紙の本
わかりやすい
2017/10/28 07:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
難解なエマニュエル・トッドの理論をわかりやすく解説しています。世の中がパッと見えるようになります。
紙の本
けっこう難易度が高かったが、疑問が解けてスッキリ。
2020/07/07 20:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界を『 四つの家族類型 』というものに分けて解説しているのが興味深い。そこから、過去に起きた出来事、これから起こるかもしれないことを分析している。
なぜ、
1) 秦の始皇帝が焚書抗儒を行ったのか。
2) ヴァイキングがブリテンとフランスを襲撃したのか。
3) 十字軍やテンプル騎士団ができたのか。
4) フランスは中央集権国家になったのか。
5) イギリスで産業革命が起きたのか。
6) ソ連が崩壊したのか。
それぞれ、この『 四つの家族類型 』に起因するという理論を、興味を持って読んだ。
スターリン後のトロイカが失敗に終わったが、これは、フランス革命後の総裁政府と統領政府がやはり上手くいかなかったのと似ているのではないだろうか。
多頭政治よりは独裁政権の方がまだいい、ということなのか。
アメリカ合衆国の人種問題も、この『 四つの家族類型 』に拠っている。
黒人は、移民ではなく、元々奴隷としてアフリカから連れて来られた。だから、融け合わず、混ざり合っているだけ、というのが実像である。この考えも非常に興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
めちゃくちゃわかりやすい!
世界のニュースの的確な予想をし、予言、とすら言われるトッドの発言が、非常に地に足のついたデータの分析によってもたらされているものだということがよくわかります
投稿元:
レビューを見る
ネットで見かけて。
いろいろと考え方が面白かった。
エマニュエル・トッドがもともと人口統計から出発した学者で、数字が全てで数字に語らせようとしたところから始まったとか。
人類が多産多死型社会から少産少子型社会、厳密に言うと少死化がはじまり少産化が起きる、その要因は識字率、とくに女性の識字率のアップであることとか。
知識蓄積の要が母親の教育機能がであり、親の権威が強い直系家族では財産を相続する長男の嫁の地位が高く教育熱心だとか。
成人男性の識字率が50%を超えた時点で社会変革や革命がが起きる条件が整い、若年層の人口増加が家族内の分裂ひいては国家レベルでの革命的状況を発生させるとか。
とくにヨーロッパの歴史に関する話はなるほどと納得できるものがあった。
ヴァイキングがブリテン島とフランスに遠征したのは、子が親と同居し財産が長男に渡る直系家族の次男・三男が結婚するための財産を奪いにいくためだった、
フランスでは直系家族地帯を官僚としてとりこむことによって強力な中央集権管理組織をルイ十四世が形成することができた、
イギリスは絶対核家族であるイングランドの自由、独立、競争の冒険精神と直系家族のスコットランドの知性が産業革命をおこした等。
ただ日本の話になるとどうもピンと来ないというか、それほど単純なことなのかなーと思ってしまった。
直系家族の北東日本出身者がタテ型組織の「新選組」を作り、起源型核家族の西南日本出身者が横の連帯組織の「海援隊」を作ったという話は面白かったけど。
投稿元:
レビューを見る
「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」。ベスト新書2017年。鹿島茂さん。
なんだか怪しげな?タイトルの新書ですが、鹿島茂さんだから読んでみました。
ソ連崩壊、リーマン・ショック、アラブの春、英国のEU離脱、トランプ当選……など
「予言」を次々と的中させ、世界中で話題を集めている フランスの人類学者エマニュエル・トッドさん。トッドさんの理論や仕事を、鹿島さんが判りやすく解説してくれる、という趣向です。
もう読了してかなり経ってしまったので漠としていますが、
結局全体の理論体系として、スバラシイ!ということでもないのですが、
部分部分の解釈や理論には、「へ~」というものも多く、愉しめました。
#
21世紀のアメリカの経済の疲弊=グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化による疲れ)。
こういう言葉だと、すごくハッとしますね。日本も他人事ではありません。
