紙の本
2050
2017/05/23 14:33
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投稿者:KKキング - この投稿者のレビュー一覧を見る
エコノミストの「2050年の世界」の続編。世界は既に変わっているが、2050年にはどのようにドラスティックな変貌を遂げているのかの予測。正直考えたくない。
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【未来を予測するには「限界的事例」を探せ!】十五年前、スマホの到来を予測した人々は、日本のガラケー女子高生に注目していた。AI、自動運転車など、二十の分野を徹底予測!
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技術の予測、産業の変化、社会への影響をまとめたもの。
すでに片鱗が見えるものをまとめている。まとめた時点から追い抜かれるほどに進展は早い。
先を見据えつつも、目先の次元の異なる課題にどう取り組むか。
◯テクノロジーの未来を予測する際に目を向けるべき3点
1.過去の類似的事例:プライバシーの侵害、若者のモラルの低下、雇用の減少、倫理的問題への懸念
2.現在の限界的事例:日本のガラケー、ケニアの電子マネー
3.SFに描かれた未来
→VR、自動運転タクシーによる都市の車両数の減少、宇宙産業、遺伝子編集技術
◯ムーアの法則による成長の限界とloTの進展
◯コンピューティングテクノロジーの6つの波
・メインフレームとミニコンピュータ(IBM)
・パソコン(マイクロソフト)
・ウェブ1.0
・ウェブ2.0クラウドとモバイルコンピューティング(アップル、アマゾン、グーグル)
・ビッグデータ
・IoT
→第7の波としてのAI あと数十年か
◯政府の規制と対応で普及スピードが変わる(自動運転車(無人)が大半であることを想定した交通ルール)
◯量子物理学の進展による実験の不要、ヒッグス粒子までの発見と、テクノロジーの基礎としての物理理論の無視可能性すなわち一般相対性理論と量子力学での説明可能性
→摩擦のない鉄道輸送、宇宙エレベーター、量子コンピュータ、脳と同じ機能を持った3Dコンピュータ、知覚中枢の拡張、没入型ツーリズムは実現可能
→物理の理解、監視、制御による老化、疾病の解決
→核戦争、気候変動による生態系の崩壊、人工知能戦争
◯神経インターフェース「皮質モデム」のよる接続、3Dプリンターによる再生医療、DNAデータの保存
◯マカニパワーによるエネルギー凧、フロー電池、PHVの普及
↔︎核融合炉は30-40年先か、天然ガスは米のみ伸長
◯炭素繊維と3Dプリンターによる製造、自己修復機能を有するスマート材料、アーバンマイニング
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英エコノミスト誌では2012年刊行の『2050年の世界』で社会的変化の長期的動向を予測した。本書『2050年の技術』は、その範囲を技術に絞り込んだものである。今後の30年の間で技術によって社会は大きく変化することは間違いない。その姿を予測するのは、30年前に今の世の中を想定することがほとんど不可能であるのと同じように難しい。それでも何とか今起こりつつあることが長い視点においては何を意味するのかを考えてみることは無駄になることではない。
「予言するなかれ、と古いことわざにもある。とりわけ遠い将来については」- ということを意識しながらも多くの識者が30年後の未来を予測している。その中には、エコノミストの記者以外に、ノーベル物理学賞のフランク・ウィルチェックやメリンダ・ゲイツ、『ワークシフト』のリンダ・グラットンも含まれる。さらにはSF作家にも想像上の未来を描いた短編小説を挟んでいる。
「十分に進んだ技術は魔法と見分けがつかない」ということがわかるかもしれない。
この射程の広い本の目次は次の通り。各章にまとめが付いているので、それも参考に各章の主張をまとめてみた。
■ 制約と可能性
第1章 日本のガラケーは未来を予測していた
・「未来はすでにここにある。均等にいきわたっていないだけだ」ー その例がかつての日本のガラケー、ケニアのモバイルマネーである。
・VR/ARがタッチスクリーンに続く新世代のコンピュータ・インタフェースになるが、倫理的議論を巻き起こすのは必至。
・自動運転タクシーにより車両数が激減して自動車事故も激減する。宇宙旅行が当たり前になる。
・デザイナーベビーの誕生とヒトの遺伝子操作に関する倫理的問題にかかわる議論
第2章 ムーアの法則の終わりの先に来るもの
・原子レベルの限界に近づきつつある。ただし、プログラミングの質の向上や専門性の高いチップの設計が進む。
・量子コンピュータや3Dチップの実現する。クラウド化も進む。IoTも進む。コンピュータは会話を理解するようになり、ARも広がる。
・「コンピューティング革命は終わらない」
第3章 第七の波、AIを制するものは誰か?
