投稿元:
レビューを見る
文庫のページの感触を確かめながら読む。
感動的な物語と思う一方で、製紙工場復興にあたった人々はまだ恵まれていたんじゃないかと。
彼らの様に親企業の支援もなく、生活の再建すら困難な被災者が多かったんじゃないかと思っている。
書かれた内容以外にも思いが至る本。
投稿元:
レビューを見る
話題になっている文庫なので躊躇なく購入。
ハヤカワノンフィクションだったし。
しばらく積読の状態でしたが今日読んでみました。
自分は出版社ではたらいた経験があるので、
紙へのこだわり(とくに装丁家のこだわり)は理解していましたが、
ここまでこだわって作っているのか、というのが率直な感想でした。
彼らが自分の仕事に誇りを持っていることが伝わってきました。
すばらしいです。
震災についての箇所は生々しくて、これもとてもすばらしい。
ただちょっと文章が雑誌くさいというか期待はずれというか。。
ハヤカワノンフィクションって科学者とか心理学者とか、
学者が書く本が多いのでそれはそれで割り切って読めるのですが、
今回はプロってことで期待して読んだのですがちょっと違うかなと感じました。
解説もあらすじを追っているだけで途中で読み飛ばしたし。
でもおすすめ。
投稿元:
レビューを見る
テレビや新聞の写真には死体は映らないし、バットを持って店や自販機を壊して回る人も直接出てこない。家族や知人や家や街を失った人たちの心の中は想像するしかない。
日本製紙石巻工場の再開を軸に書かれたこの本は、関わった多くの人の言葉を拾い上げている。かわいそう、お気の毒という同情だけでなく、災害のリアルを少しでも想像できた気がする。そしてもちろん、困難の中奮闘する人たちへの応援、熱い気持ちが満ちてくる。
投稿元:
レビューを見る
ドキュメンタリーですが、妙に感情に訴えるので違和感が。
まぁ、紙業界の事情が分かったのは面白かったけど。
投稿元:
レビューを見る
震災直後、ある大手出版社の編集者から、「震災で紙の工場がやられてしまって、本がでなくなるかもしれない」と聞いた。本にかかわる仕事をしているので、DTP屋さんが都外にあることは知っていたが、紙の工場が東北にあることは全然知らなかった。
その編集者は、「でも、うちは〇社ですからね。紙が入ってこないことはありません」と言う。そこはかとなく漂う、大手出版社の自信みたいなものを感じて、ある種複雑な思いを抱いた覚えがある。
本書は、東日本大震災で被害に遭った紙工場が、わずか半年で再生に至るまでのノンフイクション。誰もが「ムリ!」と思った再生計画を、見事にやってのけた人たちの思い、プライドなどが克明に描かれる。
著者の佐々氏が編集者と、「本は紙じゃなくちゃダメだよね」といつも言ってるのに、その自分が紙のことを、まったく知らなかったとの記述がある。私もまったくその通り。恥じ入りながら読んだ。
また、当時、日本人は災害に遭ったときでさえつつましいという、美談仕立てのような報道もよく目にしたが、実はひどい状況もあったことも書かれている。
本が好きな人、本にかかわる仕事をしている人、そうでない人も、読んでおきたい、読んでおかなくちゃいけない1冊。
投稿元:
レビューを見る
311で被災し、一度は完全に止まり、一度は死んでしまった日本製紙石巻工場。それは石巻という街を支えるシンボルだった。
石巻工場ではアジア最大級の機械(N6とN8)を持つ工場で、この工場の操業が泊まると、文庫本、漫画などの雑誌類等々の紙が調達できなくなる。
石巻のためにも、日本の出版業界のためにも工場を復活させなければならない。
身内や友人を亡くし、家なども失い、泥と瓦礫に埋まって、製紙に必要な電気も水も絶たれ、どん底に置かれた石巻工場の人達が、泥を手作業で掻き出して、文字通り工場を自らの手で復活させるまでの1年を取材したノンフィクション。
単なる美談だけではなく、震災直後の治安の乱れや、一人一人の思いのぶつかりも出てくる。決してヒーローや英雄ではない、「石巻工場の人たち」や協力会社の人たちが自分たちの街のために、工場を復活させようという思いがそこから感じ取れる。
1年後、工場の巨大な機械が復活したときの筆者の言葉が重い。
「紙には生産者のサインはない。彼らにとって品質こそが、何より雄弁なサインであり、彼らの存在証明なのである」
投稿元:
レビューを見る
何気なく読んでいる本って、こんなにもたくさんの職人さんたちの手で大事に作られたものなんですね。ますます紙の本を愛したくなりました。
投稿元:
レビューを見る
震災で壊滅的な被害にあった日本製紙石巻工場が再稼働にたどり着くまでを綴ったノンフィクション。
