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個人は優秀なのに、組織としてはなぜ不条理な事をやってしまうのか? 日本軍の戦略を新たな経済学理論で分析、現代日本にも見られる病理を追究する。
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太平洋戦争で日本軍が如何に失敗していったのか、組織論と合わせて説明されている。
それぞれが自分にとって合理的な判断を行うと、全体として非合理な結果が出るという。。。
当事者は気づかないのだろうけど、非常に参考になった。
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太平洋戦争で日本軍は非科学的、非合理的な意思決定を重ねたが故に多大な損害を出したという見方がよくされます。しかし、それは後世にすべての状況を知り得たが故に非合理と判断できるのであって、戦争を遂行している状況では得られる情報は限定的で、得られた情報の範囲内では極めて合理的な決断を重ねていたにも関わらず結果として誤った状況判断を下していたというのが本書のスタンスです。
状況を完全に俯瞰できる情報が常に得られれば人間は合理的に判断ができますが、そのような理想的な状況は実は稀であって、人間は常に判断ミスをする可能性があるし、安きに流れる傾向を持っているという前提で組織を運営しましょう。さもないと意思決定をする局面では合理的に判断をしていても、全体として誤った方向に進んでしまいますよ、という事を太平洋戦争や、企業不祥事の実例を挙げて解説しています。
著者の上記の見解には非常に共感できますが、その裏付けとして「新制度派経済学」という分野を持ち出し、そこで述べられている経済理論を根拠とする進め方は、ちょっと理屈っぽ過ぎる印象が残りました。
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組織の本質は、人間の限定合理性にある。
なるほどと思いました。
著書は、「取引コスト理論」「エージェンシー理論」「所有権理論」をベースに、人が限定合理性の枠組みの中で、合理的に意思決定し行動するが故に、不条理に陥ってしまうと論じております。
著書を一読してみて、切り口は違えど、「行動経済学」とクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」と類似しているなと感じました。
最後に、その処方策として、批判的精神を持ち、漸進的に組織を変えていくとの主張がありましたが、自分はこの書のあとがきに明記されている「個々の自律による主体的な行動」の主張の方が、しっかり腹に落ちました。
良書でした。
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作者の主張したいことは理解も共感もできるのだが、「限定合理性」という考えが先にあって、後から事例を当てはめた感が強く、理論と事例の関連付けがどうもしっくりこない。
何かいまいちだな...と思って文庫版のあとがきを読んだら、こっちの方が面白かった。
間違っているとは思いつつも、取引コストの高さに辟易して保身と打算で過ごしている小物の身としては、「内なる良心にしたがって自由を行使せよ」という叱咤の声は、眩しすぎて少々疎ましい。
腐りかけた性根には澱んだ水が合うようだ。
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組織を構成する個々人は優秀なのに最低な意思決定、組織運用をしてしまう事例は多く存在する。旧日本軍の失敗の轍を現在も多くの日系企業が踏んでいる気がしてなりません。
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完全ではない限定合理的である人間が、不条理な結果をもたらす悲劇を、太平洋戦争の失敗例や改善例で分析した名作といえる作品。
戦記物に馴染みのない人でも、作戦や組織、人物を説明し、学説で、分析し解説しているのが、素晴らしい。
そして、批判を許容し自己学習する組織作りの大切さを説く。
空気を読んで、批判・反論したいのが本音なのに、我慢せざるを得ない時って、まだまだあると思う。
同時に、命を賭けて戦った先祖や先輩たちに、皆さんの時代と違って、反論を許容し進化する文化になってるよ!日本は!と堂々と顔向ける状況にない事に、やるせなくなってしまう。
それにしても、ある程度知っていたが、失敗例のインパール作戦には、表現出来ないほど、呆れる。作戦の結果としての敗北・戦災ではなく、人災と言っても過言でない。
