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最初のテレビ放映時、わたしは中学生だったけど、夢中で見てた。面白かったもの。夕方の再放送を見ようと走って帰った学生時代。ビデオデッキ導入後最初に購入したセルビデオもハイジ(高かった)。子どもが生まれて、完全版を再度購入。DVDになったのをまた買った。一体何度見ていることやら、でもそのたびに心から楽しんで「名作だ~」と思う。そのハイジを中心に、テレビアニメ草創期のことが丁寧に掘り起こされている。
ハイジがヨーロッパでも楽しまれていると知り、やはり「本物」には力があるのだなあと感嘆する。「子ども向けならこんなもんでいいだろ」とは決して思わなかった方たちの熱意によって、長く広く愛される作品が生まれたのだということがよくわかった。もはや原作よりも原作(ヨーゼフのいない「ハイジ」なんて)。読みながら、そして読み終わってからもずっと、脳内にあのヨーデルがリピート再生され続けるのだった。
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「ハイジ」のプロデューサー高橋茂人氏の人生を軸に昭和という時代とテレビ、アニメの歴史の一端を切り取った前半と、様々な立場で制作に関わったスタッフの証言を丁寧に拾い集めて記録した後半。どちらも読み応えがありました。アナログ時代のアニメ作りを知るスタッフの高齢化が進む中、アニメーションの作り手の生の声を記録した貴重な一次資料になると思います。著者の幅広く、丁寧な取材ぶりが感じられる良書です。
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黒い縮れっ毛。赤いほっぺ。元気に走り回るまっすぐな瞳の女の子。
長い長いブランコを漕いで雲に乗るオープニング映像に息を呑み、かわいいヤギたちや雄大なアルプスの自然に引き込まれる。
テレビの前で、多くの子たちが釘付けになった。
「アルプスの少女ハイジ」(1974年、全52話)は、一世を風靡した日本のテレビアニメである。
高畑勲、小田部羊一、宮崎駿といった後の巨匠たちが制作に携わったそのアニメは、今日の日本発アニメの隆盛の先駆けともなった記念碑的作品である。
ヒーローものや動物ものなどのそれまでのアニメの定番とは一線を画す、女の子が主人公の「日常」のドラマ。企画段階ではテレビ局からヒットは無理とまで言われていた。
だが蓋を開けてみれば空前の大ヒットとなった。テレビ放映から40年余り、「ハイジ」は世界各国で放送されてファンを増やし、日本でもいまだにDVDが販売され、複数の世代に親しまれている。
その誕生の舞台裏はどうであったのか。キーパーソンの遍歴や、アニメ映画の簡単な歴史も絡めて、丁寧に追った1冊である。
草創期のごった返した熱気の中で、クリエイターたちが時に激しく論を戦わせ、完成を目指して血眼になって奔走した。1人が欠けても成り立たない緊迫した現場で、作画・構成・作曲・音声、各分野の精鋭たちの才気が迸った。それは子供たちに「本物」を届けようとする、真剣勝負の場でもあった。
ハイジを世に送ったプロデューサー高橋茂人は栃木の名家の生まれである。戦時中の北京で幼少時の一時期を過ごした高橋は、欧州各国の租界で「世界」を体験する。
ケンカは滅法強く、大学では体育会系だったが、単純なヒロイズムには憧れはなかった。
後にアニメ企画会社を起こす彼が一貫して手がけようとしたのは、バイオレンスや戦いとは無縁の作品ばかりだった。そして、こうした作品を「世界」に通用するものにしよう、子供たちのために「本物」を作ろう。それが、「ハイジ」を生む大きな原動力となった。
「ハイジ」は、アニメ史上初のロケハンを敢行した作品として知られる。
当時、ハリウッド映画で描かれる日本は、イメージ先行で、中国と混じり合っていたり、着物の着方がおかしかったり、噴飯ものの描写が多かった。高橋らはこうした偽物を作ることを嫌った。そのためには、何よりもまず、作る側が本物を知らなければならない。
制作費が限られたアニメでは、異例の決断だった。実質10日間の強行軍で派遣されたスタッフはスイス各地やドイツ・フランクフルトで、あらゆるものを見逃すまいと、スケッチし、写真撮影し、あるいは記憶に刻みつけた。
こうしたロケを元に描き出された山小屋や家々の描写は、図面を元に実際に建物が建つほど精緻であったという。アニメは実写と比べて存外背景をごまかしているものも少なくないというが、この作品ではそうした手抜きはなかったのだ。
原作の「ハイジ」(『ハイジ』(ヨハンナ・シュピーリ))は、実は、かなり宗教色の強い作品である。
アニメの「ハイジ」制作にあたっては、この宗教色をどうするかが���きな問題となった。日本ではキリスト教がそれほど広く信仰されているわけではなく、「神」に対する信仰が日本の子供たちにどの程度受け入れられるか、不透明であったのだ。制作者らは、慎重に注意深く、原作の味わいを保ちながら宗教色を薄めていく。
その代わりのように、アルムの山小屋の側に立つ樅の木がハイジの心の支えとして象徴的存在となった。
結果的には、この脚色は、宗教を問わず世界各国に受け入れられるという意味で、作品の普遍化の一助ともなった。
アニメの脚色としてもう1つ重要であったのは、「アイキャッチャー」として動物を取り入れたことだった。無愛想だが頼りになるセントバーナード犬、ヨーゼフは物語に奥行きを与え、そしてもちろん、ぬいぐるみとなってキャラクター商品の売上にも貢献した。
当時はまだ、アニメーションがデジタル化される前である。彩色にはアクリル絵の具が用いられたが、乾くのに時間が掛かった。前の色が乾かないと次の色は乗せられない。「ハイジ」制作は常に時間との戦いであった。総勢80人のスタッフが毎週届く何千枚ものセルに懸命に色を塗った。
