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目次
・密通女の思う壺
・家督を捨てる女の決意
・真綿でくるんだ芋がくる
・にっと笑った女の生首
・御奉行に発止(はっし)と女が礫(つぶて)を投げた
・牢で生まれ牢で育った七つの娘
・霊験あらたか若狭稲荷効能の絡繰(からくり)
・手習塾市川堂乗っ取りの手口
短編集ではあるが、一冊を通して手習塾市川堂の男座の師匠青野又五郎が秘していた過去が明かされる。
安芸広島浅野家の奥女中・奥林千賀子の死んだはずの許嫁だったというのだ。
なぜ青野又五郎は許嫁の前から姿を消したのか。
なぜ死んだことになったのか。
正体を暴かれ塾を辞めた青野又五郎。
頼りになる男師匠がいなくなった手習塾市川堂に乗っ取りの罠が仕掛けられる。
短篇それぞれの事件と並行して、紋蔵は絡まり合った人間関係をほどき、困った人たちに知恵を授ける。
そんな中で好きだったのが「牢で生まれ牢で育った七つの娘」
死刑囚がそっと牢の中で産んだ子ども。
母親が刑死した後も女囚たちに育てられたその娘は、周囲に幸運をもたらす子だった。
世間を知らず、7歳の時まで牢の中で暮らしていた「はな」を引き取ったのは、「ちよ」をも育てた金右衛門。
「はな」を特別扱いするのではなく、普通に子どもとしてかわいがる様子が良い。
「はな」を幸運をもたらす子として特別扱いしようとする人たちの浅ましさに比べて、潔いまでの普通扱い。いいねえ。