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投稿者:KKキング - この投稿者のレビュー一覧を見る
給与所得者は社会保険料を毎月天引きされているにも関わらず、日本人はなぜか社会保障への興味も理解もない。タイトルとおり、「教養」としてそれくらいは知っておきたい。
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官僚の先輩は誤ってなかったが時代が変化した、という認識の本。総論賛成ではあるが、非合理的な制度も多いことは認めよ。書ける範囲で頑張ったという印象なので、似たコンセプトの本を外部の人間が書いているならそちらの方を読むべし。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23679981
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これは良書だ。社会保障の歴史と全体像をわかりやすく鳥瞰するように説明するのみならず、ポジティブな解決策をも提示してくれている。
いたずらに危機感を煽るわけでもなく、冷静に最適解を求めようとする本書のプランには説得力がある。小生は読後に「増税に賛成論者」に転向してしまった。
しかし待てよ、官僚が持続可能性のある社会保障政策の最適解を作成できたとしても、それを政治的に実現できるのだろうか。
少なくとも「規制緩和による成長戦略で利益を得るのは総理のお友だちだけ」の世界では難しい。
ともあれ、本書で一貫して取り上げている社会保障案は現実的かつ説得力もあると思えた。高く評価したい。
2017年7月読了。
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久しぶりに読みごたえのある本に出会えた。
世代間格差を強く感じることが多かったが、この本を読むとその考え方そのものが不毛と感じる。社会保障は単体で考えるものではなく、経済と一体と考える必要があるということも含め、いろいろな気付きがあった。
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元厚生労働省官僚の香取照幸氏の著書、社会保障の歴史や諸外国との比較を通じて、今後の日本の在り方を提言する作品。
まず日本の医療制度は世界でトップレベルだそうだ、よく病院での待ち時間の長さが問題視されるが、福祉国家と言われているスウェーデンでも、複雑な受付手順を経て専門医の診察を受けるのに90日以上待たされるらしい。しかしこの優秀な日本の制度も、医療現場従事者の重労働に支えられているという難点がある。
そして年金破綻については全く心配がないとの事、なぜなら年金は現役世代の所得から積み立てられているので、国民に所得がある限り年金は潰れない。つまり年金が破綻するときは、日本が破綻するときなのだ。しかし今後高齢化が進むにつれ、給付開始の年齢が上がったり給付額が目減りしてしまうのは避けられない。
これらの問題を緩和するためには、企業の内部留保や高齢者の貯蓄を市場に還流させ、赤字国債を減らして国の財源を確保する事が必須である。そのためには将来の不安を軽減させるための政策や、社会保障制度の再構築が急務なのだが、それには国家単位の合意形成が必要であり、気の遠くなるような調整業務を繰り返さなければならないのだ。霞が関のお役所仕事は大変である…
巻末に香取氏が後輩たちに述べた言葉が紹介されているが、「実態を把握し、コミュニケーションを図り、問題を理解し、最適解を見出し、解決策を組み立て、合意を形成し、確実に実施する」、というプロセスがとても印象的だった。これは公務員の仕事だけではなく、自分のようなサラリーマンにとっても非常に貴重な言葉だなと思った。
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社会は競争だけでは成り立たない。共感が「他者の目」を個人の中に内面化させ、そこに「常識—良心」が形成され、内なる道徳—自己規制としてのフェアプレイ=公正という行動規範が生まれるのだ、と述べています。(アダム・スミス『道徳感情論』、p.25)
その国をつくっている根本の価値観や理念、哲学が分からなければ、社会保障の制度だけ教えても、その意味するところ、本質は理解できない。残念ながら日本の教育はそこのところをきちんと教えていないように思います。社会保障が何によって支えられているのかを、ちゃんと教えていないということです。(p.40)