何かにつけて手渡し、手作りの時代であった。ファックスも電子メールもない。原稿は誰かが運ばなければならない。絵も微調整しながら動かして撮影していかねばならない。
ヤギたちが行進しながら最後に小屋に入っていくかわいらしいエンディングをご記憶の方も多いだろう。当初、これをタイムテーブルに沿って作ってみたら、途中でヤギが前のヤギを追い越してしまう。少しずつヤギの動きをずらしながら、調整を続け、90秒のものを作るのに、何と6時間以上を要したという。
「ハイジ」制作の現場は過酷だった。
だが、携わった人々は口を揃えて言う。「ハイジ」の仕事は幸せな仕事だった、と。
「本物」を作ろう、「本物」を届けよう。
作り手の熱意は、確かに受け手に伝わった。
「ハイジ」はいまだに多くの人に愛される、幸せな作品である。
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アナログの時代だからこそ
できなかったこともあった
でも、
アナログの時代だからこそ
できたことがあった
何もかも、なかったからこそ
一から作り上げていくしかなかった。
どんな仕事にも言えることだけれど
その創生期には、
どれほどの苦労があり、努力があったことだろう
「ハイジ」というアニメーションが
生まれるその過程の中に
日本人が持ち続けてきた矜持がある
これからの日本が
見失ってはいけないモノが
世界に位置していくために必要なモノが
ここに綴られている
なぜ、日本のアニメーションが
世界に向けて流布していくのか
わかったような気がする
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日本アニメの名作「アルプスの少女ハイジ」。それがどのように生まれたのか、プロデューサーの高橋茂人を中心に、高畑勲、宮崎駿、小田部羊一など関係者への取材を丁寧に重ね、その熱気と感動をあますところなく描く。「ハイジ」をもう一度見たくなった。
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「アルプスの少女ハイジ」。家族に大ファンがいるので、付き合ってよく観た。作り手、特に生みの親である高橋茂人氏の熱意が伝わってくる。
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「大人の本気」は子供にきちんと通じる。
「ハイジ」をめぐる人物史中心の書籍だが、原画やスコアなど貴重な資料もあり、天地人を得た奇跡的な作品だと改めてわかる。
少し前にAMAZONで数十年ぶりの視聴をしたが、大人になってから鑑賞すると、細やかな表現と歴史的背景まで盛り込むリアリティに、これほどまでに素晴らしい作品だったのかと真に驚愕する。
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「アルプスの少女ハイジ」といえば高畑勲、小田部羊一、宮崎駿ら「現場」のメインスタッフに焦点を当てた「語り」が一般的で、本書でももちろん彼らの超人的な仕事ぶりに言及しているが、本書の真の主役は企画者・プロヂューサーの高橋茂人である。高橋のライフヒストリーの中から「ハイジ」が生み出される経緯を明らかにしている点は目新しい。ただし、訴訟にもなった瑞鷹の経営問題・著作権紛争については相変わらずぼかされており(現在もいわゆる「世界名作劇場」は公式には次作「フランダースの犬」以降ということになっている)、その点で物足りなさが残る。
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【由来】
・図書館の岩波アラート
【期待したもの】
・ハイジで岩波というのも面白そう。
【要約】
・
【ノート】
・斜め読みプラス目についたところを拾い読み。
・高橋茂人というプロデューサーがムーミン、ハイジをうみだした。トーヴェ・ヤンソンとも生涯親交があったと。高畑、宮崎駿も関わり、「とても幸せ」だったと語るハイジ。「アン」は違ったの?と思ってしまうのはファンゆえのひいき目か。
【目次】
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ハイジのことだけだと思っていたら、テレビアニメの歴史からムーミンのことまで様々なことが書いてある。
したがって、日本のテレビアニメーションの歴史を製作者から調べるためには必読となるであろう。
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制作から46年を経過したいまになって、はじめて視聴したアニメ『アルプスの少女 ハイジ』に感銘を受け、これほどの傑作がどのような背景で生み出されたのかに興味を持ち、こちらに当たりました。
構成としては大きく2部に分かれており、第1部は統括プロデューサー高橋茂人氏の半生を通してアニメ版ハイジという企画がどのような経緯で構想されたかを探り、第2部ではアニメ作家たちを中心に実際の制作の経緯が描かれています。
筆者の目を通してわかるハイジ成功の主な要因はやはり、多くの若く優秀なアニメ作家たちを集めることができたことと、彼らの熱意をエネルギーにしたハードワークが1年間にもわたる放送にも関わらず高品質なアニメを支えたことが言えそうです。
企画の立ち上げから制作の課程を追った本書は、ハイジ誕生の経緯に満遍なく当たりバランスよく仕上げられてはいますが、あくまで全容を捉えることが主眼とされているため、決して高畑勲や宮崎駿といったアニメ界の巨匠たちの若き日の姿を深く掘り下げたものではありません。
もっとも大きく取り扱われている人物としてはやはり、あとがきによると本書のきっかけとなり第一部の主役である高橋茂人氏でしょう。本書は十か月にわたる取材のあとに出版を待たずに亡くなった氏に捧げられた追悼本とも言えるでしょう。