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ミュシャ展の公式図録だが、ちゃんとISBNコードがついてる。図録というと普通はISBNはついてないけど、ここ何年かでISBN付きが増えてきた。
図録にISBNが付かないのは、書籍ではなく展覧会限りの記録という扱いで著作権料がかからない、という事情もあるらしい。確かにISBN付きの図録は値段が高い気がする。ものによっては5千円超えるやつもあるし。
それでもISBN付きが増えたのは、図録の役割の変化なのか、制度的な事情なのか、それともビジネス上の要請なのか。電子書籍版の図録ってのもあるので、紙から電子へという流れもひと役買ってるのかも。
ただまあ、会場でしか買えない希少感や画集の何分の一かで買えるお得感は、図録の魅力のひとつではあったと思う。
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ミュシャ展よかった。
もう、一生お目にかかれないだろう「スラブ叙事詩」。やっぱり実物の迫力には負けるけど、買っておいて良かった。
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ミュシャというとアールヌーボーの美しい女性の絵という印象があるが、今回来日していた絵を見ると、そんなもんじゃなくて、すごかった。
わかりやすさ、キャッチーさを持った画家が、歴史的な意味合いや宗教的な意味合いを持った絵を、情熱と技術を持って描くとどうなるのか、をみせつけてくれた。
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2017年3月8日~6月5日に国立新美術館で開催中の「ミュシャ展」の図録。
みどころは「スラヴ叙事詩」全20点。故郷チェコとスラヴ民族をテーマにした作品の集大成といえるもので、50歳から16年がかりで制作された。
「スラヴ叙事詩」には1点ずつ、「描かれている時代」「舞台となった場所」「主な登場人物」の解説が付されている。
ミュシャといえば装飾的な絵柄のイメージが強かったが、「スラヴ叙事詩」は随分趣が異なる。
アール・ヌーヴォー期のしっかりした輪郭線は消え、色の濃淡だけで人物がぼうっと浮き上がっている。画面上部には神や寓意的人物が大きく描かれ、夢現が交差する幻想的な画面が広がる。まるで画面から物語が溢れ出てくるようだ。
自分の部屋に飾るなら、明るく壮麗な初期の作品がいいが、「スラヴ叙事詩」の魔術的な魅力にも惹かれる。
気に入ったのは、「(1)原故郷のスラヴ民族」の夜の色、「(2)ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」の動き出しそうな楽士、「(3)スラヴ式典礼の導入」でこちらに強い視線を投げかける若者、「(20)スラヴ民族の賛歌」のドラマティックな構図と迫力。
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2017年に開催された「ミュシャ展」@国立新美術館の公式図録。
晩年を注いだ「スラヴ叙事詩」20点の豊富な解説を中心に、そこへ至るまでの画家ミュシャの軌跡が追える一冊です。本物を見た後だと図版の画質はどうしても見劣りしてしまいますが情報量としては十分です。
ミュシャ本人も影響を受けたというスメタナ『我が祖国―”モルダウ”』の旋律が頭をよぎります。
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ミュシャの集大成の作品。
画家本人が「このテーマに早く取り組むべきだった」と情熱を燃やしたという。
実際、2017年国立新美術館で鑑賞してこの図録を購入しました。実物は数メートルの巨大な絵画で圧倒的です。
縮小されてしまうとなかなか、当時見た感動ほどには至れませんが、作品の1~20を順番に眺めていくと、苦難を乗り越えて独立・解放までの一連がとても感動的です。(一部ロシア農奴解放のちょっとテーマから逸れる絵もありますが)
忙しいと画集を開くタイミングを失いますが、
図らずとも(レビューを書いているのは、コロナ禍で緊急事態宣言が明けるころ)ちょこちょこ画集を開き、何だかんだで民主主義が保たれ、戦争のない平和な時代をありがたく感じております。
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本書に掲載されている
アルフォンス・ミュシャの「スラブ叙事詩」は
人類史上の最高傑作と言ってよい絵画作品群です。
私は実物を国立新美術館で見たことがあります。
あまりの凄さに感極まり、超満員の会場で一人、大号泣しました。
私は今までに数十万点は造形美術作品を見てきたと思います。
そのなかでも感極まり号泣したのはスラブ叙事詩ただ一つです。
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アール・ヌーボーの旗手アルフォンス・ミュシャ(ムハ)が後半生をかけて挑んだ超大作「スラブ叙事詩」が来日している(3/8〜6/5)。チェコ国外で全20点の同時展示は過去に例がなく必見だ。多くの解説書が出ているがやはりこの公式カタログが最も充実している。図版の画質はやや高級感に欠けるがこの大きさは魅力であり、作品の舞台となった場所の地図を付すなど解説も工夫があって丁寧だ。記念すべき展覧会の貴重な記録として2400円はリーズナブルだろう。
「スラブ叙事詩」は確かなデッサン力に裏打ちされた写実性と世紀末の象徴主義の見事な総合である。それぞれ単体でも傑作揃いだが、20点を通してスラブ民族の黎明期から近代に至る歴史を辿る構成になっており、あくまで全体で一個の作品である。優れた美術作品は解説などなくとも堪能できる。だがこの「スラブ叙事詩」に関しては、パリの流行作家として名声を博していたミュシャが、なぜ突然祖国チェコに戻り、20年近い歳月をそれ迄の作風と全く異なる作品に捧げたのか、その背景をスラブ民族の苦難の歴史と合わせて踏まえておきたい。展覧会の予習と復習に是非手元に置くことをすすめる。
「スラブ叙事詩」は一応は歴史画と言えるが、よくある歴史画との大きな違いはそこに「英雄」がいないことだ。中心的な人物(例えば戴冠するセルビア皇帝や説教するフス師)がいたとしても決して目立った描き方はされず、主役はあくまで一人ひとりの民衆だ。それはゲルマンやトルコなどの異民族の支配を度々受け、言語と宗教の自由を奪われながらも、民族の誇りを胸にひたむきに生きる名もなき民衆への賛歌である。
度肝を抜く巨大な画面も一人ひとりの民衆の表情を克明に描くためだと言われている。とりわけ鮮烈な印象を与えるのは、多くの作品で画面の前景に配され、じっとこちらを見つめる眼光だ。それは深い悲しみを湛えながらも決して絶望することなく、力強くはあるが熱狂とは無縁の、静かで不屈の意志を示すかのようだ。国内の展覧会でこれほど魂を揺さぶられた経験はかつてない。混雑を覚悟してでも足を運ぶべきだ。蛇足ながら自宅で本書を眺めて展覧会の余韻に浸るには、ミュシャにもインスピレーションを与えた『 スメタナ「わが祖国」-『ミュシャ展』開催記念盤- 』はBGMとして欠かせない。
〈目次〉
・《スラヴ叙事詩》のメッセージ/ヴラスタ・チハーコヴァー
・世紀転換期のナショナル・アイデンティティを描く/本橋弥生
・スラヴ叙事詩
《スラブ叙事詩》への招待
[地図]《スラヴ叙事詩》の舞台となった場所
《スラブ叙事詩》解説
[コラム] ムハ─視点の系譜/ヤルミラ・ムハ・プロツコヴァー
i ミュシャとアール・ヌーヴォー
[コラム] 父とドイ・コレクション/土居いづみ
ii 世紀末の祝祭
iii 独立のための闘い
iv 習作と出版物
・アルフォンス・ムハと装飾画の復興─フランスの文脈を通して
/ドミニク・ロブスタイン& マルケータ・タインハルトヴァー
・関連年表/西 美弥子(編)
・作品リスト
・主要参考文献/西 美弥子(編)