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面白かったー!今年のわたし的ベストミステリ暫定1位に、突如躍り出てきた。オーストラリアと言われたら、コアラとかアウトドアスポーツとか大自然とかのステレオタイプなイメージしか持ち合わせていない貧弱な私の脳にとって、衝撃の旱魃。
暗さと重さも大変に素晴らしい。人物造型○、ストーリー展開○、余韻○。
閉塞感と、一抹のセンチメンタルもよく出ている。
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まず邦題が秀逸だと思った。
旱魃によってより一層疲弊してしまった田舎町・キエワラ。
その町に20年振りに帰郷するアーロン・フォーク。
「ルークは嘘をついた。きみも嘘をついた。」という手紙と共に。
ルークの事件の真相、そして20年前フォークが町を出なければいけなくなったエリーの死の真相。
過去と現在を行き来しつつ話は進む。
ミスリードに嵌りなかなか真犯人がわからなかった。
そして何回か登場する「火災の危険度→極度に高い」という表現。
旱魃の水分がなく暑さだけが残るカラカラした風景、そして疲弊した町の人々の心中。
読んでいてなんだかこちらまで疲れて来た。
いつかこの町に纏まった雨が降れば良いのにと思う。
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豪州の田舎町では各家庭(学校にも)がショットガンを持っていていてウサギを駆除するのか。肉目的のハンティングではなく駆除。ストーリーの中に度々出てきます。
伏線をすべて回収してぴたりと納めます。いいです。
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現代で起きた一家惨殺事件と20年前の殺人事件が交差しながら展開していく。テンポもよく、とても面白かった。あとがきをみると次回作もあるとのこと。期待。
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星3.5という感じだろうか。主人公フォークは昔の親友ルークの葬儀に出るために、20年振りに故郷に行くことになった。20年前の少女の自殺事件と今回のルークとその妻とその子供の殺害事件が、交差しながら進んでいく。広い大地の中の小さな村の閉鎖的で排他的なコミニティーは、仲間から外れると生きていけない。
それぞれの秘密と嘘が絡みあっていく。
出来ればもっとルークの内面を書いて欲しかった。
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原題は"The Dry"。なので邦題も『渇き』だけの方が良かった。完結なタイトルは好みなのだ。
オーストラリア発の邦訳作品は滅多に手に入らないので、南半球ミステリとはかなり興味深い。ここでの『渇き』とは、ずばり乾燥のことである。オーストラリアでは雨に恵まれず長期的な干魃に身まれた挙句、大規模な山火事に発展することもあると言う。雨と湿度の多い日本に住んでいるぼくらには想像すべくもない水不足事情の下で本書はスタートする。
幼い子供まで含めた農場の一家惨殺という衝撃的な開幕の地に、かつてこの土地を追いやられた主人公が帰郷する。捜査官として経歴を積んだ主人公の心中で、かつて自分と父とをこの土地から追い出すきっかけとなった謎めいた事件が蘇る。あの事件の関係者と噂される自分と、かつての親友。その親友が妻と子をショットガンで撃って自殺したとされるむごたらしい事件によって。
刑事の帰郷と、二つの時代を結ぶ時間の糸。干魃に見舞われ、農業生活が危機に瀕して追い込まれた経済状況の貧村に蠢く悪意と偏見。
いかにもオーストラリアらしい、風土ミステリーであり、そうした古い村ならではの閉塞状況に加え、一見そう見えるものがすべて見えるままではない不安定さ、むしろその裏側で重奏的に生まれる人々の想いの交錯し縺れ合う分厚さのようなものが、フーダニット・ミステリとして秀逸な本作の味わいだろう。
時間軸が移り変わる中で、信じられるものが徐々に削り取られ、予想外の真実が姿を見せ始めるとき、主人公の中ですべてが変わる。
主人公である帰郷休職中の捜査官と現地の警察官とのタッグによる事件解決までの情熱が物凄い。そして渇きが常に背景にあることで人間の安定がかくも容易に地滑りを起こし、大きな犯罪に繋がってゆくという悲劇の記述にも注目される。
英国マンチェスター生まれの女流作家のデビュー作、骨太の力作として印象に残る一冊。
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馬鹿な酔っ払い1人のせいで、どれだけ大勢の人間が人生を狂わされたことか…
可哀想なエリー、アーロン、そしてルークもグレッチェンも。
殺人事件の方の犯人も意外すぎてビックリ!!