「絶対核家族」=アメリカ。子も親もお互いに自由な分だけ、教育熱心ではなく、文化資本が受け継がれないことが多い。「自由」「競争」という原理から資本主義経済を支えていく。
スペイン・ポルトガルの「平等主義核家族」。それにインディオ系の原初的核家族。
どちらも「絶対核家族」と同じく、方向性としてはあまり教育熱心ではない、とトッドさんは言います。
その逆がドイツ、日本。核家族化が進んでいますが、意識レベル?では直系家族。この特色は、教育、文化資本の委譲に熱心である、ということだそうです。
なんだかんだ、世間や社会というものとの一体感が強い。
こういうとなんだか悪いようですが、例えば、東日本大震災の後に、草の根レベルで「助け合い」が顕著だったというのは、そういうことだそうで。
つまり、別の国だったらもっとスラム化、犯罪化が進んでいたのではないか、ということです。
一方で直系家族の国は、ヒットラーを産み易い、というちょっと背筋が寒くなる分析も。
#
また、よくフランスの小説を読んでいると、「家具付きホテル」という言葉が出てきます。
なんじゃらほい?なんですが、恐らく他に訳しようがなかったのでしょう。
この言葉も、この本を読んでいると、「土地よりも家具に価値を置く=なぜなら土地は分割相続できない」という、平等家族主義が反映しているのでは?という説が出てきました。
これは、長年の疑問が氷解した感じでナルホドと思いました。
#
「財産がない家族は、核家族化していく」というのも、ぞっとしますね。
財産があると、相続させなきゃならない。その財産を中心に強いつながりの直系家族が残っていく。
#
また、社会変革が起こるには「識字率50%突破」「若年人口が全体人口の30%を突破」が必要だ、という分析も面白い。
一方で「女性の識字率が50%」を超えると、出生率が下がる、という分析も。
#
「母親と娘の葛藤」というのが、文芸界で最近顕著なのだけれども、これは「��系家族」が「核家族」に解体していくときの、最後の喘ぎのようなものなのかもしれない。
#
最終的に、トッドの思考から、鹿島さんが現代日本へのメッセージを連ねる、ということになっていきます。
結局は、結婚というのものがないと家族は増えないわけですが、この結婚を鹿島さんは、「語学と似ている」。
「語学の初期学習と言うのは、ツマラナイ。自由意志では、ゼッタイに誰も学問を成し遂げられない。強制しかない」。
つまり、自由意志に任していては、マスとしては減る一方だ、という。
ここから鹿島さん独特の「お見合い=ダンスパーティー理論」というものがあって、これはこれで微笑ましいのですが...。
#
最後に、「家族」という形態、そして人口、という問題で言うと、
「シングルマザーに公的支援を増やすしかない」という話は、とても納得です。
「核家族化」は突き詰めればそこの行きついてしまう。そこで貧困や低教育を歯止めするしかない、ということですね。
マスの議論としては。
投稿元:
レビューを見る
エマニュエル・トッドさんの家族類型理論のとてもわかり易い解説と応用。応用編の題材が今の閉塞感あふれる世界や日本に関係する事案でちょっぴりだが心が休まった。
投稿元:
レビューを見る
トッドの家族人類学を基に、歴史と現代社会の背景を説明しようとするもの。特に、日本の直系家族の成り立ちと、その歴史を扱った章がおもしろい。新書なので内容は深くないが、トッドの家族人類学の奥深さは十分に伝わってくる。
中国の華北地方では、春秋戦国時代に直系家族が成立していた。直系家族は横に連帯して大きくなることはないため、小邦分立となる。大勢の騎兵を動かす匈奴が襲ってくると、秦の始皇帝は、大勢が協同する遊牧民のスタイルに父親の権威性を加えた共同体家族を確立させ、直系家族原理を撲滅するために焚書坑儒を行った。
外婚制共同体家族では、強靭な権力を持っている父親が亡くなると統率がとれなくなる。アッティラ帝国、モンゴル帝国、キプチャク・ハン国などが君主の崩御から瞬く間に解体したのは、息子たちによる分割相続の伝統によるところがある。
絶対核家族のイングランドでは、親子の絆は強くなく、相続も金銭解決されるほどのため、農民と農地との関係が弱い。そのため、羊毛生産のために囲い込みが起きると農地を持たない農民は工場労働者になりやすかった。イングランドは、直系家族で教育熱心なスコットランドと同君連合を組んだことにより、絶対核家族の自由、独立、競争と直系家族の知性とが結合することにより、イギリスの偉大な18世紀を用意した。