期限を半年と決めて再稼働を目指すものの、工場、周辺地域、インフラが壊滅的。
瓦礫の掻き出しからのスタート。
復興するという強い気持ちと、美談ではない現実に心を打たれる。
投稿元:
レビューを見る
津波で壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場の再生の様子を追ったノンフィクション。
発売当時から気になっていたのだが、読む機会がないまま、12月3日に石巻に行き、見事復興を遂げた石巻工場の様子を見て、すぐに手に取った。
この本を読んでから、石巻に行きたかったが、実際には行った後に読んだ方が、地理や地区名も頭に浮かび、当時の状況が鮮明に想像出来る。
普段、本を読んでいて、出版社ごとに紙が違うことはもちろん気がついていたが、こだわりがあることは初めて知った。そして、その4割が石巻工場で作られていることも。
出版不況と言われる世の中。しかし、震災に打ち勝った強い精神で、石巻工場の方々にはこれからも頑張っていただき、本と言う形の紙を届け続けて欲しい。
投稿元:
レビューを見る
あれからもうすぐ、7年になろうとしている。
壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場。
それが半年後には「奇跡の復活」を遂げる。
本書は、その貴重な記録である。
出版文化を支えている自負とともに、製紙機にも子どものように、魂があるもののように接する工員たち。
こんな時に野球をしていていいのか、と自問しながら、弱小チームの立場から、都市対抗野球のベストエイトにまで進出した日本製紙石巻野球部。
こうした話が感動的なのは言うまでもない。
本書では、一方で、震災の闇も描かれている。
コンビニや個人商店を襲う人々。
その中には生きるためにやむを得ず、というわけではない人も大勢いたとかいう。
こういう人々に疑心暗鬼になったり、少しでも恵まれた人を妬み、攻撃する人々。
そして、やはりあの大災害の描写は、文字で読んでも心がえぐられるような痛みを感じる。
あの頃、私もテレビで水に飲まれていく町を見たはずだ。
無論、痛々しい気持ちで見ていたけれど、あの水の中にたくさんの人がその瞬間、いることや、命が失われていく瞬間であることを考えることもできなかった。
瓦礫の中に閉じ込められたまま、延焼してきた火に飲まれた人が、どんな叫びをあげていたか、想像もしなかった。
想像できなかったのではなく、しなかったのだと思う。
心が麻痺してしまったかのようだったのだ。
安全な場所にいたにもかかわらず。
この本を読んでいると、感動よりも、そんな当時の自分を思い出す。
あの大災害の中でも、人のことを考えて行動した人がいたことに救われる。
投稿元:
レビューを見る
震災の翌年の河北新報で「どれほどこの日を待ち望んでいただろう」というキャッチコピーの日本製紙の広告を見たことがあります。この本によると2012年3月26日のN6マシン再稼働を伝える新聞広告だったんでんですね。ものすごくでっかい機械を背にして作業服の男たちが長い巻物のような白い紙を持って立っている、そんなビジュアル。まだ裁断されていない生まれたての一枚の紙をみんなで横一列で持っている、歓びと誇りを感じました。本書は3・11からその日を迎えるまでのの壮絶な再生の記録です。題名の「紙つなげ!」にはふたつの意味が込められています。ひとつは「通紙」、全長111mにもなるマシンの中でとスムーズに「紙をつなげる」作業。つまり紙を高いレベルで生産できるようなになるということ。もうひとつは木や古紙からパルプへ、パルプから白い紙へ、白い紙から出版物へ、という本という文化を繋いでいくということ。そう、本書はビジネスがテーマではなくカルチャーがテーマなのです。だから、読んでいる最中から、この文庫の用紙の色、香り、触感、捲れ方に改めて気づく、五感としての読書体験を発見させてくれる本です。しかし、ビジネスとしての出版業界の市場規模は2017年で1兆3700億円、そのピークだった1996年の52%、半減しているという数字もあり、書籍の電子化が東日本大震災以上のダメージをもたらしているとも言えます。「紙をつなぐ」が文字通り「紙」をつなぐことなのか、出版という事業が生み出す「コンテンツ」をつなぐことなのか、新たな戦いも進行中なのだと思います。願わくば「紙」の豊かさが読書の豊かさと同義語である時代がもっともっと続きますように、と願っているのですが…
投稿元:
レビューを見る
お薦めの一冊。
