紙の本
死病と呼ばれる不治の病を突きつけられた時、医師と患者はどう対応するかという重い主題でした。
2020/02/26 08:01
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
死病と呼ばれる不治の病を突きつけられた時、医師と患者はどう対応するかという重い主題でした。本作品では、改善の望めない末期癌患者を巡って、苦痛を伴う治療を止めて残された時間を有意義に使うべきと勧める医師と、奇跡を信じてでも考え得る治療を続けたいという患者との葛藤が主軸に据えられている。正解は、この中間の何処かで折り合いをつけなさいと言うことになるのだろうが、本作では奇跡は起きないし、両者の差は縮まらないまま結末になだれ込む。脳死問題などもこの問題に似た性格持ってますね。永遠の課題でしょうか。著者の率直な表現がひしひしと伝わって来る作品。登場人物なども主要な人物以外は詳細を省略して、その役割を象徴する「綽名(ぼやき医長・せっかち医長・明晰医長など)」だけで表現するなど、冗長性を排除して主題を直線的な追っていく展開も私好みでした。何となく、882:二宮敦人『最後の医者は桜を見上げて君を想う』(2016)、887:鏑木蓮『屈折光』(2011)、にも共通する作風を感じました。特に、「死神」と呼ばれる合理的死生観医師と、絶対に救うと頑張る絶対救命信者医師とを対立させて描く<882>との主題類似性を感じた。
<全くの蛇足>
推理小説などで犯人をぼかすために多用される、登場人物の詳細説明には何時もうんざりさせられる私ですが、本書で用いられたその役割を象徴する「綽名」だけで描いていく手法は新鮮であり、主題ありきの私には実にしっくりときました。主役の医師と患者以外はA・B・C・・・・でも良かったくらいです。ちょっと極端すぎるか。(笑)
紙の本
余命との向き合い方は十人十色
2019/10/26 23:43
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投稿者:ノッポ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「残念ですが、もうこれ以上治療の余地はありません。あとは好きなことをして、時間を有意義に過ごしてください」・・・。患者を思い事実を告げた医師だったが、患者側は最後の最後まで治療を望むがん患者だった。最後のシーンの、最後の最後まであらゆる治療を行ったがん患者が医師に向けた録音テープがとても印象に残りました。残された時間を有意義に過ごすには、患者側の置かれた境遇によって違ってくる。答えは見つかりませんが考える機会を与えてくれた本でした。
紙の本
読みごたえたっぷり。
2018/12/24 22:48
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投稿者:優乃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
身内を末期癌で亡くしたばかりなので、
とても興味深く読ませていただきました。
主治医の言動行動がより現実味を帯びました。
医学の進歩がなされてもまだまだどうしようも出来ない事が多いんですよね…
どこまでが本来医療として踏み込むべき範囲なのかも考えてしまいます。
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投稿者:ねむこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は癌にかかったらどうするだろう?
私なら、ある意味ラッキーだと思う。突然死じゃ諸々の片づけその他何もできないから。
ここでは、がん患者と、医者の立場から話が進む。
つらい治療に耐えてでも治療を望む患者と、治療がかえって寿命を縮めると考える医者。
あやしげな療法もあり、ホスピスの描写もありと、私たちが将来直面するかもしれない姿を嫌というほど見せてくれる。
治癒不可の患者に事実を告げるのは「悪医」だろうか。
電子書籍
よかった
2021/11/05 22:39
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投稿者:ななこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私もがん患者なので、主人公の気持ちやそれに伴う行動がよくわかりました。
しかし、最初の主治医の言うこともわかります。
最初の主治医が成長して、主人公と心を通わせることができてよかった。
内容はヘビーだけど読後感は良かったです。
電子書籍
考えさせられる本
2018/11/27 16:46
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投稿者:dekakiki - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件も謎解きもないが、スペクタクルな一冊。死とはなにか、考えさせられた。
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評価に迷った。☆3.5くらいかな。でも読んでよかった。
末期がん患者と医者の両局面が見えて、とても興味深い。自分ががんを宣告され、もう治療の術がないと言われたらどうするだろう。「生きる」ことをあきらめることはそう簡単じゃない。患者の立場も分かるし、でも久坂部羊作品を読んできて、医者や医療がパーフェクトじゃないのも分かってるつもり。限界がある。でも、患者としては寄り添って欲しいのを分かってほしい。特に独り身だと縋る相手がいないからね。。
結局答えは出ないと思う。患者にも医者にも。それが辛い。
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全体的に暗い雰囲気で物語は進みます。このまま終わってしまうのか、光は見えないのか・・・
諦めかけた時、淡い光が見えて来ます。森川医師がテレビ番組のパネラーとして発言する場面からの描写は圧巻です。電車の中で人目もはばからずボロボロ泣いてしまいました。
かく言う私もサバイバーです。昨今、医師は患者にハッキリとガンを告知します。私も目の前が真っ暗になりました。幸い私は、ほぼ完治と言える状態ですが、手術を受けるまでの不安な気持ちと毎日死を考えてしまい心から笑うこどがてきなかったことが、この本を読んでいて思い出されました。
テレビ番組の司会者が言うように、ガンの終末期医療の宣告は大変難しい問題です。この物語とて答えは見えていません。
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余命宣告された52歳の末期がん患者は、「もう治療法がない」と告げた若き外科医を恨み、セカンドオピニオン、新たな抗がん剤、免疫細胞療法、ホスピスへと流浪する。2人に1人ががんになる時代、「悪い医者」とは何かを問う、第3回日本医療小説大賞受賞の衝撃作。
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医師だからこそ書ける小説というものがあるけど、コレはまさにそう!
