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日本酒関係の方から薦められた本。発酵に関して知識が全くなかった自分でも、入門書として分かりやすく面白く書かれた本だった。発酵に関してだけでなく、そこにまつわる風土の特性、人間の風習や思想との繋がり、美術との類似性なども書いてあり、幅広く学べ気付き納得させられる。
発酵とは人間の為の文化的な行為であり、人間の為でないとただの腐敗。環境に応じ微生物の力を活かしデザインすることで、保存が効いて尚且つ美味いというもの。日本の糀となるニホンコウジカビと海外のカビの違いや、酒を平穏に持込みカオスを生んで、秩序を壊すことで秩序を保つ話しなども面白かった。ただ、内容が盛りたくさんだったので、もう一度読み返してマーカーでチェックしたいような本。
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発酵デザイナーという謎の肩書の著者が、日本、世界の発酵食品の解説をする本。知らなかったけど「てまえみそのうた」がヒットしたらしい。文体も「~であるよ」を連発する謎のスタイルだが、意外に読みやすく独特のワールドが広がる。内容はしっかりしていて、発酵の仕組みや意義、最後にはDNAの解説まで重厚だが、読みやすく仕上がっている。「くさや」「すんき」といった地方独自の発酵食品のはなしだけでも読み応えがある。発酵に興味のあるひとにはぜひ勧めたい。
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『発酵文化人類学』と、なかなかに固い書名だが、読んでみるととてもライトでポップな文調で、さすが小倉ヒラクさん!
発酵の話が広がり、交換と贈与の経済、最近の発酵ブームは資本主義とは真逆の「ギフトエコノミー(贈与経済)」が根底にある発酵に、我々が無意識に期待しているから、など。
読んでいて気づけば文化人類学にどっぷりと浸かってしまう。
トロブリアンド諸島に住む各部族によって営まれる「クラ交換」という交換文化は初めて知ったけどとても興味深い。
もちろん発酵についてもわかりやすく記述されていて、発酵と腐敗の違い、酒、味噌、醤油の変遷などなど。
特に日本酒とワインの変遷について、ただ美味い酒を作るのではなく、トレンドや土着文化を取り込みながら、革新を恐れない職人さんの事例は自分にも生かせることがあるはず。
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小泉教授が布教してきた発酵学がいまや新世代に受け継がれる。
日本酒、醤油、味噌についての薀蓄はいずれも興味深いが、とりわけ甲州ワインとは何なのか、というくだりが一番面白かった。おおげさに言えば、日本産のワインを飲む、ということの意味が初めて分かった次第。
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発酵とは。
見えない自然現象に
人間が意味を与えた瞬間に初めて生まれるもの。
つまり、人間なしの発酵はなく、
それは腐敗である。
・カビは、異なる生物を架け橋する存在である。
・酒は、ケからハレへと人を誘い神との交信を可能にする触媒
=秩序を確認するために破壊を喚起する
=酒は複雑系のカオスを定期的に秩序に持ち込みアップデートするためのデザイン装置。それを駆動させるのが発酵菌
・神話はブリコラージュであり発酵である。
エンジニアの逆。
器用人⇔専門家
・発酵は、オープンソース
・味噌に、スタンダードはない。ローカル性・多様性こそが本質。
・発酵はプロセスこそ大切。サムシング・ニューから、サムシング・スペシャルへ。コミュニティを満足させる装置。
プロとアマがDIY
・すんき
・レヴィ=ストロース
クリエイティビティは、個人からではなく関係性から生まれる
・コミュニケーションしつづける存在が、人間。
交換と贈与(クラ)に終わりはない。
→外の世界に絶えず呼びかけることによって自分が立ち現れてくる
・発酵=人間に有用な微生物をピックアップして役立てる
微生物にとってのゴミが、人間にとっての宝ものに
・エネルギーをやりとりしつづけることこそ生命
・交換時の副産物こそが社会を作る
=発酵的ギフトエコノミー
・局所的なリセット=過剰発酵=死の疑似体験=二日酔い
人が菌になる
・自然と自分
・制約こそクリエイティビティ、ブリコラージュの源泉
・アート鑑賞=リバースエンジニアリング=主観的認知の追体験
醸造家の顔が見えない酒、芸術家の個性が見えないアートはつまらない
醸造家のメッセージを自分なりに翻訳してコミュニケーションすることこそアートの楽しみ方
・ものづくり
自分が作っているのではなく、菌が働きやすい環境を整えているだけ
ゆらぎや複雑性をうまく取り込んでいく
・冷たい社会=円環的
暑い社会=直線的
・生命を自由に操れるようになったら、人は神を超えるのではなく殺す
・日本らしさとは、「ほどほど性」
いいものを搾取し尽くすのではなく、たまにほっておいて、たまに使う。
★発酵文化とは
自然現象を見つめ、