社会というのは壮大な相互依存・役割分担と協働のネットワークによって形成されています。そこに目を向けなければ、社会保障は理解できません。
情緒的な意味ではなく現実の問題として、社会とつながりを持っていなければ、人は1日たりとも生きていけません。ですから、社会が健全で安定していることが、たくさん稼いでいる人にとっても非常に重要です。だから、この制度があるわけです。
社会保障という形で、所得を再分配することが社会全体の安定につながるから、この制度がある。そこが社会保障という制度を理解するのにもっとも重要なポイントです。社会保障は、単なる所得の分配ではありません。(pp.54-55)
一人ひとりが老後の生活で必要なコストを社会全体で賄うことで、過剰貯蓄をもっとも合理的に小さくしようとしているのが年金制度です。(p.112)
「変わらないためには変わらなければならない」(『山猫』ランベドゥーサ)と言います。そうであるのなら、期待すべきは新しい人たち、新たに起業し新しい市場を開拓し新たに市場に参入してくる若い企業、若い経営者たちです。(p.137)
財政赤字が大きいということは、政策には歳出削減圧力が非常に大きく働きということです。おカネがないから新しいことができない。様々な課題に対処しようと思っても、新たな政策課題に取り組もうと思っても、先立つものがない。おカネがないから、政策選択の幅が狭くなる。手札が制限され、政府の問題快活能力が低下する、事態はどんどん悪化する。悪化すればするほど解決のコストは高くなる。ますます対処できなくなる。(pp.174-175)
なるべく多くの人が働き続けラエッル社会環境をつくる、なるべく多くの人が自立して社会参加できるような社会にする、そのことによって、現役世代の生活が保障され、人々が能力を発揮し事故実現できるようになり、結果、格差と貧困の拡大を回避し、社会を活性化することができるーこれが、北欧諸国がつくった新たな成長モデルです。(p.224)
セーフティネットは落ちて怪我をしないためでもありますが、人々が安心してジャンプできる、思い切り勝負して自己実現できるためにあります。社会保障は個人が一人では負えないリスクを社会全体で防御するためにあります。そして、それは同時に、より多くの人がリスクを冒してでも自己実現に挑戦できる社会をつくることであり、また、リスクに対するコストを最小限にする装置でもあります。「個人のリスクの分散」と「社会全体のリスク負担��最適化」は実は同じことを言っています。(p.232)
社会の活力の源泉は、個人の自立と自由な選択に基づく自己実現です。そこが原点です。働くこと、結婚すること、子どもを持つこと、それらはみな人生の基本的な選択です。男性なら当たり前に享受しているものです。それに制約がかかっている。社会の半数を占める女性の、自由であるべき人生の基本的な選択に制約があるのでは、活力ある社会など実現するわけがありません。(p.256)
長寿社会で年金保険料の増額なしで年金制度の収支のバランスを取るには、平均寿命の伸長に見合った現役期間の延長、年金制度で言えば年金保険料支払期間の延長が必要になります。(p.283)
大事なことは、個別の事象、現場の実績から何を読み取るか、導くか、ということであり、それに必要なものは我々自身の資質、「専門知」と「感性」そして「想像力」です。
なぜならば、「実態の把握」とは、問題を正確に理解し、それを解決するためにより良い対策・制作を企画・立案・実施するために行うものであって、実態の把握それ自体が自己目的化しては意味がないからです。
現場行政官の戒めに「できる限り多くの現場に足を運べ。そしてたくさんの人の声を聞け」というのがあります。もちろんこれは当たり前のことですが、これには続きがあります。
「そうすれば、現場の何が真実で何が嘘だか分かる」
「現場には真実がある。だが同時に、現場は往々にして嘘をつくことがある」(pp.326-327)
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元厚生労働省の方が書かれています。堅苦しくない文章であること、データの裏づけがあること、私見が明確で客観性があることなど、とても読みやすいです。
あくまでも、社会保障の現状とそれを踏まえた対策の本。著者の私見とこちらの意見を比べてみるのもおもしろいです。