会社の例で言うと、実力や勝利経験のない、身のほどをわきまえないバカ部長の暴走と言った所かなと勝手に解釈してしまった。
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(278ページ引用)各メンバーが自ら完全合理的であると思い込み、批判的合理的な構造を形成できない傲慢で硬直的な組織は、絶えず不正と非効率を増加させ、それらを排除する新しい戦略を形成することができず、現状を維持することが合理的となる。こうして、時間とともに非効率と不正は増加し、最終的に組織は平衡な、つまり死に向かって進んでいくことになる。このような批判的議論の場をもたない「閉ざされた組織」は、不条理の中で淘汰されていく組織なのである。
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第二次大戦時の日本軍に興味にある者にとって、日本軍という組織の失敗は、=不合理性だと説明されてきましたが、この本では、実は組織内の各自は、各自に基づき合理的に判断しそれを実行していたのではという著者の指摘に成るほどと頷ける面があるに読んでいた気付かされた。
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組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)の改題
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WBS西條先生が取り上げていた本。WWⅡの日本軍の敗戦を例に「取引コスト理論」、「エージェンシー理論」、「所有権理論」などといった人間の限定合理性に基づく新制度派経済学が理解できる一冊。日本軍の上層部ですら、「開戦=敗戦」と考えていたのに、なぜ勝てる見込みの少ない戦争を始めたのかを、人間が限定合理的であるという観点から説明してくれる。
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「過去の失敗は、情に流された不合理な決定によるものである。合理的に判断することで失敗は避けられる」
・・・ということが、後出しジャンケンでしかないことが、本書を読めば体感できます。
「あの戦争」は失敗だったのか。
「負けると分かってなぜ開戦したのか」
なぜの答えは見つからないはずです。
見つかるとしたら、それは、後世に生きているからでしかありません。
なぜ、何度指摘されても「戦力を逐次投入」し、「一度始めたことを撤退できず傷口を広げ」、「組織的な連携ができず、縦割りで状況に対応ができないまま」、「破滅するまで突進していく」ことを繰り返していることが、本書をよめばとてもよくわかります。
「ねじれの国、日本」と、「結果を出すリーダーはみな非情である」との3冊あわせ読みをお薦めします。
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組織内で起こる問題、逆淘汰、エージェンシー問題などの不条理は人間の合理性からもたらせる。
この点を日本軍を事例にして検証した本だったが、自分が所属する組織でも頻繁に起きていることである。
取引コストの問題は非常に難しい問題であと思う。
読んでいて興味のわく非常に面白い本であった。
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不条理 人間組織が合理的に失敗すること
新制度派経済学的アプローチ どんな人間も完全合理的ではなく、限定合理的だとみなす
取引コスト(見えないコスト)が存在するために、人間は非効率的な状態を合理的に選択する可能性がある
長い年月多大なコストをかけて訓練してきた日本陸軍伝統の白兵突撃戦術を放棄した場合、これまで白兵突撃戦術に投資してきた巨額の資金が回収できない埋没コストになったからである。また、その変更に反発する多くの利害関係者を説得するために、多大な取引コストを負担しなければならない状況にあった
HAサイモン 人間は完全に合理的ではないが、完全に非合理でもなく、限定合理的にしか行動できない。よ正確にいえば、すべての人間は情報収集、計算処理、そして伝達表現能力に限界があり、この限定された情報能力のもとに意図的に合理的にしか行動できない
QWERTYキーボード配列は、その配列をより効率的な配列へと変更するにはあまりにも高い取引コストが発生するので、たとえその配列が非効率であったとしても、この配列をスタンダードとして採用し続けているほうがより合理的となる現象
