紙の本
災害、震災を綴った書物には、できるだけ対峙したいと改めて
2020/12/18 15:25
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
故郷を襲った、東日本大震災関連の書は、気づけば必ず読んでいる。その意味で、遅ればせながら読了。あの日々、多くの雑誌が薄くなったのを思い出し、ああ、こんな苦労もあったのかぁ...と。製紙工場の復旧は過酷を極め、長年勤めた現場の人々ですら復旧は無理と感じ、感じながらも、奇跡のように短い時間でそれを成し遂げた事実は、感動的である。
読了後、何年たとうと、あの日以降今も出版され続けている震災関連書物に対峙することは続けて行こうと思う。それは、本という落ち着いたメディアを通して、静かにヒトの話に耳を傾けることも「防災」であるな…と、ふと気が付いたから。
紙の本
紙づくりの復興
2024/01/17 16:38
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災により宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場が被災し、紙づくりができなくなってしまった。文庫やコミック誌などの書籍を作れるなくなる危機的な事態が出来した。発災直後から工場が復興するまでを、会社や地元の多くの人へのインタビューをつなげて作られたノンフィクションだ。紙の本のもつ食感や香りが書を読む読書家に愛されるのだが、製紙工場の存在を、この書で、初めて強く意識することになった。「立ち腐るままに終わらず震災忌」大きな災害の度に思い出さずにはいられない。
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投稿者:悟空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災から現在まで、いかにして日本製紙石巻工場は復活したが描かれた作品。被災者達の苦悩や奮闘は読んでてとても感動しました。
紙の本
手の中の文庫そのものがつながっている。是非文庫で読んでほしい。
2017/06/08 20:53
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりにも有名なアメリカの週刊誌TIME。その用紙も、本書に出てくる石巻の工場で作っていることを初めて知った。その製紙工場は2011年の震災で津波に飲みこまれたが半年で主要機を稼働させた。本書はそお被災と復興のノンフィクションである。
主要な材料であるの紙を作っている機械が止まれば、たくさんの「紙製品」がすぐに対策を迫られる。「止めてはならない」と奮闘した人々の話である。本書のタイトル「紙つなげ!」はそういう思いを表したのだろう。
それまで日常的につながって流れていた、流れているのがあたりまえだった諸々が、災害でとまって初めて露わになった。家族、会社、地域の人間関係。さまざまな形での「人のつながり」がそこにはあることを教えてくれる。会社の野球部の話などもあるが、震災という大きな出来事の中で様々なことが絡み合って動いている。災害後も大きな工場の機械を動かすために、まずは掃除から始めさまざまなものを一つ一つ修復して行かなくてはならない。
たぶん、同じような「復興」の物語は大なり小なり数知れずあると思う。それでも、一つでも多く記憶の中につないで行かなくてはいけないと思う。震災当日、数日後、数か月後の現場の現実は読むのが辛い部分も多い。「自分だったらどうか」。しかし人間は非常時にどう行動するのかを知っておくことは大事だと思う。ここに出てくるような行動は日本人だからなのだろうか、人間なら誰でもするものなのだろうか。いろいろなことを考える。
本書は復興の物語であるが、それとともに、「紙の本」の意味を考えさせる本でもあった。
奇跡的に一本、というとあの松の木を思い出すだろうが、ここにも「奇跡の一本」があったという話。震災後の倉庫に見つかった無傷の、切断前の包装された大きなロール。それはその後出荷され、文庫になったことだろうという。それは今目の前にあるものなのかもしれない。
どんな種類の紙を作っていたか、の記述もかなり詳しい。読みながら「ひょっとして」と思っていたことは巻末の数行で「やっぱり」となった。「使用紙」のところである。この文庫の本文の紙は、復興したマシンで造られたもの。写真が印刷された紙についても本文内にでてくる。
手に持っている一冊が、物語の現場につながっている。この不思議な感覚。ぜひ本書は文庫で味わって欲しい。
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『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で2012年の開高健ノンフィクション賞を受賞した佐々涼子氏が、東日本大震災で被災した日本製紙石巻工場の復興について記したノンフィクション。2014年に発刊され、2017年2月に文庫化された。