フランスは、言語も文化も全く異なる地域の寄せ集まり。教育熱心で勤勉、忠実な直系家族地帯を抱え込み、官職売買の制度を利用することによって中央集権官僚組織を形成することができた。平等主義核家族のパリ盆地と直系家族の周辺部との対立は、今日まで引き継がれている。フランスは、脱宗教的で民主主義的な共和国であることを憲法にも明記しており、宗教や出身国籍による中間団体を認めていないため、イスラムの風習に対しても厳しい態度をとる。
直系家族が解体すると、スーパーファーザーのような存在を求めるため、ファシズム発生の背景となる。
内婚制共同体家族では親族結婚が行われるため、女性の識字率が上がり、学歴がつくと共同体から出ていくことになるので反発が強い。
男性の識字率が50%を超えると社会変革への気運が生まれる。15歳から29歳までの男性の人口に占める割合が30%を超えると、革命や騒乱の要因となる(ユース・バルジ)。女性の識字率が50%を超えると出生率が下がり、社会が近代化して安定する。直系家族や絶対核家族では、兄弟のうち一人が優遇されて財産を独り占めするため、その嫁は夫と同じくらいに地位が高くなる。平等主義核家族や外婚制共同体家族では女性の地位が低いため、出生率が高いまま人口が増加していく。
日本では、古くは双処居住型核家族だったが、11〜12世紀に農地の拡大が限界に達して分割できなくなったため、一子相続の直系家族になった。畿内で長男相続の直系家族形態が完成すると、武士も制度として取り入れ、将軍を権威の頂点とする直系家族社会が生まれた。家からはじき出されるようになった次男以下は、寺社に入って自衛のために武装する僧兵となったため、戦国時代まで寺社が勢力を増していくことになった���三重、和歌山、高知、鹿児島などの西南日本では直系家族は広がらず、双処居住型核家族の変形である末子相続が多く残った。人口は流出することなく、兄弟の序列化は強くないため横の連帯意識が強いことが、同じ志を育みあい、革命集団となって明治維新を導いた。1910年頃に出生率が最も高くなってユース・バルジが生じ、その世代が社会の中核となる1930年頃から混乱の時代を迎え(1932年に5.15事件、1936年に2.26事件)、戦争に突入していった。戦後の占領下でマッカーサーは、諸悪の根源とみなした直系家族の原理を否定して核家族の原理に変更させる政策を実行し、民法でも家督相続を廃止させた。しかし、占領が終わると、企業や官僚組織などでは直系家族的組織運営が復活した。戦後に大学に進学し、60年代の学生運動を担ったのは、直系家族の次男以下がほとんどだった。
著者は、近年の日本会議などの動きをあげて、日本は「放っておくと直系家族になる」と書いている(疑問文ではあるが)。確かに、多くの企業などの組織が直系家族的(トップダウン型)ではあるが、家族そのものは核家族化している。農業以外の労働者が大多数になり、少子化も進んでいるから、分割相続ができない家族は少なくなっているだろう。ならば、平等の概念は広がってゆき、権威主義的な考え方は萎んでいくのではないだろうか。核家族化が進行する以前に育ち、直系家族を理想と考える世代が少なくなってゆけば、核家族型の個人主義的な社会に変化していくのではないかとも思うのだが。
投稿元:
レビューを見る
社会情勢や過去の事件などを、人口構成や家族構成、女性の識字率から類型化した主に4つのパターンから説明する。非常にシンプルで、納得感があり、魅力的な説。あまりに見事なので、反証を探さないと、と思う怖さがある。もう少し読み進めよう。
著者のエマニュエル・トッドは、先輩から飲み会で教えて頂いた。酔うと忘れるのでメモってたが、案の定、次の日には忘れてた。メモは大事だ。
投稿元:
レビューを見る
■ひとことで言うと
家族の形態が人の行動に無意識下で影響を与える
■キーポイント
・家族類型=家族形態の分類
→親子関係(弱 or 強)✕ 兄弟関係(平等 or 不平等)
・絶対核家族(親子関係 弱 ✕ 兄弟関係 不平等)
→アメリカ、イングランド
→子供は親と別居、相続は遺言に依存
・平等主義核家族(親子関係 弱 ✕ 兄弟関係 平等)
→フランス、スペイン
→子供は親と別居、兄弟が平等に相続
・直径家族(親子関係 強 ✕ 兄弟関係 不平等)
→日本、ドイツ
→子供は親と同郷、相続は遺言に依存(基本的に家長が相続)
→「家」の存続のために教育熱心な傾向
・外婚制共同体家族(親子関係 強 ✕ 兄弟関係 平等)
→ロシア、中国
→子供は親と同郷、兄弟が平等に相続
・家族類型とイデオロギーは相関する
→さまざまな行動が無意識下で家族類型の影響を受ける
・女性の識字率 > 50% → 出産調整 → 少子化
→近代化(テイク・オフ)の条件
→女性の識字率は家族類型に依存≒家族類型によって近代化の速度が異なる
・日本史・世界史の出来事は家族類型の特徴が行動に反映された結果???