ぱっと見のイメージより読みやすくておもしろかった。
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これはおもしろい。
処女作というからこの作家の次の作品が楽しみ。
設定としては過去の事件と、それが尾を引いて起きたかのように見える現在の事件というありがちなものではある。
決して新しさはないが、過去の謎と現在の謎をうまくオーバーラップさせているし、そこかしこにあやしさをちりばめながら徐々に真相にせまっていく感じがとてもうまい。
何より、人物を描くのがうまくキャラが立っている。地元の警官レイコーには一瞬で好感を抱き、その誠実さに打たれ事件の解決を応援する気持ちで事件の展開に夢中にさせられた。
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初めてのオーストラリア発ミステリー。
日本で生まれ育った者としてはなかなか考えにくいのだが、オーストラリアでは干魃は珍しくなく、十年から二十年に一度は大規模な干魃が起こりそんなときに起こる山火事は大惨事になるらしい。
日本のように毎年どこかで豪雨や台風の災害が起こる国とは真逆だが、これもまた自然が起こす災害だ。
原題は「THE DRY」。だが邦題ではそこに「偽り」が加わる。
その「偽り」とはどんな「偽り」なのか、それは読んでいくうちに分かっていく。
主人公は普段はメルボルンで仕事をしているアーロン・フォーク。主に経済犯罪を担当する連邦警察官だ。
その彼が生まれ育ったキエワラという田舎町を二十年ぶりに訪れる。家族を道連れに自殺した友人ルークの葬儀のためだ。
当初フォークは故郷に戻るつもりはなかった。なぜなら二十年前、女友達のエリーが溺死した事件で犯人扱いされ父と共に町を追われたからだ。
だがルークの父親からの意味深な手紙に呼び出され故郷に戻り、ルークの両親から事件の真相を調べてほしいと頼まれることになる。
ルークの家族を巻き込んだ無理心中の真相と、二十年前に起きたエリーの溺死事件の真相。
フォークは期せずして二つの真相に斬り込むことになる。
もちろんメルボルンではない町ではルークの連邦警察官としての権限はなく、個人の資格で調査をすることになるのだが、頼もしいコンビが出来る。それがキエワラに赴任してきたばかりのレイコー巡査部長。このレイコーは優秀で熱意もあり、なかなか良い警察官だ。
大地だけではない、モラルも町としての機能も何もかもが枯死しかかっているようなキエワラという小さな町の人間模様は日本の小説にも出てきそうだ。
キエワラで生まれ育った住民は互いをオムツをしていた頃からどころか親の世代、その上の世代から知っていて濃密な関係を築いている。
だがキエワラに移ってきた住民に対しては、例え十年以上前からキエワラに住んでいても新参者として一線を引いていて、それが両者の間の見えない溝となっている。
過去の因縁によりフォークは町の人々に散々な嫌がらせをされる。この辺り、横溝正史先生の「八ツ墓村」のようでハラハラする。
特にエリーの父と従兄は強烈だ。
中傷ビラを撒かれたり店で買い物を出来ないようにしたり、極めつけは車を糞だらけにされたり(子供か!)。
私だったらここまでされたら心を病んで逃げ出してしまいそうだが、フォークは逃げない。
一度逃げ出した過去と向き合い事件の真相を突き止めようとする。
読み進めていくに連れてエリーの事件に関しては嫌な予感しかしないし、ルーク一家の事件にしても様々な側面が想像出来てくる。
フォーク自身、エリーの事件に関してはアリバイがなく偽のアリバイをルークに拵えてもらうという嘘を吐いている。
だがそれは同時にルークにもアリバイがないということでもある。
『隠し事があるのはみんな同じみたいね、アーロン』
「偽り」を抱えているのは誰なのか、どんな「偽り」なのか、二つの事件にどう繋がるのか。
最後の真犯人を追い詰めるシーンでの真犯人の足掻きの様子はまさに『渇き』きった大地ならでは。こういう演出は日本の小説では想像出来ない。
あれだけの一方的で酷い悪意を向けてきた町の人々がその後フォークにどう対応したのかを見て溜飲を下げたい気持ちになるのだが、そこまで書くのは無粋というものだろうか。
