紙の本
多様な人々が同居するニューヨークを一つにつないでいるのは巨大なアングラ経済だった!
2017/12/09 10:08
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、世界の大都市ニューヨークを取り上げ、そこに居住する多様な人々、大金持ちから貧困層までが同じ地域に居住する経済システムに着目し、その内実を考察した画期的な書です。同書は、こうした多様な人々をつないでいるのは、巨大なアングラ経済のネットワークであると説きます。生活に何不自由をもしていないにも関わらず、売春組織を運営するセレブ、故郷から家族まで呼び寄せたにも関わらず、犯罪に手を染めていく移民、など。こうしたアングラ経済を基盤とする大都市ニューヨークの現実を暴露します。
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ニューヨークのアングラ経済コミュニティを活用・もしくは活用せざるを得ない人たちへの取材を通して浮き彫りなっていくグローバル都市の実態とそこでサバイブしていくための秘訣を抉り出した力作。
経済の代替的経路として黙認されるアングラ経済の蓋然性を後押ししつつ、その経路で自分の経済活動を加速するためには人と人との結びつきを使い捨てできるぐらいにドラスティックなハートを持たないといけないことが強調されている。
本書で何度も目にする「ぼくらはたゆたわないといけない」という著者の台詞の意味がページが進むにつれて段々と重くなっていくのが印象的だった。
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前著「ヤバい社会学」に続くスディール・ヴェンカテッシュ先生の待望の新作です。
コロンビア大学の終身教授になられたみたいですね。
体当たりでの取材レポートなど本来学者という職業はこうあるべきだという
僕ら市井の人間のイメージ図ぴったりの方です。
今回はニューヨークの売春やドラッグ周りの経済、
というかお金の動きについて著者が実際に体験したことが
ドラマ仕立てで描かれています
それではエッセンスを抽出していきましょう
・お客の捕まえ方が変わったおかげで以前は一部の地域に集中していた売春の場はニューヨークの市内全域に拡大している
・路上スタイル主流の時代より安全性がやや高まっている
・安全性が高まっていることを理由に中流や上流の女の人たちが買収ビジネスに参入する事例が増えている
・売春の目的はクスリ代から生活費の足し、将来の目的のための資金作りに移行している
・核になる業界ができればそれを支える団体が発達する。法律相談やヘルスケアがそう。
・キャリアとして売春を考えているからキャリアチェンジを考えるのはもっと良い仕事が見つかったときになる。
厳密にいうと、このエッセンスは本編には出てきません。
正確には訳者あとがきのスディール・ヴェンカテッシュ教授が
この研究をもとに行った論文の引用です。
本著はあくまでも著者の取材録をヒューマンドラマ仕立てで描いたものであり
学術的な研究論文ではありません。
性サービスは最古の職業といわれるように研究の対象としては
非常におもしろいと個人的には思っているのですが、
倫理的な問題なのか研究が進んでいない分野でもあります。
良かった よくない
○セックス経済を扱った小説だけど電車や喫茶店でも読める
○セックス経済とドラッグ経済の結びつきがよくわかる
○アメリカ人のエリート様は若い黒人が好きという意外な知識が手に入る
ヒスパニックはお好みではないらしい。
ちなみに僕は背の低い東南アジア系が好きです
該当する方はツイッター等でご連絡ください。
▲小説自体はあまり面白くない
コロンビアとニューヨークの違いについて悩んだり等
地理的なものが原因なので州ごとのイメージがあれば面白いかも
▲セックスはともかくドラッグは日本では馴染みがあまりない。
日米の性サービスの比較など非常におもしろいかもしれませんね。
セックスワーカーさんと少し話をしてみたくなること請け合いです。
それでは良い読書ライフをー (・∀・)にぱ
投資ブログやってます。
よかったら見てね
http://www.subaryman.com/
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原題はFloating City。
floatという言葉は本文中にも出てきており、これに訳者は「たゆたう」の語を当てている。
邦題は副題(A Rogue Sociologist Lost and Found in New York's Underground Economy)に近い。
舞台はニューヨーク。著者は邦題通り社会学者。
社会学の研究にもいろいろ流派があるようで、アンケートや統計などで「外」から研究する研究者もいれば、「中」に飛び込んでフィールドワークにより解き明かそうとする「エスノグラファー」の立場を取る研究者もいる。著者は後者である。ただその対象がアングラ社会であることが、いささか特異だったというところだろう。
著者は2009年にシカゴのアングラを対象にした『ヤバい社会学』を書いており、こちらはそこそこのベストセラーだったようだ。本書はその続編と見てもよいのだろう。
社会学者の書くノンフィクション、というと、いささか堅そうだが、本書は一般向けなので、さほど小難しくない。
ドラッグや売春、ギャングに不法移民、セレブに売人、春売りにポルノショップ店長。さまざまな人が交錯するニューヨーク地下組織。そこに流れ込んでくる理由もさまざまだ。大金持ちでありながら売春組織を切り盛りする美形セレブ。不法移民としてポルノショップで日銭を稼ぎ、何とか故国の家族を呼び寄せようとする者。DVに遭って逃げてくる者。
行き場のない者、社会からはみ出した者が入り込み、揺れ動き、また出て行き、ある者はまた戻ってくる。そこには社会のシステムから零れ落ちた者を助けるネットワークが自然発生的に形成され、1つの社会を創り出す。
もちろん、危険もある。暴力もある。犯罪もある。だが、ここにはもしかしたら世界を変えていくかもしれない「何か」がある。少なくともそう考える「人々」がいる。
街はたゆたう。何かを醸そうとするように。