・第一の波はメインフレームでIBM、第二の波はパソコンでマイクロソフトが制した。第三の波はインターネット、第四の波はWeb2.0とクラウドで、Apple、Google、Amazonが制した。第五の波はビッグデータ、第六の波はIoT。そして第七の波がAI。
・この勝者が決まるのに数十年かかる。ビッグデータとIoTの可能性をどこまで引き出すのかがカギになる。
第4章 なぜデジタル革命で生産性向上がみられないのか?
・デジタル革命で労働者の報酬は伸びていない。ただし、今日のテクノロジーが真価を発揮するまでに時間がかかる。
・「つまるところ、デジタル・テクノロジーによる生産性や生産量の伸びが期待ほどではなかったのは、19世紀と20世紀の社会制度の壁にぶつかっていたからだ」
第5章 宇宙エレベーターを生み出す方程式
・物理的な方程式は基本的にはほぼすべて解かれた。
・宇宙エレベータや量子コンピュータは実現可能だ。老化や疾病��問題も物質の理解・監視・制御によって克服できる。
第6章 政府が「脳」に侵入する
・ゲノム編集によって遺伝性の病気の根絶が目指される。アルツハイマー病や癌、心臓疾患のリスクを下げることも可能になる。
・個人が自分のゲノムにアクセスして操作することも議論はされつつ確実に実用化される。
・人間の脳はインターネットと直接つながる。高機能版は財力のある人にしか手に入らないため、新たなデジタルデバイドが生じる。また新しいセキュリティ上の問題が発生する。
・これからの30年で生命を支えるすべての構成要素やシステムの関係性が明らかになる。
・酵素の研究によって、まだ存在していない材料が大量に見つかる。
・DNAが高密度の記録媒体になる。人工微生物が自律ロボットに組み込まれて、製造業のあり方が根本的に変わる。
■ 産業と生活
第7章 食卓に並ぶ人造ステーキ
・農畜産業の発展により、食糧難にはならず、一人当たりカロリー消費量はいまよりも増加する。
・農業は機械化と自動化がはるかに進む。都市部でも野菜工場や魚工場ができる。細胞培養によってステーキや牛乳は工場で大量生産される。
第8章 医療はこう変わる
・医療分野におけるテクノロジーのライフサイクルは猛烈に加速する。ただし、主導権を握るのは患者である。
・AIによる破壊的変化が起こり、人間がおこなっている診断などの多くの作業はAIが行うようになる。
幹細胞治療が実現。癌などを予防するワクチンも開発される。ウェアラブル端末により、健康データが収集されるようになる。
・遺伝子検査も一般的になり、薬理ゲノミクスも進展する。エピゲノムの変化も巻き戻せるかもしれない。
第9章 太陽光と風力で全エネルギーの三割
・太陽光発電と風力発電のコスト低下は広がる。すでに、一部の地域では補助金がなくても化石燃料と遜色ないレベル。
・太陽電池は小型機器や布素材にも適用できるようにフィルム化される。さらにリチウムイオンやフロー電池の改良による蓄電池の進化により贖われる。
・自動車もEV、PHVが主流になる。
・既存の原子炉はなくなっていくが、より安全な型の原子力発電所が開発される。
第10章 車は編まれ、住宅は印刷される
・車が炭素繊維を編まれて作られるようになるかもしれない。ナノ素材がシリコンの代替物になるかもしれない。
・製造業で3D印刷が欠かせないツールになる。住宅からナノ素材まで3D印刷されるようになる。
・リサイクルは必須になる。
・製品のカスタマイズ化が容易になり、自動化も進むことで、製造業は大きく変化する。
第11章 曲がる弾丸と戦争の未来
・狙撃の性能はますます上がり、弾道を曲げて当てることも可能になる。ドローンも精密狙撃など戦争において利用される。
・兵士の代わりにロボットが使われることが多くなる。
革新的な兵器が非正規軍にも行き渡ることで都市部のテロの危険度はさらに増す。
・ARグラスや網膜への直接投影により兵士の情報量は増える。
第12章 ARを眼球に組み込む
・VR/ARはクラウドと結びつき、スマホ以上に人間の行動を変える。誰もがスマホの代わりにARメガネを使うようになる。道順が示されるようになるし、翻訳が自動的に行われるようになる。VRとデスクトップ・コンピュータが対で、ARとスマートフォンが対になる。