読み終えて印象に残ったのはいろんな家族や生き方が出てくること。
例えばフォークはキエワラでの経験の所為なのか女性関係が長続きせずいまだ独身だが、相棒のレイコーは良好な関係の妻がいてもうすぐ子供が生まれる。
女友達の一人グレッツェンはシングルマザーだし、エリーの父親は母親に愛想を尽かされ出ていかれ、町の医師はゲイであることを隠している。
一見良好そうに見える家族関係がそうでないことはよくあることだが、その逆もある。
そんな雑多な人々が詰め込まれ互いに互いを見定め合って自分の立ち位置を確認する、そんな小さな町の今後が不安になるが、それを外の者がどうこういうのはそれこそ大きなお世話なのだろう。
この作品は作者のデビュー作らしいが続編も出ているらしい。フォークがこの事件を乗り越えてどのような再出発を果たしているのか、機会があれば読んでみたい。
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オーストラリアの農村地帯で起きた殺人事件。かつての親友が絡むこの事件の真相を、休暇中の警察官が追っていく。
閉鎖的な人間関係と極度の干ばつによって、住人は誰もがストレスを抱えてイライラし、その捌け口を弱者に求めている。原題が「The Dry」とあるように、息苦しいほどの熱波に覆われた貧しい町という設定がじつに効果的。
意外な犯人もさることながら、数十年経っても過去の事件の呪縛から逃れられない主人公の、うんざりするような日々が印象深い作品だった。ただ、翻訳の技術的な問題なのか、文章は味気なく読みにくい。
でも、続編も読んでみよう。
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青春時代のほろ苦さなんてものではない、町民のまとわりつくような視線が全編に根付いて、この物語に重くのしかかっている。
“キエワラ”このオーストラリアの小さな田舎町は、干ばつが続き人々はギリギリの生活をしている。
それは、全てが乾ききっていて、何かのきっかけさえあれば燃えてなくなってしまうほど。
小さなコミュニティでは、良くも悪くもみんな知り合いで、人付き合いに何かと気を使うのは、どこの国でも同じ。
過去の出来事がもとで逃げ出すようにして町を出た主人公アーロン・フォークは、古い友人の葬儀のために町に帰って来たが、その死に疑問を持つものから調査を頼まれる。
しかし町の人は、何十年も前のことでいまだにフォークを苦々しい目で見る。
彼の十代の出来事は、苦く、苦しく、セピア色の思い出とはほど遠かった。
デニス・ルヘインやジョン・ハートが描く、アメリカ中・西部のいなか町の物語とよく似ている。
どちらも、イギリス植民地から移民によって成り立った国だからなのか?
もう少し「オーストラリア」であってほしかったと思う。
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オーストラリアのミステリーを読むのは初めてでした
なかなかに面白かったので「オーストラリアもなかなかやりおるわい」とどこから目線なのか本人もよくわからない目線で偉ぶっておりましたが
書いたのはイギリス人なんですよね
しかしながらオーストラリアがもつ特殊な気候風土「渇き」が作品の基幹ともいえ
「渇き」がもたらすオーストラリアの田舎町の閉鎖的な雰囲気が大きな目くらましになっていました
主人公が持っている「弱み」がなかなか共感できなかったんですよね
なぜ親子が街を出ていくことを「簡単に」選択したのか
それは自分が幸せな街に育ったからだと読み終わって気付きました
誰も助けてくれないなんてある?って思えちゃう人生で良かったなぁ
そんなことを思った作品でした
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オーストラリアの作家さんのお話。
オーストラリアは、乾燥して、燃えやすいんだと、思った。
犯人が最後までわからなかったが、分かった後からは展開が早かった。
過去の事件は結局自殺だったのかなーと思ったが、最後に犯人がわかり、ちょっとスッキリしたけど、つらい話だった。
ストーリー自体は面白かった!