石巻湾のすぐ近くにある石巻工場は東日本大震災で壊滅的な打撃を受けました。震災後の様子を撮影した写真が本書に掲載されています。それを見ると、よくも工場を再開できたものだと驚くばかりです。
震災から立ち上がり、工場再開までの過程が丁寧に書かれています。本を待つ人達のために絶対に工場を再開させるのだという従業員達の熱い思いに時には涙しながら読みました。
震災当時の様子も描写されていて、美談ばかりではなく――震災後にあった略奪についても書かれている所も――「極限状態の人間の弱さと醜さ」(池上彰)もまた知りました。
でも、やはりこの本を通して思うのは、人の気高さ、そして紙の本の魅力。
本にはその本が出来るまでに関わった全ての人の思いが込められている。この本に出逢えてよかった!
http://mytribute12lord.blog.fc2.com/blog-entry-15.html
投稿元:
レビューを見る
あの津波の日から、紙が少なくなった。
あの場所に、紙の工場があった、というのを
初めてしりましたし、こんな状態だったのも
初めてしりました。
判断、行動、全てにおいて、一瞬で下さなければ
大変な事になっていたでしょう。
それからの惨事、それからの世間の目。
確かに近くには物資が…でもこちらには、と見えれば
不公平だ、と感じて文句がくるでしょう。
平時ならば、それが職場からだ、と考えますが
有事では冷静にならないものがある。
そして…住宅に押し入る人達。
辛い現実に、悲しいものまで突きつけられた気分です。
そんな中での、工場の復興。
降りてきた命令。
無理だと思っていても、何か目標があった方が
人間立ち直りやすいものです。
投稿元:
レビューを見る
震災記+プロジェクトX+ハードしての本のうんちく。
各要素がそれこそ紙の繊維のように緻密に絡み合って、精妙なドラマを紡ぎ出している。
正直、プロジェクトX的な『ド根性で何とかなる物語』は好きじゃないし、サクセスフィニッシュありきの美談仕立てもどうかな?とは、思う(後半はあまりにも駆け足すぎるし)。
――けれど、これでいいんだ。
復興できずに消滅した工場・街の話では「(わかりやすい)感動」は生まれない……。
それじゃ、みんな読まない。
読まれなきゃ、震災の教訓も紙文化も衰退するばかり。
地元・石巻はともかく仙台、宮城、東北にとって日本製紙工場の復旧がどれだけ心の支え・復興のシンボルになったか、わからない。少なくとも仙台市民である自分も、この本が出るまでこういう顛末があったということすら知らなかった。
でも、いい。
天災にせよ戦争にせよ、とにかく心に訴えるドラマ・物語に形を整えておかなければ、いずれ風化してしまうだろう。
略奪とか無責任な風説流布とか詐欺とか、あえてドラマに傷を付ける逸話を盛り込んだのも、よかった。
絆とか日本人みな礼儀正しい神話とか、あくまで理想・フィクションであって、多かれ少なかれ現実とは異なる。
まあ、彼ら悪人を擁護する気はさらさらないけど、そのバイタリティにはいささか関心せざるを得ないということもあるし。
工場やライフラインを復旧させる・支援物資を届ける・負傷者を救い出す・死者を回収する、という正のバイタリティにも頭がさがるけど、ああいう場面で悪行に走るという負のバイタリティにもまた恐れ入る。
不謹慎なごちゃまぜかもしれないけど、ある意味どちらも「(体力的にも、復興後を信じる精神力的にも)強い」人たちだなあ、と。
自分自身あの頃を思い起こせば、とにかく萎えきっていて、食品・金銭はもちろん宝飾品をくすねようとか、夜中に外をうろつこうなんて(本書ではあんまりふれられてないけど、何日間もでかい余震が繰り返されていたなかで、だ)、とうていありえなかった。
大半の人間は良くも悪くも何もできず、ただ呆然と暗然と「待つ」だけだった。
正邪両面、どんなときでも「動ける」人たちが存在するから、世界というものは転がっていくんだなあ。
(一応断っておくと、(海岸地域からは離れているということもあるけど)少なくとも自分の見た限りでは当時一切の悪行はなかった。物の奪い合いも、列乱しも、悪口も。
略奪なんて、もともとその素質のある人いがい、どんなに追い詰められてもやらかさないものです。)
とまれ、何年もおかず熊本でも大きいのが来たように、この地球上どこに住んでいても絶対安全ということはありえないわけで、本書のような作品に触れることで時々は「そのとき」のことを考えておきましょう。
水とかの備蓄(ほんと、喉の渇きというやつは悪夢そのもの。経験しなきゃわかりません)等はもちろん、いざそういうシーンに置かれて、何をするか? 何をしないか?