・ARメガネはやがて、スマートコンタクトレンズに変わる。スマート水晶体やスマート眼球まで現れるかもしれない。
・こういった世界は監視社会とのトレードオフである。ますます多くの情報が取得されるようになる。政府はそういった情報へのアクセスを求めてくるだろう。
■ 社会と経済
第13章 人工知能ができないこと
・AIの成功は、私たちがAIに親和性の高い環境を作ることができるかどうかにかかっている。世界がAIに合わせるのであり、その逆ではない。
・AIは作業は得意だが、思考することはできない。
・AIに関する黙示録的なビジョンは無視していい。問題は超知性が人間を支配することではなく、人間が誤った使い方をすることである。AIによる変化の恩恵は万人で共有し、コストは社会全体で引き受けなければならない。
第14章 プライバシーは富裕層だけの贅沢品に
・19世紀が蒸気、20世紀が石油で動いていたとすると、21世紀の動力源はデータである。
・データベースは世界一優秀な医師になる。それは、医師だけではない。人々はその奥の因果関係を知ることをあきらめるようになる。教育はカスタマイズされる。
企業や個人の情報を管理するデータ銀行が誕生する。
・Facebookなどはプライバシーを隠したければ有料になる。お金持ちだけがプライバシーを得られるようになる。
第15章 10億人の経済力が解き放たれる (メリンダ・ゲイツ)
・スマートフォンは世界中の女性の前にある壁を破ることを手伝う。新たに10億人の経済力が解き放たれることになる。
第16章 教育格差をこうして縮める
・これまでテクノロジーは格差を大きくする要因であった。個々の生徒に合わせて教育はカスタマイズされることで格差は縮まる。
・ウェラブルでモニタすることで健康の格差も縮まる。犯罪も防がれ、地域格差も少なくなる。
ただし、富裕層の方が新しいテクノロジーに触れ、取り込むことが得意なことは間違いない。
第17章 働き方は創意を必要とされるようになる (リンダ・グラットン)
・人々は多くのメッセージ、大量の雑音の中で仕事をしている。アルゴリズムの方がよい仕事をする業務はすでに多い。
・テクノロジーによって、ヒエラルキーが解消されフラットになると思われたが、管理職の数は減っていない。これは人間がヒエラルキー構造を好むからではないのか。
・フリーランスの数はさらに多くなる。フルタイムの従業員しか雇わないと一部の優秀な人材を取りこぼすことになる。
・消えていく職種が生まれ、横に移動することが必要になる。より柔軟な働き方が求められる。人間と機械の適切なバランスを創造的に考えていくことが必要。いずれにせよロボットはパートナーとなる。
最終章 テクノロジーは進化を止めない
・産業革命に関する誤解: 技術の誕生は革命の原因ではなく結果である。今も昔もテクノロジーに意思などないのだ。
・20世紀に誕生した最も重要な技術はアンモニアの合成(ハーバー・ボッシュ法)かもしれない。
技術が人間の脳に与える影響については未知のものが多く、現時点で完璧に予想することができない。
・「テクノロジーに目的はなく、人間の目的をかなえるために存在すること、またテクノロジーは既存の問題を書行けるすると同時に必ず新たなニーズを生み出すことをはっきりと認識しよう。そうすれば来るべき変化に、責任を持って対処することが容易になるはずだ。それでも変化が止まることはない」
2050年にもう一度読み返してみたいものだ。あるものについては5年後でも楽しいものになるかもしれない。それでも、もし外れていたとしても、こうやって未来について考えることはとても重要なことなのだ。
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なんと第五章を青木薫さんが監訳しているとのこと。この本の価値が上がったような気がする。
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各専門家による未来技術予測。テクノロジーに意思はない。人間の使い方が大事。未来を予測して課題を解決するためにも、もっとSFを読もう!