創意工夫を凝らして自然をデザインし、
生み出された価値を楽しみ分かち合う
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本の内容自体とても興味のある分野なんだけど、文体がどうも肌に合わなくて目が上滑りしてしまった。本ではなくブログとかの媒体だったら読めそうな気がする。
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「発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ」
発酵さまさま。
日本人にとって発酵はなくてはならない存在だ。発酵が無ければ私達の朝飯もランチも夜ご飯もみな大変困る。しかし、私はそんな大切な発酵をあまり知らない。そんなビギナーな私にとってありがたいのが本書である。日本初?の発酵デザイナーが発酵のありがたみを知らないぼんくらな私にご教授してくれるのだ。
とは言え、発酵の専門書では無い。体系的に発酵を学びたいならば、別の本が望ましい。この本は発酵をざっくりでも知って(とは言えビギナーには十分)、発酵に感謝し、発酵の凄さに感心し、発酵様!発酵様!と言う気持ちに浸る為のものだ。以下が、本書に期待してよいこと。
1-発酵文化の面白さがわかる
2-同時に文化人類学における主要トピックスがなんとなくわかる
3-人類の起源や認知構造についてそれとなくわかる見識が深まる
3点は確かに担保されている。特に発酵文化は、人間と微生物が相互に絡まり合いながら紡がれてきたのが分かる。当然知らなかったことも多い。例えば、よく見る麹はCHINAで一般的に使われるもので、JAPANだけで使われる糀と言う文字があるとは知らず。この糀は穀物の中でも米に、発酵カビでもとりわけニホンコウジカビたわけに当てられる和製漢字だとは尚更知らず。
面白いのは発酵の起源だ。古代日本を絡めて解説されているが、実に面白いし、興味深い。酒が嗜好品を超えた聖なる液体として宗教や神の概念と結び付いている。発酵は食文化の前に文化人類学/神話と親和性が高い。
そして、手前みそ。著者は手前みそworkshopを開催しているらしい。踊って歌いながら手前みそを作る食育プログラムもやっているようだ。独り身男子には味噌はなかなか縁がなく、ましては手作りなどもってのほか!でありますが、いや、ちょっと作ってみたいな、なんて。基本的には、簡単なのであるよ(更に失敗しにくい)、と言うことなんで、やれんこともないか(後は勇気だけよね)。と思っていたら、メリットばっかやん!やるべし!よね。絶対的な正解はない所が良いね。レッツ手前みそ!
読んだら、発酵はとんでもない深い奴、と分かっちゃう。発酵を文化人類学を始め、神話やインターネットなどと絡めて表現する点がとても凄いなと感心もしてしまう。そして、なにより文が上手い。興味を唆る書き方である。
PS
漬物「すんき」を食べてみたい。あと、碁石茶。
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「・・・であるよ」という語り口調が、読み終えた後も余韻として残っている。これで発酵のことが、すべて理解できるというほどの専門書じゃなく、初心者向け。語り口調も事例もわかりやすく、どんどん入ってくるのがわかった。僕は、学生時代に文化人類学をやっていたので、ここでの議論は一応理解はできるのだが、ちょっと強引な気もした。話しは色んな方向に飛ぶので、結局、この本は何なのだという思いもあるのだが、色んな知識、自分とは違う発想に触れることができ、僕はとてもごきげんなのである。
http://muto.doorblog.jp/
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おもしろくておもしろくて! ちょっと独特の言葉遣い(~なのであるよ、など)が多少気になるけど。でも内容が本当におもしろい! しかも情報量もはんぱなく、質量ともに充実。発酵に興味がある人は読んだほうがいい。
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タイトルと表紙からはお堅そうな専門書の印象がありますが、素人でもとても読みやすい一冊でした。
発酵を通して地方や日本の文化にスポットを当てるアプローチを取りながら、これからの将来どうしていくべきか考えさせられました。
これまでお酒にはあまり興味もこだわりもなかったですが、お酒の醸造方法や醸造家のこだわりなどが詳しく書かれていたので、これからは違いを意識しながら色々なお酒を飲んでみたくなりました。
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1.発酵の仕組みについて簡単なことは知っているのですが、文化については考えたことがなかったので良い機会と思って購入しました。
2.発酵文化人類学という新しい概念を生み出し、発酵デザイナーとして活躍されている小倉さんの話です。本書の目的は「発酵を通して人類の文化を学んでいくこと」です。