著者は多くの人に聞き取り調査を行い、彼らの近くにいる。友人というわけではないが、他人でもない。彼らの身の上話はときにハードで、現実に犯罪すれすれの場所にいたり、犯罪の渦中にあったりする。身近にいる著者もただの「傍観者・観察者」であり続けることは不可能である。女の子が殴られ、ポルノショップ店員が姿を消す「フィールド」に飛び込む者が無傷でいられるはずはない。たとえ、身体的に危害が加えられなかったとしても。
著者自身、学界の主流にいるわけでもなく、身分の不安もある。おまけに私生活上も妻とはすれ違いで離婚の危機に瀕している。プライベートでも問題を抱えつつ、社会学者として何を研究していけばよいのか、著者もまたこの街で揺れ動いている。
そういう意味では、これは1人の人間の成長記としても読める。副題のLost and Foundは著者自身が自分のしたいことを見失い、また見出すことを指している。
著者もたゆたう。何かを見出そうともがきながら。
さて、実際に学術的研究の成果がどの程度だったのかは、推し量るしかないのだが、それなりの「n」(面接・調査できた数)を稼ぐことはできたようであり、一定の評価は得たのだろう。
けれども本書を読む限り、著者の「フィールド」はアカデミックよりも、読み���やドキュメンタリー等、一般向けなのではないかという印象を受ける。
訳者あとがきによれば、著者は現在、フェイスブックの研究機関にいるようだ。
おそらくは原文もスラングが多いのだろうが、訳文もかなり砕けた印象で、独特の文体である。
それもあってか、何だか不思議に浮遊感を感じるルポでもある。
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ニューヨークの売春、ヤクに関わる人物への密着取材をレポートした本。地下経済の実態が垣間見えて興味深い。
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エスノグラフィー。
ダウンタウンの話から始まるが、上流・中流階級の人達が犯す犯罪と境界を越えて結びついていく。
どんな立場で読むかに依るのかも知れないが、読み物として最高ということは無かった。
学問としてどうなのかは、本だけでは分からず。
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自分では絶対にいかれないところのことを知る楽しみ。あまりよいことではないけれどね。というのが最高。
それは別にしても、ともかくスリリング。
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コロンビア大学の社会学者である著者は、世界一グローバル化した街・ニューヨークに潜入し、アメリカ同時多発テロがおこる数年前から10年以上かけて、銀行口座や社会保障番号すら持たない人々の社会を探っている。この本は、著者の活動の記録であり、日記であり、個人的記憶である。情け容赦ない階級社会でおきる急激な社会の変化、著者の焦りや葛藤、空回りが細かに描かれている。社会の底辺で生きる人たちは、グローバリズムが及ぼす負の影響に落胆しながらも、地域に根ざしていたはずの社会を、義務を伴わないコミュニティに変え、さらには個人のネットワークへと変化させ、たくましく生き抜いている。生命科学を学ぶ私達が、信念と柔軟性という、相反するものを大切にしながら、物事の本質を見極めるにはどうすればよいのか。ヒントを与えてくれる一冊である。
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話題の本らしいが、色々な点でいまひとつよく分からなかった。例えば、ニューヨークに行ったこともないので、ニューヨークの地域名が出てきても、どういう人たちが暮らす土地なのかが分からないし、麻薬の種類ごとの価格や主なユーザーも分からない。それに、著者たちアメリカ人の驚いたり喜んだり悲しんだりという感情についても、微妙なところできちんと伝わってこない。
それでも、社会学について何も知らなかったので、社会学のあり方に関する2つの路線対立を含め、社会学が何をする学問なのか、何を目指しているのかなどが少し理解できた気がする。
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久々に読む、くだらない本。社会学者が書いてるとは思えない。ダラダラと日記を書いているような内容で、全く学術的ではない。反体制的な論調で裏経済に働く人たちに同情的。米国の国家体制を理解することが先決。
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訳が、おじさんっぽい。
頑張って英語で読みたくなるくらい、会話文がダサかった。
全部はちゃんと読めなかった…。
好みの問題かもだけど、ダラダラ自分の周りに起きたことを語っている感じ。
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『ヤバい社会学』で有名なコロンビア大学の教授という一線の社会学者が、グローバル化過渡期のニューヨークの地下経済に密着する。地下経済といっても都市の経済の20-40%を占めるのでバカに出来ない。
売春といえばクスリ代のためという印象だが、実際には表稼業をやりながら、貯蓄や将来のためにする場合が多いらしい。この辺は援交とも類似するか?キャリアの一環という意味では全然別だが。アングラ経済はこの意味で成功のチャンスになりえる。
そしてノウハウを積んだら、売春や売人など人を使う立場になり、そこでお金を貯める。上手く行けば足を洗って新しい生活へ。成功の鍵は、仲間や友人の関係ではなく、ビジネスの関係を作り、居心地の良さを捨てること。役に立たないなら切り捨てる必要がある。誰かが傷つくのは認めねばならない。無理なら悲惨な未来だ。
上流社会の淑女がポン引きやったり、グローバル化やニューヨークの再開発に伴う摘発で麻薬売買ができなくなったり、裏稼業の同僚に全財産強盗され一家離散したり、障害者年金のおかげで月980ドルで(ニューヨークで!)二人の子を育てるシングルマザーが現れたり、「社会学は社会を良くする学問なのに人を救えない」「貧困層が貧困を抜け出す方法を見つけたかった」と著者が絶望したりする。市長がタイムズスクエア界隈を浄化する政策について、著者が「おまえピューリタンかってぐらいの偽善だ」と一刀両断したのは興味深い(世間一般では偽善ではなく善とされている行為なだけあって)
アメリカの裏社会を垣間見ることができる。潔癖な人とかは読むと結構鱗落ちるかも。