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2050年の技術 英『エコノミスト』編集部著
未来予測の集積 冷静な分析
2017/5/20付日本経済新聞 朝刊
本書は、英エコノミスト誌が出版し大きな話題を呼んだ『2050年の世界』の姉妹編として、テクノロジーという切り口から未来を予測したものである。全部で18の各章はそれぞれの分野の専門家が執筆し、単体でも第一級の資料としての価値があるが、最大の特徴は、幅広い分野についてミクロ、マクロの様々な角度から考察し、全体像をとらえようとした点にある。現に変化が起きつつある予兆的な事例や、過去の歴史における技術革新のパターンなどを参照しながら、テクノロジーの進化が将来もたらす課題を浮き彫りにする。
人工知能(AI)、拡張現実(AR)、遺伝子操作、自動運転車、3D印刷などの先端的なテクノロジーは、30年後にどう進化しているか。本書はまず、各分野の進化の方向を詳しく分析する。
そして、コンピューターサイエンスのさらなる進歩によって、物理学、生物学、医学、工学など幅広い分野で進化が過去とは比較にならないペースで加速し、その結果、産業構造や労働市場、さらには戦争や地域紛争の形態まで大きく変化させると予測する。AIが人間を支配するといった恐怖は当たらないとしても、テクノロジーの進化が社会の安定性や安全保障に大きな影響を与えることは必至であり、人間がその変化に対応し、新たな価値観や倫理観を構築する必要性が明快に示される。
本書は、各分野の専門家による未来予測の集積であるが、一貫して流れるテーマは、人間が今後30年間に起こり得るテクノロジーの進化と社会構造の変化に対応し、いかにリスクを克服してテクノロジーをより良い未来のために生かすか、という問題意識である。そして、そのためには政策立案の果たす役割がますます高まるだろう、と多くの専門家は考えている。 近年、世界各国で巻き起こっている反グローバリズムの流れは、テクノロジーの進歩による社会構造の変化という問題の本質への理解不足がベースにあり、本書は、未来へのリスクに対する冷静で客観的な警鐘ということもできるだろう。30年後のテクノロジーの予測を通じて、今後世界が直面する課題を明確に示し、社会全体に意識改革を迫る啓蒙書である。
原題=MEGATECH
(土方奈美訳、文芸春秋・1700円)
▼「エコノミスト」は1843年創刊の英国の週刊誌。現在の発行部数は約155万部。
《評》経済評論家
小関 広洋
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未来を予測するうえで非常に興味深い本。途中に添えられている、SFストーリーがさらに想像力を豊かにしてくれる。
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この本にしかない内容は、あまりないように思った。最初に全体感をつかむにはよいかと思う。
どうしてもVRの記述については賛同できないなあ。一回は体感してみたいとは思うが。
教育関連で、中産階級と労働者階級(表現は忘れた)で、2歳までに話しかける語数がこんなに違う、という記述があった。およそ700日で1日10時間として、1分あたりを計算すると、ずっと喋ってる気がする。私が無口だからそう思うのかなあ。
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1965年 「ムーアの法則」 の後押し
1974年 IBMロバート-デナードの「デナード則」
コンポーネントを小型化するほど、チップは高速、省電力になり、製造コストは低くなる。
ーーーー
ムーアの2つ目の法則
チップの工場であるファンドリーのコストは4年ごとに倍増する。
ーーーー
1993年 コンピュータ科学者、SF作家のヴァーナー•ヴィンジがシンギュラリティと表現した。
ーーーー
●7つの波
第1の波;メインフレーム、ミニコン
2 ;パソコン
3 ;Web1.0
4 ;Web2.0
5 ;Big Data
6 ;IoT
7 ;AI
————
1960年代にアラン•チューリングと共にブレッチリー• パークの暗号解読センターで活躍したアービング•ジョン•グッド
知性の爆発的進化。シンギュラリティ。
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CAPTCHA
Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Human Apart
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技術の観点から未来を予測した一冊。AIに関してはまだ割れている感じなのが興味深い。個人的には「世界は効率性と引き換えに因果関係を諦める」「テクノロジーは全て応急処置。ニーズを満たすと同時に新たなニーズを生み出す」がビッグデータ・テクノロジー過信への戒めとして印象に残った。
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イギリスの「エコノミスト」という週刊誌の編集部が総力をあげて、2050年の技術を予測しています。これは訳本で、オリジナル本は2015年の時点で35年先の未来を予測しています。
書かれている内容を見ると信じられないようなものもありますが、2015年から35年前の1980年に想像さえできなかった技術を私達が使っている、というフレーズが、印象的でした。
人工知能・(自動運転される)自動車・農業・エネルギー等、20の分野について予測されています。私が生きている間に、この本に書かれている内容が実現されているのを楽しみにして過ごしていきたいと思いました。
全ての章の最後には「まとめ」があり、ポイントがよく纏まっています。時間がない人は、その部分を先に読むだけでもこの本の内容がつかめると思いました。
以下は気になったポイントです。
・農業革命の影響が完全に社会に及ぶまでには1000年、産業革命の場合は数百年かかったが、デジタル革命はわずか数十年である。我々が不意打ちを食らって混乱しているのも無理はない(p20)
・未来はすでにここにある、均等に行きわたっていないいないだけだ、というものがある。テクノロジーの懐胎期間は驚くほど長い、突然登場するように見えて実はそうではない。過去・現在・SFで描かれる未来、この3つが2050年を見通すための鍵になる。大きな可能性を持ったテクノロジーが出てきたとき、我々がその活用方法を見出すまでには時間がかかる(p22、25、83)
・VRのイメージを現実世界と融合させた拡張現実(AR)が、タッチスクリーンに続く新世代のコンピュータ・インターフェースになる可能性が高いという共通認識がある(p30)
・自動運転タクシーの登場で、典型的都市の車両数は、90%減少するといわれる。自家用車を持つ必要がなくなり、駐車場に使われている場所(アメリカの都市では20%)が住宅や公園に転用できる(p31)
・今後20-30年で大きな進歩の可能性とそれに伴う混乱が見込まれる分野(VR,自動運転、宇宙旅行、人の遺伝子編集)を総合すると、全体的な状況は17世紀半ばの科学革命期と似ている。顕微鏡、望遠鏡などの新たなツール、テクノロジーが、新たな科学的・数学的方法論と結びついた時期(p35)
・ムーアの法則、デナード則(小型化するほどチップは高速省電力となり、製造コスト低減)は効力を失いつつある。今では小型化するほど製造設備コストが増加し収益上のメリットが少なくなった(p43)
・コンピューティング能力の大部分はデータセンターという見えない場所に置かれ、ユーザーが必要な時に必要な量だけを使うようになる。つまり、電気水道のように、必要に応じて使う公益サービスとなる(p49)
・マインフレーム型のコンピュータの第一の波を制したのはIBM、第二の波はパソコン(OSとデスクトップ用ソフトウェア)で、アップルとマイクロソフトが制した、第三の波である、ウェブ1.0はインターネット、アマゾンやグーグル、第四の波であるウェブ2.0は、クラウド・モバイルコンピューティングをもたらし、アップル(iPhone)���グーグル(アンドロイド)・アマゾンが勝者となった、第五の波はビックデータ、第六の波はIoT,スマートマシン、第七の波が人工知能(p61)
・20世紀の目前に起きた二つの出来事が極めて重要、1)1897年、トムソンにより、たいていの物質には電子が含まれているという発見、2)1900年に、プランクが導入したプランク定数、作用=エネルギー×時間で、それ以上小さく分割できない単位(つまり量子)からなることを意味する、1905年にはアインシュタインが、光がそれ以上分割できない粒子状の塊(光子)として進むとした(p100)