発酵が地域にどのように根ざし、人とどのような関わりをしてきたのかをまとめた一冊です。発酵についての理論的なことを少し述べながら、発酵とともに送ってきた人々の生活について書かれているので、今までにないような印象を受けた本です。
3.「面白い!」と思ったのが読んだ後の感想でした。
発酵は人間と深く関わっていることを思い知りました。また、それだけでなくところどころの節では「テロワールとは?」など普段使っている言葉に疑問を持ち、著者の見解を示していることで、日頃使ってる言葉に疑問を持って自分なりに答えを出していくことの大切さを学びました。
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「マリノフスキーやモースおじさんが発見した「文化人類学的」贈与の世界は、第2次世界大戦以降、過剰なエゴによる個人主義と等価交換が引き起こした争いで消耗した近代西欧社会に対するカウンターカルチャーの象徴になった。
その再来を、21世紀の日に生きる僕たちは「発酵的」贈与の世界に見出だし始めている。個人対個人の、市場原理に基づくコミュニケーションではなく、共同体の中で、愛と贈与の原理に基づくコミュニケーションの可能性を夢見ている。ただひとつのモノサシで規定される価値観で他人と競争するのではなく、多様性のなかでお互いの個性を認め合う世界を求めているのだ。
これまでの資本主義と違う、贈与の仕組みで動く世界を「ギフトエコノミー(贈与経済)」と呼ぶ。これはモースおじさんの言う「全体的給付」の世界観で形成される経済のこと。個人の損得を超え、お隣さんに気前よく贈り物をすることで回っていく経済のカタチだ。
それは別に夢物語ではなく、ボランティアや地域コミュニティ、そして家族の中で当たり前のように存在している。モースおじさんの贈与理論を経済学において発展させたハンガリーの経済学者、カール・ポランニーは、
「経済システムと市場を別々に概観してみると、市場が経済生活の単なる付属物以上のものであった時代は現代以前には存在しなかった、ということがわかる。原則として、経済システムは社会システムのなかに吸収されていた」
と言っている。つまり現在における資本主義経済以前には、贈与経済「しか」なかったということだ。何かを交換する時は、必ず社会を構成するための「副産物」がいっぱいくっついている。マナーや愛や祭りや見栄が複雑に絡み合い、交換することで社会秩序が保たれる時代。「経済が社会システムの中に吸収される」ということは、つまり経済行為を通して「他人同士が仲良くなる=秩序が形成される」ということだ。
交換を繰り返すごとに強者はより勝ち、弱者はより負ける。そんなシビアな近代の市場経済とは真逆の可能性が贈与経済に託されている。周りを蹴落とす強い個体で満ち溢れた環境は、はたして住みよい世界なのだろうか」
小倉ヒラク(2017), 「発酵文化人類学(木楽舎)」, p190-191
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装丁がまず最高!60年代~70年代のヒッピームーブメントっぽいイラストがなんともぐっと来ます。
僕が発酵というものに興味を持ったのは何と言ってもぬか漬けです。ぬかに塩を入れて混ぜているだけで乳酸発酵する不思議な代物。なんで腐らないでこんなに美味しいものが出来るのでしょうか。やってみると簡単なのに、少しの変化で味が変化して不味くなってしまうんですね。まさに生き物を飼っているような気分でした。
これは筆者であるデザイナーが何故か発酵にはまり、発酵食品業界専門のデザイン、プロデュースに特化するという変人ルートから、発酵にまつわる事をフリーに語っていく良作です。
ハウツー要素は無いのですが、味噌作ってみたくなるワクワク感が有って、その先を見たくなるような本であります。
日本酒、ワイン、味噌、醤油など色々な発酵食品の作り手が沢山出てきてとても興味深いです。一番の衝撃は甲州にぶどうが伝来したのが1300年前という事でした。この100年くらいで伝来して取り入れたのかなと思いきや、相当前から栽培していたようです。
地酒としての葡萄酒も昔から飲まれていたそうで、まさに驚天動地でした。
ラフな文章で親しみやすいので好き嫌いあるかもしれませんが、情熱は非常に感じられて僕はとても好きな本です。ビバ発酵!
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文体が読みにくい。自分ツッコミが多かったり、プレゼンをそのまま文章にした感じ。
なので、読み飛ばしたい文章が多く、ちょっと内容に集中し辛い。
内容は、発酵を様々な観点から捉え、またいくつかの発酵食品を取り上げていて、イメージしやすい。
文体がひたすらに辛いだけ。
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味噌も醤油も大好きだし、発酵の潜在能力の高さを知ることができてよかったけど、わたしにはちょっときれいすぎる人たちのお話だった。そこそこ後ろ暗い人たちの "コンタミネーション" がある社会の方が、わたしは好きだな。