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国民1人ひとりが、まさに「教養」の1つとして社会保障についてしっかり知識を持つ必要があるなと思いました。
法改正などで話題に上る際、騒ぎ立てるワイドショーなどで表面だけを見聞きして理解したつもり……では、問題の本筋が見えないままです。
多くの方に、お勧めしたい1冊です。
社会保障は、負担や給付として私たちに関わっているわけですが、消費や雇用、産業振興にも影響するという点、改めて気づかされました。
また、国家財政の問題点として、借金を返せないことも大事ですが、それよりも予算が限られるために政策の選択肢が狭められ、必要な施策が打てないという点を指摘されています。なるほど、と思いました。
大変読みやすい構成および文章ですので、多くの方に読んで頂きたいです。
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文句なしの5つ星。
社会保障が抱える課題、そしてその背景、本質を豊富なデータ、事実に照らして、極めて分かりやすく、建設的に書いてある。
読みながら、これが日本の官僚か、と感動すら覚えた。
年末に読んだ小泉小委員会の本と合わせ、日本社会の抱える社会保障問題の根深さを痛感した一方で、小泉小委員会の本では政治家の、また本書では官僚の力をまざまざと見せつけられ、非常に勇気づけられ、また刺激を受けた。
こうした骨太な政治家、官僚の働きが、浅薄なメディア報道や、品のないジャーナリズムなどによってかき消されてしまう現状は本当に憂うべき事態であるし、我々はそれを壊して行かなくてはならない。
そのためにも、優秀な政治家、そして官僚の働きを知ることの出来るこの2冊は、政治に疎い人にこそ是非読んで欲しい本である。
最後に、著書が後輩たちに託したメッセージ。
まさにビジネスマンにも直結するメッセージであり、著書の指摘する能力、そして人間性には多いに共感した。
そうした能力、人間性を身につけられるよう、今後も努力を重ねていく。
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『教養としての社会保障』(著:香取照幸)
読了した本がたまっています・・・
付箋部分を抜粋します
・その国をつくっている根本の価値観や理念、哲学が分からなければ、社会保障の制度だけ教えても、その意味するところ
本質は理解できない(p40)
・非常に簡単に言うと、人は一人では生きていけない、人は誰でも「何者か」でありたい、意味のある人でありたい
社会というのはあなた自身そのものでもあり、あなた自身のことであるということを教えています(p41)
・セーフティーネットは、人々が自分の能力や可能性を最大限に発揮して自己実現をする、その挑戦を支えるものです(p56)
・平均寿命はどんどん延びているのに、働く期間はそれほど延びていない。つまり、老後が長くなっている。その分、現役のうちに
老後に備えて蓄えなければならない負担が重くなった(p1109
・リスクを冒さない(冒せない)、これまでの成功体験を忘れることができない、というのは、成功したサラリーマン
(役人もそうです)の典型的な行動様式なのだそうです(p137)
・日本という社会は老後の不安が非常に大きい社会だということになります(p157)
・日本人の特性であったはずの社会への強い帰属意識は揺らぎ、共同体を支えていた連帯感が失われ、他者への共感が
薄れています(p199)
・社会は大きく変化している。後世、あれが社会の大転換期だったと振り返ることになるような転換期に私たちの社会はある(p218)
・日本の人材育成の主体は、今でも基本的には企業です。企業が優秀な人材を採用し、企業の中に抱え込んで「我が社」の色に染めて
カスタマイズする、。優秀だが他の企業では使えない人材、いわばガラパゴス化した社員の忠誠心で会社を支える。日本は
そうやって成長してきました(p221)
・北欧の成功が示唆しているのは、民生の安定と経済成長の両立を実現していくためには、できるだけ多くの人が働いて社会に参加し
それぞれの能力を発揮できるようにすることが重要で、そのためには、社会保障を現役世代に重点を置いた給付システムに
転換することが求められる、ということです(p223)
・働く意志があって能力もあるのに働けない女性がいることは、人的資源の損失であり、生産性の低下を招き、格差と貧困を