「末期がんで手の施しようがない」という状況を、医師と患者両方の目線から描いたもの。医師は「これ以上の治療は命を縮めるだけだから、あとは治療をせず好きなことをして生きなさい」と言う。対して患者は「それは死ねと言われたのと同じ。何としても、どれだけ苦しくても、治療を続けて欲しい」と願う。本当に、本当に現実にたくさんある話なんだろう。
患者の小仲は意地悪い人間のように描かれてるけど、コレは普通の反応だと思う。私だって医者にこんな風に言われたら、突き放されたとしか思えない。
でも医療の現場にいる久坂部さんがこう書くのであれば、本当に「命を縮める治療」は存在するんだろう。
とにかく治療してくれる病院を求めて彷徨う小仲と、こういう状況でどうしたらいいのか悩み続ける医師・森川。
重い…正解は多分存在しない問題をひたすらに問い続ける小説だった。これはがんになる前に、多くの人が読んでおく価値があるんじゃないかなあ。
私はメンタルがとにかく弱く、「癌になった」という事実だけで死にそうなタイプなので(笑)、きっと小仲みたいに泣き縋るだろうな。
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決して答えのない,しかし避けて通ることのできない末期がんへの姿勢を,医師と患者の2視点から描ききる.患者の希望とは病気が治ることだけではない,という一文に全てが語られている.このような一言が医師から紡がれたことに,言いようのない感動が突き上げる.
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医者と末期ガンの患者。共に違う土壌に立つのだから、分かり合うことはないのかもしれない。
医者はどこまで患者に寄り添えばいいのか、患者はどこまで生にしがみつけば良いのか。
患者の病気を治したくない医者はいないと思うし、死ぬまで苦しんでいたいと思う患者もいないと思う。
交通事故でなくなる人も、若くてなくなる人もいる。ひとが亡くなるって、やっぱり理不尽なことだなと思う。
ブラックジャックはやっぱりいないのかな。
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医者にとって医療とは、と問いかける医療小説であるとともに、一般読者にとっては、治療の余地がないと言い渡された場合どうするか、その生き方を問いかける小説である。
医療の現場を知る、医者でもある著者にこそ書ける傑作。
35歳の外科医が52歳のがん患者に、これ以上治療は行わないと告げるところから始まり、二人の視点を通してそれぞれの葛藤が交互に語られる。
医者にとって医療とは、という問いかけも興味深いが、一般読者にとってはやはり患者の立場がより切実な問題である。
幸いにして今だこういう経験はないが、余命宣告された場合、読み手は果たしてどういう行動をとるだろうか。
3分の1の人々ががんにかかり、5分の1の人ががんで死ぬ、そんな現代に避けて通れない問題である。
より多くの人が、読んでおくべき本の一冊と言いたい。
作中、明晰医長とぼやき医長とせっかち医長という3人に託して語らせた医療情報やその背景は、その実態を知らない第三者にとっては興味深い。
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以前読んだ『最後の医者は桜を見上げて君を想う』のレビューに、
このテーマなら『悪医』が面白く深い とあったので、読んでみました。
確かに。
悪徳医師の話かと思って読み始めましたが、そうではなかったです。
私の母も、わかったときには末期癌でしたし、製薬会社に勤めており
この先生の言っていることは理解できましたので、
これが悪医? と思ってしまいました。
治療方法が無いので、あとはやりたいことをして過ごすようにと言われた末期がん患者と
末期がん患者への対応について苦悩し続ける若い医師が
それぞれの視点で語られていきます。
末期癌を扱うストーリーなので、明るい話ではないですが、
ラストは少し明るい感じになりました。
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癌が再発した小仲辰郎は担当医師の森川良生から,新たな治療法はないと宣言され途方に暮れる.その後いろいろな代替法に挑戦するが思わしい結果が出ない.その過程で出会った看護師の吉武からヘラクレス会を主宰している稲本を紹介される.最終的には森川が出演したテレビ番組で彼の言葉を聞き,自分を忘れていないことを知り,安らかに死んでいく小仲.癌患者に対する医者の視点から書かれた物語だが,患者の癌治療に対する思い込みなどが複雑に絡んでいる.題名は「悪医」だが森川はそうではなく,タキソール腹腔内投与にこだわる徳永が典型的な悪医だろう.