紙の本
根本的な考えはよいのだが
2017/09/16 11:13
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投稿者:Katsu - この投稿者のレビュー一覧を見る
平均との比較、優劣により、その人を評価することを、筆者は「平均思考」といい、それを批判する一方で、その人自身何ができるのかといった能力評価を行うべきとしている。私もこの意見には賛成。数値化できないその人の個性や能力にこそ価値があるのであって、それをさらに伸ばすことが教育であると私は考える。
しかしながら、それを実現する手法として、高等教育におけるコンピテンシー評価導入を筆者は主張している。すなわちある特定の分野について、できるできないを評価するというものである。ここで疑問である。大学は専門学校なのか?高等教育はそんなものではない。特定分野におけるより深い思索・研究を行うところ、あるいは幅広い教養を身に着けることで、幅広い視点から特定分野をとらえなおすのが高等教育である。よって、高等教育における評価は点数化できないし、他との比較が本来できないものである。ところが、筆者がいうように高等教育で能力評価をすれば、その人を0か1でデジタル的に数値評価することになるのではないか。
頭でっかち、尻すぼみで、実に残念な本である。
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軽々しく個性ということなかれ
一つの基準で比較することを奨励したおかげで、一次元的思考に偏るようになってしまった。
人間の才能にはばらつきがあるという事実を受け入れ、子供のそれぞれのプロファイルを評価し、長所を生かすための方法を探してあげる。
行動は、特性、状況のどちらかで決まるわけではない。
特別なコンテクストでどのように行動するのかを理解する。
平均主義に騙された私たちは、正常な進路なるものがあると思い込み、成長の道が一つだけ存在すると信じて疑わない。
みんなと同じ場所でみんなよりも秀でなければならない。こんな窮屈な思考パターンに陥ってしまう。
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平均より頭がいい、仕事が出来る、年収が良いなど、「平均」て言葉をよく使いますが、そもそも平均て何なのか?平均的な人間は一体どのぐらいいるのか?平均的思考とは何なのか?
とても興味深い本です。
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この本はすごい!!!
目からうろこが落ちるどころが、うろこをひっぱがされる感じ!
データをとって、「これが平均値」となると、それがマジョリティの中のマジョリティ、母集団を代表する存在である、と思うじゃないですか?
でも平均に一致するものが何もなかったり、あるいはその+/-の範囲に入るものがすごく少ないケースは多々あるという話なのです。
1940年代のアメリカ空軍は墜落事故が多発していましたが、その原因がコックピットの使いづらさだと判明。当時「パイロットの平均体形」に基づいて設計されていたものの、1950年に改めて身長、胸回りや腕の長さなど10カ所の平均値を割り、10項目すべてにおいて平均範囲におさまるパイロットがどれだけいるかを調べたところ、4,063人の内10項目全てが平均内の者はただの一人もおらず、3項目だけに絞っても該当する者はたったの3.5%しかいなかったのです。
これは体という物理的な話ですが、能力においても同じ「平均主義の偏見」がはびこっています。
大学出願のための全国統一試験において点数が高ければ「能力が高い」とみなされるわけですが、この点数とは、「平均値とどれだけ乖離しているか?」で測られます。
高いほうに乖離すれば、あらゆる分野で能力が高く、低いほうに乖離すれば、あらゆる分野で能力が低い、とみなされてしまう。
結果、生徒は「同じ分野(試験の対象となる科目)でどれだけ抜きんでるか」を競わせられ、その試験では図られない分野の能力は切り捨てられていき、能力の無駄遣いや自尊心の欠落などの悲劇が生まれるわけです。
人格でもそうです。かの有名なマシュマロテスト(マシュマロを食べずに我慢できた子は人生で成功する確率が高い)には、他の学者による続きのテストがありまして。
それは、マシュマロテストの説明をする大人を二人に分け、一つ目のグループには信頼を置ける大人、二つ目のグループにはそれまでに子供に約束したことを破って信頼感を持てないようにした大人が、マシュマロテストの指示を出します。
すると、当然ながら二つ目のグループのほうが、マシュマロを食べる確率が高くなりました(我慢しても報酬がもらえるとは思えないのでね)。
つまり、人格のようになかなか変わらないものですら「コンテキスト(その場の状況、背景ですね)」に左右されるわけです。
なので、人格テスト(SFでもVIAでもそうですが)も、実はそのコンテキスト次第なんですね。
例えば社交性ひとつとっても、友人たちとの集まりなどカジュアルな場では社交的だが、会社のパーティなど年齢層が幅広く、固い場ではシャイになる人がいるわけです。
でもテスト結果によって、「この人は(世の平均と比べてこの項目の点数が高いから)こうである」と判断されてしまう。
そして同じ点数を取った人が、いつでもどこでも同じようにふるまうとは言えないのですね。
この著者は高校までさんざんな成績(Dばかり)でした。
そのあと、結婚し、子供も生まれ、なんとか凡庸な大学に進学しなおしたのですが、勉強する時間が限られていたため、「自分にあったクラスを集中的にとる」やり方で生き延びようとします。
その結果、Aばかりの成績となり、ハーバード大学院に進学するのですね。
彼自身、平均というものから思い切りかけ離れていた人なのです。
(そうは書いてありませんが、ADHD的な行動パターンを感じさせる人です)
だから、平均のうさん臭さがわかるんでしょうね。
この本に書かれていることは、言われてみればそうだな・・・と納得できることばかりなのですが、逆に「どうして今まで改めて考えてみなかったんだろう?」ということばかりでもあります。
どれだけ世の中が平均主義にやられてしまっているか。
どれだけ、世の常識から離れて思考できるようになるか?
