紙の本
天才は何を書いても天才
2017/12/31 11:20
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投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ケン・リュウ短編集二発目。すごいハイクオリティ。アイデア・ストーリーから幻想味の強いもんまでバラエティに富んでいるが、全ての分野で駄作が無いというのは凄いこと。敢えて言えば、「魔法+歴史改変」がこの人の強みかな。どれもイイが、強いて上げれば、表題作か、時節柄「万味調和」が一番かなあ。エピローグまでを含めると誠に切ない。
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卓越。
どうも私は ”ガジェットと家族関係” テーマに惹かれたようで、「存在」「ループのなかで」が気に入った。
技術がどれだけ発達しても世の中や常識がどれだけ変化しても、”家族のせつなさ” のようなものは消えてなくならないような気がする。
短編にしておくのがもったいないような壮大な設定のものもあって、「草を結びて球を環をくわえん」など長編で読んでみたい。
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先頃文庫化された『紙の動物園』(※文庫版は2分冊)に続く、日本オリジナル編集の短編集、第2弾。
前作は非常に叙情性が強く、哀切な印象を残した短編集だったが、本書はまた雰囲気が違っている。冒険小説のような『烏蘇里羆』、女性私立探偵を主人公にしたハードボイルドミステリ『レギュラー』、ある種のホラーじみた恐怖が残る『パーフェクト・マッチ』(同様の恐怖はデイヴ・エガーズ「ザ・サークル」にも見られる。関係ないがもう3年も前の本なのね……)など、予想外のものが多かった。
勿論、前作同様、哀切な短編もある。それにしても、ケン・リュウの母親(母性)に対する一種の思慕というのは、ちょっと谷崎潤一郎っぽいね。
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素晴らしきケン・リュウ!
表題作もいいが、ヒーロー好きとしては、スーパーなあの方と『三国志』きっての英雄をテーマにした作品がハートに刺さる。後者の主人公は「老関」と呼ばれ英語にすると〝ローガン“にもなるという…
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最新の技術・知見を目の前にして、そこからどのような人間の物語があり得るのか、という発想の翼。この飛翔能力と構成力が人並み外れており、決して新しくはないのに引き込まれる。
「重荷は常に汝とともに」と「残されし者」が著者推薦作というのは中国っぽさというかオリエンタリズムばかり評価されることに対する反発が著者の中にあるのだろうか。
「レギュラー」は、訳者あとがきでマイクル・コナリーと評されたが、自分はジェフリー・ディーヴァーのように感じた。
そして藤井太洋の解説に見られる、ワクワクするようなSF作家同士の交流とインスパイア。
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各篇実に多様な趣の短篇集なのだけど、そのどれにも独特の叙情感が漂っているのがケン・リュウの特徴ではないかなあ。作品によって濃淡はあるが、切なく心にしみる感じが共通している。
強く印象に残るのは、揚州大虐殺に材を取った二篇。隠蔽され続けてきた歴史に光を当てたもので、心を揺さぶられた。特に「訴訟師と猿の王」の田の造型が見事。
進んだテクノロジーが家族にもたらす軋みを描いたものも目につく。テーマ的な新しさはないが、ケン・リュウの故国や家族、特に母に対する思慕の念が色濃く投影されているようで、しみじみと読んだ。
なかでもやはり表題作が出色。SF的ガジェットと普遍的な親子のありようが溶け合った一篇で、たった数ページでこれだけのことが言えることに驚嘆する。
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紙の動物園に続き、ハードSFな設定と、琴線に触れてくる情感にあふれたストーリーのバランスがとても好き
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著者の実力が判る短編集。様々なSF的素材を上手いとうならせる料理法で絶妙な作品に仕上げている。それぞれに味があり面白かったが、題材はありがちだが残されし者が心に残った。人としての尊厳と子供たちの未来の天秤。以外に早くその時は訪れるのでは?