……人間としての有り様を問われます。しっかり考えておきましょう。
「こんな時だから」と言い訳をしたって、後になれば、はたから見れば、通用しない。ネットで叩かれるし、本書みたいなところに書かれるし、ずっと人の記憶に残る。悪行は必ず自分を傷つける結果になるでしょう。
……とかなんとか、震災関係の文章に触れるとどうしてもこう、内省的になっちゃうな……(+_+)
それはそれとして、「紙の本への愛情」を描き出した点でも、本書は出色だった( ´ ▽ ` )ノ
たしかに昔の本と今の本はまったく違う( ´ ▽ ` )ノ
角川(オレンジ)文庫も、言われてみれば転換点があったね( ´ ▽ ` )ノ
表紙が変わったあのときかな?( ´ ▽ ` )ノ
「余白を読む」なんてよく言うけど、じっさいページを開いたとき目に入るのは10%の活字と90%の余白=白紙( ´ ▽ ` )ノ
読書とはページ上の活字を目で舐めること( ´ ▽ ` )ノ
舌が引っかからないよう、どこまで存在感を消せるか、が紙面の最大使命( ´ ▽ ` )ノ
とはいいつつ、ときとして目にとまる、日差しにちらちら反射するケバ、細かな繊維、あれもまた紙の本の味わいだよね( ´ ▽ ` )ノ
正直、今後数年がデジタル化の最終転換期、おそらく我々が最後の紙本世代ということになるんだろうけど、それもまた時代の宿命( ´ ▽ ` )ノ
紙本だって、石版や羊皮を駆逐・抹殺してきたわけだから( ´ ▽ ` )ノ
出版産業がつづくあいだは、紙本の手触り・匂い・温みをありがたく楽しもう( ´ ▽ ` )ノ
佐々さん、初めて読んだけど、さすがの出版社直々のご指名(「最初早川から連絡が来たときは『SFを書け』と言われるのかと思った」って、どっかのインタビューで答えてたな)( ´ ▽ ` )ノ
細大を網羅する、たしかな筆力( ´ ▽ ` )ノ
またなんか入手できたら読んでみる( ´ ▽ ` )ノ
2019/06/20
投稿元:
レビューを見る
2019年9月11日読了。
久々の星5つ。
日本製紙石巻工場 8号マシン。
日本製紙では日本の出版物に使われる紙の4割を製造しており、その主力がこの工場の8号マシン。
そう、石巻工場は東日本大震災の津波で壊滅的な打撃を受け、工場は長期間の停止を余儀なくされた。
石巻工場が止まると言うことは、日本の出版物が止まると言うこと意味する。
冒頭は3月11日に石巻工場で何があったかではじまる。
津波の被害や現場の状況は私たちがテレビから知り得ていないが、当日の状況の細かい描写は今でも胸が痛くなる。
そして、工場再建に向けて目標を持つことの大切さ、目標に向かう人たちの力強さ、復興現場での苦労、何気に触っている本の紙の奥深さ、ページをめくる手が止まらない。
再読したいし、多くの人に勧めたいが冒頭の震災当日のシーンは再読が辛くなるくらい私たちの想像を超える辛さがあったんだと思い知らされる。