正直、そうできる自信がありません。
常識の呪縛から離れるためにも、めちゃお勧めの本です。
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現代社会は数値化し、テイラー主義のように平均的な人間像を設定することで働き方や評価の仕方を効率化してきた。それはそれでよかったのだが、様々な人が平均にフィットせず能力を育成できず発揮できない状況も生じている。
実際知力でも色々な種類読解力、計算力などに分けられるがそれぞれの相関は人が考えるほど高くなく、一つのテストでその人のテストが計れるわけでもなく、またコンテクストによって現出する性格や能力も全然違ってくるのである。
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・平均的な人間など、誰もいない。
・平均という気まぐれな基準のお陰で、偽りの理想像との
比較を強制されてしまう。
・個性学を支える3つの原理
1)才能にはばらつきがある
2)状況によって異なる個性を発揮する
3)たった一つの正常な経路など存在しない
・最も貢献できそうだと本人が判断した仕事を選ばせる。
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冒頭での掴みが良くてのめりこんだ。確かに平均はディテールを失う。
なるほどと思うところはいくつもあったんだけど、思ったより深みを感じられなかったのが少し期待外れだったかなと。
歴史的に平均の考え方が生まれたいきさつに何十ページも、自分としてはいらなかった。
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私たちは生まれてから死ぬまで「平均」という言葉に一喜一憂している。しかし平均の値の人はいるのか?例えば身体サイズを測定しそれぞれの平均値を持つ人がいるのかといえばそれはNOである。ヒトはモノではない。バラツキがあり、それぞれ・その時のコンテキストがあり、ゴールへの道のりも各々違う。それを理解せずに、いわゆる科学的管理手法でヒトを判断するのは、人間の可能性を最小評価する元凶である。
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・平均的な人間はいない。個性にはばらつきがある。
└観点によって何が平均的かが異なり、多面的に物事を見る必要があるため。
└行動特性は、ある程度は性格の影響を受けるが、多くは文脈や状況の影響を受けるため。
└ゴールにたどり着く道は一つではなく、たくさん迂回路があるため。
・個性を重視した企業で成果を出しているのはコストコ。
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・才能にはバラツキがあるとして、画一的な評価をやめたグーグルやマイクロソフトの事例が興味深い。特にグーグルは具体的な項目を洗って調べており、説得力があった。
・個人は、特性心理学・状況心理学、いずれか一つではなく、複合的な要因で形作られるという当たり前のようで、偏っていた思考がわかった。
・「あなたは正直、不正直」では、誰もが一貫性を持っておらず、状況によって変わる事がわかった。
・「才能は特別なコンテクストで発揮される」でも、似たような事が書いてあり、その通りだと感じた。
いずれも思い込みと事実が実は異なっているということに、はっと気付かされた。
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勝間和代さんのオススメで読んでみた。
「平均的な人間像」は想像上のもので、存在するのは個性。この事実を受け入れることは、医学界における「細菌の発見」くらいのインパクトが有るという。医学は「細菌への対策」を出発点にすることで飛躍した。同様に平均は一旦置いて、個性重視(その人特有の力をいかに引き出すか?)の姿勢を貫くことが重要。
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2016年の©︎が付いているが、もう少し古い本の印象。平均的な人間など存在しない。さらに平均点で人間の能力を判断するのはまったく無意味。個々の能力および振る舞い方は、千差万別な上、コンテクストによっても発露の仕方が異なる。
まったく異論はない。その上で本書を読んで抱く違和感は、ここに異なる能力によって、異なる結果がもたらされる、極論すれば、個別差はあれ、場に適した能力が有れば好結果を導くことができると結論付けているように感じられる点だ。
「#平均思考は捨てなさい」(早川書房、T.ローズ著)
Day116
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意外と面白い。心理学のゴルトンについての個人情報もあるし、マシュマルテストについての育った環境での相違(すぐに食べないとなくなる施設で育った子供の行動)、性格について、教育、など、学生が卒論で役に立つ研究が多く掲載されていて、しかも文献で豊富である。
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[出典]
2019年の<びっくら本>28冊 #mybooks2019 R-style
https://rashita.net/blog/?p=29816
[備考]
日本で特に強い「平均思考」がいかに人を蝕んでしまうのか。私たち、つまり自分自身と他者の評価について再考を迫る一冊です。
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"平均"の値を出した時、実際にその平均にぴたりと当てはまる人は100人いてもほんの1,2人存在するかしないかのレベルだという。これは面白い。平均についての概念が変わった。平均年収、というのも全然平均ではない。