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処女作にして書き下ろし?と思ったら朝日時代小説大賞最終候補作とか。
平安までの古代が舞台だが、単なるファンタジーに終わっておらず、(少々くどいほど)枠組みがしっかりしていて、十分楽しい。
一つの枠組みは右大臣藤原道長と左大臣藤原顕光の氏の長者(権力)争いで、七夕の相撲会という宮中行事での勝負することになる。顕光には邪悪な勢力(芦屋道満が見え隠れする)が付きいており、道長には古希を過ぎた安倍晴明と鬼を斬った渡辺綱が付いている。
もう一つは千年遡った垂仁天皇の御代の野見宿禰と当麻蹴速相撲勝負で敗れて、領地を取り上げられ追放された後者の子孫である播磨の城牟礼一族が、勝者の子孫である秋篠の里の聖なる力士たちの千年の恨みを晴らそうとする。前者が顕光を利用し、後者は晴明に見いだされる。
この聖なる力士たちの力が凄い。四股を踏めば大地の穢れを払って清浄にする、まだ若いが百年に一人の神の子と言われる出雲は、鬼見(神霊が見える)だけでなく神と相撲を取ることもできる。
神武東征で敗れた物部王権の残党が銅鐸の音響を相手の神経に対する攻撃の武器にしたとかで、城牟礼一族がそれを再現したりとか、江戸の時代小説にはできないことをいろいろやっていて面白い。
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伝奇のいい匂いがします。夢枕獏の匂いに通じるものがありました。
いや、ずっとわくわくして読んでました。獏さんなら、単行本5冊ぐらいの分量になりそうだな。
アクションあり、ロマンスあり、陰謀ありでおなか一杯。そこにさらに、歴史の真実を語ろう、と持ってこられては降参です。
いやいや、面白い作家さん知ることができてうれしい限り。
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http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2017/03/post-6393.html
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「安倍晴明」「渡辺綱」「物部王朝」となると「またかよ」と思わざるをえない古代ファンタジーでは使い古されたネタだが、物語の柱を「相撲」(!)にすることで新機軸を打ち出そうとしている。個々のアイデアは面白いが、主人公はじめ登場人物が世界を切り開くというより、壮大な世界観に飲まれているため、ストーリー展開自体は王道なのに爽快感はない。相撲が実質「異能力バトル」になってしまったのも残念。