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中国の古典を全然知らないことを思い知らされた。
有名な西遊記の話だって、この本読むまで猪八戒が天蓬元帥という名で水軍を率いた名将だという設定を知らなかった。
西遊記だって、三国志だって実のところ読んだことがない。
そういう素養があれば、この本はさらに面白くなるのでは。
三蔵法師と孫悟空、沙悟浄、猪八戒は天竺へと向かう。
途中、明らかに妖怪の罠だというのに、猪八戒が余計なことをするから、毎度のパターンで妖怪につかまってしまう。
暗い部屋に吊るされる三蔵法師、沙悟浄、猪八戒は孫悟空の助けを待つ。
その間、沙悟浄は思い出していた。
猪八戒はかつて、天蓬元帥と呼ばれ天界一の名将だったと言われていたことを。
隣でブゥブゥ言いながら鼻息荒い豚を見ていると、そんなのは出鱈目だという孫悟空の意見に同意する。
これまでの旅路で、自分はどこまでも傍観者だった。
そんな傍観者が、猪八戒の過去に踏み込み、過去を尋ねた。
西遊記より沙悟浄、三国志より趙雲、史記より虞美人、司馬遷、そして京科というオリジナルの人物たちによる、主人公にならないわき役たちの短編集。
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中島敦の小説の題材を真似ているだけでなく、文体やスタイルも真似ている。中島敦の遺作と言われても分からないだろう。
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物語の登場人物のその後を想像することはままある。でも本作ほど掘り下げてられていると、只々凄いと感心してしまった。遊び心なんだろうけど、そんな万城目さんがますます好きになりました。
あらすじ(背表紙より)
おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。
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再読。短編集。「序」で執筆動機が、「著者解題」で下敷きとした物語の説明が加えられている。1度目より深く味わえ、再読してよかった。「悟浄出立」での八戒の戦に対する考えや、「法家孤憤」での法治に対する考えが、現代の問題としてもとらえられる。それでもやっぱり「虞姫寂静」が一番好きなのは変わらない。舞姿と心情の描写がまるでその場にいるような臨場感で迫ってきた。
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中国古典の世界から一シーンを切り取った、短編小説5編
「悟浄出立」 唐
「趙雲西航」 三国時代
「虞姫寂静」 秦末期、前漢成立直前
「法家孤憤」 秦
「父司馬遷」 前漢
それぞれ背景とする時代は違うが、すべて、ある一瞬を経てそれまでの自分から一歩前に進む話だった。
余韻だだよう5編でした。
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万城目学は「鴨川ホルモー/鹿男あをによし」にデビュー2連続で唸り、その後はそれを越える作品に出会えていなかったのですが、本作は今までとは全く趣を異にしていて、これぞ新境地!といういう感じ。
最後の「父司馬遷」はとりわけ胸に響きました。巻末の著者解題と併せて読むと、またいいの!
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デビュー前に書いていたものとホルモー・鹿男は全然違うとよく述べておられるが、おそらく前に書いていたものに近いのだと思われる。題材の知識が薄いので楽しめきれていないと思うが、現代を舞台としたこのような小説はぜひ読んでみたい。
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中国が舞台の短編
沙悟浄、趙雲、虞美人、司馬遷の娘、実在の人物(沙悟浄以外)の物語。
史実では無いのか?と引き込まれてあっという間に読破しました。
それぞれの人物たちの、物語を、もっと読みたくなった。
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悟浄出立
天界の名将『天蓬元帥』の成れの果てが猪八戒!?西遊記を読むと猪八戒はトラブルメーカーでお調子者でセコくてスケベ、孫悟空を出し抜こうとする事、数知れず・・・沙悟浄と三蔵に度重なる連帯迷惑をかける。そんな豚が天の川水軍で八万の兵士を率いていたなんて悟浄でなくても信じられないですよね。そんな疑問を八戒に投げ掛ける沙悟浄の話。
趙雲西航
三国志の蜀の名将『趙雲子龍』と張飛、孔明が劉備の蜀奪の時の援軍に向かう時の話、趙雲は張飛よりも年上だったんだと初めて知る。孔明の蜀への憧れと孔明の遍歴を見れば成る程と思える。
カッコいい趙雲では無く渋い趙雲でした。
虞姫寂静
項羽の武は中国史上最強!!劉邦に敗れた敗因は張良、陳平の離間の計による軍師范増との訣別。同時代の名将韓信の将器を国士無双と呼ぶならば項羽の武力は『三千世界無双』と言っていいだろう!