・物理学の基礎方程式とされているものは、4つの基本力(重力、電磁力、強い力、弱い力)を支配する、互いに関連する4つの中核理論に体系化されている、これらは、3つの原理(相対性の原理、ゲージ不変性の原理=局所ゲージ対称性、量子力学=量子原理)である(p104)
・コンピュータの基礎となっているチップは、どんな些細な欠陥があっても機能しなくなるので、塵ひとつないクリーンルームで製造され、損傷すると回復できない。だが人間の脳は三次元的で、クリーンルームとは正反対の、混沌としたコントロールの緩い状態から生まれ、欠陥・損傷を乗り越えて機能できる(p117)
・神経インターフェースによって、人間の脳はインターネットと直接つながるだろう、皮質モデムなど(p130)
・2050年の農場について1つだけはっきりしているのは、今よりも遥かに機械化・自動化が進み、工場に近いものになっている。ロボット式トラクターやその周辺器具、ロボット式コンバイン収穫機、作物の成長ぶりをモニタリングするドローン・衛星など、スプリンクラーは畝沿いに走らせた配管ネットワークになり、殺虫剤や殺菌剤で葉に直接つけるものは専用ロボットを使って、ドローンからの情報に基づいて捜査、雑草はレーザーで除去(p166)
・3Dプリンターを使って翼のモールド(型)をつくるという試みは、研究段階から試作段階へと移った(p197)
・太陽光発電と風力発電の成長率を過小評価してきた、太陽光発電が2030年に世界発電量の1%になると予測したが、実際には2015年であった(p198)
・世界の発電容量と比べると、既設の蓄電容量は微々たるものだが、今後数十年で変化するだろう。カリフォルニア州では、2020年までに1.3ギガワットの蓄電能力の追加を義務付けしている、テスラモーターズは、パナソニックと組みネバダ州に5兆ドルを投じた、ギガファクトリーにおいて、家庭用蓄電池(パワーウォール)、企業用蓄電池(パワーパック)を製造する(p199、201)
・石炭から天然ガスへ転換しているのは、アメリカのみ。他の国はパイプラインや海上輸送のためコストが高いため。安価な石炭や価格低下の進む再生可能エネルギーを選択するだろう(p206)
・中国は、2015年12月に新たな炭鉱開発の三年間停止を決めた、また風力・太陽光・原子力などの技術において世界をリード(p207)
・ライプチヒにあるBMWの工場では、シートに樹脂を注入してプレスして、硬く軽量な車体のパーツに成形していく、最後はロボットがパーツを接着して車体を組み立て���。BMW、i3の製造ラインは静か、溶接の火花もない、さび止め塗布もない、エネルギー消費は50%、水消費は70%少ない(p211)
・3Dプリンターは、プラスチック、ガラス、金属、セラミクス、バイオ材料まで、幅広い材料から物体を印刷する。従来は、切断・ドリル・機械加工により材料を削り取っていたのに対して、3Dプリンタでは、材料の層を積み重ねる。材料の無駄も少なく、硬い物体の内部の造作ができて、従来型の製造ツールでは難しい、不可能な形状も作れる(p217)
・3Dプリンターはすでに中国で大量生産ラインに登場、電子機器の委託製造大手ライトオンは広州の工場で、ニューメキシコ州・アルバカーキのオプトメック社が製造したプリンターを使っている。以前は電子回路をつくり、それからロボット・手作業で電子機器にとりつけていたが、今ではコンポーネントを直接、3Dプリンターを使って電子機器に埋め込んでいる、中国企業ウィンサンは、住宅を印刷している(p219)
・製品のカスタマイズ化が容易になり、製品を少量でも効率的につくれるようになるので、企業は市場の近くにいるほうが有利になる。海外流出した製造業の多くは国内回帰するだろう(p222)
・ポーランドにある研究機関、モラテックスでは、弾丸が当たるとそれを止めるために一気に粘性が増す「非ニュートン流体」の開発に取り組んでいる。このような「剪断増粘流体」は今日の防護服に使われている、ケプラー(アラミド繊維)やセラミックスと比べて軽く、柔軟性も高い(p229)
・2015年に米国海軍長官は、海軍が購入する有人爆撃機は、ほぼ確実に、ロッキード・マーチンの「F35」で最後になると語った。2050年には昆虫のように飛ぶ、スパイ用モデル、犬のような姿で落ち葉や木材を燃料にしながら何か月も稼働し続ける補給用・攻撃用モデルまで、様々なドローンが活躍する(p230)