尚、本書の本文に使われているのは、本書で復興の象徴として詳しく語られている「日本製紙石巻工場8号抄紙機」で造られた紙である。
本書がなぜこれほど多くの読者に支持されたのか? それには二つの要因があるのではないだろうか。
一つは、いうまでもなく、震災直後は本人たちですら不可能と思った工場の復興を成し遂げた、震災から立ち上がる日本の底力を象徴する記録だからであろう。石巻工場長が「半年後にマシンを一台動かす」という目標を掲げ、その対象となった「石巻工場8号抄紙機」を再稼働させる一部を担った従業員は、瓦礫を撤去し、水に浸って使えなくなった電気ケーブルをつなぎ直し、モーターを復旧させ、ボイラーを再稼働し・・・という過程を、「これは駅伝だと思いました。いったんたすきを預けられた課は、どんなにくたくたでも、困難でも、次の走者にたすきを渡さなければならない。リタイアするわけにもいかず、大幅に遅れてブレーキになるわけにもいかない過酷な長距離走です」と語っているが、過酷な状況を乗り越えて再び立ち上がる人びとのドラマは、涙なしに読むことはできない。私は2015年夏に石巻を訪れ、日和山から日本製紙石巻工場のある光景を見たが(本書を手に取る前である)、日和山から海に向かっては工場以外まだほとんど建物がなかったあの場所で、このようなドラマがあったとは当時は想像できなかった。
そして、もう一つは、その復興の対象が“本を造る紙”であったことであろう。著者は「ライターの私も、ベテラン編集者の彼女も、出版物を印刷するための紙が、どこで作られているのかまったく知らなかったのだ」と書いているが、私も、出版用紙がどこで作られているのかは言うまでもなく、その種類についても、中公文庫は色褪せしやすいとか角川文庫は若干赤いとかを感じる程度で、その作り手の矜持にまで関心を持ったことはなかった。本書では、随所で“本の紙”の種類や製造過程に関する説明がなされていて、それが本書の魅力を高め、読者の興味を惹いているのではないだろうか。「紙の質感は繊細な調成のもとに成り立っている。紙の本の最たる魅力は、何といっても、その触感にある」、「紙の本の手触りや香りは、文章の中身を理解し、記憶するのにも役に立っている」、「我々は「めくる」ことによって、さらに読書を“体験”していき、本にはその痕跡が残るのである」、「どんな紙を本文に使い、どんな素材感のカバーにするかが、作品世界の印象を決定づける。そのバランスは極めて繊細なものだ」。。。いずれも本好きとしては、強く相槌を打ち、「やっぱり紙の本ていいよな。。。」と独り言ちてしまうフレーズであろう。
そして、著者は「ノンフィクションを書いていると、私が能動的に書いているというよりは、物語という目に見えない大きな力に捕らえられて、書かされているのだと感じることがある」と語っているが、その取材と筆致の力が本書の魅力を更に高めていることは間違いない。
復興の感動のドラマと紙の本の魅力を描いた、優れたノンフィクションである。
(2017年3月了)
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東日本大震災の津波で大きな被害を受けた製紙工場の復興をたどったノンフィクション。ずっと話題になっているのは知っていたので、文庫になったと知ってすぐに入手。
生活の再建、そして工場の復旧、ゼロどころかマイナスからの出直しの貴重な実践記録である。工場の従業員、東京本社のトップ、当日は出先だった工場長、様々な人がふりかえる震災直後の状況はこちらの想像を遥かにこえる過酷さで、まるで6年前に戻ったように読みながら涙が溢れてきてしかたなかった。石巻工場の来歴から起こし、工場、会社、石巻の街の希望をつなぐためにどう行動したか。工場の内外のさまざまな関係者のあの日からの軌跡をたどるこの本は、いつあるかもしれない次の被災にむけてのかけがえのない先例として一読に値すると思う。
毎日手に取らないことはない、なくてはならない紙の生産地はどこかなどこれまで考えたこともなかったし、震災後の紙不足をしのぎ、日本製紙が未曾有のダメージから基幹工場を立て直したこのようなドラマがあったことも知らずにいたなんて能天気にもほどがあるが、ほんとうにこの本に出会って読んで知ることができてよかったと思う。
この文庫本の本文紙が、まさしくかの8号抄紙機で作られた紙だというのが感慨ぶかく、その色や手触りを何度も矯めつ眇めつしてしまう。
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やっぱり紙媒体が大好きな人のニーズと、震災の実際を知りたい人のニーズと、両方を叶えているという意味でも、本作の題材設定は成功してますね。まさに痒い所に手が届く感じで、読みながら感心しきりでした。別に穿った見方をしている訳じゃなく、訓練が生かされての震災後の見事な対応や、大局を見誤らない指導者の目線など、見習うべき点は数多くありました。