白兵戦術を放棄し、より効率的な戦術へと作戦を変更すれば、日本陸軍は巨額のコストを負担しなければならないような状況におかれていたから 教育訓練コストもまた回収不能の枚物コスト。利害関係者を説得するための膨大な取引コストを生み出す
大沢商会 現状を変化させるにはあまりにも巨大な埋没コストと取引コストが発生する状況にあった
不条理を回避するためには、自らが限定合理的であることを認識し、逆に権利の一部を奴隷や捕虜に与え、彼らのインセンティブを高めるような穏健統治を展開する必要がある
完全合理性の妄想にとらわれず、人間の限定合理性を基礎として、徹底的な分権的経営管理を展開することによって、急速に生産性を向上させ、成長した企業が京セラ
組織の本質は限定合理性である
ガダルカナル戦では、明治以来の長い伝統をもつ白兵突撃戦術を放棄することによって発生する埋没コストや取引コストがあまりにも大きかったために、たとえ白兵突撃作戦が非効率であろうと、日本軍にとって白兵突撃作戦を取り続けるほうが合理的だった
人間が誤って完全合理性の妄想に落ちいりやすい3つの思想、すなわち 勝利主義、集権主義、全体主義
IBM再建 ルイス・ガースナー IBMの再建は常に自己満足と自己正当化に対する戦いであった
セイコー服部一郎 保守的で無批判な純血主義経営はひよわだとし、何よりも雑種、雑草でないと会社は生きのけれないと考えた。そのためあえて役員から技術者まで外の血をいれ、混血化して批判的議論の場を形成した
ジョン・リード 常に社員の力を信じている。社員が間違いを犯しても、それで世界が終わりになるわけではない。むしろ、致命的なのは犯した間違いを隠そうとすることだ。間違いを犯すのを恐れていたら、正しい決断をすることはできない
シャープはガダルカナル化していた。経営陣��とって、大変革が生み出す膨大な取引コストを考慮すると、大変革よりも逐次的にコスト削減政策を続けるほうが合理的だったのである。つまりシャープは合理的に失敗した
不条理の制度論的解決法
世の中には見えない取引コストが存在していることを認識する必要がある
不条理を回避するために、事前に取引コストを節約する様々な制度や仕組みを形成しておく必要がある。(社外取締役)
エイジェンシー理論 人間は限定合理的に利己的利益を追求するものと仮定される。つまり限定された情報の中で、人間は損得勘定をし、計算結果がプラスであれば行動し、結果がマイナスであれば行動しない
経営者は明確に自らの利害と従業員の利害を一致させ、情報を対称化する様々な制度設計する必要がある。つまり有用な従業員を残し、無能な従業員をレイオフするような制度を形成する必要がある
このような不条理を避けるためにには、経営者やリーダーは従業員に役割や権限を明確に与えるような所有権制度を設計する必要がある。このような制度のもとでは、従業員はマイナス効果を避け、プラス効果ができるように職務権限を遂行するだろう
カント 因果論的で科学的な人間理性を、理論理性と読んだ
よいことかどうかあるいは正しいことかどうかを価値判断する理性 実践理性
他律的で刺激反応行動に逆らう行動で、まさに自律的意志のあらわれだとし、カントはこれを自由意志とよんだ
もし人間に自由意志(実践理性)があれば、人間は自分の外にある原因つまりコストや利益あるいは制度にとらわれずに、つまり損得勘定の結果にとらわれずに、自ら正しいと価値判断して自律的に行動することができる
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前半は繰り返しも多く、分かりやすい。反面、すでに理解がある人にしてみれば、しつこく感じるかもしれない。
理論自体も、事例への適用も後付け感が否めない。そもそも事例研究というものがそういうものではあるのだが。
そういう意味で、将来への示唆の部分が重要になるのだが、そのあたりもあまり納得感が少なかった。これは自身の能力の問題だろう。
本の分量に対するパフォーマンスという意味ではやや不満が残った。
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ひさびさに学び満載の1冊でした。日本軍のふるまいから現代のビジネスに活かせるポイントを学ぶのに、マネジメントの立場の人たちは必読の1冊なんじゃなかろうか。「どう見てもこっちでしょ」という新しいアプローチを選べない隠れたコストや、本来の意図と逆の選択肢が選ばれてしまう構造上の問題をわかりやすく解説していて、「そう説明すればよかったか」と納得のいく思い当たる経験もいくつも頭に浮かべながら読めた1冊でした。戦時中の話もコンパクトにまとめられていて、概観するのにもいい1冊だと思います。