・水上艦が攻撃にさらされやすくなるのに伴い、海軍の活動が水中に移行、潜水艦が大きな役割を担うようになる(p234)
・生死にかかわる重要な意思決定を下し、自力で失敗から立ち直るための自由を認められて育った西欧人は、創造力・独創性を発揮できる。これは戦闘中に予想外の機会が生じたとき、柔軟に戦術を修正する能力につながる。非民主的国家で育った兵士はそのようなことができない(p236)
・身の回りものがすべてコンピューティング能力をもったら、何をコンピュータと呼べばよいか。こうした変化を推進するのは、ユーザと仮想現実、その親戚である拡張現実、そしてクラウドとのやりとりを可能とするテクノロジーである。VRを経験した人は、それを単に画面上でみた光景ではなく、実際に訪れた場所の記憶であるかのように語るVRと、デスクトップコンピュータが対であれば、ARと対になるのはスマートフォンである(p247、250)
・テトリスが世に送り出されたのは、2015年基準で33年前、それから今日までにコンピュータゲームは不気味なほどリアリティがあり、複雑になった(p249)
・2050年には、一部の人を除いて、スマートフォンの代わりにAR(拡張現実)眼鏡を使っているはず。スマホを見るのではな��、目の前の道に、たどるべき順路が示されるようになる、レストランはメニューが不要、多言語を話す人との会話はリアルタイム翻訳が流れる(p251)紙の新聞を発行しなくなった新聞社が多い、ロンドンの公共バスは現金による支払を受けつけなくなった、タクシーの標識をつけず専用アプリでしか呼べないタクシーが走っている、こうした変化がすべて初代iPhoneの登場から10年以内に起きていることを考えればあり得るだろう(p252)
・2050年までには、機械に直接われわれの脳波を読ませるようなシステムが誕生しているかもしれない、エモーティブという会社は、脳とコンピュータのインターフェースの可能性を研究している。それが実現する前には、モノを見るだけ、あるいは、まばたきするだけで機械を制御できるようになるだろう(p257)
・年長者は一日スマートフォン画面を見ていると文句をいうが、子供たちは、そうしたデバイスを通して身の回りの世界と関わっている。テクノロジーが変わっても、人間の本質は変わらない。血の通った世界とのかかわりを持ち続けたいと思うのである(p263)
・2016年3月23日、マイクロソフトはAIベースのチャットロボット「Tay」をツイッターに登場させたが、わずか16時間後に引っ込めた。邪悪なマシンに変貌したので(p289)
・食器洗浄機がその任務を遂行できるのは、そのシンプルな能力を中心に環境が構築されている(エンベロープされている)から、同じことがアマゾン倉庫ロボットにも言える。自動運転車も、一般化するのはわれわれがそれに適した環境をエンベロープできたときである(p291)
・スマートテクノロジーは、作業の遂行においては人間より優れているが、だからといって、思考においても優れていると誤解すべきでない。デジタルテクノロジーは思考そのものをしない(p296)
・19世紀が蒸気、20世紀が石油で動いていたとすれば、21世紀の動力源は、データにある(p303)
・これまでの35年と同じペースでコンピュータの性能が高まるとして2050年の生活を想像すると、3つのトレンドがある。1)今日困難なことが容易になる、2)お金のかかることが安価でできる、3)不足しているものが潤沢になる、これが、医療・教育・法律に影響する(p304)
・従来無料で使えたフェイスブックやグーグルは、われわれが進んでデータを吐き出さなければ有料化するだろう、2050年にはプライバシーは、飛行機のビジネスクラスや別荘のような贅沢品となる(p315)
・技術革新は、定型業務に従事する者から交渉力を奪っていく、再現可能な数式に落とし込める仕事は例外なく、インテリジェント・マシンに取って代わられるだろう。週当たりの労働時間が明記されない、ゼロ時間契約の初期形態となる。(p326)
・まず教育を施し、その後徐々に技能を開発していくという伝統的モデルは通用しなくなる、それに代わって生涯学習に力点が置かれる(p349)
・20世紀に誕生した最も重要な技術(しかも重要性が最も過少に評価されているもの)は、アンモニアの合成(大気中の不活性窒素を固定してアンモニア合成)で、人口肥料や爆発物へ応用可能となった。(p356)