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すごい!リアルな話とは思えない。どこかフィクションのような下町ロケットような、、、けど現実。非常時にこそ人間の本当な姿が良くも悪くもでてくる。何が正しいのか、正しかったのかは結果がすべて。知らないストーリを知れた。
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平積みになっていたので手に取ってみました。
いやあ、すごい。自分も本は好きだし紙も好きな方だと思うんですが文庫の紙が出版社によって違うとか知らなかったなぁ。それに色も違うんだ。色々勉強になりました。
震災後、やっぱり略奪行為や破壊行為を行った人達は居たんだなぁ。全員ではないだろうし暴動、というほどでは無かったのでしょうが一部の心無い人の行為で被災された方がどれだけ恐ろしい思いをしたのだろうか。支援、という名でコンサル料や補助金だけを手に入れて何もしなかった団体が居た、という事も。国の補助金が出ると知るといきなりわっと物凄い数の団体が申請に来るものなぁ。そう言う事も今後精査出来るようになるといいのにな。
震災後色々な物資が各地で不足しましたが紙もそうだったんだぁ。そろそろ震災の日が近いですが改めてこの国の形というか生産というものを考えさせられる一冊でした。為になりました。
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本書に挿入されている写真を見て、この工場が半年で復旧することができると考えられる人が、世の中に何人いるだろう。工場で働く経験のある私には不可能と言い切ることができる。機械1台復旧するには、作業員が一つ一つ手作業で問題を解決していくしかない。部品を取り換え、わずかな嵌め合いを調整し、全体の動きを調和させる。交換する部品がなければどうする、加工するツールがなければどうする、そもそも電気がなければどうするんだ・・・・。
でも彼らは復旧させた。工場のがれきを片付けると津波で亡くなった遺体が出てくることもあったと書かれている。ただ、ただ、想像を絶する。復旧に取り組み、結果を出していく人たちに敬意を払うと同時に、製造業の一端を担う自らの仕事にも少し誇りを覚えることができた・・・かな・・・。
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20170320
東日本大震災で甚大な被害を受けた、日本製紙石巻工場の復興に向けた壮絶な戦いを綴ったノンフィクション。
まずは、東日本大震災で、被災地に何が起こったのか、どのような惨状だったのか、テレビでは伝えていない現場の様子に息が詰まる思いだった。
そして、普段何気なく使っている紙が、こんなにも大変な思いをして、技術者たちが紙を繋ぎ、消費者の元へ届いているのかを知り、これから紙や、本への見方が大きく変わった。
被災地や、日本製紙で働く人たちの大きな励みになった事を考えると、野球部の果たした役割もとてつもなく大きなものだったと思える。
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6年を経て、震災のノンフィクションを読むとまた、新しい感慨がある。結局一度見たきりの場所だが、本書で当時の苦労や現実を詳細に知ることができた。巨大システムの復帰は本当に大変なことと思う。上層部の判断、現場の勢い等、つらいながらも明確な目標のもと、一丸となって達成した点が当然ながら感動する。野球部の話は知らなかった・・・。
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東日本大震災で甚大な被害を受けた日本製紙石巻工場の復興を追ったノンフィクション。
震災の津波の被害の甚大さを改めて感じ、そこから工場を立て直した日本製紙の人たちの姿、意思の強さが印象に残った。
また、知っているようで知らなかった紙のことも説明されていて非常に興味深かった。
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本はたくさんよむのに、こんなこだわりを持って紙を作っているのは知らなかった。
石巻はゆかりのある地。
この本に出会えてよかった。
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文庫のページの感触を確かめながら読む。
感動的な物語と思う一方で、製紙工場復興にあたった人々はまだ恵まれていたんじゃないかと。
彼らの様に親企業の支援もなく、生活の再建すら困難な被災者が多かったんじゃないかと思っている。
書かれた内容以外にも思いが至る本。