増大させ、社会の停滞と社会統合の危機をもたらします(p226)
・私たちにとって、収入を得るすべは働くことです。働いて給料をもらう、自ら事業を起こして収入を得る、働くことの対価として
得た収入ですから自分のものです。堂々と自由に使えるし、自分のお金だから大事にもする。可哀想だからお金を配りますという
だけでは、人心は荒廃してしまいます(p228)
・社会の構成員一人ひとりが頑張る、頑張って自己実現をしていく、自分の夢を叶えるために努力し、自分を磨き、能力を発揮する。
そんな人々の営みの集積、総和が社会の発展であることに疑いはないでしょう(p231)
・民間企業でも同じだと思いますが、「事を成す」には強い意志と信念、そして何よりも何のためにそれをやるのかという目標
目的の共有が必要です(p243)
・何度でも言いますが、社会の活力の源泉は、個人の自立と自由な選択に基づく自己実現です(p256)
・失業なき労働移動、という言葉があります。生涯に何度転職しても、身分や待遇に不利益を受けることなく安定して
働き続けられる雇用環境をつくるには、これまでの企業主体の人材育成から、企業の外での人材育成を体系的に整備して
労働市場をよりオープンにしていくことが必要だと思います(p300)
・大事なことは、個別の事象、現場の実情から何を読み取れるか、導くか、ということであり、それに必要なものは
我々自身の資質「専門知」と「感性」そして「想像力」です(p326)
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元 省の官僚である著者が書いた本で、社会保障の全体像を掴むには非常にわかりやすいものだった。
多くの人は自分と関わりのあるミクロの社会保障だけをみて喜んだり文句を言ったりするが、マクロ的にとらえることで本当に日本にとってどうすることが良いのか見えてくる。
今の日本の社会保証制度がどういう成り立ちで作られ、どう変化してきたか、また外国との比較をしながら、今後の日本の社会保障制度がどうあるべきか著者の考えが記されていた。
退職にあたり職場の後輩たちに向けて伝えた実態把握能力・コミュニケーション能力・制度改善能力3つの言葉が胸に響きました。
最初の2つは役人でなくてもとても重要なことだと感じた。
人の気持ちに共感しながらも、物事の本質をとらえる力を少しずつ鍛えて生きたい。
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年金局長、雇用均等・児童家庭局長等を歴任し、その間、介護保険法、子ども・子育て支援法、国民年金法、男女雇用機会均等法、GPIF改革等数々の制度創設・改正を担当。さらには内閣官房内閣審議官として「社会保障・税一体改革」を取りまとめた著者による書き下ろし。
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社会保障のバイブルと言っても過言ではない基本書。制度のできた背景から始まり、マクロでの課題、ミクロの課題、改革の方向性、未来への提言と、それぞれのパートで豊富な資料、統計を元に丁寧に説明されている。制度が複雑に入り組んでいるので、とっかかりが難しいが、もう現状維持では立ち行かない、改革待った無しという状態にあることはよくわかった。社会保障の課題は、同時に日本の成長に向けての課題でもあると思う。
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長年、厚労省の官僚として社会保障政策に関わった著者が、社会保障制度の意義と、これからのあるべき姿について語った一冊。社会保障は医療・介護、子育て、年金、生活保護、公共衛生等、テーマが多岐に渡り、かつGDPの2割を占めるインパクトを持つことから、その全体像を掴むのは容易ではない。それを長年の官僚としての経験から、教科書的な説明を非常に平易にまとめることに成功している。
さて、そうした教科書的な意味合いもさることながら、本書のメインメッセージは、「経済成長と社会保障は相互に関連しており、対立軸で語るのではなく、その両方を満たす政策を考えるべき」というものである。本書を読むまで、経済成長と社会保障の関連性をあまり意識したことがなかったが、セーフティネットとしての社会保障があるが故に、個々人がリスクを取ることができ、結果として経済成長を促進する、という考え方は、もっと多くの人に理解されるべきものであると思う。