以下 覚書
・ウスリー羆:バンパイヤ
・草を結びて環を銜えん:揚州大虐殺
・重荷は常に汝と共に:異世界の税金
・母の記憶に:ウラシマ効果
・プレゼンス(存在):遠隔介護
・シミュラクラ:3次元カメラ?の発展版
・レギュラー:ハードボイルド探偵
・ループの中で:遠隔戦争
・状態変化:魂が氷だったら
・パーフェクトマッチ:ビッグデータ=ビッグママが支配する世界
・カサンドラ:スーパーマンの相手役
・残されし者:電脳化を拒否した人の末路
・上級読者のための比較認知科学絵本:様々な生命形態
・訴訟師と猿の王:揚州大虐殺の記録を守ろうとした人
・軍神関羽のアメリカでの物語:1800年代後半のアイダホ中国人入植
・輸送年報より長距離貨物輸送飛行船:飛行船で甘粛州からラスベガスまで荷物をお届け
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ケン・リュウ第2短編集。
ショートショートのようなワンアイデアで切れ味勝負のような作品から、中編と読んでもいいようなちょい長手作品まで、飽きることなく捨て作品なしの良質なSF宝箱である。上下2段組み500Pのボリュームはさすがにズシンときたが、これも掲載作の密度が濃いからで、決して水増しじゃないということの証明。
どの作品もそうだが、オリエントっぽいテイストが漂うのがよい。チャイニーズアメリカンである作者ならではの作風が強みになっている。時には郷愁が漂い、時には生命力を感じる。
どの国にもどの民族にも歴史や物語があり、誰にだって人生がある。あの国はダメだとか、あの民族は劣っているとか、あいつらはワルいとか、安易に国家や民族や集団にネガティブなレッテルを貼るのは怖いことである。差別につながることは勿論のこと、硬直した非寛容な思考は自らの成長すら阻害する要因になる。勿論「犯罪者集団」とか「危険な思想団体」はあるし線引きは必要なんだけど。
所謂中国や韓国を無意味に差別するだけの「レイシスト」であったら、この本の魅力は伝わらないだろうし、分かろうとしないんだろうな。自省を込めて思うんだが、ストレッチで稼働域を広げることはフィジカルだけでなくメンタルにも必要なことなんだろうな。
この本は、メンタルをほぐしてくれる効果も抜群にあります。
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バラエティに富んだ、いろいろな味が楽しめる作品集。SF、ファンタジーの楽しみ、家族の絆と確執、それから中華系をはじめとしたアジアのたどった歴史を題材にした物語、ケン・リュウの魅力を十分に堪能できる。こういった才能の出現で、ジャンル自体が盛り上がってくれたならうれしい。「万味調和」が好きだった。
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この短編集も『紙の動物園』と同様に読む人の心に痛みのような(但し不快ではない)鋭いものを残す。小説を書くってこういうことだよねと『白磁海岸』の作者に言いたい。
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ウスリーひぐま、草を結びて環を銜えん、重荷は常に我とともに、母の記憶に、存在、シミュラクラ、レギュラー、ループのなかで、状態変化、パーフェクト・マッチ、カサンドラ、残されし者、上級読者のための比較認知科学絵本、訴訟師と猿の王、万味調和-軍神関羽のアメリカでの物語、『輸送年報』より「長距離貨物輸送船」。
中国に古くからの歴史・物語があり、漢文として日本に入ってきていたことを再認識しました。文化の力。
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ケン・リュウの小説は絶対に面白いな。既に名作選と言ってもいいくらいだ。『万味調和』が特に好き。ゴールドラッシュの時代、アイダホに流れ着いた中国人・老関=”ローガン”と彼が語る関羽の物語。
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短編集は評価が難しい。面白いものもあるし読みづらいものもあった。前評判が高いせいで期待度が上がったこともあり素直に楽しめたのは3分の2ぐらい。でも振り返るとどれもよい作品だった。やはり評判通りということか。
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面白かった。正しいと信じたことを貫ける勇気のある主人公が物語の、「草を結びて・・・」「訴訟師と猿の王」の姉妹編がお気に入り。「万味調和・・・」もローガンが格好イイ!けどテーマは深い。アメリカもホロコースト並みなことをしてたんだ。。。オススメできる良作揃いの短編集でした。