・生産の急激な成長は蒸気機関が普及するはるか前に始まっていた、1780年代からイギリスの綿花は急成長した、この生産拡大をもたらしたのは蒸気ではなく、水車であった。水車の利用が限界に達しようとしていたときに救世主のように現れたのが、蒸気機関である(p361)
・蒸気動力によって投資家は時間と場所の制約から解放され、好きな場所に工場を建てられるようになり、労働力の集中と活用ができた。動力として水力よりも蒸気を選好した理由は、技術そのものが秘めた力とか意思とは無関係、資本家と労働者という二つの集団の社会関係の結果として選ばれた。技術は産業革命の原因ではなく、その結果である(p362)
・ウィルチェックが指摘するように、タイムトラベルは物理法則によって完全に実現性が否定されたSF技術の一つである(p369)
・本書で提示される明るい未来は、すべて条件つきである。食糧問題は起きないというのは、われわれが遺伝子組み換え作物など食料分野におけるテクノロジーを受け入れば、という但し書きがつく。今よりもっと良い未来を作り出せるかは我々次第である(p380)
2017年6月25日作成
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会社の研修で「2050年の社会や暮らしを予測し、自分の研究や技術がどう関連しているかを描け」という宿題が出て、その参考文献として配られた本。残念ながら何の参考にもならない…。ていうか、そんな未来のことを想像して何が楽しいのか分からない。何かの役に立つとも思えない。まあ、思考実験の訓練だと思って粛々とやるしかないのだが、面白くない~。
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2050年という今から30年あまり先を見据えて、現在の技術とその展望をまとめた本。
雑誌エコノミストの手によるものですが、同誌のライターだけでなくノーベル賞受賞者やメリンダ・ゲイツが寄稿しているのが面白いところ。幕間にはSF作家の手による未来予想図的な短編が2編あり、そこまで本編と密接にリンクしている印象は受けなかったけど、読みやすさを意識した構成には好感が持てます。
全編を流れる考え方としては、基本的に未来はポジティブだ、というもの。
技術面でもムーアの法則はもう持続できないよね、など色々な問題はありそうなのですが、テクノロジーの変化・発展は基本的には続くという考えで、ムーアの法則が終わろうと、別のアプローチとの組み合わせや量子コンピュータの登場などを踏まえて賢くやっていけば効用は得られるよね、という論が展開されていました。
それぞれの章を別々の著者が担当していることもあって、読みやすさも書かれていることもまちまち。2050年の技術を語るにあたって必要な分野としては網羅されている感はあるのですが、纏まりはあまり無いように感じました。
(だからこそ各章の末尾に「まとめ」がついたのでしょうか。まぁこの部分だけをインデックス的に読む読み方もあるのかもしれません)
個人的に興味が湧いたのは第17章の「働き方は創意を必要とされるようになる」というくだり。人間よりもAIの意思決定の方が優れている場合も出てくる中で、人間がするべき意思決定はより重要性を帯びるものの、ただし中間管理職的な役割はあまり必要なくなってしまう。その中で能力開発がどうあるべきか、というくだりは参考になりました。
さらっと流し読みするには良い本で、ここから特定のテーマを深く学ぶきっかけになるかもしれません。
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雑誌編集部の本だけあって、一章一章、筆者はバラバラで繋がりはないから、どこからでも読めるっちゃあ、読める
。17章構成と言えば、一章当たりのページ数も想像つくかと…。
興味深いトピック満載なのに、エッセンスの寄せ集め感が拭えず、半端な読み物になってるのが残念。
あと、各章末に見開きの「まとめ」があるのが不思議な作り。
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様々な技術をプロコンで評価していて、良書。ただ、人間が技術を過信せず、自然を謙虚に畏怖すべきという視点が欠けていて、インフラ整備に対する楽観的なところがあると感じた。