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子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から みんなのレビュー
- ブレイディみかこ (著)
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:みすず書房
- 発売日:2017/04/19
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紙の本
イギリスの貧困地区ブライトンの保育の 現場から描く格差と分断の情景 緊縮財政の前後の変化
2017/06/17 12:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧困問題や欧州の政治情勢について書くライターとして注目を集めた著者が、自身が勤めていたイギリスの貧困地区ブライトンの保育の 現場から、格差と分断の情景を描く。
2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国の「平均収入、 失業率、疾病率が全国最悪の水準1パーセントに該当する地区」に ある無料の託児所。著者は「底辺託児所」と呼ぶ。著者は2008年から2010年、2015年から2016年この保育所に勤めている。
2008年は労働党政権、2015年は保守政権、第1部では2015年緊縮財政の下、託児所は閉鎖されフードバンクになるまでの様子。困窮者の生命さえも脅かされかねない実態、移民が増える中で、移民とイギリスの階級の最下層に落とし込まれた「チャヴ」たちの対立構造が描かれる
第2部は、サッチャー政権の産業政策で取り残された失業者が生活保護を与えられて、飼殺しにされる様を描きながらも、こうしたコミュニティーもヒューマニティが見られたこと、子どもを通して、保育に携わる人たちの温かい、人間味あふれる生活があったことが描かれている。
本書から引用紹介する
・「意識の高い」お母さんたちには「外国人を差別するにはポリティカル・コネクトレスに反するがチャヴは差別しても時国民なのでレイシズムではない」と信じている
・アパルトヘイトというのはなくなったわけではなかったのだ。人種ではなく階級を分離基準としてユナイテッドなキングダムには今でも存在している。
・(EU離脱の)国民投票前の英国のムードは尋常ではなかった。中略 投票をサッカー2016年欧州選手権とぶつけてしまうという無謀なことをしてしまったものだから、それでなくてもナショナリズムの機運が高まる下層の街では、投票の行方はもはやいつイングランドが敗退するかにかかっているような気さえした。
紙の本
白人の本音はバリバリの差別主義?
2019/01/24 23:12
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「意識の高い」お母さんたちには、外国人差別などというポリティカル・コレクトネスに反することはできない。であれば、どうして自分より恵まれない環境に育った人のことはあからさまに差別できるのだろう。それは「外国人を差別するのはPCに反するが、チャブは差別しても自国民なのでレイシズムではない」と信じているからだ。と、作者は語る。アメリカで隠れトランプ支持者が相当の数いるのではないかといわれてるのと同じ現象で、本当はばりばりのレイシストなのにも関わらず、そんなことを公表するとえらいことになるから言わないという白人が欧米にはたくさんいるのだろうなということは想像できる
紙の本
イギリス社会における底辺に位置する子どもたちの実情を描いた作品です!
2019/01/18 13:11
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリス社会における「アンダークラス」と呼ばれる底辺に位置する子どもたちの実情を克明に綴った貴重な一冊です。著者は、英国に住み保育所で務めていた日本人女性で、その日本人女性の目から見た知られざるイギリス社会の実情が暴露されます。同書を読んで、イギリスを「福祉社会」と思い込んでいた私が恥ずかしくなりました。こんな現状が現在のイギリスに蔓延しているといのは、本当に驚きとして言いようがありません。多くの人に読んでいいただき、先進国にもこのような悲惨な状況が存在していることを知っていただきたいと思います。
紙の本
ブレイディ氏の真骨頂
2020/11/01 21:51
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投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼくはイエローで‥」も良いが、この作品こそ著者の文章の面白さが濃縮されていると思う。エッセイは自分がよく知っていること、印象に残っていることを深掘りすると面白い。これを地でいっている。著者の深いところにある心情が読者に響く。初めてブレイディみかこ作品を読む人にお勧めしたい。
紙の本
政治は議論するものでも、思考するものでもない。 それは生きることであり、暮らすことだ。
2020/08/17 20:20
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼくはイエローで…」で一気に虜になって著者本をオトナ買いして複数読み進めてきて、こちらの本にたどり着いた。2017年新潮ドキュメント賞 受賞作ということだそうだ。いくつか読んできたので想像はついたが、とてつもなくどーーんとした重たい課題認識を突き付けられたような気がする。
「の、その先にあるもの」という表現で記載されている内容、インクルージョンという言葉では表現されているが、日本で暮らして安穏としているとどうしてもここのレベルまでの視野・視座にまで広がっていけない。 かつ、ぼくは残念ながら都市部の中でも日雇い労働者が多かった地区で育った関係上、見ないようにしてきてしまった事実があるのかもしれない。
『THIS IS JAPAN』でもあったが、もっともっと深くてずどーんとくる、とてつもなく重たい現実の本があって、それを踏まえての『ぼくはイエローで…』での爽やかさなんだな、とも感じてしまいました。(完全にあくまで私見です)
今回の抜粋もおわりに、から
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P281
保育士のわたしが政治について考えるようになったのは、実は保育士になったからだった。というか、もっと正確にいえば、底辺託児所で働いたからだ。
それはいま思えば毎日が驚きと、怒りと、目の前で起こっていることへの信じられなさと、こみあげる嫌悪感の連続で、そのくせほんの時折だったとはいえ、こんなにきれいなものは見たことがないと思う瞬間に出くわした。
この人たちはどこから来たんだろう。こういう人たちが存在する社会というのはいったいどうなっているんだろう。こういう人たちを作りあげた国の政治とはどんなふうに変遷してきたのだろう。
わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。
底辺のぬかるみに両脚を踏ん張って新聞を読み、ニュース番組を見て、本を読んでみると、それらはそれまでとはまったく違うものに見えた。
政治は議論するものでも、思考するものでもない。 それは生きることであり、暮らすことだ。
そうわたしが体感するようになったのは、託児所で出会ったさまざまな人々が文字通り政治に生かされたり、苦しめられたり、助けられたり、ひもじい思いをさせられたりしていたからだ。
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