなるというか、いたたまれなくなるというか……。
もちろん本人の惨めさはひとしおで、その心情も読んでいてイタい……。弥生とこのみなみという少女の章で、読んでいる自分の精神は大分削られたように思います。
そして、話は男子生徒たちへ移ります。
神童と呼ばれる学とその親友の憲太の話は一転して爽やか! 絵に描いたような友情物語というか、こんな話を恥ずかしげなく書けるのも、この年代の少年たちの物語だからだろうな、と思います。
そして嘘ばかりつくといわれている亮介という少年。
この少年の嘘は他の人物の視点の話でも度々出てきたのですが、その嘘に悪意がまったく感じられないのが印象に残っていました。その嘘の理由は、読んでいくうちに勘づくところはあったのですが、それでも改めて物語の転がし方が上手いなあ、と感じました。
北海道の分校という舞台を活かしての物語作り。それが亮介の嘘の意味をより際立たせます。
そして最終章で視点は再び林に。
それぞれの章の話をつなぎ、登場人物たちの成長を描いているのはもちろんなのですが、特にみなみの霊能力の伏線が素晴らしかった! これはズルいなあ。弥生もあの後どうなるのか、と思っていたのですが、あの経験をこういう強さに変えられるのか、と思わず感心。そしてある事情から分校を離れた亮介の手紙も、また心に刻まれる……。
読み終えて、自然と登場人物たちのその後を想像してしまう小説だと思います。その想像は一歩間違えると、悲しい展開にも転ぶものです。だからこそこの小説のタイトルは『願いながら、祈りながら』なのだと思います。
本を閉じた後、”願いながら、祈りながら”登場人物たちのその後を少しだけ想像する。そんな小説だったと思います。
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中学生にぜひ読んで欲しい本。
大人でも、心に残るものがたくさんあると思います。
乾ルカさんの作品は初めて読みましたが、読んでよかった!!
.................
北海道の過疎地にある中学が舞台の話。翌年には廃校が決定しており、
生徒は5名のみ(1年3名、2年1名、3年1名。)
そこに新任教師として赴任した林の話から、物語は始まる。
林は自分を棄てた彼女を見返すために司法試験合格に躍起になっていて、
生徒のことなど眼中に無い。教師を今すぐにでも辞めたい気持ちは
生徒にもすぐ見透かされる始末。
また、生徒もみなそれぞれ、問題を抱えている。
自分は特別な存在だと思いたくて奇妙な行動を取ったり、
卒業した先輩に執着したり、
周りの期待に応えるために自分を追い込んだり、
その場をうまく収めるために嘘をつくことに慣れてしまったり・・・
マウンティング、中二病、責任転嫁、自己中心性、承認欲求、
他者依存、責任転嫁、重い病。
いろんな問題や試練があるけれど、もがき苦しみ、周りを傷つけ自分も
傷つき、そしてようやく自分と向き合い受け入れ、他者の思いにも気づけた先に、
成長がある。そんな物語。
読めば読むほど、登場人物ひとりひとりがとても愛おしくなった。
彼らのその先を、久松医師とともに見守りたいという気持ちになった。
再読したい本。
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北海道の分校に通う5人の中学生。3年生1人、1年生4人のたった5人だけの学校。その場所でそれぞれがそれぞれに抱えながら迷いながら未来を探す。ああ中学生だなあと思う。たまたまその場でその時一緒になった5人。友だちとは言いにくい。この先はバラバラでもそれでも一緒に過ごした日々は確か。先生もね。未来は自分で作っていけるんだなと思う。
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北海道の過疎の村にある生田羽中学校生田羽分校に、社会科教諭として着任した林武史。
生田羽村は都会からの誘致の甲斐もなく、村民の増える兆しもない。
分校の生徒数はたったの5人で、一年後には本校に統合されるという。
失恋の痛手を引きずりながらこの土地にやってきて、前時代的な風情の分校を目にして今すぐにでも辞めたいと思う、やる気のない林のことを、子どもたちはすべて見抜いていた。
学年でひとりきりで過ごしてきた三年の弥生。
あとの4人はすべて一年で、村長の孫の憲太、『神童』と呼ばれている学、自称霊感少女のみなみ、噓をつく癖のある亮介。
乾ルカさんの作品は、決して温かい言葉だけで埋め尽くされているわけではないけれど、胸に突き刺さるものがあって、強く心に残ります。
北海道の厳しい寒さに耐えながら、自分たちに与えられた現実を受け止めて乗り越えることができた一人の若い先生と、五人の生徒たちのかけがえのない時間に触れることができて、感動で胸がいっぱいになります。
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めっちゃ面白かったけど、話の構成がしっかりしてないがする。そういうのを気にしない人は絶対好きだとおもう。
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あくまでも私の解釈となりますが。
生田羽中学校の生徒5人、+人生負け組新任教師の心の苦悩から『星』を見つけ出す小さな物語。
何も無い田舎。だけど
『生田羽は星を見つけやすい環境にあります。』
各生徒たちの悩みがリアルで、本当に幼い頃の自分も同じ感情を抱いていたような気がして当初の気持ちが蘇ります。
周りより自分は大人だ。周りの子は子供っぽい。
そう思っていること自体、子どもらしさなのに気付かず威勢を張ってみたり。
自分はなにか特別でありたい。
と思い周りとの違いを探してみたり。
はたまた大人になっていく友達の変化について行けず、一人心焦ったり。
今思えばその全ての経験のおかげで今の自分があるのだから、その感情自体が『星』だったんだ。と気付かされた作品でした。
それ以外にもたくさん考えさせられる言葉たちが登場する小説。とても綺麗な言葉がたくさんあった。
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正直に、自分にも生きてる場所にも、子供でもちゃんと考えてる、小さな本当に小さな村のとても大きな話だった。5人の子供達と先生の声、心の声。出だしのやる気のなさ生徒にも見透かされて林先生は実にくだらない女を見返すだけの行き方を選ぼうとする。のと一生を1日に置き換えて20分をくださいと言う久松ドクターが素敵。学と憲人の友情もただ生徒が少ないだけでなんらそんじょそこらのと変わらないむしろ純粋だ。弥生の修学旅行に先輩に辛すぎる体験したけど、そのままを書いてくれた綺麗事のない乾ルカさんが最高だった。
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林武史
社会科教師。生徒総数がたった五人の村立生田羽中学校生田羽分校に着任。三浪の末、教員採用試験に合格。法曹を目指している。
久松良蔵
林が下宿先として紹介された久松医院の主。六十四歳。
後藤主任
五十手前。国語と英語担当。
佐々原
三十半ばの男性教師。数学と理科担当。
松本
村長。
白石弥生
中学三年生。なかなかの美少女。スタイルもいい。
江崎学
中学一年生。ひょろりと背が高く、整った顔を隠すように黒縁の眼鏡をかけている。
柏木亮介
中学一年生。プールから上がった直後みたいに血の巡りの悪い顔色。
手塚みなみ
中学一年生。にきびで顔全体が赤らんでいる。
松本憲太
中学一年生。一番体格が良く、若干太り気味。村長の孫。
真里
林の元彼女。二股をかけていた。
三木
真里と付き合っていた。法科大学院を主席で卒業し、新司法試験にも一発合格した。
今村桐子
弥生の一年先輩。
宮川
本校の教頭。
高瀬
本校の男子生徒。
愛
本校のリーダー格の女子。
稲本
本校の男子生徒。