投稿元:
レビューを見る
エマニュエル・ドットの家族類型や識字率についての考え方をベースに世界や日本を考えてみる本。自分にとって、新しい補助線をもらったような感じがします。世の中の見方が変わる本でした。
投稿元:
レビューを見る
最近(昔から?)よくエマニュエル トッドの名前を目にするので、入門編っぽい本と思って手に取った。第二章迄は凄く刺激的だったが、第三章以降は、こじつけかと思う点多々。
『というわけで』という接続詞で繋がっている箇所はだいたい違和感を感じた。
投稿元:
レビューを見る
エマニュエル・トッドは、フランスの歴史人口学者・家族人類学者。1976年に、10-30年以内にソ連の崩壊を人口統計学的な手法で予想し、注目された。ソ連は実際に1991年に崩壊した。
筆者の鹿島茂は、仏文学者で、明治大学教授。専門は19世紀のフランス文学。トッドの理論についての明治大学での講義や演習を書籍化したのが本書である。
トッドは著作も多く、学問的には数多くの成果をあげているが、本書で主に説明されているのは、「4つの家族類型」という説明モデルである。
縦軸に親子関係の強さをとる。縦軸の上が親子関係が強く、下が弱い。親子関係が強いとは、親子同居(必ずしも全員という訳ではない。例えば長男だけとか末子だけとか)が発生し、また親の権威が(少なくとも建前的に)強い。親子関係が弱い場合には、核家族が主要な形態となる。
横軸に兄弟関係の平等さをとる。横軸の右側が兄弟関係が不平等、例えば、長男だけに相続が発生する。左側が兄弟関係が平等。
上記のような縦軸・横軸を持つ表を書くと、4つの象限が出来る。
第1象限は、親子関係強+兄弟関係不平等で、この家族の形をトッドは「直系家族」と呼ぶ。直系家族社会は、自民族中心主義・ファシズム的になりやすいとし、これにあてはまる国として、ドイツ・スコットランド・日本・韓国等をあげる。
第2象限は、親子関係強+兄弟関係平等。「共同体家族」と呼ばれ、共産主義・一党独裁型資本主義をとることが多い。例としてはロシア・中国。
第3象限は、親子関係弱+兄弟関係平等。「平等主義家族」と呼ばれ、共和主義・無政府主義をとりやすい。フランスのパリ盆地地方、スペイン中部、イタリア南部など。
第4象限は、親子関係弱+兄弟関係不平等。「絶対核家族」と呼ばれ、自由主義・資本主義となる。イングランドや北アメリカ等があてはまる。
トッドは、これらの家族システムこそが、社会の価値観を生み出すのであると主張した。
本書は、この家族システムの解説と、その理論を用いて、世界史・日本史上の出来事に説明を試みると同時に、今後の世界についての予想を鹿島茂が述べる形で、構成されている。家族システムについての解説を読むのは初めてであり、興味深かった。
また、今後の世界についての予想で、特に中国・ロシアにかかる部分が面白かった。中国・ロシアともに、「共同体家族」型であり、独裁政権のもとで、社会は安定しやすい。ロシアで言えば、スターリンの時代にソ連は発展し、その後、強い独裁政権が生まれない中で、ソ連は崩壊してしまう。崩壊後、プーチン独裁の時代になって、社会は安定し、経済も成長を始める。中国で言えば、共産党一党独裁、習近平の強権的な政治のもとで、中国経済は発展している。そこで問題は、当然、プーチンの後、習近平の後である。プーチンは1952年生まれ。習近平は1953年生まれ。まだ70歳前であるが、あと20年も30年もやれるわけではなく、彼らが亡くなった後、あるいは、失脚した後にどうなるのかに注目する必要がある、と筆者は説いている。
投稿元:
レビューを見る
人類学者エマニュエル・トッドの理論を著者がわかりやすく解説した本。4つの家族類型(直系家族、絶対核家族、共同体家族、平等主義核家族)をベースに各国の特徴を分析する。それに加えて、識字率と出生率もポイントとなる。それによると、男性の識字率が50%を超えると社会変革の気運が生まれ、女性の識字率が50%を超えると出生率が下がり、社会が安定すると考えられる。トッドは女性の識字率向上から「テイク・オフ」と呼び、その地域、社会は近代化し、暴力性は失われたと推定する。
以上がトッドの理論の基本的事項だが、本書はこれらをもとに、今世紀における日本および世界の動向を読み解く。なかでも興味深いのが、今後の対中、対露対策である。これらはいずれも(外婚制)共同体家族で、政治体制としては共産主義、一党独裁資本主義である。これをふまえると、中国は中央集権体制が崩壊した場合、地方軍閥が台頭して、内戦状態に陥る可能性がある。それを防ぐためにも、日本は中国共産党を支持したほうが国益になるのだという。ロシアも同様で、現状はプーチンによる独裁政治で社会が比較的安定しているが、仮にプーチンが倒れた場合、ソ連崩壊時のように社会が混乱すると考えられる。