そんな項羽の奥さん虞美人との別れの夜のお話
法家孤憤
始皇帝が皇帝になる前に燕の刺客に暗殺されそうになる話。地図と将軍の首で昔漫画で読んだのを思い出す。李斯が思い描く法治国家は現代において完成形を見るのか?李斯に聞いてみたい。
父司馬遷
腐刑になった人の家族の話!史記の作家司馬遷が計に処され3年後から話は始まる。
万城目学が古代中国が舞台の話を書くというだけでワクワクしませんか?
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万城目さんが書きたかったという、過去の作品をイメージした短編。「西遊記」から「悟浄出立」。「三国志」から「超雲西航」。「史記」から「虞姫寂静」「法家孤憤」。「李陵」から「父司馬遷」。万城目さんらしい雰囲気は薄い。虞姫寂静と父司馬遷が良かった。
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〝西遊記〟〝三国志〟〝史記〟など中国の古典に題材を求め、脇役にスポットをあてて、わき役の目から見た主役という、新たな物語が生み出されました。これまでの万城目作品とはちょっと趣の異なる短編集ですが、著者自身、楽しみながら書かれたのではないかなという気がします。
中国の歴史に関心がない人でも、充分に楽しめるドラマチックな内容ですよッ。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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中島敦オマージュと聞いて初めて万城目学作品を読んでみたけど期待外れだった。表題作に関しては文体は当然真似出来ないとしても、元の魅力であった独白調も採用しなかったのは残念。
他の作品にしても古来様々な形で描かれた人物を別の視点で描いているが、読者の頭の中にあるイメージを払拭するには余りに短か過ぎる。
一番面白いと思えたのが架空の人物の主観で描かれた「法家孤憤」であったのもその現れか。
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『水滸伝』・『三国志演義』くらいしか中国文学は読んだことが無かったので、果たして面白く読めるのか心配だったが、著者が巻末で、各々の作品の簡単な原典の解説と、登場人物の紹介をしてくれていたので、そちらを先に読んでから本編を読んだので、本来の作品を知らなくても、あまり困ること無く読めた。
『虞姫寂静』を読んで、四面楚歌って、ここからきていたんだとか、
『悟浄出立』を読んで、猪八戒と沙悟浄は天界で働いていたんだとか、
この本を読んで、いろんなことを知ることが出来た。
なかでも一番心に残ったのは『父司馬遷』。
グッときました。
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西遊記や三国志、史記など中国の古典の登場人物を取り上げた短編集。
それぞれの物語の一場面を切り取って描いている。
話としてはソツなくまとまっている感じ。文章はとてもまじめ。いつもの万城目さん節はないのでそれを期待していると肩透かしを食う。
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これは本当に万城目氏が書いたものなのだろうか...
と言うのが、正直な第一印象。
中国の古典に題材を取った短編集である。
原典は、西遊記であった、三国志であったりで、
その中の「主役じゃない人」に焦点を当て、
物語を紡ぎ出している。
万城目氏と言えば、鴨川ホルモーだの
鹿男あをによしだとかの、ばかばかしい系
お笑い小説の作者...と思っていた(^ ^;
唯一、かのこちゃんとマドレーヌ夫人を読んで、
おぉ、こんな静かな作品も書けるのか、と
驚いた覚えはあるが...
本作は、もの凄く真面目なのである。
そして、もの凄い「名作感」が漂っている(^ ^;
文章自体は、そんなに「重厚長大」という感じではなく、
割と読みやすいと思う。
もちろん昔の中国が舞台なので、
難しい漢字の言葉は沢山出て来るが...
地の文自体はそんなに「老成した感じ」ではない。
が、本当にすごい「名作感」(^ ^;
うっかり感動しそうになったりする...って、
いや、感動して悪いわけではないが(^ ^;
何せホルモーの作者、本気で真面目に書いてるのか、
どっかに仕掛けがあって騙されてるんじゃ...と、
つい疑ってしまいたくなる(^ ^;
私は中国の古典に明るくないし、
三国志も西遊記もまともに読んだことがない。
きっと詳しい人が読むと、もっと共感できるのだろう。
私が本書を読むには実力不足で...
ま、その「合わなさ」で星一つマイナス(^ ^;
作者のせいではございません、あしからず m(_ _)m