紙の本
まさに身を切る思いで書いたような文章
2023/08/18 19:42
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
辺見庸の紡ぐ言葉は、肉親だけでなく自分自身にも向けられる。まさに身を切る思いで書いたような文章だ。絶対に妥協を許さない。ニッポン及びニッポンジンに向けた書物だ。心して読むべし。
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いわゆる「南京事件」などをが起こった「1937年」という時代について、堀田善衞『時間』に対する考察などを中心に、言及した作品。安倍内閣が進める安保法制や「共謀罪」に対して危機感を覚えている点など、おそらく著者とわたしは軌を一にしているとは思うが、しかしどうにも共感できない面も多い。それは著者が天皇とくに昭和天皇に対してかなりの嫌悪感を示しているということに同意できないということもあるが、しかしそれだけではないだろう。文章の全体を覆っている雰囲気のようなものに、あまり共感できないのである。「南京事件」に対する同時代評のようなものを知れたことはよかったが、しかしもとよりこの事件が一部の右派が主張するような虚構でないということはわかっていたので、あらたに発見があったというわけではない。とくに得るものもなく、「1937年」を「肴」としてひたすら愚痴を聞かされているような感覚になる。第3回城山三郎賞を受賞しているようだが、評価された理由もわからない。戦争について読書を通して学ぶということはきわめて大切だと思うが、類書の多いジャンルでありわざわざ本作を読む必要はないと思われる。
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まずはカバーが山下清の貼り絵に惹かれて購入。
内容は正直難しいと感じるものもあるけれども、
今まで読んだ事の無い視点で書かれている。
同じ人が持つ残忍さと慈愛は状況で変化し、何故そうなるのかが問われている。
下巻を読んだらその答えが分かるのかな…。
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上巻が長くきつくなかなか進まなかった。
何故自らが、存命中の父に問いただすことができなかったことを執拗に想像と状況的な判断で、おそらくこうであっただろうと、父も自分も打ち続けるのか、なかなかその文脈で寄り添う事が難しかった。
下巻になり、戦後70年代半ばまではまだ町中で見かけた傷痍軍人(本書にならうと、存在はみたことがあるからしっているがなんでそこにそのようにおられたかよくわからない小さな自分には、ショーイグンジンだった)
父親のスリッパで殴る発言、虐殺関係者に天皇が栄典、、数々の戦争犯罪行為を表彰栄典などなどされたものは取り消される事もなく、戦犯とされたもののうち今でいう上級市民のような上位のものは許される国政などの華やかなところに戻り繁栄つづけ、、、すっかり忘れていた、昭和天皇のアッソウと、文学のあや、広島の原爆投下はやむをえない、
など少し前ならみんなが知っていたような事を今は自分もすっかり忘れてしまっていて、戦後とか戦後民主主義という言葉の中で戦争を知らないなりに反戦の風景を自分なりに思い描いていたが今はそんな事誰も知らないし反戦とか軍備を持たないとか若い人にはわからないように、恥を知らぬ者たちに支配され長い年月、たかだか70年なのに、わからないように喧伝されこんな世の中になってしまった。
自分が小津安二郎に全く関心もなく好きではない理由もよくわかった。国立映像アーカイブの日本映画史の展示でも感じた通りであった。
空気と記憶の抜け殻、自問もしないし、自答もしない、何事もなく続いていく無責任の系譜。
自らを鞭打ち死んだ父親を鞭打ち、恥じて、
辺見庸が、堀田善衛や武田泰淳に学び続く細々としたもう一つの系譜、辺見庸考え省み慄き恐れ恥じる系譜を意識すること。今を何とかすること。できなくても忘れないこと思い出すこと思い出させることだけでも。